176話『守るための選択』カーニバル編

「タキヤ」

「はいカーニバルくん、只今!!」

用がある時はベルを慣らせば、どこにいてもすっ飛んでくるタキヤ

僕は何故タキヤを呼んだかと言うと、オミノに貰ったチラシを見てタキヤにもそれを見せながら言う

「ここに僕を連れて行け」

見せたチラシはペットのイベントを開催すると言った宣伝用のもの

そのイベントでおやつ詰め放題の言葉に惹かれてだった

タキヤじゃなくてオミノに連れて行ってもらいたいところだが、行動を制限されてる僕は嫌でもコイツの許可が必要だ

それと許可を取るのは簡単だが、タキヤは必ずついて来る

「カーニバルくんが行きたい所へは何処でも連れて行きますよ!!

ペットのイベントですか~、カーニバルくんが1番のアイドルなのは間違いなしですねぇ」

誰だって自分のペットが1番可愛いだろ

でも、僕はオマエのペットじゃないけどな

セリちゃんのペットだから

「おやつ詰め放題…楽しみ…」

「遠出になるので乾燥タイプのご飯多めに持っていかないとですねぇ」

おやつなんてタキヤに言えばなんでも買ってきてくれるが、こういうのは詰め放題ってのが楽しいんだよ

今からワクワクで眠れないかもしれねぇな



そうして僕はタキヤに連れて行って貰ってペットのイベントをやっている街へとやってきた

結構大きな街だな、色んな種類のペットのイベントがエリア毎に分かれていて

天敵である蛇などとは別のエリアでちょっと安心か

僕は蛇が苦手なんだよな…天敵なのもあるが

顔は可愛いんだけど、本能的に怖いって感じてしまう

犬、猫、鳥、爬虫類、小動物…色々

まぁ僕は小動物エリアだな

「あのおもちゃ買って」

小動物エリアに足を踏み入れると、木や藁でできてるおもちゃや、野菜果物の豊富な種類、生タイプも乾燥タイプもあり、小動物を誘惑するものがありすぎてキョロキョロしてしまう

「これですかぁ?」

タキヤは僕の目線近くにある木のおもちゃを手に取る

「ちがーう!その隣の藁のトンネルのやつ!

僕は木より藁の方が好きなんだ」

「どうやって遊ぶんですか?トンネルの中を行ったり来たりですかねぇ」

「1日で破壊すんだよ」

「消耗品!?結構高いですよ!?

カーニバルくんがほしいなら何でも買ってあげますが、1日で破壊…いくつ買えばいいんでしょうかね」

たくさんな

「松ぼっくりのおもちゃ買って」

「かしこまり!!」

今度は牧草コーナーにやってきた

牧草と言っても様々な種類がある、乾燥タイプはお土産にするとして生タイプはここで食べ比べしよう

「食べたい」

「はいどうぞカーニバルくん」

生タイプの牧草を買ってもらって食べ歩きしようとしたら…噛めない

今の僕は人間の姿でいるけど、人間の歯ってなんでこんな噛めないんだ?

人間って木も齧れないもんな

仕方ない、ウサギの姿になろう

「かーわーいーーー!!カーニバルくん可愛いですよ!!食べてるだけで可愛すぎる!!

皆さん見てください!うちの子が可愛すぎるんです!!」

オマエのペットではねぇ

ギャラリーを呼ぶな、鬱陶しい

それでも美味しい生牧草を素麺みたいに食べちゃうぞ

ここのスゲー美味い

周りは珍しいウサギの僕を囲み、全員一致で可愛すぎるでほっこりしてる

まぁここは小動物エリアで小動物好きが来るから、みんな僕のコトが可愛くて好き

「は~美味しかった、さっきの乾燥タイプの牧草たくさん買っといて」

「カーニバルくんのお気に入りとあれば!!」

人間の姿に戻って次のコーナーを見に行く

おやつ詰め放題はまだか?

「おっ?この子めっちゃ可愛い」

ここは小動物のグッズが売られていて、小動物好きの人間達向けだな

小動物本人の僕にはあまり関係ないコーナーかと思って見ていると、ウサギのイラストが描かれたポストカードの前で立ち止まる

この世界ではウサギは貴重で僕達以外には存在しないと言われているが、別世界の生き物として人気は上位にある

「絵ですよ…

こっちの子も可愛いですねぇ」

タキヤは別のウサギの絵を指差した

「あんまり好みじゃないかな」

「何が違うんです!?同じ色ですよね!?」

「色の問題じゃねぇんだよ

マフの大きさとか顔立ちとか尻尾の形とか、まぁ色の好みもあるが

やっぱマフの大きい子が良いよな、埋もれたい」

「マフとは一体……

このポストカード全種類ください」

なんか自分用に買ってるし

そうして色々回っていると、ついに…ついに……!!目的地に到達!!

