181話『2人にしかわからない関係』セリ編
目が覚めたのはフェイの部屋で昼を過ぎた頃だった
記憶はなくても、なんとなくレイと契約が朝まで寝てないんだろうなって自分の身体のコトはわかる
少し契約が羨ましい
俺はレイとまだ愛し合うコトはできないから…
ちょっとだけヤキモチ、なんて言ったらレイは喜ぶかな…ふふ
まっ俺は構わないんだけどね、時間がある時はなるべく契約に身体貸してやりたいって思って自分が納得してやってるコトだ
顔を洗って着替えてる途中でテーブルの上にメモが置いてあるコトに気付く
「ん?和彦の字だ…」
アイツの手の怪我も治ってきたな
香月に貰った薬がよく効いていて、傷も残らないって話だからよかった
フェイの部屋で和彦のメモなんて変な感じ
メモには起きたら来いだってさ
呼び出しなんて珍しい、よっぽどなんか急ぎの用か?
それなら起こしてくれてもよかったのに
まっいいや、着替えて行くか
和彦の仕事場に行き、出迎えてくれた鬼神に呼び出されたと伝えると和彦の部屋に案内される
部屋には和彦の他にフェイがいて……また気まずい……
「和彦来てやったぞ、何の用だ?」
「どうだ?最近フェイと同じ部屋で」
なんだ、そんなコトが聞きたかったのか
わざわざ呼び出すコトもないだろ
オマエがなんでフェイと俺を同じ部屋にしたかわからねぇが、今もそれ許してねぇからな!
おかげで気まずい日が多いっての
「どうもこうもねぇだろ、フェイと同室なんてもう嫌だね
早く和彦のとこに帰りたいよ」
昨日だって……
俺の話を聞いて、和彦はそうか…って呟いた後にフェイへと視線を向ける
「それじゃフェイには1年ほどここから遠く離れた場所に行ってもらう事にするよ」
なんだそのふわっとした話!?
遠く離れた場所って目的はなんなんだよ
和彦はウソは言わないが、冗談はたまに言う
俺は冗談だと思ったが、フェイは真剣に受け止めているようだ
真面目かオマエ
「1年…ですか…?それはあまりに……」
「オレの命令が聞けないのか?」
だけど、フェイの返しも和彦の言葉も冗談ではなかった
和彦の命令は絶対…
目的もないようなふわっとした言葉でもだ
「ちょっと待てよ、そんなふわっとした命令じゃ納得できないだろ」
別にフェイが遠くに行こうが…俺は……どっちでもいいけど…
和彦に俺の言葉は届いていないようだった
「今まで和彦様の命令には全て従ってきました
しかし、こればかりは従えません」
フェイはどうしても1年遠くへ行くのが嫌みたいだ
それなのに和彦は冷たく
「命令は命令だ」
と突き放す
な…なんで急にこんな重苦しい空気に…?
超気まずいし…俺が呼ばれた意味は…今蚊帳の外だぞ
フェイははじめて、和彦を納得いかないと睨み付けて部屋を出て行ってしまった
あの全て和彦様のフェイが…反抗期なんじゃ!?
なぜ従えないのかの理由も言わずに怒った様子のフェイは部屋を出て行ってしまい、もっと気まずくなった俺
「フェイが和彦にワガママを言うのははじめてだな…嫌なら嫌でやめてやれよ、ダメなのか?」
「今のままのフェイの言葉など聞くつもりはない」
和彦って一度言ったコト曲げねぇんだから…
さっきのはさすがに酷いと思うぞ
俺がフェイだったら何の嫌がらせだ!?って怒るよ
それとも俺が知らないだけで、フェイは何か相当なヘマでもしたのか?
「はじめてのワガママなら聞いてやればいいじゃん
フェイは和彦のコト心底慕っているんだぞ」
「オレはセリくんの我が儘以外は聞かない」
何言ってもダメかと黙っていると暫く沈黙が続いて、和彦が口を開く
「…フェイの様子を見てやってくれるか?」
「ん?」
なんだ?素直じゃねぇな!後悔してんのか?
和彦はなんやかんや言いながらもフェイのコト気にかけてやってるんだな
自分からは行けないからって俺に頼むなんて嬉しいかも、任せとけ!!
「仕方ねぇな、素直じゃないオマエの代わりに行ってやるよ
連れて戻るから、そしたらさっきの撤回してやれよ」
俺が笑って言うと、和彦はやっぱり素直じゃなくて黙ったままだった
そして、俺はフェイを追い掛けて連れて戻るつもりだったが……
「フェイ、部屋に帰ってたんだな」
どこ行ったか探さないとって思っていたが、部屋を最初に見に来たらいてよかった
フェイは俯いて雰囲気を暗くしていた
俺が声をかけても顔を上げてはくれない
「和彦も言い過ぎたみたいだし、一緒に」
フェイに近付くと何やらブツブツ呟いてる
「これまで私が和彦様に我が儘を言った事などありません
一生に一度の我が儘くらい聞いてほしい
許せない…和彦様を……困らせたい」
………こわ……めっちゃ怒ってるって言うか追い詰められてるレベル!?
フェイは急に顔を上げると俺の手を掴む
そして、そのまま死者の国から誘拐された
ど、どうしよ……時間が経てば落ち着いてくれるかな
変に抵抗せずに、フェイに付き合ってやるか
和彦のコトだからフェイが俺を連れ出してるコトくらいわかってるだろうし、仕事終わったら迎えに来てくれるだろ
………って!2日経ったが来ないぞ!?
フェイはフェイで落ち込んでるのか、気を使って何気ない話を振っても無視される
いつものフェイは嫌いだが、いつもの調子じゃないとこっちまで調子狂うぞ
でも、いつまでもこのままってのもいかないだろうし
「そ、そろそろ帰らないと和彦が心配してると思うぞ…?」
話しかけても無視されるって知っていたが、でもフェイは和彦の名前に反応する
「……でしょうね、和彦様はセリ様の事だけは心配なさりますから」
いつもトゲのある言い方をするが、今のフェイは投げやりな感じにも聞こえた
「フェイのコトだって心配してるよ
和彦はわざわざ言わないだけで、結構理解してくれる奴だし
まぁわかってない時もたまにあるけど、それでも蔑ろにするような奴じゃない」
なんやかんや和彦はフェイのコトは信頼して甘い部分があるってのは傍にいてわかる
「私とセリ様では立場が違うでしょう?
そう思ってるのは貴方だけで、私とセリ様から見る和彦様は違います」
確かに、フェイと俺とで比べたら和彦は俺の方が大事かもしれないが
だって俺は和彦の恋人だもん
フェイの知らない和彦を俺は知ってるし、俺の知らない和彦をフェイは知っている
立場が違うのは当たり前だし、見え方だって違う
でも、やっぱりフェイはわかってねぇよ
俺が和彦にもっと厳しく注意しろ!!って言っても、フェイにはなんやかんや甘いだろ
嫉妬とかはないが、和彦とフェイの関係は俺よりずっと長いし歳は近くてもフェイにとって和彦は親みたいな存在なんだろう
それを和彦もわかってるし、たくさんいる部下の中でもフェイのコトは1番可愛がってるように見える
自分の恋人(俺)をあてがおうとするし……
「ちゃんと見えてなきゃ、言ってくれなきゃわかんねぇって女か(俺も人のコト言えねぇけど…)
オマエだってなんで嫌なのか、命令に逆らうのか言ってないよな?
言わなくても察してなんてメンヘラか?甘えんじゃねぇぞ!!(俺も人のコト言えないが!?)」
「和彦様の命令に逆らう事は殺されても文句は言えないくらいの事です
呑気な貴方とは住む世界の常識が違うんですよ」
えっ…何それ恐くない?和彦ってそんなヤバい奴なの?いや、最初からヤバい奴って知ってたけど、そういう意味でもヤバいのアイツ?
