185話『手がかりを追いかけて』セリカ編

セリくんの異変に気付いたのは私が最初だった

自分の異変に気付くのは当たり前ではあったけど、その異変は変な感じでなんと言っていいかわからない

すぐに和彦に会って自分の異変について話すと、死者の国中を捜してくれたけど…セリくんは見つからなかった

私だって、自分の居場所くらいわかるのに…私自身がわからないなんて変だ…

そして…セリくんだけじゃなく天使の姿も見当たらないと騒ぎになる

セリくんに最後に会ったのはフェイみたいで

「私はその時、鬼神から和彦様が呼んでいると言われてセリ様から離れてしまいました…」

そう話してくれるフェイだったが、フェイは和彦に会うと、呼んでいないと言われてそこでおかしいと気付いた時は遅くこうなってしまっている

鬼神も他の誰かが和彦がフェイを呼んでいると聞いてと言うし、その他の誰かに化かされたようだと…

変化が得意なのは美と愛の神フィオーラだけど…

「僕は何もやっていないねぇ……怖いから離れてくれない…?」

呼び出され、フェイと鬼神8人から怖い顔で追い詰められ震えている

フィオーラの別人格の勝利の神がまた悪さしてるかもしれないとみんなは疑うが、私は証拠がないからやめてあげてと言ったらフェイも鬼神も引いてくれた

「困ったな…手掛かりなしとなると

そもそもセリカがセリくんがいないって感じる事が不思議だ

万が一セリくんが死ぬとなったらセリくんであるセリカも死んでしまうだろうし」

「そうなの、だから変な感じなの……」

生きてはいるってコトで、それ以外は何もわからない…自分のコトがわからないだなんて……怖くて不安でたまらない

天使のコトも心配だし、セリくんと天使は一緒なの?

2人に何かあったんじゃないかと不安になる

どんなに離れていてもセリくんとの繋がりは1秒も途絶えるコトはなかったわ

感情も感覚も伝わる…自分なのだから

「セリカ様…大丈夫です、セリ様も天使様も見つかります」

フェイは私の手を握って落ち着くように優しく声をかけてくれる

「そっすよ!セリカ様!オレらもついてるんで世界の隅々まで捜してくるんで待っててください!!」

鬼神もみんな…ありがとう

さっそく捜しに行くぞ!ってやる気の鬼神が部屋から出ようとすると和彦に待てと止められた

「落ち着け鬼神、セリカがセリくんを感じていないんだ

それはこの世界のどこにもいないとも言える

いないものを捜しても見つかりはしないぞ」

確かにと鬼神は自分達が気持ちだけ先走ったコトに肩を落とす

私はみんなの気持ちちゃんと嬉しいからね!

「あ、あのぉ…」

怖い人しかいないこの空間で1人フィオーラは身を小さくして遠慮がちに手を挙げる

和彦の話せのひとことが出るとフィオーラは続ける

「この世の不思議に詳しい人達、いるよねぇ?

イングヴェィ様やリジェウェィさんやユリセリ様のような人達に話を聞くのもありかと」

シーンと辺りが静まり返る

「…あれ、僕は何かまずい事……」

シーンとした空間からワッと騒がしくなる

「たまにはナイスな事言うじゃ~ん!」

「無許可の占いの館でせこせこ稼いでるフィオーラちゃんがよぉ、たまには役に立つな、おい!」

鬼神がフィオーラにダル絡みしてる!?