「おやつ詰め放題きたぜ!!!」

おやつ詰め放題コーナー、様々な種類があってどれもこれも目移りしてしまう

受付で紙の箱を貰ってそこに好きおやつを詰めまくる!蓋が閉まるのが条件だ

こぼれた分は持って帰れないぞ

「タキヤ!わかってるな!!」

「もちろんです!昆虫せんべいですよね!?」

「ウサギなんやと思ってんねん!!!!?????草食だぞ!!!!!

全然わかってねぇじゃん!?」

小動物コーナーだから、雑食の子もいるし、僕が食べられないものもある

昆虫せんべいはハムちゃんが好きなやつだ

僕と一緒に飼われていたハムスターにセリちゃんは素手でミルワーム掴んであげてたのを見た時は尊敬したね

ミルワーム素手でいけるんだ…虫ダメそうな見た目のメスなのに

「えーっと…クコの実……はいらないですね」

「いるよ!?僕の好きなおやつのひとつなんだけど!?」

「これ美味しそうですねぇ、カットビーフ」

「草食って聞いてた!?肉は食えねぇぞ!?

オマエ全然わかってねぇじゃん!?むしろ嫌がらせ!?ウサギ嫌いだろ!?」

「何を言いますか!!私はウサギ様の奴隷に成り下がったウサギ愛ですよ!いくらカーニバルくんでも私のウサギ愛を疑わないでもらいたいですねぇ!!」

「じゃあもっと理解しろや!!」

タキヤが食べれないおやつを詰めてないか監視しつつ僕の大好きなおやつをいっぱい詰めていく

うーもうつまみ食いしたいくらい…凄いぞ、僕の大好きなおやつたくさん箱に詰めた

最後は蓋が閉まるかどうか試しながら調整する

そんな僕の近くで何やら騒がしく、なんとなく懐かしい言葉に目を向ける

「ええ感じとちゃう?」

関西弁か……懐かしいな、セリちゃんもたまにその喋り方するから

声が違うからセリちゃんじゃないってわかってるのに目が向いてしまう

あれ…?

「そうですわね鬼神様、沢山詰めましたわ

これで蓋を閉めて」

あの2人って…確か鬼神と楊蝉?

意外な2人がここにいるんだな

「まだやで!楊蝉姐さん、早まったらあかん」

「えぇ?」

「こっからが勝負や、まだ倍は入る

ほら見てみい、この箱の隙間勿体ないやろ

詰め方にはコツがあんねん、いっぱいに見えても終わりやないで」

「凄いですわ!」

あっちは楽しそうだな~

「どうや!!こんだけ持って帰れば満足やろ」

どうして鬼神達がここにいるのかわからないが、知った人に会うと思い出す

……そんなに日が経ったワケではないのに、そんな日が懐かしく思う

僕の生活は一変した

本当なら僕はセリちゃんからおやつを貰って、のんびり楽しく過ごすのに

それは…叶わないかもしれないな

この首輪が外れない限り…

仕方ないと僕は鬼神と楊蝉に気付かれる前にその場を避けた

「タキヤ、まだ詰め終わらないのか?」

何百種類とある小動物のおやつをタキヤは順番に眺めながら悩んでいる

僕は自分が好きなのわかってるからさっさと好きなおやつの所回って入れ終わったけど、タキヤはどれが僕の好きなおやつか真剣になっていた

「苺だけでこの種類の多さ…カーニバルくんの好きな銘柄は」

そんな細かくは僕もわかんねぇし、全部食べ比べしたコトなんてないぞ

真面目に選べとは言ったが、細かく選べとは言ってないのに

とりあえず、僕はおやつを食べながら待ってるかな

詰めたこのリンゴ味の牧草クッキーが楽しみ

先に会計を済ませ詰め放題コーナーから出た前のベンチに座る

さっそく詰め放題したおやつを…

と箱の中に手を伸ばした時

「リンゴはパレが大好きだろ、リズムはなんでも好きだし、カニバは…」

あれ…この声…?

遠くから聞き覚えの…大好きな人の声が聞こえたような気がした

聞き間違いか…?それを確かめたくて僕はこの声の方へ、また詰め放題のコーナーへと入る

声を辿っていくとセリちゃんの姿が…!?