「そんなアホな…思い込み激しいだけじゃねぇの?和彦はそんなコトくらいで怒ったりしないだろ」
「和彦様は怒りませんよ、怒った事など一度もありません
そんな感情で動くような人ではないですから」
「えっ…じゃあ実際に殺された奴とかいんのか?」
「いえ、和彦様に逆らう者などおりません」
和彦んとこの部下って心酔してる奴ばっかか、強さが全ての鬼神なんてそうだし
「じゃあやっぱりフェイの思い込みじゃん!」
「思い込みではありません……
セリ様の言うように殺されまではしなくても、和彦様の命令は絶対です……」
フェイはふざけたり冗談言ったりするような奴じゃない、和彦の命令が絶対であるコトに重く頭を抱えてしまった
「ちょっと待て、そんな深刻そうに受け止めてるが和彦の命令って1年どっか遠くに行ってこいって話だろ?
よく考えたら長期休暇貰って旅行ラッキーくらいの気持ちじゃん!?」
「1年ですよ…?」
「ホームシックか?」
フェイは俺の発言に大きな溜め息をつくばかりだった
「そんなにホームシックか!?
そりゃそうか、長期休暇も旅行も1人だもんな
家族同然の和彦も鬼神とも、友達のレイとも会えないワケだし
俺もみんなに会えないなら嫌かも」
自分がフェイの立場だったらって考えたら俺も嫌だった
目に見えてイラついてるフェイが口を開く
「どうして和彦様はこんな人を恋人にしたんでしょうか…」
「失礼な!?俺だって良い所くらいあるわ!!」
「どこですか?」
「えっ………」
俺の良い所……どこだ???人に聞かれるとわからねぇぞ…
でも和彦が好きってコトは俺の何かが良くて恋人に選んでくれたんだろ!?今度いっぱい聞こっと
「理解出来ません」
「別にオマエに理解されなくてもいいしな!!」
どんだけ溜め息出るんだコイツ、嫌な奴だ
なのに、フェイは軽く笑みを零すと俺へと手を伸ばして頬に触れる
「私自身も理解出来ないのに、気持ちはわかります」
まっすぐに見つめられて、不覚にもドキッとしてしまう
「えっ…どういう……」
フェイの手が離れると少し上がった熱も引いていく
1年……フェイが遠くへ行くか…
よくよく考えるとそれってもう二度とフェイに会えないかもしれないってコトだよな
俺は次の誕生日が来るまでに死ぬかもしれない、それが運命だから
「………そっか、もう会えなくなるかもしれないんだよな」
ぽろっと言葉に出てしまう
急に1年って重みがのし掛かる
みんなと一緒にいられるのが当たり前で、毎日それが続くって思いたかった
でも、もし今回の運命もダメだったらって不安は過る
そしたらフェイとはもう……二度と…今生だけの縁だ
「オマエのコト嫌いだしムカつくのに、正直ちょっと寂しいかもな」
ガチな雰囲気にならないように笑って話す
フェイは俺のコト嫌いだし、清々するかもしれねぇけど
俺は……フェイに助けてもらったコトもあるから、嫌いにはなれなかった…
俺は今回また死んでしまったら記憶はリセットされて生まれ変わって新しい人生と似た運命がまたはじまる
他の人達は人間じゃないから再会出来る可能性はあっても、人間のフェイは違う
人間のフェイとは…
そう考えるとちょっと泣けてくる
俺だって人間だからいつか死ぬ
でも23歳で死ぬのは嫌だ
死にたくないけど……無理かもしれないから
「好きです」
「………ん?」
なんて?さっき……フェイらしからぬ言葉が…聞こえたような…
すき……?隙?あーなんだ聞き違いか
「セリ様が私の事を嫌いでも、私はセリ様の事が好きです」
えっ……!?聞き違いじゃなかったのか!?
「はっ!?嫌がらせか!?俺が嫌いって言ったから」
嫌いな奴から好きって言われたら嫌だろ?みたいな嫌がらせか!?
俺への嫌がらせに命懸けてんのかってくらいフェイは俺に嫌なコトばっかりしてくる
「………あれ?フェイ?聞いてる?」
今度は顔を真っ赤にして黙り込んだまま固まってる
「………しまった…勢いで言った……二度と会えないと思ったら……」
またなんかブツブツ独り言を……どうしたんだフェイの奴
大丈夫か?って近付いて顔を覗き込む
「もう…仕方ないですね、そして貴方はいつも無防備です」
フェイは何かが吹っ切れたかのように、一瞬でいつもの調子を取り戻した
いや、いつもの調子よりさらに調子が良いように見える
フェイに両肩を掴まれ距離が縮まる
「セリ様が私の事をまだ嫌いと聞いて安心しました
嫌いでいてくれる方が私は私でいられますから、間違っても私を好きにならないでくださいね」
「はっ!?自惚れんな!死んでもオマエなんか好きになるか!!」
っていつもの調子で言い返してしまった
最近の俺はそこまで嫌いってワケでもない……なんて、やっぱりムカつくから言いたくない
「最高です、そんなセリ様が私は好きですよ
もっと嫌って嫌がって私を喜ばせてください」
フェイの顔が近付いて唇が重なる
混乱からの混乱、ちょっと待て…どういうコトだ?
フェイに好きって言われてキスされてる!?
コイツ俺が嫌がるコトならなんでもする奴だけど…今まで好きなんて聞いたコトなかった
それは本心なのか?ただの嫌がらせなのか?
わからない…でも、俺は……俺も、フェイのコト…ちょっとは好きかもって最近思ってて
俺はフェイの背中に手を回して抱き締め返す
この前はそれをするとフェイに突き放されて、なんだコイツって思ったけど
この瞬間は違った
フェイは応えるように俺を抱き締める腕を強めた
本当に…フェイは……俺のコト好きなんだ
いつから?いつも…嫌なコトしていじめてくるくせに……
愛する人がいるって言ってたの…
ってか、セリカのコトが好きなんじゃなかったのか
いやセリカが無理だから俺を代わりに……なんて考えてると、心の中を読まれたのかってタイミングで唇を軽く噛まれる
違うな…フェイは本当に俺を……
「……セリ様…もっと……いいですか?」
唇が離れて囁かれ、俺はフェイを突き放す
「……よくない…俺って尻軽クソビッチ」
珍しく簡単に離してくれて俺はフェイから距離を取った
香月と和彦と恋人で、レイとのコトもあるのに……フェイまで!?ってならねぇか!?
4人と関係持つって!?しかも全員男
香月と和彦と恋人になる時に、俺はそうあるべきだって香月と和彦に言われ2人とレイの理解と納得があったとしてもさすがに節操無さすぎるだろ!?
「何をいまさら、それにセリ様は皆のものですから誰か1人は許されませんよ」
「わかってるし、そうだけど……俺だって納得してるけどさ
いや納得させられた……」
「開き直ればよろしいのに」
「開き直るって……まぁ香月も和彦もレイも2人っきりの時は目の前の人だけを考えて愛してるけど
まぁいいか尻軽でも、最近そんな自分にも慣れてきたし
でも5人目はないからな!!」
「フラグですか?」
「心当たりすらねぇよ!!」
「そうですね、生死の神の和彦様に魔王の香月様の恋人のセリ様ですから他にそういないでしょう
私のようなただの人間がセリ様の瞳に映るだけ奇跡かもしれません」
フェイにまた距離を縮められて後ずさりしようとしたら手を掴まれ引き寄せられる
オマエは普通の人間ではない、ヤバい人間ってそこ自覚しろ
「……気持ちを伝えたら…止まれないです
今はもっとセリ様がほしいです
嫌だと言っても……」
フェイは最初から最悪で今までも最悪で、身体は拒絶するのが癖になってるかのように引いてしまう
なのに、最近はフェイに触られても嫌じゃないって気持ちがあって心と身体が矛盾する
「ま、待て…さっきまで和彦のコトで落ち込んでたじゃん
それに和彦の言うコトは絶対ならどうするんだよ、こんなコトしてる場合か!