もみくちゃにされ怖い鬼神8人にフィオーラは真顔で感情を殺していた

「たまには…って僕は役に立ってない!?」

急に感情溢れてフィオーラはショックを受けた

無許可バレまくってる今もう許可ありでいいんじゃ…とくに和彦はやめろとか言ってないもんね……

「フィオーラは神族として多少は和彦様の役に立っていますよ…多少は」

何か他に大きな問題があるかのような含みの言い方…

フェイは真面目だからいい加減な人は嫌いなのかもしれない

神族にも色々いるけどここで協力して働いてくれる神族は、セレンはアレだし、フィオーラもサボり癖があってずる賢いものね

たまたま問題児が揃ったみたいな…

結夢ちゃんはとっても協力的だけど和彦にとってはお客さん扱いみたい

「フィオーラの言う通り、オレ達の知らない事もこの世界には多い

今は生死の神でもオレは元人間だしな

イングヴェィ達の知識は頼りになる」

「そうね!それじゃ私はイングヴェィ達に連絡取ってみるね」

和彦の言葉に頷いて私は部屋を飛び出す

気持ちが焦っていたのかもしれない、ドアを開けて飛び出した私はよく見てなくて人にぶつかってしまった

「きゃっごめんなさい」

「俺の方こそごめんね、怪我はない?」

ぶつかった人は私を優しく受け止めてくれる

ビックリしたけど…聞き覚えのある声

見上げると、そこには噂をすればの人物が立っていた

「大丈夫…前を確認せずに飛び出した私が悪かったわ

イングヴェィ…来てくれてたのね……」

ドキドキする……知っている笑顔も良い匂いも…イングヴェィだとわかると急に心臓が早くなって落ちつかない

それにしても…暫く会わないうちに、イングヴェィ凄く大人っぽくなってる…?

落ち着いてて物腰も柔らかだし…超カッコ良い……

離れてたから気付けたの?今凄くドキドキしてる……

「あっセリカちゃん!会いたくなって会いに来っ……」

もう1人同じ声でいつものように私の名前を透き通るような綺麗な声で遠くから呼ぶのが聞こえる

えっ…?イングヴェィが…2人!?