セリちゃんもこのイベントに来てたんだ

嬉しくなって駆け寄ろうとした時、近くにタキヤがいるのにも気付く

タキヤはまだ苺のコーナーで悩んでいて後退りすると、セリちゃんにぶつかった

だー!!??なんて最悪の偶然!?

「あっすみませ…」「申し訳…」

セリちゃんが謝ると同時にタキヤも謝りながら振り返ると、お互い顔色が恐ろしく変わった

「ちっ、このような場所で小僧に会うとは」

「それはこっちの台詞だ、カニバを返せよクソ野郎」

小動物ふわふわ癒しコーナーでピリつくなんてあってたまるか!!?

「口の利き方がなっていませんね!貴様が飼い主なんてカーニバルくんには悪影響しかありません!」

タキヤが思いっきりセリちゃんを突き飛ばして尻餅をつかせた

目に見えてカッチーンと来てるセリちゃんは立ち上がるとタキヤを突き飛ばし返す

ちょっとよろけただけのタキヤはセリちゃんの髪を掴んで喧嘩が始まる所で僕が2人の間に入った

「タキヤ手を離せ!オマエから手を出したんだ」

「離しませんよ!この小僧の顔面を殴ってやるんですよ!顔を見る度に腸が煮えくり返るのでね!!」

「噛むぞ」

その一言でタキヤはビクッと怯えるように手を離した

木を削るウサギの歯は噛まれたら痛いのだ

「憎たらしい……小僧を目の前にして何も出来ないとは」

増悪が凄いタキヤは放置してセリちゃんに駆け寄る

「カニバ…俺はあんなタヌキじじいに殴られても痛くも痒くもねぇぞ」

回復魔法があるからそうなんだろうけど、僕は見たくないんだよ

オスのセリちゃんはいいかもしれないけど、僕からすればメスのセリちゃんが殴られているようにも見えてしまうから

僕もオスとしてメスが殴られる所は見たくない

「セリ」

「あれ香月?待っててって言ったのに」

香月の登場にタキヤが少し怯んだのを感じた

人間の姿に変身してても滲み出る魔王の強さは隠しきれない

それが周りを恐怖させ遠ざける

セリちゃんに何かあったのを察したのか

「……カーニバルくん、それ以上近付いたら尻軽がうつりますよ離れなさい

ペットは飼い主に似ると言いますから、これ以上カーニバルくんがあの小僧に似てしまったらどうするんです!」

尻軽がうつるってどういうコトだよ…

それに僕はそっちの気はないし、なんでもかんでも飼い主に似るワケじゃねぇぞ

タキヤは平静を装っているが、動揺してるのを感じてしまう

香月とこんなに近くで会ったのははじめてのハズ

この人はタキヤが僕に最終的に殺せと命じる相手だ

でも今は出来ない、勝てないとわかっているから

離れろと言われたら僕はセリちゃんから離れなきゃいけなくなる

ナデナデしてもらいたかった…

「カニバ…オマエは大丈夫だって言うけど、やっぱり心配だ

オマエが」

「帰りますよ!!同じ空気を吸うのも気分が悪くなります!!」

セリちゃんの言葉を遮ってタキヤは命令する

帰るとタキヤに言われたら僕は従うしかない

逃れられない…この悪魔の首輪のせいで

「セリちゃん……僕は大丈夫、心配はいらないって言ったでしょ」

心配はいらない、それは本当だ

タキヤは僕に酷いコトしないから

「……セリカも、来てるんだぞ…会いたくないのか…?」

「っ…!?」

言葉にならない気持ちが心をえぐるようだ

大丈夫はやっぱりウソだ

セリちゃんと一緒じゃないのに、大丈夫なワケない

会いたいに決まってる

でも…仕方ない……から…

もう…セリちゃんの顔が見れない…

寂しくて、死んでしまいそうになるから……


詰め放題のおやつを持って僕はタキヤに連れられて早々に帰るコトになった

予定は泊まって2日目もイベントを楽しむハズだったけど、タキヤがセリちゃんと鉢合わせしてそれはなくなる

タキヤはセリちゃんのコト、追い詰めて殺したいほどの憎しみを抱いてる

全て逆恨みなのに、嫉妬なのに

セリちゃんのコト殺そうとする奴なんて………

「カーニバルくぅん、もう少ししたら次の町につきますから今夜はそこで宿を取りましょうねぇ」

………ウサギの僕には甘々なんだよな、キモイほど

もうすぐ次の町につく、そんな時だった