オマエが言ったんだぞ、殺されるかもしれないって」
「このまま駆け落ちでもします?
そしたら和彦様は激怒してそれこそ私を本当に殺しに来るでしょうね
でも、今生でしかセリ様に触れられないのならそれでも構いません
今度は片腕ではなく、命を失うかもしれませんが」
「急に色ボケてんじゃねぇぞ!?」
いつも意地悪か嫌みしか言って来ないフェイに調子が狂わされる
そんな素直に言われたら………誰オマエ?って思ってる
「よくねぇよ!?俺は嫌だ…フェイが殺されるのも、オマエと駆け落ちなんかしたら他のみんなに会えなくなるじゃん
俺はオマエだけのもんじゃねぇぞ…フェイがそう言ったんだ」
「そうですね……」
わかってくれたか!?って、たぶんフェイは聞いていない
フェイは俺を抱き上げるとベットへ移動する
ま…マズい……このままじゃ……
フェイのコトは嫌じゃねぇけど、今はそんなコトより和彦にわかってもらう方が先だろ
それにフェイが実は俺のコトが好きだって知って、どんな風に接していいか、受け止めていいか混乱してる
自分の気持ちに整理付いてねぇのに流されたら……自分がどうなるかわかんねぇ
フェイに押し倒されて強引にキスされて、その手が俺の太ももを撫でる
フェイの唇が離れると足を掴まれた
「…いつも足を出して、私を誘ってるんですか?」
「別に誘ってねぇ!?」
確かに動きやすいからっていつもショートパンツを好んで足出してるぞ、でもそれは決してオマエの気を引くとかなくて俺の好みだ
ニーハイにするか膝を出すかはその時の気分
部屋の中では靴下脱いでるコトの方が多いけど
「セリ様の小さな足好きなんですよね」
薄々足フェチなんだろうなってのは気付いてたが…やっぱりそうなのか
小さい足に昔はちょっとコンプレックスだった
今はみんなが好きって言ってくれるから、良いかなって思えてきたんだ
女の子のセリカは小さな足も可愛いんだけど
「触んな……恥ずかしいからって痛い!?何すんだ!?」
フェイは俺の足を触りながら眺めていたのに、急に足裏のめっちゃ痛いツボを押してきた
「何って、セリ様が痛がる事をしてるんです」
「オマエアホ!?わかっててやんのか!?おっ!?喧嘩か!?」
蹴り返そうとするがフェイの力に敵うハズもなく、俺の反応を楽しむかのようにフェイはしつこかった
「あっ…!痛い!!やめて!?めっちゃ痛い!!冗談抜きで……!痛いってフェイっ…!!」
痛がれば痛がるほどフェイを喜ばすんだってわかってても痛いもんは痛い
「嫌…痛いのやめて……お願い…」
我慢の限界で涙まで出てくる
俺が泣くとフェイは手を止めた
泣くまでやるとかクソすぎだろ
「…酷い……フェイなんて……嫌い」
「興奮します…痛がって泣くセリ様も、私を嫌うセリ様も、たまらなく愛しいです」
うーん…知ってた、そういう奴だって
だから嫌いなんだよオマエは!!
最近フェイが優しかったから勘違いしてた、本来のフェイは最悪なんだってコトに
「思いが通じ合った記念すべき夜ですね、今夜はたっぷり楽しみましょう」
フェイが俺の頬に手を伸ばすからその手を払いのける
「こらこら待てや!
一瞬でオマエへの好感度マイナスなんだが、それでよく俺がオマエを受け入れると思ったな
それに、オマエはレイにシンを倒すまで寝取らないって約束してただろ
約束破るなんてダセェぞ」
「事情が変わりましたからね…
会えなくなるなら、私の気持ちを優先してはいけませんか?」
……フェイはもう俺がどんな奴なのかってのをよくわかっている
酷いコトをされても、嫌なコトをされても、フェイが俺を好きって知ってしまったら……
たまに優しいし…いざって時は助けてくれるし……
だから、そんな風に言われたら…心が揺れる
俺ってホント流されてる気がする!!
「……いつから好きなんて」
「和彦様がセリ様を恋人として連れて来た日から」
「めっちゃ最初じゃんそれ!?いつも意地悪して酷いコトするのに!?」
フェイに好きな人がいるってのは聞いていたが…まさか俺のコトだったなんて……
そんな最初から好きなのに最初から酷いコトして来たのかコイツ、どういう神経してんだ
フェイと会った時に和彦は男同士なのに隠すコトもなく俺を恋人だと紹介した
あの時は、えっスゲーさらっと言ってるって男らしい和彦をちょっとだけ尊敬した
俺なんて幼なじみに和彦との関係を言えなかったし隠してた…(バレたけど)
あの頃の俺は和彦のコトめっちゃ嫌いだったけどな
「自分の主人の恋人なら誰でもよかったんじゃ…」
「和彦様はセリ様以外を恋人にした事はありません
それに、貴方が和彦様の恋人でなかったら出会えていないでしょう」
「自分の好きな人まで和彦様かい、フェイは和彦以外で何か自分ってもんねぇのか?」
「私は和彦様が全てです、生きるのも死ぬのも」
そういや和彦のためなら死ねるって言ってたか、いくら親みたいな存在って言っても盲目すぎないか
「それじゃあ、そんな和彦に逆らって大丈夫か?」
「私は和彦様が全てですよ
私は和彦様に自分をわかってほしかっただけです」
なんとなくわかるようなわかんねぇような…
フェイにとって和彦は好きな人の俺より上ってコトか
立派な忠誠心をお持ちで
とにかく和彦の気が引きたいんだろうな、ガキみてぇな奴…って口に出したら何されるかわかんねぇから黙っとこ
まぁ和彦のコトだからその辺わかってそうだが
「妬きます?」
「いや、俺はオマエのコトそんな妬くほど好きじゃねぇもん」
「でも愛してるのはセリ様だけですよ」
「だから妬いてねぇって、自惚れんな」
調子乗ってる感じがイラッとして目の前のフェイを押しのけようとしたら両手を掴まれベットに押し付けられる
「こんな事は和彦様にしたいと思いませんから」
「わ、わかった!オマエの言いたいコトはよーくわかったから…」
俺の嫌なんてフェイが聞いてくれるワケない
フェイの唇が耳に触れて軽く噛まれる
「んっ…」
耳にキスされながらフェイの手が俺の服をめくっていく
指が優しく肌に触れて身体が熱くなってしまう
そんなとこ…触られたら……
「はっ…ぁっ……フェ、イ……」
「可愛らしい声ですね……それを聞いただけでどうにかなってしまいそうです」
「嫌……やめて…俺はそんなつもりじゃ…」
手に力が入らなくて弱々しく抵抗する
当たり前のようにフェイに片手で両手首を拘束されてしまう
「わざとですか?私は嫌がられる方が興奮する事を知っていますよね
セリ様がそんなつもりじゃないと言っても、私は犯したくてたまらないのです」
フェイの耳元で囁くような声にゾクゾクする……
俺は……フェイに犯されたいって…思ってる…?