「誰!?セリカちゃん騙されないで、この人は俺じゃないよ」

後から来たイングヴェィは私の知っているいつものイングヴェィで、目の前のイングヴェィと私の間に割って入る

うん…こっちが本物だわ

同じ姿なのに、ぶつかったイングヴェィの方が素敵に見えるわ……

まるでイングヴェィが大人になったかのよう

本物ももう500歳は超えた大人なのに

と思ってたら顔に出ていたのか、イングヴェィはムッとして偽者?を睨んで噛み付く

「俺の姿に化けてセリカちゃんを騙そうなんて悪い奴、許せないな」

「誤解だよ、俺はせりくんが良くない事をしたみたいだから助けに来たんだ」

イングヴェィが見るからに敵視して噛み付いても、大人の対応で流してる……やっぱり素敵

「セリカちゃん!?」

イングヴェィは私の考えてるコトはお見通しだった

「ふふ、イングヴェィったら嫉妬しなくても

この方が素敵に見えるだけで、好きとかじゃないわ」

ほらとイングヴェィに目の前の素敵イングヴェィさんの左手を見るように指差した

素敵イングヴェィさんの左手薬指には指輪があった

すぐにわかったわ、天使の世界の人なんだって

素敵イングヴェィさんとせりかさんが結婚したって話も聞いているもの

こっちの世界のイングヴェィとややこしいから、天使の世界の素敵イングヴェィさんはイングさんと呼びましょうか

「イングさん…ごめんなさい、貴方達の大切な天使が行方不明になってしまったの

私がちゃんと見てなかったのが悪かったんだわ…

どうしたらいいか……謝っても許されるコトじゃない」

イングさん達にも天使にも私が預かってるって意識はないかもしれないけれど、天使はまだ子供なんだから私が保護者のようなもの

申し訳なくて顔を上げられない

「謝らないで、せりくんがよくない事をしたんだ

謝るのはこちらの方だよ

君を、セリくんを巻き込んだ…

子供だからといつまでも甘やかしてきた俺達が悪かったね…」

優しい…優しすぎる

イングヴェィはイングさんのコトをわかってもまだヤキモチ妬いてる顔をする

いつもはもう少し大人なんだけど、私のコトになるとヤンデレになっちゃうのよね…

「みんなも心配してるだろうから、俺が説明するよ

何が起こったのかをね」

イングさんと一緒に和彦達がいる部屋へ戻る

イングヴェィが2人いるコトに和彦以外は最初は驚いたけど、説明するとみんなわかってくれた

「天使の世界のイングヴェィか、セリくんと天使が行方不明になったのは天使が原因って話だが…何故天使がセリくんを」

和彦の言葉にイングさんは申し訳ないとまた謝罪する

和彦も謝罪を求めてるワケではないと止めて、そのままイングさんは話してくれた

「天使に何があって何を考えてるかは、そこまでは俺にもわからない

でも、天使が強力な魔法を使ったコトはわかってね…」

「強力な魔法?天使様ってこの世界とは違った魔法使いよったな~」

「僕達から見れば未知の魔法、何でも出来るイメージだねぇ

天使本人は何でもは出来ないって言ってたけども」

鬼神もフィオーラも天使の魔法は特別だと話す

天使の魔法はこの世界と違うわ

この世界は炎魔法とか氷魔法とか、何か属性がある

でも、天使の魔法は夏でも雪を降らせたり重い家具や岩を浮かせたり動かせたりと言ったなんでもできるけどなんでもはできない魔法

ダイエットしたいって人を痩せさせたり、怪我を治したりはできないし、人を殺すコトもできないわ

重い岩をぶつけたら死ぬかもしれないけどね…

とにかく私達とは違う魔法を使うけど、万能な魔法ではないってコトね

「天使が使った強力な魔法は…過去に行くコトができる魔法だね

前に俺はセリカちゃんを助けるために力を貸してほしいって言われ、それを2人は体験したコトがあるハズ」

イングさんはイングヴェィと私を見て、私達はそのコトを思い出し頷く

イングヴェィと私は天使の魔法で一度だけ過去に行ったコトがある

結局、過去は変えずに戻ってきた

私にとって過去は変えないままで…今の私のままで生きるコトを決めたわ

「過去に行ける魔法ってそんなアホみたいな話あるん!?信じられへん…」

「過去を変えるってコトは今を変えてしまうコト、使ってはいけない禁忌の魔法だよ

俺は過去を変えられて戻すために使ったコトがある

大切な人を取り戻すために」

イングさんの視線は私の過去は変えないまま戻ってくるとわかってたみたいで、私達のために協力してくれたんだと知る

やっぱり…イングさんは素敵な人だわ……

「それはマズいですね…天使様が過去に行って何かを変えられてしまっては今が変わると言う話でしょう?」

フェイの言葉にイングさんは首を振ってその心配はないと言う

「今回のせりくんが過去に行く魔法に俺は力を貸していない

せりくん1人で過去に行く魔法を使うのは無理な話だよ

ただ…」

無理な話と聞いてみんながホッとしてもすぐにまた緊張が走る

「せりくん自身も自分は過去に行ってると勘違いしているハズ

そういう夢を見ているだけと気付かずに…

そして厄介なコトに、彼を巻き込んでる

せりくんの夢に閉じ込められて過去の世界を体験させられてる方はマズいコトに変わりないよ

あの子の魔法はただ夢を見ているだけじゃない

夢の中で巻き込まれた彼が万が一死ぬようなコトがあれば……現実のセリカちゃんも死ぬかもしれないってコトなんだ」

私が死ぬかもしれないって聞いた鬼神はみんなその場で倒れた

「この世から天女様がいなくなるなんて…」

「世界滅亡の危機…」

「我らの生き甲斐…」

大袈裟すぎない!?しかもまだ死ぬと決まったワケじゃないのに!?

「確かにマズい話ですが…過去の世界って当然巻き込まれたセリ様の過去ですよね?

それなら和彦様も私もレイもいるでしょうから、ご無事に違いありませんよ

あの人、なんやかんや守られてるんですから」

過去のフェイが1番危険な気がするけど…

今は和彦同様それなりに丸くなってるけどさ

「それは同じ過去を辿っているならの話だろう

何か1つでも違えば危険である事には変わりない

イングさん、セリくんと天使を助けたい

どうすればいい?」

フェイの言うコトはもっともな気がする

なんやかんやセリくんって色んな人に守られて今日まで生きてるもん

でも和彦はセリくんのコトが心配で仕方ないのね…嬉しい

「助けるには2つ揃わないと厳しい

1つは眠っているあの子を見つけるコト

もう1つは、あの子がそんなコトをした原因を見つけるコト

あの子は何かを解決したくてこんなコトをしているだろうから、それをぶつけてやらないとあの子も目を覚まさない

あの子が目を覚ませば魔法も解けるからセリくんを助けるコトができるよ」

天使を見つけるコトも大変そうだけど、天使が解決したいコト…つまり悩みってコトよね?