強い…いや、強いなんてもんじゃない

死が襲ってくるような感覚、恐怖が辺りを包むほどの気配

取り込まれたら誰も逃れられない

戦わずして平伏してしまう恐ろしさ

それは本人の意思とは関係ない、存在だけの話

振り返ると、香月の姿があった

それも人間の姿じゃなく、完全な魔王の姿で僕達の前に現れた

セリちゃんは……いない?香月1人か

隣で歩いていたタキヤはいつの間にか腰を抜かし震えて声も出なくなっている

僕だって恐怖で折れてしまいそうだが、これでも飼い主は勇者様なんでな

そのペットの僕が情けなく地面に平伏せはしないぞ

一歩香月が近付くと、腰を抜かしながらもタキヤは這いつくばり震えたまま僕の前に移動する

「み、みみみみみ見逃して…くだささささいいいい」

マズい…!!何か嫌な予感がしてタキヤの首根っこを掴んで後ろに引っ張る

その一瞬の後、タキヤがいた場所の地面がえぐられる

これが……魔王の見えない力…?

セリちゃんが言ってた

さっきのは動物の勘でタキヤがやられると思ったが、次はわかんねぇぞ

タキヤも女神結夢の加護で死にはしなくても…いや、もしかしたら加護の力を超える力があったら…死ぬコトもあるかもしれねぇ

「自分を誘拐した人物を助けるんですね」

「香月…セリちゃんが言ったのか?」

「セリは何も、私が勝手にしている事です」

香月は感情がない、だからセリちゃんの気持ちを理解しての行動ではないが

香月は凄く頭が良い、気持ちは理解できなくてもセリちゃんがどうしたら喜ぶか悲しむかなんてのはわかるんだ

きっと香月は僕を取り返すコトがセリちゃんのためと考えた

つまり目的はタキヤをどうこうする話じゃなく僕自身

でも

「悪いが…僕はこの首輪のせいでタキヤの傍を離れられない」

香月がセリちゃんのためと行動してもどうしようもないってコト

ここは大人しく帰って貰うしかない

セリちゃんの傍にいてあげて、セリちゃんは香月のコト大好きだから

僕の代わりに

「その悪魔の首輪、強力なアイテムですが」

香月が僕に近付くのを見たタキヤは

「や、やあああああ!!!!!それ以上カーニバルくんに近付いたら許しませんよ!!

カーニバルくんを傷付けたら、いいいいくら貴方が強いからって!!!」

僕が攻撃されると勘違いしたようだ

恐怖からの錯乱状態、会話も耳に入って来ないが目に映る光景は草食動物の僕が襲われてるだけの姿

「タキヤ待て!!」

そんな僕の言葉も聞こえず止まらず、タキヤは大した武器もないくせに香月へ突っ込んだ

だけど、香月はタキヤを近付けさせなかった

ある程度の距離に入るとタキヤの身体はねじれていき、血を絞られ内臓は外へと押し出され、最後にはねじ切れると言った惨い死に方をする

「タ…キヤ……」

女神結夢の加護で暫くすれば生き返るとは言っても……その痛みは計り知れない

思わず目を覆う

信じられねぇ……香月の見えない力ってなんなんだ?

どうしてタキヤはいつも僕を庇う…

勝てるワケないの、わかってるだろ……

「邪魔が入りましたが」

香月は何も思わない

僕が目の前のタキヤの姿にショックを受けていても気にかけるコトもなく、淡々と話を続ける

僕は香月の話がよく聞こえなかった

「所詮は呪いの類、私ならそれを壊す事が出来ます」

気付いたら僕の首にあった首輪が外れていた

あれだけ…煩わしかった首輪から、思ってたより早くあっさりと解放されたのに、僕は何を思えばいいのかわからなくなってしまってる

「あぁ…それと」

香月に右腕を掴まれて、ハッとする

反射的に抵抗しようと引っ張り返すと、香月は僕を地面に叩きつけ抑えつけた

「カ…カーニバルくん……」

目の前には身体を再生中のタキヤが僕を心配して這いつくばりながら助けようと近付いてくる

完全に再生するにはかなりの時間がかかって、まともに動けないぐちゃぐちゃの身体を引きずる

そんなタキヤが何も出来ないとわかってる香月は気にせず、僕の右腕を引っ張るとそのまま肩ごと引きちぎった

「セリカの腕は返してもらいます」

激痛が身体を巡る

「カーニバルくん…!?」

痛ぇ…痛すぎる……!!