こんなに興奮するなんて……
フェイにまた唇へとキスされたと思ったら下唇を強く噛まれて血がにじむ
「ぃた!?はっ?何?酷くねぇか…」
フェイに拘束された手が離れて俺は自分の口に手を当てて痛みを我慢する
血の味と痛みでちょっと涙が出た
痛みに耐えていると、フェイは目の前で服を脱ぎだして…その身体つきにドキッとして顔が熱くなる
フェイも……良い身体つき……
抱かれたくなるような……それと同時になんかムカつく…
香月も和彦もレイも、男として完璧でスゲー羨ましい…
俺なんて筋肉も付きにくいし華奢で小柄で男らしさなんて皆無だから…妬ましいぞ……
身長のせいだって言い訳してたが
和彦は俺よりちょっと身長低いのに、なんであんなに完璧な身体つきしてるんだ……くそぉ……言い訳にもならねぇ
「セリ様も脱がしてあげ」
「嫌だ!!寄るな!!」
フェイの手が伸びて全力で拒絶する
「急にどうしたんですか…さっきと違って本気の嫌がりようですけど」
「見られたくない……フェイみたいに良い身体つきじゃないもん……」
「何度も見てるのにいまさら…
私はセリ様の身体つき好きですよ
確かに男らしくはないかもしれませんが、細いのに綺麗だと見惚れるような身体つきですし肌も白くて綺麗ですから」
「そ、そうかな……」
褒められて嬉しい……
みんな俺を綺麗だって好きだって言ってくれる…
俺から見ればみんなの方が男らしくて羨ましいなって思うのに
自分で服を脱いで……
「セリ様……そんなに…私に抱かれたいと…?」
フェイが顔を真っ赤にして俺から目を逸らす
「ハッ!?えっ…ち、違う!!自分がどんな身体つきだったかなって」
毎日風呂入った時とか見てるのに、俺は自分で自分の身体つきの良さとかわかんないし
みんなが好きって言うから……ちゃんと自分の身体つき見てみようかなって
「鏡の前でします?」
「絶対嫌だ」
「セリ様は自分がどんな風になるか見た事ありますか?」
そんなの絶対見たくない…男から攻められてる自分を見て何を思えばいいんだよ
「いえ…そもそもそんな余裕は与えません」
フェイの笑みが怖くて俺は逃げようと服を掴もうとしたら足を掴まれひっくり返される
「離せ…!?」
蹴ろうとしたら、フェイは舌を出して俺の足先を舐める
「な……やめ…」
指と指の間に熱い舌が這って……何これ…気持ちいい……
足の親指から順番にフェイの口の中に、舌と歯で刺激される
「うっ…あっ…フェイ……!」
…熱くてぬるぬるしてる……快感が…足から全身に巡る
足を舐められたコトははじめてじゃないが…
フェイの足への執着が、ゾクゾクと俺の身体を痺れさせる
「…本当に…小さくて可愛らしい足ですね…」
フェイは眺めるようにして俺の足を顔の近くに持っていくから、思わず蹴り離そうとしたらグッと力を入れられて止められてしまう
「セリ様の足は好きですが、蹴られたり踏まれたりが好きなわけではありませんから」
「俺だってオマエには足舐められるのは嫌だよ」
「相変わらず生意気な事を言う…もう優しくしなくていいようですね」
そう言ってフェイはまた俺の足の指を口の中に入れると強く噛んだ
「いたーい!?痛い!!離して!?」
珍しくフェイはすぐに離してくれたが、足を広げられて内ももにも噛み付いてきた
「そこも痛いって!!何すんだよ!?このバカ!!」
「セリ様が私を蹴ろうとしたので仕返しに」
くっきりと内ももにフェイの噛み跡が付いて血が滲む
「結果蹴ってないだろ!?」
確かにってフェイは呟くと、噛み跡を舌で優しく舐められる
鈍い痛みが変に快感になる…フェイの舌…気持ちいい…かも
噛まれて痛いのに…気持ちいいなんて…
噛み跡の少し上くらいにキスされてそのまま強く吸われる
「…セリ様の肌はとても白いので、目立ちますね」
「あっ…バカ…」
痛いのと気持ちいいのと…身体が熱い……息が上がる…
俺の言葉ごと奪うようにフェイは俺の唇を奪って、長く激しいキスが続く……
俺はフェイの背中へと手を回す
酷い奴なのに、痛いコトされるのに……俺はもうフェイのコトがほしくなっていた
「セリ様…嫌だと言わないんですか?」
あの時みたいに力が抜けて、フェイの手が俺の手を掴んでお互いの指を絡める
「……嫌って言ったら……オマエ喜ぶじゃん
喜ばせたくねぇからな……はぁ…あっ……」
またフェイと繋がるなんて……
そりゃいつかはまた嫌がらせで無理矢理やられるんだろうなとは思っていたが…
まさか好きって言われるなんて思ってもみなかった
そして、昔の俺からじゃ考えられない…フェイを受け入れるなんて
なんで俺に意地悪したりするのかはよくわからないが、フェイは俺を何度か助けてくれていたから
嫌いなのに、そんなの……嫌いになりきれないよな
「セリ様の中…熱い……」
「…フェイのも……熱くて……ムカつくけど、気持ちいいよ……」
ムカつくってところだけ一瞬冷静さを取り戻した
「こんなに強く絡みついてくるのに…
ムカつくなんて思えないくらいにしてあげます」
フェイの唇が重なって言葉通り、めちゃくちゃにされては何度も…
それでも、はじめてフェイと心まで繋がったような気がして……
悪くはないな…って思う自分がいた
次の日、フェイと顔を合わせるとなんとなく気まずいかなって思っていたが
すっかりいつもの調子を取り戻していてムカつくコト言われて、俺もいつも通りに接するコトができた
「なぁ…そろそろ本当に帰らねぇか?
俺も一緒に謝ってお願いしてやるからさ」
1年遠くに行けって命令を取り下げるように説得するって俺はフェイに言ったが、フェイもなかなか頑固だ
「帰りませんよ、和彦様が私を理解なさるまで
これから毎晩セリ様を抱いて和彦様に嫌がらせします」
コイツ、ねちっこそうだな…
やってるコトが相手の気を引きたいだけのガキなんだが
「俺を巻き込むな!!毎晩抱かれるか!!」
「レイには悪いですが、今の私の状況なら理解してくれるでしょう」
悪いって気持ちはあるのか
「フェイにとって俺とのエッチは和彦への嫌がらせなんだ…」
その理由は……寂しくて…悲しいな
目をそらし俯いてしまう、するとフェイは立ち上がって俺の前に立つと上に自分の方へ向かせるように顔を手で掬った
「言いましたよね、私はセリ様が好きだと……愛してるのに、和彦様の嫌がらせだけではないです……」
フェイの顔が近付いて…唇が触れそうなタイミングで、ノックなしで部屋のドアが開く
「2人とも、迎えに来たぞ」
ドアの開く音で俺は慌ててフェイから離れようとしたが遅く、入ってきた人に見られてしまう
「か…和彦…!?なんでここが……」
俺が驚くのとは反対にフェイはいつか見つかるとわかっていて冷静だ
そして俺を人質に取るかのようにして素早くナイフを取り出しては俺の喉元に突きつけた
コイツ……俺のコト好きって言ってたのに容赦なし!?
「和彦様……それ以上近付くのであれば、セリ様の喉元を掻き切ります
私に遠くへ行けと言うなら…お望み遠り遠くへ行ってやります
セリ様と一緒に…」
よく考えろ!?オマエは人間だから死んだら遠くじゃなくて1番近くになっちゃうから!!
和彦は生死の神で人間は死ぬと死者の国の住人になるってコトを忘れたか!?
「フェイ、ナイフを捨てろ
セリくんを傷付ける事は許さない」
和彦が一歩近付けば、俺の喉元にナイフが食い込む
待ってーーー!!和彦もこれ以上フェイを刺激しないでくれよ!?
俺も喋りたいのに、息を呑むだけで喉が裂けそうで喋れない
「フェイ…」
和彦の冷たく恐い声にフェイの身が震えるのを感じる
逆効果!?手元狂って切っちゃうんじゃないの!?
微かな痛みが走って、血が首筋を流れる
でも、それ以上は和彦がフェイの手を掴んでナイフを奪い取り俺を離させた
「和彦…あの」
フェイの話も聞いてやってほしいと言う前に、和彦はフェイを壁に叩きつけナイフを持っていた手を壁に押さえつけるとその手の甲にナイフを突き刺す
「セリくん、回復したらフェイの首をはねる」
先読みされて釘を刺され声も出ない
和彦の雰囲気が鋭くて、ただただ恐いと感じる
「オレはお前がセリくんを寝取る事も連れ出した事も、それについては何も言うつもりはなかった
お前の好きにさせた
だが、オレの恋人を人質にオレを脅すとはどういう事だ?