天使に悩み…?いつも笑顔で楽しそうにしてて…まったく心当たりがないわ

イングさんの話を聞いて、和彦は鬼神に天使を捜すように命じた

和彦とフェイもフィオーラを連れて天使を捜すコトにした

天使の悩みに気付きやすいのは近くにいた私達だとわかっているから任せると、さすが和彦の判断だわ

私も天使の細かなコトを思い出して、天使の悩みに気付かなきゃ

そうして、私はイングヴェィと一緒にイングさんと行動を共にするコトになった

城を出ると噴水近くに人の姿があって、イングさんは声をかける

振り返るその姿は私だった…すぐに天使の世界のせりかさんだとわかる

イングさんとせりかさん2人の左手薬指に光る指輪が素敵だった

せりかさんと目が合って私は頭を下げる

「すみません!私がちゃんと見てなくて天使が行方不明になってしまって」

「すみません!せりくんがまたやらかしたみたいで」

お互い言葉が被って顔を上げて、イングさんが間に入ってくれる

お互い責任を感じちゃってるな…

「せりかちゃん、せりくんのコト何かわかった?」

どうやらイングさんとは別行動していたのか、せりかさんはリスを手に乗せてイングさんに見せた

「色んな人に聞いてみたけどダメだったわ

でもこの子、せりくんと仲良しみたい

私に何か伝えようとしてくれてるけど、私は動物の言葉はわからなくて…」

天使は動物とも仲が良かったわ、そのリスはよく天使の頭に乗ってる子ね

「わかった、聞いてみるね」

さらっと言ったけど、イングさん動物と会話できるの凄くない!?

あっ天使も動物と会話できるか…凄いな、この人達

ムッとした視線を感じてイングヴェィの方を振り向く…そうだね…イングヴェィも動物と会話できたね…凄い凄い……

周りに何人かいるから凄いのか凄くないのかよくわからなくなってきた…

「なるほどね…夏祭りの夜にせりくんが知らない男の人と話してるのを見たらしい」

イングさんはリスの話を通訳してくれる

その男が天使に吹き込んだようだ

結夢ちゃんを救うと言う表向きの会話は、ただセリくんを危険にさらしたいだけの話だった

私達が聞けばおかしいと感じても、子供の天使じゃその裏側は気付けない

騙されて、純粋に結夢ちゃんを助けたい一心になって引き起こしたのか…

「せりくんはまだ子供よ…その男、許せないわ

騙しやすいあの子を使うなんて…外道ね」

せりかさんは手に力を込めて怒りに震える

「そうだね…その男を見つけないと

男の特徴は、種族は神族…暗くて顔もよくわからないけど、話し方も動きもナルシストっぽいって言ってるね」

ん…?それって…天空か!?あの野郎…泥の悪魔(元空の神)にやられたんじゃなかったのか

生きてやがったと言うなら、セリくんと私に相当な恨みを持ってるわ…

奴のプライドはズタズタだからな

なりふり構わずに、子供の天使まで巻き込んだかクソ野郎

私に恨みがあるってんなら直接来いよ、卑怯者が

「セリカちゃんは心当たりがあるようだね」

「えぇ、ナルシスト野郎で思い当たるのは1人よ」

教えてくれた天使の友達のリスにお礼を言いおやつを渡して、私達は天空に会いに行くコトになった



天空の居場所の心当たりはとりあえず、結夢ちゃんの国よ

今いるかどうかはわからないけど、カニバに会った時に聞いていた

勝手に居座ってその国の神様面してるってね

それにはあのタキヤも大激怒しているくらい

結夢ちゃんの国に向かう道中でふとイングヴェィは不思議に思ったコトを口にした

「そういえば、せりかさんって三十路超えてるって天使が言ってたけど

23歳のセリカちゃんと見た目全然変わらないね?

そもそもセリカちゃんが15歳くらいに見えるのに、せりかさんも10代の見た目って人間なのに年を取らないの?

いつまでも綺麗なまま」

確かに…イングさんがイングヴェィと同じ見た目なのは人外だからわかるけど、せりかさんは私と同じ人間

年を取るのは当たり前だわ、なのに私と変わらない見た目をしている

「俺が出逢った時にせりかちゃんの身体の時間を止めたからね

せりかちゃんは人間でいつかは死んでしまうから…それが嫌でずっと一緒にいたくて死なないように、ね…

だからずっと年を取らないんだよ」

イングさんは大人っぽくて落ち着いてて素敵って思ってたけど、発想がやっぱりヤンデレなのはイングヴェィと変わらないのね…

「えっ!?そうなの!?知らなかった~」

せりかさん本人も知らなかったみたいで驚いてる

そんなに大事として捉えないのがイングさんの奥さんだなって慣れって凄い

イングさんは後ろを歩いていたイングヴェィの隣へと歩を緩める

「君にも、俺と似たような能力を持っているハズだよ

彼女を、大切な愛する人の運命を変えられるのは君だけ

彼女の身体の時間を止めるコトが出来れば、永遠に24歳になるコトはない

勘違いしてるみたいだが23歳で死ぬ運命ではなく、24歳になるコトが許されていないだけでそれを阻止すれば逃れられる

後は…君がその能力を取り戻すのに間に合うかどうか……」

イングさんの言葉に、イングヴェィはハッとする

ずっと私を助ける方法を探してくれていた…イングヴェィもみんなも…

その方法はたった1つ、イングヴェィだけが可能なコトだったと知る

言われてみれば、23歳の誕生日に死ぬワケじゃない

いくつもの前世を思い出してそれまでに死ぬコトもあったけど、ほとんどが23歳のどこかで死んでしまう運命だった

24歳の誕生日を迎えたコトはないわ…

私が24歳にならないように身体の時間が止まれば……運命は変わる?本当に?