ウサギは痛みへの我慢強さはあるかもしれないが、痛いもんはちゃんと痛い

セリちゃんの腕が取られた…当然か、香月には厄介な腕だ

「痛かったですか?」

香月のまったく僕には欠片も興味がない、とりあえずの言葉

本当に…セリちゃん以外はどうでもいいんだろうな

「痛いに…決まってんだろ……」

僕はふらふらになりながらも左手で神剣を鞘から引き抜く

ある程度の怪我なら不死の力で治せても、欠損は治せない

痛すぎるし、とりあえず…リセットするしかねぇ

神剣の刃を首に当てて深く切った

一瞬意識が途切れた後に生き返って腕も元通りだ

セリちゃんの腕はなくなってしまったから自分の腕が再生する

香月は僕を連れて帰るんだろうから、僕はウサギの姿へと戻った

タキヤに視線を向けると、何か言いたげにしていたが…僕は何も言えなかった

香月は僕を抱っこしてセリちゃんの所へと帰った


セリちゃんに会うまで僕は何も考えられない

よくわからない…僕は迷ってる?何を…どうして……

タキヤの僕を見る目が……頭から離れられない

アイツは僕をセリちゃんから誘拐して引き離してセリちゃんを殺そうとする悪い奴なのに……!!

「香月おかえ……ってカニバ!?」

イベントが開かれていた街でセリちゃんが香月を待っていたようで、僕の姿を見るとビックリする

香月は僕を連れて来るってコトは内緒にしていたようだ

そこにはメスのセリちゃんとイングヴェィも一緒で、鬼神と楊蝉と光の聖霊もいた

スゲー珍しいメンバーだな……

「カニバ!?カニバくん……!!」

メスのセリちゃんが香月に駆け寄って、僕を受け取るとその胸へぎゅっと抱き締めてくれた

「カニバ…カニバ……会いたかった…心配したのよ

大丈夫ってわかってても……会えないのは」

久しぶりのセリちゃんの体温はとても温かかった……優しくて…大好きな匂い

「寂しくて…死んじゃう思いだよ……」

セリちゃんの声が…震えて…涙が零れる

……僕は…もう二度とセリちゃんを泣かせないって誓ったのに…

また…泣かせちゃった……

心配しないでってちゃんとお手紙書いたのに……きっと、そういうコトじゃないんだと思う

だって、僕だって…大丈夫だって言ったけど、全然大丈夫なんかじゃない

セリちゃんに会いたかった……!!

大好きなセリちゃんの傍が1番幸せなんだ!!