それが主人に対する態度か?
身の程を弁えろ」
ど、どうしよう……
フェイがそこまでしたのは和彦にも原因がある…よな
怒ってる和彦に口出したら黙ってろって言われるかもだけど
「和彦、フェイの話も聞いてやってくれないか?」
「セリくんは黙ってろ」
やっぱり!?
でも、黙らないぞ…
和彦はフェイのコト、気にかけてるし可愛がってる…部下の中でもお気に入りなんだってわかった
だって、和彦はいつもフェイを殺さないから
「黙らない!!フェイは和彦にわかってほしいだけなんだ
オマエに逆らいたいワケじゃなくて、自分のコトをわかってほしいからの行動で
フェイがこんなコトをするのは和彦がちゃんと話を聞いてやらないから…
フェイは和彦のコト心底慕ってるぞ…誰よりも1番なんだよ」
俺の言葉にずっと黙っていたフェイは「余計な事を…」と呟いた
余計なコトって、オマエが素直に言わないのも悪いんじゃん!!
和彦は、ふーっと息を付いて少しだけ雰囲気が柔らかくなった
「セリくん…そんな事は言われなくてもわかっている
オレはフェイがセリくんを人質にした事を怒っているだけだ
それだけは想定外
オレは、フェイの事をわかって言って好きにさせたからな」
「えっ…フェイの事をわかって…?」
和彦はソファに座って、俺にも座るように言う
俺はナイフで壁に手が張り付いたフェイを心配するが、暫く立たせておけって和彦の言葉に何も言えず目の前のソファに座った
「フェイは言われたくないみたいだが、もうセリくんが知っているようにフェイがセリくんを好きな事には気付いていたさ」
鋭い和彦なら気付いてて当然か…
気付いてて寝取られたいからって俺にフェイをあてがおうとしてたのか…どういう神経してんだコイツも
「最初の頃は好きにさせていたが、フェイもいつまでもガキみたいな事してるのもどうかと思ってな
セリくんとの2人の時間が増えたら大人にもなるかと思っていたんだが、それもなかなか
危機感が足りないのかと思ってあんな命令をしてみたんだ」
しかも最初から気付いてて、スゲー余計なお世話!?
でも、和彦は余計なお世話だけどフェイのコト考えてなんだ…その言葉からもフェイのコトを可愛がってるんだってわかる
「それじゃあフェイに1年どっか遠く行けってのは本気じゃないってコト?」
「そうだな、何かと理由を付けて撤回するつもりだった
オレもフェイは手元に置いておきたい」
ふーん…って聞いていて、ふと最初の台詞でフェイが俺を好きなコトを俺が知ったってなんでわかるんだ!?
この場所もタイミングよくバレてるし…結局和彦は最初からわかって状況も把握してたってコトなのか!?
「フェイに好きって言われて、フェイとのセックスは気持ちよかったか?」
和彦は身を乗り出し俺の顔を掴んで自分の方へと引き寄せる
「あっ…全部…知って……?」
「オレは直接見ていないが、全て報告は受けているよ
セリくんは本当にオレを満足させてくれるな
寝取られて興奮した」
急に恥ずかしさがこみ上げる
ずっと前から和彦は俺にフェイをすすめてきて、俺は絶対にフェイだけはない!なんて言ってたのに……
和彦の思い通りになるなんて……
満足と嬉しそうで意地悪な顔の和彦に…俺はただただ自分が和彦の色に染まってるんだと改めて思い知らされた
「それは…俺にこのままフェイも恋人にしろって言うつもりか?」
「それはフェイ次第だ」
和彦はフェイに近付き、壁に張り付いた手からナイフを引き抜いた
大量に溢れ流れる血が痛々しく…フェイはその手を反対の手で押さえる
「私は……セリ様の恋人にはなれません
セリ様は和彦様の恋人です…私は和彦様の部下なのです
主人の恋人を寝取りはしても、恋人など……私は身の程を弁えています」
フェイと目が合う、その目に宿る言葉は偽り
和彦はフェイを可愛がっている…だが、和彦は残酷な性格だった
俺には絶対に見せなかったその一面がチラつく
最初から和彦はフェイに俺を奪われる気はまったくなく、恋人と言う自分と同列を認めるつもりもなかった
自分が寝取られフェチだからと、可愛がってるフェイの気持ちを利用しただけ
それ以上は決して許さない
フェイ次第なんて言葉すら和彦の思い通りだ
和彦にとってフェイは、香月やレイとは違う
それなのに、フェイを追い詰めて俺に告白までさせた
矛盾しているように見えて、きっと和彦の中ではそれも自分の思い通りなんだ
俺はフェイのコトを恋人と思うほど好きではなかった
少なからず気になって好きな気持ちもあるにはある
香月や和彦、レイほどの気持ちがないだけで
でも、俺は情に流されやすい男だからな…和彦がそうだってんなら
俺はフェイをもっと好きになるかもしれん
「ふん…別に俺もフェイと恋人になりたいと思ってねぇよ
話は終わりだ、帰るんだろ?
その前にフェイの怪我治していいか?
もうフェイもちゃんと反省してるみたいだし」
「駄目だ」
和彦は言った事は必ずやる奴だ、勝手に治せばフェイの首がはねられちまう
「フェイ、怪我が治ったらオレとセリくんで3Pしようか」
俯いていたフェイが和彦の言葉で顔を上げた
「します!」
急に目を輝かせて元気になってる!?
この2人は……よくわからねぇ……
「ハッ!?勝手に決めんな!俺は嫌だぞ!また俺だけ大変でしんどいやつ!!」
和彦は俺の前に立つとさっきナイフでちょびっと切れた首筋の傷を舐めた
ビックリして突き放そうとしたが、和彦に押さえつけられてそのまま身体がゾクゾクする
「ん……いた…っ」
傷口を吸われて赤い跡も付く
「…オレもやっと手の傷が治ってきた所だ
久しぶりのセリくんを抱くのに、楽しみが必要だろ?」
「それで前大変なコトになっただろ!?」
「そうか、なら3Pの前の晩に先にセリくんを抱くよ」
「オマエいつもそればっか…まぁそれならいいか」
「……………。」
「……なんだよ?」
「いつも嫌がるのに」
「あぁ…嫌…だけど、嫌じゃないから……
和彦がしたいコトもたまには付き合うよ」
俺も日々成長してるんだぞ、間違った成長かもしれないが……
前は嫌がったコトも、好きなら受け入れてやりたいし
それになんやかんや俺も3P嫌いじゃない…
でもやっぱりよく考えたら、あの2人を相手にするのはキツすぎて……やっぱ嫌かもしれん
俺はオマエがどんなに残酷でも好きだから、愛してる気持ちは変わらない
和彦のコトは大好きだ…
でも和彦は俺が情に流される男だってコト忘れてるか
それともわかっててやってるのか……
死者の国に帰ると、和彦が戻ってこいって言うから今日からまた和彦の部屋で生活するコトになる
勝手な奴だな…和彦は、まぁそういうとこも好きだけどさ
その前に俺はフェイの様子を見に部屋を訪ねた
「フェイ、元気か?」
なんとなくまだフェイはいつもの調子を取り戻していないような気がして、少し気まずい
「手の傷はどうだ?和彦が使ってた薬が残ってるから塗ってやるよ」
和彦の手の傷はこれで速く治ったし、この薬めっちゃ効くからと持ってきていて
俺はフェイの手を掴んだが、フェイはその手を引っ込めた
「優しくするのはやめてください」
またそんなコト言って…
フェイの本当の気持ちを聞いてから、その態度も素直じゃないだけなんだとわかる
「いいから、見せてみろ」
無理にフェイの手を掴んで傷口を確認する
また意地を張って手を引っ込められるかと思ったが、今度は大人しかった
「……酷い怪我だな…今も痛いんじゃないか?」
ナイフが貫通して穴が空いてるんだ…そんなすぐには治らない
「これくらいの痛みは平気です」
治すと和彦が許さないから俺は回復魔法でフェイの痛みをなくす
「……余計な事を…」
手の痛みがなくなったフェイはすぐに俺が回復魔法を使ったんだと気付く
痛みをなくすだけなら和彦にもバレない
それに俺が傍にいる時だけだから、離れたらフェイはまた痛みが戻る
「薬塗る時って触れるから痛いじゃん、痛くないようにしてるんだから感謝しろや」
さっさとフェイの傷口に薬を塗って包帯を巻き直す………ミトンみたいな手になっちゃった……
「不器用ですね」
「……うるせぇな…」
暫く沈黙が続いて、また気まずくなってきた…
俺はいつもフェイとどんな会話してただろうか?