やっと…この絶望の運命から解放されるの?

イングさんは何でも見通せて知ってるかのように素敵で頼りになる

「その方法は…セリカちゃんを救えるかもしれない

でも……どうしたら俺は自分の能力を取り戻せるのか…わからない」

イングヴェィは救える方法がわかっても喜べなかった

自分の能力が戻らなければ私を死なせてしまうとわかっていて…余計悩む

「…大丈夫よ、イングヴェィ焦らないで

もしダメだったら次があるわ

私は何度も生まれ変わりを繰り返すもの

だから、いつか救ってくれれば良い

希望が見えただけでも、もう救われてるわ」

「でもセリカちゃん…」

私が言ってもまだ辛い顔をするから私はイングヴェィの頬をつっつく

「私はイングヴェィの笑った顔が好きよ

太陽みたいな明るい笑顔

ずっと見てたいから、笑って?ね?」

イングヴェィならいつか救ってくれるって私は信じてるもの

私はね…これまでの永遠にも感じる運命に…セリくんと違って、香月のような恋人の存在はなかったわ……

それはただ希望の欠片もない絶望

そんな私の運命にイングヴェィが出逢ってくれた

運命が変わったの?ううん、イングヴェィと出逢うコトが運命だったと信じてる

私は貴方との出逢いに光を見たわ

私は私でよかった…やっと…幸せになれると……

「……うん、セリカちゃん…俺は自分の能力を取り戻して君を救うよ

もう辛い思いはさせない…待ってて」

イングヴェィは私の手を掴んで、いつもの笑顔をくれる

ありがとう…私も諦めるつもりはないけど、万が一ダメだった時はそれでも私は幸せよ

イングヴェィの恋人になれて…はじめて恋をして愛を知った

……ってまだまともに手も繋いでないし、キスもちゃんとしてないけど!?

これって恋人同士って言えるのかしら…

ううん…私達は私達の時間で進めばいいよね



そして、私達は結夢ちゃんの国へとたどり着く

神殿を訪ねるとカニバが出迎えてくれる

私が来てビックリしたけど、すぐにウサギの姿になって私はそんなカニバを抱っこする

ふわふわのカニバ可愛い…一瞬だけ抱っこさせてくれて抱っこ嫌いのカニバは暴れて下ろすと人間の姿になった

「こんな早くにまたセリちゃんに会えるなんて思わなかった!

タキヤがいるからここには来たくないハズなのに、どうしたんだ?」

「カーニバルくん!?私だって小僧…いや小娘なんぞと会いたくないですよ!?