「カニバ…おかえり」

オスのセリちゃんが僕を抱っこするメスのセリちゃんごと抱き締める

ただいま…僕の幸せな居場所

セリちゃん……大好き…

…大きくはないがふかふかなこの柔らかいおっぱいがやっぱりメスのセリちゃんの良いところ、オスのセリちゃんも好きだけどね

……………。

「……どうした?カニバ固まって」

会えたコトで気分が高まっていたが、時間が経つと僕は自分が抱っこ嫌いなのを思い出して、セリちゃんの肩に上ろうと必死になる

「大丈夫大丈夫、大丈夫やから、カニバは抱っこが嫌いやね」

セリちゃんは笑って僕を地面に下ろしてくれた

そして頭をナデナデしてくれて……これが1番好き

「よかったね、セリくんセリカちゃん」

イングヴェィもナデナデしてくれる

そんな可愛すぎる僕の周りはみんなに囲まれてナデナデしてもらえた

セリちゃんが香月に呼ばれて僕から離れる

「セリ、これを」

「セリカの腕…?……この切り口……強引にやったな?」

セリちゃんは香月のコトはお見通しだ

僕に優しくなかったコトを少し睨む

だけど、香月はそんなコトも気にせずにセリちゃんにその腕に傷付けてみろと言った

「……なるほど」

言われた通り、セリちゃんの腕に軽く傷を付けると自分と同じ場所に傷が付く

「この腕はセリカから離れていても繋がってる

和彦が俺の身体を使った時は勇者の力を使えなかったのに、違いはこれなんだろう」

そう、だから右腕が傷付いてもセリちゃんの回復魔法で治されていた

でも香月は僕の部分の肩から切断して引き離してそれを回避する

「ラスティンが食べる時はそんなコトないのに、その腕は一工夫されたのね

また悪魔の力かしら」

タキヤなら執念でやる、どんな力を借りてもやるよな…それが悪魔の力かどうかハッキリとはわからなくても

「危ないわ、私の腕…自分の手で香月を殺してしまうかもしれないもの」

そう言ってセリちゃんは炎魔法で自分の腕を燃やし尽くし消滅させた

「ラスティンにも厳しく言っておかなきゃね

簡単に奪われないように管理は徹底してもらわないと」

「そうだな…この腕があったからカニバを誘拐するコトにもなっただろうし」

それと神剣…その3つが重なって、タキヤは実行した

勇者の不死のペット、神が持っていた神剣、勇者の力を持つ腕

全て揃わないと出来なかったコト、どれもきっと偶然だった

「でも香月、どうしてカニバを?あの悪魔の首輪は」

セリちゃんの質問に香月は答える

「そっか、香月は呪いを無効に出来るもんな

それでカニバのコト取り返してくれたのか

なら言ってくれたらよかったのに」

「人間の姿のままでは出来ない事なので、セリと離れなければいけなかった

言えば、やはり心配だからと言ってついて来るでしょう」

「香月は俺のコトわかってるんだな、嬉しい

ありがとう、香月…」

「そのウサギを連れて帰れば…」

セリちゃんは香月のその次の言葉を待っていた

でも、暫くしても香月は口を閉じてしまってセリちゃんはそんな香月に首を傾げるけど

香月がセリちゃんから目を逸らすとセリちゃんは気付いたようだ

僕も香月と同じ、セリちゃんの笑顔が見たいから

「……もしかして照れてる!?恥ずかしい言葉が出そうになったからって黙っちゃうなんて素直に言ってほしいもんだぞ!!!」

香月が隠した態度を見せたコトでセリちゃんがそれを見抜いて調子に乗る

あのまったく表情の変化がなくて何考えてるかまったく読めない香月の心がわかるなんて凄いな

ウサギも無表情って言われるが、ちゃんとセリちゃんは僕達のコトもわかってくれてる

「静かにしなさい」

香月はセリちゃんの口を手で塞いで無理矢理黙らせた

照れ隠ししたら余計に調子乗るぞ…結構調子乗るタイプなんだから、おだてりゃちょろいし

「…でも、本当に香月のおかげだよ

これでまたカニバと一緒にいられるもん」

みんなにナデナデして貰った後にセリちゃんの足元をクルクル走り回っていると、セリちゃんは屈んで僕を撫でてくれた

メスのセリちゃんがおやつをくれて美味しくモグモグする

「おいしいの?カニバ、可愛いね…いつも可愛いね、大好き」

セリちゃんと一緒……やっと、僕はセリちゃんの所へ帰れる……

そう思ってた、だって僕はセリちゃんのペットだからそれが当たり前だし

僕も一緒が良い、それが幸せ

でも……


なんやかんや時間は過ぎていき、みんな同じ目的だったペットのイベントも終わりそれぞれ別行動するコトになった

まぁ夜だからみんなこの街のどこかに泊まるコトにはなるだろうが

香月とオスのセリちゃんは香月の所へ行き、イングヴェィとメスのセリちゃんはリズムとパレの所へ今回のおやつやらおもちゃやらを持って帰る

鬼神と楊蝉と光の聖霊は死者の国へ帰るとのコト

鬼神と楊蝉と光の聖霊はまだまだ遊びたりないとオールする勢いで賑やかな街へ消えて行った

「それで、カニバくんはどうするの?

セリちゃんと帰るか、セリちゃんと香月の所へ遊びに行く?」

香月の所にあの白虎がいるんだったな、セリちゃんの腕のコトで文句を言ってやりたいところだが……

「うーん…セリちゃんと帰る」

メスのセリちゃんに抱き付いて選ぶ

「えー!?なんでだカニバ!?俺と一緒に来たくないのか!?」

「メスのセリちゃんが良い」

「気持ちはわからんでもないが、セリちゃんだってカニバが好きなんだぞ!?」

どっちも同じなのに、こういう時は困る

セリちゃんは1人なのに2人いるけど、僕は1人だからさ

一緒に帰るそう決めたのに…

僕は聞き知った足音が近付いてくるのに気付く、きっと香月やイングヴェィも気付いたと思う

「セリちゃん、ちょっと離してもらっていい?」

「えーなんで?セリちゃんはカニバくんと離れたくないもん」

メスのセリちゃんが僕を抱き締めて離さない

心配した分、離れていた分の気持ちはわかるけど

このままだとまた鉢合わせになって、アイツはセリちゃんに何するかわからねぇんだぞ

かと言って強く突き放せないでモタモタしていると、アイツが姿を現した

「タキヤ…オマエ…」

セリちゃんはタキヤの姿を見ると警戒して僕を背に隠す

タキヤの姿は変わり果ててる

あのセリちゃんに粘着して嫌がらせを繰り返しそのためにはどんな悪いコトもしてきては自分の思い通りを貫こうとする悪党の権化みたいな姿をしていた見た目は若いが中身は人間の寿命を超えた年寄りのタヌキじじいだったのに