いつもフェイがムカつくコト言ってそれに俺が反応してって感じで…だからフェイが黙ってると会話にならないのか
「もう用はないのでしょう?お帰りください」
「用は……ある」
俺はフェイの前に立って顔を覗き込んだ
するとフェイは目に見えて顔を真っ赤にして目をそらす
いつもそれはフェイが怒ったんだって思ってたのに、今はそんなに俺のコト好きなのかってこっちまで照れてしまう
「あの日フェイの気持ちを聞いて、俺はどう接したらいいかわからん
フェイは俺を恋人にしたいと思ってないんだろ
じゃあ俺達の関係って?」
「私の片想いです、セリ様はいつも通り私を嫌いで…両想いでもないのに恋人になる事はありえません」
そういうコト……俺のコト勝手に決められるのはムカつくな
確かに俺はフェイのコト嫌いだ、でも好きでもある
だから聞いてるのに
俺はフェイの肩に手を置く
「じゃあ…俺がオマエのコト好きって言ったら…?」
俺が自分からフェイにこんなコトする日が来るなんて思いもしなかった
フェイの唇へ自分の唇を重ねようと近付くと、部屋のドアがノックされて俺は寸前の所で止まりフェイから離れた
「フェイ、頼まれていた物を持ってき…セリ、君もいたのかい」
レイは俺を見るとパッと笑顔になる
フェイに頼まれた物をテーブルに置いてレイは俺の隣へと座った
「今日でフェイとの同室は終わり、和彦の部屋に戻るコトになったんだ」
「そうか、荷物があるなら運ぶのを手伝うよ」
「ありがとうレイ、でもそんなにないし軽いから俺1人で大丈夫」
レイと普通の会話をしている所にフェイは割って入ってきた
「レイ…私はセリ様に告白しました」
その一言でレイと俺は黙り込む
レイはなんて?って聞き返す顔をして、俺はそれ今言うのか!?って急でビックリした
「セリ様に好きだと言ったのです」
2回目でレイは理解する
そして、複雑だけど…と片手を顔に当てて頭を整理するように考えながら話す
「フェイが…セリを好きな事は知っていたが……告白するとは思っていなかったよ
それで、フェイはどうするんだい?」
聞かれてフェイはその日のコトを話した、和彦のコトも一緒に
「私はセリ様の恋人にはなれませんよ
今のレイと同じで……思っていたより、辛いものですね……」
「……和彦さんか…」
レイ……さっきから黙って聞いていたが、理解ありすぎねぇ!?心広いと言うか……
ちょっと前のレイなら怒り狂って殺してるぞ!?
そんなにフェイのコト認めてて…いつの間にか大切な友人なんだな…
「ん?ちょっと待て、和彦さんの前に……セリに手を出したって……?
フェイ…約束が違うじゃないか」
と思っていたらレイの雰囲気が殺意へと切り替わる
「守ろうと思っていましたよ、シンを倒すまでは手を出さないって
しかし、もう二度と会えないって状況でしたからそんな約束を守る余裕なんてありませんでしたし
レイこそ事情が変わってセリ様の身体を契約で楽しんでいるではありませんか
シンを倒すのはいつになるんですか?
先延ばしにするつもりなんでしょう?
そうなれば、それこそ私はセリ様に手を出せず終わりです
私だけがずっと我慢はおかしな話でしょう」
「………フェイの言う事はもっともだが……
いや……嫌だが……
事情が変わったのは…そうだな
約束なんて守ってたら……仕方ないか」
いいの!?あのレイが俺を他の男に許すなんて……誰だオマエ?
でも、レイは俺の肩を抱くとそのまま自分の方へ引き寄せる
「つまりフェイはこれから遠慮せずにセリに手を出すって事だな
だが、簡単には渡さない
今のオレはフェイに勝てはしないが、黙って見てるだけはないぞ」
「レイは何も出来ない無力な自分に絶望する事になりますね」
2人の間でしかわからない仲があるんだろうな~と他人事のように見る
フェイはレイから俺へと視線を移す
「…セリ様は、これまで通り私の事が嫌いで私に無理矢理犯されてくださいね」
いつもの俺なら嫌だと言うのに
この言葉はさっきの返事に聞こえた
好きになるなって、今まで通り嫌いでいろって…無理言うよ……
それがフェイと俺の関係…言葉では表せられない
だってフェイと俺は友達でもないのだから
「やれるもんならやってみろ」
「強気ですね、泣いても許さないです」
いいか、これで
フェイがいつも通りに俺に接するなら、俺はそれを受け入れる
フェイを受け入れて…これからも犯されるよ……
それがフェイなら全部受け入れる
その日の夜、和彦はやっぱり遅くに帰ってくる
「せっかく和彦の部屋に帰ってきたのに、俺いつも1人じゃん」
「すまないセリくん、夏祭りが終わるまでは忙しいかもしれん」
数日後か…夏祭りは楽しみだけど、和彦に構ってもらえないのは寂しいぞ
夏祭りは2日間で、初日は天使達子供と結夢ちゃんと一緒に行く約束をしている
和彦とフェイは当然どっちも忙しいし、夜のレイに俺は会えないからフェイの手伝いするってさ
俺も手伝うぞって言ったけど、子供達の保護者として連れて行ってやれと
確かに天使とマールミとローズは子供だし、祭りの日は外から沢山の人が入ってくる
その中には悪い奴らだっている可能性はなくはない
見回りは骸骨天使がしてくれるみたいだが、それでも子供達だけってのは心配だからな
2日目はセレンとフィオーラが見てくれるみたいだから、俺は……えっもしかしてぼっち?
この俺が?この超モテる俺が!?!?
1人部屋で寂しく花火見るか……
香月は誘ってないから夏祭り知らないし…
風の噂で知ってるかもしれないけどさ
「フェイと同室じゃなくなって、寂しいか?」
「へっ?別に寂しくなんかねぇけど?
俺は和彦に構ってもらえなくて寂しいんだ」
和彦は俺の隣へとベットに腰掛ける
さすがの和彦も何日も寝ていないのはキツいみたいで、今日はゆっくり寝かせてやりたい
「オレはこれでもフェイが自分に向き合って前に進んでくれた事は嬉しいんだ」
和彦はやっぱりフェイを可愛がってる
和彦にとってきちんと育てたつもりだったが、フェイだって人間だ
全て和彦の思い通りに育つワケじゃない
「好きになった相手がセリくんでなければ認めたんだがな
寝取られるのは大歓迎でも、まさか本気で好きになるなんて」
思わなかったワケか
「セリくんが魅力すぎたか
フェイは弁えている
でも、セリくんにはこれからもフェイの事を頼むよ」
そう言って和彦は俺にキスをする
これからもってつい最近までは嫌でしたけど!?
和彦って…本当に勝手な奴……
ここまでは許すが、ここからは許さないなんて
「…他の男の話してキスするか普通?