今もどんな嫌がらせしてやろうか考えを巡らせて…ぶぼぉ!?」

タキヤの私に危険を加える発言にカニバは容赦なくタキヤの腹を蹴りその場に沈めた

あんな小さなウサギの蹴りでも痛いのに、ウサギのカニバが人の姿で蹴ったら相当痛いよな…

いくらカニバが子供でも…

「カニバ、セリちゃんが来たのはね…かくかくしかじか」

うずくまるタキヤの背中にカニバは腰掛けて私を見上げる

「なんだって!?…セリちゃんわかんないよ!?」

かくかくしかじかで全部通じる世界ではなかった

私はカニバに天使とセリくんのコトを説明して、天空がここにいないかを聞く

「そっか…契約ならセリちゃんを守れたかもしれないが、天使相手なら警戒するコトもなかっただろうしな」

カニバは契約のコトも好きでよく懐いてる

カニバの言う通り、天空は何重にもして自分とバレないようにセリくんを誘い出した

天使を使って……また腹が立ってきたわ

「だいごろう(天空の本名)はしぶとく生きて帰ってきたぜ

帰ってきた時はチッまだくたばってねぇのかって3人で舌打ちしてた」

なんやかんやカニバはタキヤとオミノと仲良しね…

「そのだいごろうってクソ野郎はどこかしら?」

話を聞いていたせりかさんがカニバの頭を優しく撫でて聞く

「天使とそっくりだ、セリちゃんがもう1人いるみたい」

カニバはせりかさんのナデナデに満足して、だいごろうの居場所を教える

「だいごろうなら女神結夢の神座でふんぞり返ってるけど、会いに行くのは危ないからやめた方がいいぞ」

「良い子ね、教えてくれてありがとう」

カニバの心配も大丈夫と言ってせりかさんは神座へと向かう

1番怒ってるのはせりかさんなのかもしれない、冷静さがないわ

私達も慌てて追い掛けた

神座のある広間に来ると、カニバの言う通りだいごろうがふんぞり返っている

でも、せりかさんの姿を見るとだいごろうは反射的にナンパをはじめた

「やや!とても綺麗な人だ…どこぞの憎たらしい生意気な殺したい男と女にそっくりな気もするが、君の美しさを前にしたら口説かずにはいられまい」

相変わらずナルシストな動き腹立つな~…

せりかさんは少しも動じるコトなく、だいごろうが触れようとしてくる手を叩き払う

「これはこれは手厳しい…」

「人違いだったら大変だから、まずは確認するわ

せりくん…いえこの世界では天使の方がわかりやすいわね

天使とセリくんが行方不明になったわ

それは天使が原因みたいでね

天使に何かを吹き込んだのは、オマエか?」

「天使に何かを吹き込む?その言い方だとまるでボクが悪い事を吹き込んだかのようだ

誤解しないでくれたまえ

ボクは天使に女神結夢を助けてあげてほしいと言っただけさ

女神結夢を国に帰さずに閉じ込める悪い男、セリくんの話をしたら勝手にやらかしたみたいで?

ボクは何も悪くない

2人が行方不明になったのはボクの責任じゃない

天使が勝手にやった事だろう?

それでセリくんが酷い目に遭って死ぬかもしれないが、ボクは何も関係ない!!

子供の天使は素直でまっすぐで本当に可愛いねぇ…」

ペラペラとよく喋る男だ

天使の素直さを利用して、セリくんを追い詰めてさぞ楽しいだろうな

タキヤと同じでだいごろうもセリくんと私を追い詰めて自殺させるコトに手段を選ばなくなったと言うコトか

「そうか…オマエは子供に何させてるんだ?

全てオマエの思い通りの展開になって嬉しいって顔してるぞ

天使が素直な子だってのは私が1番よく知っているわ

だから天使はウソを見抜けない、オマエもそれをわかってて言ったな?」

「だったらどうする?

人間の女の貴様が神族のボクに何が出来る!?

天使の身内か?ガキはバカで助かるなぁ!!?

簡単に騙されてお友達を傷付けるんだからさー!!」

本性表した瞬間、せりかさんはだいごろうの顔面を殴った

だいごろうの言う通り人間の女の人なのに、だいごろうの身体は吹っ飛び地面に転がる

すかさずだいごろうに馬乗りになり拳を振り上げ、だいごろうが止めるより前に振り下ろした

「これから6289370回殴る

オマエの顔をもっと男前にしてやるよ」

と言ってだいごろうを殴り続けた

つよ…すぎない!?

天使のコトで怒ってるんだろうけど、そんな強さ普通の人間の女の人にはないよね!?