香月から植え付けられた恐怖のせいか、姿は年相応にまで弱ってしまい腰も引けて震えてる廃人となった

香月を目の前にするのは恐くて仕方ないと言わんばかりに

なのに…それなのに

「カ…カーニバルくんを……離しっひぃぃぃ!!!??」

ちょっと香月と目が合っただけでタキヤは腰が抜けてその場から立ち上がれなくなる

タキヤの手にあるのはこの街で1番高いと思われるどうやって使うのかよくわからん武器があった

とにかく強そうってだけの見た目の…そんなの香月とイングヴェィの前じゃ棒きれも同然なのに

それで勝てるワケないのに…さっきだって香月に八つ裂きにされて耐え難い痛みも恐怖も植え付けられてるハズなのに

「ふざけんな!カニバを離せって、オマエが誘拐したんだろうが!!失せろ!!」

「はぁあ?小僧のような飼い主じゃ可哀想だと言ってるんですよ」

情けなく立ち上がれもしないのに、セリちゃんに対してだけは一丁前に口答えしてる

スゲー粘着心、そこだけはブレないな

「知ってるんですかぁ?貴様の隣にいる恋人がカーニバルくんにやった事」

隣と言ってるのに一切香月の方は見ない

「カーニバルくんの腕を肩から引き千切ったんですよ?そんな危険な人が恋人の飼い主なんてカーニバルくんが可哀想ですよねぇ?」

タキヤの言葉にセリちゃんの顔色が変わる

「やっぱり…香月……」

それを見たタキヤはセリちゃんが自分を責めてるコトに笑みを零す

違う…違うぞ、セリちゃん

「香月は悪くねぇよ、香月のやったコトは正しい

僕が悪魔の首輪に支配されていなかったら、僕が自分で同じコトをした」

セリちゃんの腕は僕が持ってちゃいけないものなんだ

それでセリちゃんを追い詰めてしまうコトになる危険なものだって言うなら、どんな痛みだって耐えられる

「カーニバルくん!?しかしですねぇ!?」

「黙れタキヤ!」

「カーニバル…くん……」

さっきまでセリちゃんを追い詰める言葉を並べてた時は活き活きしていたくせに、僕が怒鳴るとそんな寂しそうな顔するんだな

本当…オマエって奴は

「黙りませんよ…カーニバルくんを連れて帰るまで

小僧なんかに……これ以上、大切なものを奪われるのは」

タキヤは立ち上がるのも無理なのに、その恐怖を乗り越えてまですがりつく

だけど、タキヤのしつこさを知ってる香月がもう一度見えない力を使って完膚なきまでに精神を壊そうとするのを感じて僕はタキヤの方に飛び出した

「待て香月!」

そんな香月に早く気付いたセリちゃんが止めてくれて、痛い思いをせずに済んだ

ヒヤッとしたけどな

不死の僕でも痛いのは嫌だよ

「オマエが悪いんだよタキヤ…

オマエっていつも他人のせいにするじゃん

女神結夢に愛されないのも、セリちゃんに盗られたからってそれ逆恨みだから

僕はオマエのものじゃない、オマエがセリちゃんから奪っただけ

全部全部タキヤ…オマエが悪いんだって

オマエはセリちゃんに嫉妬してるだけなんだよ

羨ましいだけ、妬ましいからセリちゃんを悪者にする

オマエが敵と思うからセリちゃんはオマエにとっていつまでも悪者なんだ」

「誰があんな小僧を羨ましっ!?」

認めない認められない、それこそタキヤは屈辱でたまらないんだろうから

僕はそんなタキヤを蹴り飛ばす

廃人になってたタキヤは思ったより転がっていってしまった

いやそこまでするつもりは…

転がるタキヤの胸倉を掴んで引っ張り起こす

「タキヤ!僕はオマエとは相容れねぇよ!?

そんなオマエと誰が一緒にいたいと思う!?

