決戦は

9741

決戦

 ついにこの時が来た。

 奴との決戦の時。


 ……いや、再決戦、と言った方が正しいか。


 以前にも、俺は奴と戦った。


 そして負けた。

 無様に敗北した。

 勝利の女神にそっぽを向かれた。


 初めての経験だった、敗北というのは。


 自慢じゃないが、俺はこれまで1度も負けたことが無かった。向かってくる敵はこの腕1本、たまに2本で、倒してきた。


 俺は負け無しだった。


 だが、俺は奴に負けた。人生初の黒星だった。


 俺は敗北の屈辱から涙を流していた。


 悔し涙を流す俺を見て、同棲していた彼女は出て行ってしまった。勝利の女神だけではなく、最愛の恋人にまで愛想を尽かされたのだ。


 だが、いつまでも泣いてばかりいられない。


 俺は涙を拭った。


 そして修行のため、山に篭った。1週間ずっと。


 滝に打たれて、心身を鍛えた。

 手掴みで魚を捕まえて、集中力を鍛えた。

 毎日樹木を突き、拳を鍛えた。


 そして完成した。必殺の拳が。


 俺の拳は、もはや凶器だった。

 ある日森の中で出遭った熊さんを一撃で倒してしまうほどまでに、鍛え上げられていた。


 俺は確信した、この拳なら絶対、奴に勝てる。

 

 いよいよ始まる。奴との再決戦。


 俺は試合開始と同時に、奴に自慢の拳を突き出した。






「負けた……」


 現実は残酷だった。

 修行の成果も虚しく、俺は奴に負けた。

 俺の拳は、奴の手によって打ち砕かれた。


『うふふふふふ』


 奴が俺の方を見て笑う。打ちひしがれる俺を嘲笑う。

 くそ、この悪魔め!


「見てろよ! 次は絶対に勝つ!!」


 俺は啖呵を切り、修行の旅に出た。








『サザエさんは東芝と、ご覧のスポンサーの提供でお送りしました』 

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決戦は 9741 @9741_YS

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