「ってか、そんなに殴るの自分がしんどくない!?」

イングさんは止めないどころか協力してた

「大丈夫、せりかちゃんの体力は俺が魔法で無限にしてるからね

パワーも強化して、手を怪我しないようにガードも加えて

本当は俺が殴りたいところだけど、せりかちゃんがスッキリするまで譲るよ

せりかちゃんはせりくんが大好きで大切だからね、怒りはそう簡単におさまらないな」

至れり尽くせり!?せりかさんのためにイングさんの魔法はなんでもできるようだ

それから本当に6289370回殴り終わるのを待つのにおやつを食べたりジュースを飲んだりして待った

「誰も止めないの狂ってませんか…ここの人達…」

タキヤが途中で引いてしまった

カニバは私の膝を枕にしながら

「じゃあオマエが止めてきなー、巻き込まれて一緒に殴られるだけだと思うけど」

冷たくタキヤに言い放つ

そして、カニバはウサギの姿に戻ると私の膝に顎でスリ~っと匂いをつける

マーキングしてる…

この前、和彦に名前書いてるのか?って言われたの気にしてるんだろうけど

和彦はウサギじゃないからわからないぞ絶対…

そうして待つコト6289370回後…

だいごろうは泥の姿に変わっていた

これは殴られすぎてなのか、泥の悪魔を取り込んだから出てきたのか、どっちかわからない

「何か言いたいコトはあるか?」

せりかさんはだいごろうの胸倉を掴んで起こす

「ないでず…ずみまぜん、もう二度ど天使にば近付ぎまぜん……」

「いいだろう」

せりかさんはだいごろうを投げ捨てるとこっちに戻ってきた

あのだいごろうが女に屈した……6289370回殴られると女とは別の生き物と思ったのかもしれない

動けなくなってるだいごろうに近付き見下ろす

すると私が視界に入っただいごろうはなんとか大空の神の姿に戻った

「まだ神族の姿を保てるのか

天使の弱みにつけ込むなんて、もう半分は堕落した悪魔に成り下がってるな」

「女がしゃしゃんなぁ!!」

急にいつもの調子取り戻すじゃん!?

よっぽど私のコトが嫌いなのね…

「あの泥の悪魔を取り込むしかなかったからなぁ!?

勇者の男と女も腸煮えくり返るが、契約の事も忘れてないからなぁ!?

その顔を見る度に憎しみが増す…

覚えてろ…その顔まとめて、どんな手を使ってでも苦しめてやる」

イングヴェィもカニバも私を守るように間に入ってくれたけど、だいごろうはその姿を消して逃亡した

「ちっ逃げたか…

セリちゃん、だいごろうは相手にされなかった逆恨みが凄まじい

完全に堕落していない中途半端な形が1番厄介かも、1人になるのは避けて」

「そうねカニバ…」

「セリカちゃんの傍には俺がいるようにするよ

離れていたいって言われても、聞かないからね」

「イングヴェィ…うん……」

カニバもイングヴェィも、ありがとう

だいごろうのコトは少し怖い、タキヤのような粘着質な奴がどれだけ怖いか…

でも、私にはイングヴェィがいてくれるし

セリくんには香月も和彦もいる

だいごろうは手を出せないハズだわ

ありとあらゆる手を使ってくるかもしれないけど、天使を使うなんて二度は同じ手を使えはしない

「でも、もう少しで完全に堕落しそうだったな」

カニバがそう言うとタキヤがテンション

上げる

「このまま結夢様の聖地を守りますぞー!!

勇者の小娘は帰れです!!だいごろう様にやられてくたばれですよ!!」

どさくさに紛れて私に酷いコトを言うタキヤにまたカニバの蹴りが入る

タキヤはまたカニバの椅子になった

懲りねぇな…タキヤの奴は



犯人は見つかったが、犯人を探し当てたところで解決ではない

だいごろうは天使に結夢ちゃんを助けるためにやらせたコト

なら、結夢ちゃんを連れて天使の誤解を解くのが解決への道とわかったはいいけれど…

結夢ちゃんは喋れないから、会わせても天使はわからないままかも

普段はなんとなく結夢ちゃんの伝えたいコトはわかってるみたいだけど、感情的になってだいごろうの言葉を信じ切ってる天使に本当の結夢ちゃんの心は通じるかしら…

それでも、結夢ちゃんを連れて行かなきゃ天使の問題は解決しないわ

私達は死者の国に帰って、結夢ちゃんにセリくんと天使の話をする

だいごろうが天使に何を吹き込んだのかも全て話すと、結夢ちゃんは心配でたまらないと顔を青ざめた

すぐに助けに行かなきゃと身振りそぶりで伝えてくれるけど、まだ天使の居場所がわからない

「結夢ちゃん、落ち着いて」

いても立ってもいられないと結夢ちゃんは不安で部屋の中をウロウロしてしまう

すると、部屋のドアがノックなしで慌ただしく開く

「お話は聞きましたわ!!

セリ様と天使が大変な事になっていると」

セレンが乗り込んできて私に顔を近付ける

セレンの姿を見たイングさんとせりかさんが驚いたような顔をしたけど、2人の世界にもセレンのそっくりさんがいるのだとわかる

レイや香月のそっくりさんもいるって聞いてるから、たぶんセレンもそうなんだと思う

関係性はわからないけれど

「本当なんですの!?あの子が…せりが…悪さをしてしまったと言うお話は!?

きっと何かの間違いですわ!!

せりはとっても良い子なんですの!!