頼まれたって、俺はフェイのコトは嫌いだから
これからも今まで通り何も変わらねぇよ」
俺はね…フェイの気持ちを汲んでいつも通りだ
「そうか」
深く聞いてこないけど、和彦は俺の全てを見透かしているような気がする
「夏祭り終わったらどっか連れてって」
「いいよ、休みを取るからどこでも連れて行く」
和彦に頭を撫でられると嬉しい
デートの約束をしてそれを楽しみに眠りにつく
次の日、秋のコンサートに向けて歌のレッスンがある
ダンスのレッスンは美紀先生の所だが、歌のレッスンだけの時は音楽室だ
いつの間にかレイは自分専用の音楽室を持っていた
和彦もレイの音楽の才能は認めてるから必要だと作ってくれたんだろう
和彦が俺以外に何かを与えるなんてめったにない
それくらいレイは音楽の天才なんだ
音楽室でレイと2人っきり…なんだか久しぶりな気がする
最近はレイと会う時は契約に譲るコトの方が多かったからかな
「いくつか新しい曲を作ってみたんだが、どの曲を次のコンサートで歌いたい?」
全部素敵すぎて決められない
レイの曲を歌えるってコトが幸せすぎて聴かせてもらったがずっと感動してた
「そうだな…最初の曲は冬っぽい感じがしたからそれは今度の楽しみにしようかな」
打ち合わせも交えながら、歌のレッスンにも入る
曲が素敵すぎなだけじゃなく、ちゃんと俺が歌いやすいように作ってくれてるところにも愛を感じる
「最後の曲、なんとなくだがちょっと子供っぽくないか?」
可愛い子供っぽい曲なのに、やっぱりレイ特有の切ない感じがまためちゃくちゃ良い
「……………。」
「えっ?」
「その……」
「ん?」
どうした!?いつもハッキリ言うレイなのに、なんとなく言いづらそうにしてる
「オレは天使が怖いし苦手だ」
知ってる、なんか異様に怖れてるよな
天使は中身が子供なのに見た目が俺にそっくりだから、俺に手を出すコトに罪の意識を感じさせるとかなんとか言って
「天使が長い間帰っていた時があっただろう?
その直前に天使の世界のいけすかない男が、もう二度とこちらの世界には帰さないような意地悪な言い方をされてだな」
あーなんか言ってたような気がする
イングヴェィにそっくりな人だっけ?
天使の世界のセリカにそっくりなせりかさんの旦那様になった人
まぁ……セリカではないとは言え、レイは嫌うだろうなその人
「もう二度と会えないって…別に嫌いなわけではなかったし
天使のダンスに文句言ってしまったから……あの子でも歌って踊れるような曲を…
気付いていたら作っていたんだ」
「そうなんだ」
「何より…この可愛い曲でセリが可愛く踊ってるのを想像したらそれも見たい!!」
ん…?
「いつもも可愛いけどカッコ可愛いを意識してるから、この曲ならもっと可愛い可愛すぎてどうにかなるかもしれない!!」
天使の話どこ行った!?!?!?
「次のコンサートでこの曲を歌って踊ってほしい」
「天使が歌って踊るんじゃないのか!?」
「ガキは別でお遊戯会でもやってろ」
「急に冷たいじゃん!?帰ってきてホッとしてるんだろうけど、照れ隠しがツンデレだぞ!?」
「オレはセリ以外どうでもいい」
フェイと友達になって、俺への依存はちょっとはマシになったかと思ったがレイはレイだった
「まぁでもこの曲のダンスは簡単だし、俺が教えてもいいな」
「見たい、2倍可愛い、セリカも含めたら3倍可愛くなる」
「結局天使のコトも見たいんじゃん」
そんな話の中、窓から日が暮れようとしているコトに気付く
「そろそろ夜になるか…じゃあ今日はこの辺で」
歌のレッスンはおしまいと俺は音楽室を出ようとしたが、レイに手を掴まれる
振り向くとそのままキスされて引き寄せられた
「……もっと一緒にいたい…離したくないが……仕方ないか」
レイの腕が強く俺を抱き締めるから、俺もレイの背中に手を回して抱き締め返す
「最近契約とばかり仲が良いから俺のコトはもうどうでもいいのかと思った」
「そんな事はないぞ!?
契約はオレの空想で願望で……
セリはオレの現実の好きな人だ……」
わかってるよ、安心したかった
俺はまだちゃんとレイに愛されてるんだなって
「今夜は…帰りたくないな」
夜にレイと会えないのはわかってる……
いつまでも待つって覚悟もあった
…来世でもいいって……思うくらい
でも、こうしてレイに抱き締められると……もっと…愛されたい
想いが募っていく
俺の言葉にレイは俺の肩を掴んで突き放した
「セリ…嬉しいが……駄目だ
その言葉も気持ちも……セリの本心じゃないかもしれないってわかっているだろう?
君を傷付けるかもしれないんだ…わかってくれるかい?」
このレイへの気持ちが…大悪魔シンに植え付けられた偽の愛かもしれないって……
そんなの……絶対違うって言い切れるのに
それすらもシンの仕業かもしれないって…レイは俺を気遣ってくれる
大切にしてくれてるのに
なのに…
「……契約が…羨ましい……
帰るよ……」
契約はレイに愛してもらえる…俺の身体で
レイが俺に愛されたいって空想の具現化
願いそのもの、悪魔の契約
契約からすれば、レイが好きなのは俺だから俺を羨ましく思ってるんだろうけど
今の状況なら、俺は契約の方が羨ましいよ
「セリ…オレはセリしか愛していない」
わかってる…契約はレイが理想とする俺だ
「うん…ちょっと寂しくなっただけ
ちゃんとわかってるから
じゃあね……」
そう言って、でも俺はレイの目を見れなかった
そのまま音楽室を出る
わかってるよ……全部わかってるけど
でも、なんでか…好きだから辛いって思う
これもシンのせいなのかもしれないが
俺はちゃんと自分の気持ちは変わらないって知ってるのにな
今夜は…オマエに任せるよ
……そう言われて、俺だって困るんだが
勇者は意識引きこもって契約の俺に身体を貸すか
俺はレイに会いたい気持ちはあるが、さっきの感じでレイに合わせる顔なんてねぇぞ!?気まずいだろ!?
レイは契約の俺を受け入れてはくれたが、勇者至上主義なのは変わらねぇから
オマエにそんな顔させて俺と会うなんて無理だって
今夜は俺も大人しく帰るしかねぇってコトだ
…の前に、腹減ったな
レッスンの後だし、なんか食いに行くか
何食べようかなって考えながら音楽室の前から移動しようとした時、ドアが開く
「セリ!待ってくれ!そのまま帰したくない…」
レイが追い掛けてきた?俺の姿を見ると手を掴まれる
「まだ夜になるには少しだけ時間があるから」
「ちょっと待ってくれレイ、俺は契約だ」
「契約…どうしてお前が」
「勇者は引きこもった、今夜は俺の好きにしてくれって
でも、こんな状況で俺もレイに会うのは気まずいって思って…」
レイが…手を掴んでくれるの嬉しい…
と思ってたら俺が契約だと知ると手を離された
はいショックー
「そうか……セリ、オレがいつも傷付けてしまっているんだな」
「いや…まぁそうかもだが、全部シンのやったコトだしオマエ達が気にするコトじゃない
時が来れば上手くいく話だ
いちいち落ち込んだりするなってコト、とは言っても好きな時って無駄に不安定になるよな」
「……契約…お前って良い奴なんだな」
「………レイの理想なんだから……当たり前だもん……」
良い奴って言われて素直に嬉しい
「ちゃんと…名前で呼んで……」
もっと要求
「そうだな、悪かったセリ」
う、嬉しい……勝手に口元がにやけてくる
レイ…いつも好き好き…大好き……
「レッスンの後だし腹が減ってるだろう?何が食べたい?」
「えっ……いいの?」
レイからの嬉しいお誘い、レイとご飯食べ行くの!?