何かしてしまったのが本当なら、悪い人に騙されたに違いありません!!」

信じたくないとセレンは必死に天使を庇う

「お、落ち着いてセレンも

悪い人に騙されたのはみんなが知ってるわ

天使は悪くないってコトも」

私がそう言うとセレンは少しだけ落ち着いて、私から離れてくれた

セレンは天使のコトを我が子のように特別可愛がってくれていたから、反応がお母さんだ

いつもの腐り散らかしてセリくんをおもちゃにしてるセレンはどこへやら…

セリくんにそっくりな天使をそういう目で一切見ないのもどういう目と脳みそしてるんだろ…

レイなんて天使見るだけで罪悪感がって怯えてるのに

逆に尊敬する

「そうですの…

その悪い人は…私の可愛いせりを騙したのはどこのどなたですの!?

怒鳴り込みに行きますわ!!許しませんわ!!」

「もう6289370回殴ったからいいよ…」

「セレンも参加したかったですわ!!」

過激!?みんながイメージする(見た目が)女神様が素手で殴るなんて想像できないぞ

そもそもセレンなんて虫も殺したコトなさそうなのに…

「それならこれからせりとセリ様を助けに行くのでしょう?

セリカ様!セレンも一緒に連れて行ってくださいまし!

心配でたまらないですもの、待ってるなんて無理ですわ

駄目と言われてもついて行きますからね!!」

セレンの勢いに押され頷くコトしか出来なかった

ダメと言う理由もとくにないし、セレンは本当に天使のコトが心配でたまらないみたいね

推しのセリくんのコトも心配してくれてるみたいだけど、セレンにとって天使は本当に我が子のようだわ

結夢ちゃんもセレンも早く助けに行こうと言うけど、まだ2人の居場所がわからないために一旦解散となった

私が生きている限り、セリくんは無事だとわかってもいつのタイミングで何が起こるかはわからないし

早く2人を助けに行けたらいいんだけど……


部屋に帰って一息つく

天使の居場所は和彦達が探してくれてるとは言っても、なんだか落ち着かないわね…

自分がなくなってしまってるようなこの不思議な感覚…嫌な感じがずっと続くのよ

「……リ…」

………ん?何か、聞こえたような…

いつもなら気しない音も注意深くなる

「…セリ…カ……」

耳を澄まして、私の名前を呼ぶその私の声へ導かれるように私は鏡の前に立った

目の前に映るのは私自身…セリくんの姿だ

でもセリくん本人じゃないコトはすぐにわかる

「オマエは契約ね」

「セリカ…」

前にもこうして鏡越しに契約と話したコトがある

その時は契約は敵だったわね、今はセリくんに恩を感じて味方みたいになってるわ

当然セリくんである私も契約のコトは理解して受け入れてる

「………。」

…どうしたのかしら?沈黙が少しばかり長いわ

「…こうして話をするのはあの時以来か

あの時はすまなかった」

「私の方こそ、オマエを理解してなかった」

「すまない気持ちはあるが、やっぱり俺はオマエが嫌いだ

レイに好かれてるセリカに嫉妬してる」

目の前の私の顔は複雑な表情で私から目を逸らす

なんだ、そんなコト

仕方ない人、まっそんなコトもわかってて受け入れてるから可愛くて笑っちゃうわ

「その余裕あるところも…ムカつく

って、今日はそんなコトを言いに来たんじゃねぇ

天使の魔法で今の俺達は過去の世界にいるんだ」

「知ってるわ、正確には天使の夢の過去の世界みたいよ」

「やっぱりか…俺も薄々は本当の過去の世界ではないように感じていた

勇者は本当に過去の世界に来たと思い込んでいるようだが」

離れてるセリくんと直接話は出来ない私には、契約の存在は幸運だった

こうして話をするコトができるもの

「みんな心配してるわ、助けに行きたいから教えてほしいの

こちらの世界で天使が魔法を使った場所を」

契約はセリくんが表に出ている時や眠っている時も意識がある(たまに契約自身も寝るコトはあるみたいだけど)

天使は魔法を使ってそのまま眠ったハズ

「うん、天使が魔法を使った場所は…」

まだ天使の悩みはハッキリとはわかってないけど、まずは会って話を聞かなきゃね

そこからわかるかもしれない

必ず解決して苦しんでる天使を助けて、私(セリくん)を解放してもらうわ

待っててね天使、みんなで貴方に会いに行くわ



-続く-

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る