「もちろんさ、好きなもの何でも
セリが契約に代わったと言う事はオレが傷付けたのもあるだろうが、契約とでもいいから身体は一緒にいたいって事だとも思うから
本当にオレに会いたくないなら、セリなら部屋に帰ってご飯も食べずに寝る」
さすが勇者のコトならなんでも知ってるな
勇者は俺が羨ましいって言うが、やっぱり本命の本物の勇者の方が羨ましいって…
俺はレイとこうして夜も会えるかもしれないが、いつも勇者の話をするんだからさ
「ほらセリ、早く行かないと店が混むぞ」
そう言ってレイは俺の手をまた掴んで引っ張ってくれる
羨ましい…けど、今のレイは俺を見てくれてる
だから嬉しくて幸せ、レイの手を握り返す
レイと一緒ならどこだっていいし、何でもいい
嫌いな食べ物以外(いっぱいある)
「どこがいいかな…」
街へ出ると、最近の死者の国もだんだんとお店が増えてきて迷うくらいにはなる
街の中を歩きながら何が食べたいと言うか
「綺麗な夜景が見える個室のお店でレイと2人っきりになれる空間ならどこでも」
って言うとレイは、ふふっと笑った
「はは、セリならトマトラーメンが食べたいって言うのに」
「えっ!?ウソ!?俺間違えた!?変だな…俺はレイの理想のセリのハズなのに…」
「いや、何も間違えていないさ
お前の言葉はオレの理想通り、セリと2人っきりになれる空間で静かに食事したいって思うから」
本物とは違う所もある…だって俺はレイの理想の勇者だからだ
そっか、レイと2人っきりになるより本当に自分が食べたいもの言うなんて、まだまだだな勇者は
俺はレイの理想の人…ふふん
死者の国で綺麗な夜景が見えるお店はまだなかったが、良い感じの個室のお店で食事するコトになった
うんうん、これこれ、レイと2人っきりの空間!!
ご飯も美味しいし、デザートなんだろ?
まだ最初の方なのにすぐデザートが気になる
「夜景が見える場所じゃなくてすまないな」
「俺はレイと一緒ならどこでもいいもん
でも、今度は綺麗な夜景が見えるレストランに連れて行ってね」
俺がニッコリ笑うとレイも嬉しそうに笑ってくれる
「約束だ」
今度は夜景が見えるレストラン…その後はホテルでレイにいっぱい愛してもらう…
そんなの考えただけで、幸せすぎて死ぬ……!!
本当に……幸せ……
こうしてレイに俺を見てもらえて…受け入れてもらえて……凄く幸せだよ
だから…
「レイ…俺はいつでもいいよ」
「ん?何がだい?」
もう俺は十分幸せ…幸せになれた
「シンを倒して、今度はレイが本当に幸せになる番だ」
いつ死んでも構わない
「…シンを倒したらお前が消えるって事をわかって言っているのか?」
レイはさっきまで俺に向けてくれていた笑顔を失う
当たり前のコトを言ってるのは動揺してくれてるのかな
「わかってるよ
レイの願いは、契約の俺と恋人ごっこするコトじゃない
本当の願いは勇者の恋人になりたい…愛されたいって話だろ
それを叶えるために、今のシンなら簡単に倒せる
チャンスなんだぞ」
「黙れ…その発言はオレの理想じゃない」
「黙らねぇよ!!
俺はレイに十分すぎるくらいの幸せをもらったんだよ
拒絶されていた俺が、レイに見てもらえて受け入れてもらえて…
この前は…レイに愛してもらえて…死ぬほど幸せだった…
だから…今度はレイが幸せにならなきゃ…なってほしいんだ」
「お前は消えたくないと言ったじゃないか
ずっとオレと一緒にいたいと」
「そうだよ、当たり前じゃん」
「矛盾してる」
「好きだから、矛盾するんだよ…」
もういいとレイは俺の話を聞きたくないと席を立って帰ろうとした
俺は話が終わるまで個室から出さないと先回りして扉の前に立つ
「逃げるな…向き合わなきゃいけないんだよ、いつかは…それが早いか遅いかの違いだ
レイが出来ないって言うなら………俺がシンを倒す」
「馬鹿を言うな!生意気な事ばかり…」
俺の方が年上なんですけど!?
レイが怒ってる…前は凄く怖かったけど
今のレイが怒ってくれるのは…嬉しかった
だから、俺はレイのためなら死ねるって思えるんだよ
レイはそんなコトを望んでない、俺はレイの理想だけど
勇者の性格だから、全てがレイの思い通りにはならない
「俺はレイの空想だから、契約の俺が勇者の中から消えてもレイの中にずっと生きてるってコトだ
いつでも好きな時に会える…レイが俺のコトを考えてくれるだけで」
俺は死んだりしない…勇者の中からレイの中で生き続けるってだけだ……
レイは俺の後ろにある扉に片手をついて、もう片手を俺の頬に触れて唇へとキスをする
「……こうして触れる事が出来なくなるんだぞ」
「それは勇者にしてやって…」
「お前に聞いてるんだ、セリはそれでいいのか?」
ズルいな……キスして……俺の決意を揺らごうとするなんて
嫌だよ……こうして触れ合えるのは俺が勇者の中にいるから出来るコトだもん
でも……
現実でレイと勇者が上手くいかないなら…
レイの幸せのために、俺は存在しちゃいけない……最初から…
「それでいい、言っただろ…十分幸せだって」
「セリは…頑固だったな……
わかった…シンを殺すのはオレがやる
お前は勝手な事をするな、オレがお前を殺す」
「レイに殺されるなら本望だよ…」
レイはシンを殺さないだろうな…
俺は嬉しいよ…死にたくない、死にたくないけど…
レイとずっと一緒にいたい…これからも愛されたい
でも、レイの幸せのためなら俺は死ねるよ
大好きだもん、愛してるもん
俺のレイへの想いは誰にも…勇者にだって負けねぇから
「……帰ろう…和彦さんの部屋まで送る」
「うん……でも、デザート食べたい~…」
「……セリはセリだな」
重い空気もデザートで和む
レイの怒った顔より、今の仕方ないなって笑ってくれる顔の方が大好き
ずっとレイには笑っていてほしい
暫くしてデザートが登場する
ミニパフェ!底に白玉が入ってる!!絶対美味しいやつ!!
「美味しい~っ」
生クリームもバニラのアイスクリームも上品な味わいで口の中が幸せな甘さが広がる
「よかった」
俺が笑うとレイも笑ってくれる
レイの爽やかな笑顔が俺は大好きだ
楽しい時間は過ぎて、レイは俺を和彦の部屋まで送ってくれた
和彦は仕事で遅いから帰ってくるのは俺が寝た後だろうけど…やっぱりレイ以外の部屋は嫌だな
契約の俺に手を出すなんて和彦はしないのわかってるけど、レイ以外の男の部屋に入るのが嫌なんだよ
なかなか部屋に入らない俺に気付いたレイは
「…オレと一緒に寝るかい?」
優しく声をかけてくれた
「いいの…?」
さっき怒らせたから遠慮がちに聞いてしまう
「おいで」
でもレイは優しくしてくれる…嬉しさのあまり思わずレイに抱き付く
そしたら頭を撫でてくれて、また幸せを感じる
レイの部屋に帰ってくるとここが1番落ち着く
だってレイの匂いしかしないもん!レイの良い匂い
一緒にお風呂入って寝る準備もオッケー
「おやすみセリ」
「うんおやすみレイ…」
ベットに入って眠る……前に!!
「おやすみのキスは?」
「……セリはそんな事言わない…」
「レイの願望だぞ?」
「………だから、変に照れる」
と照れながらもレイはおやすみのキスをしてくれる
ふふ満足、幸せ
目を閉じて隣にいるレイのぬくもりを感じながら眠りにつく
「……セリ…嘘をつくのは下手だな
それでいい、なんて泣きそうな顔してたの自分では気付いていないんだろう
オレは……お前がオレの空想でなければ…何も迷う事がなかったのに
悪魔に願ったオレが悪かった……お前は何も悪くないのに
辛い思いをさせて…すまない、セリ」
夢現の中、レイが強く抱き締めてくれてるような感覚に幸せを感じてレイの夢を見る
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