わかんねぇか!?わかんねぇよな!?」

「カーニバルくん……」

厳しいコト、キツいコトを言われてるんだってタキヤはわかって泣きべそかいてる

僕も見た目よりは年取ってるが、オマエよりは遥か年下なんだけどな

「僕はセリちゃんが大好きで大切な人間なんだ

それをオマエは嫌がらせして、セリちゃんを追い詰めて殺そうとしてる!

そんな奴、僕は当たり前のように嫌いになるに決まってんだろ!?

……わっ!?ばっちい!!」

タキヤの鼻から口から鼻水とよだれまで垂れて手について、パッと離した

「それでもカーニバルくん……」

足元で僕にすがりつくタキヤは…なんて……哀れなんだ……

「まだ……わかんねぇんだろうな…

でも…仕方ねぇなぁ……」

認めたくない認められないのは、僕も一緒なのかもしれない

タキヤは僕にだけ、ちゃんと優しかった

ペットへの愛情だけは本物だって

僕はわかってる……それにはウソ偽りもないと

もう見てらんねぇよ…百歳超えたじいさんが泣きじゃくる姿なんて

僕も…甘いな、飼い主のセリちゃんに似ただけか

タキヤのコト嫌いになりきれねぇ

「情けねぇな…タキヤ、汚ぇ面して…泣くなよ」

ポケットからハンカチを取り出してタキヤの汚い顔を拭いてやる

ハンカチはいつも持っていなさいってセリちゃんの教え、僕は偉い子

「カーニバルくんが……優しい…」

タキヤの涙も鼻水も止まった

「そのハンカチ、返さなくていいからもうばっちいから捨てて」

「ぐすぐす」

タキヤの姿を見て、まだセリちゃんのところへ帰るべきじゃないと思ってしまった

コイツがもっと話の通じる奴なら僕も苦労しないが…

このまま帰ってしまえば、セリちゃんはいつか手段を選ばないタキヤに殺される

コイツの粘着心を変えなきゃいけない

タキヤ自身を変えるなんて出来るのかどうかわかんねぇけど

だってもうじじいだし凝り固まってるだろ

でも、もしそれが出来るのはきっと愛情を向けられてる僕だけなんだろう

「僕…暫くはタキヤ、オマエの所で暮らすよ」

その言葉にタキヤは驚いて開いた口が塞がらない

「カニバ!?どうして!?セリちゃんと一緒に帰るって言ったじゃない…」

セリちゃんは信じられないと悲しむ

僕は…セリちゃんを二度と悲しませないって誓ったよ

それは今だって変わらない

でも、セリちゃんが死んでしまったら意味がないんだよ

僕はセリちゃんを守るために、決めたんだ

「セリちゃん…僕を信じて

僕も、セリちゃんを守るんだ」

ウサギの姿に戻って僕はメスのセリちゃんの胸に飛び込んで抱っこしてもらう

抱っこは嫌いだけど…セリちゃんの悲しい顔を目に焼き付けて、その唇をペロッと小さな舌で舐める

「…カニバくん……」

オスのセリちゃんにも同じように、心配しないでと伝えた

人間の姿に戻ると、笑ってと僕は満面の笑みを向ける

「僕が大好きな飼い主はセリちゃんだけだから」

「カニバ……仕方ねぇなぁ…オマエ、いつの間にそんな男前になってんだよ」

「僕は生まれた時から男の中の男だし」

威張ってみせる

セリちゃんがふふっそうねって笑ってくれた

今だって僕はセリちゃんと帰りたい、一緒にいたいよ

でも、それじゃ守れないってわかったら

君を待たせて寂しい思いをさせるかもしれないけど

僕は間違っていない、間違っていないって未来で証明して掴む

「カーニバルくん!あの小僧と小娘より私を選んでくれたんですねぇ!!ふははははははは!!!ざまーないですねぇ!!」

急に調子を取り戻して、すっかり廃人から元の姿に戻っているタキヤを転かして踏みつける

「タキヤは僕が調教するから」

「…カニバは気が強いんだよな……」

「飼い主の小僧に似てカーニバルくんの性格は最悪ですよ!?私を足蹴にするなんて!!」

と言っておきながらタキヤはいつの間にか僕の椅子になっていた

「勘違いするな、暫く一緒に暮らすが

僕が主人だから、オマエのペットではないってコトを教えておくよ」

そうして僕は自らの意思でタキヤの所へ戻るコトにした

香月もイングヴェィも黙って見守っていてくれたのは、セリちゃんの気持ちを汲んでくれるから

つまり、セリちゃんを説得出来なかったらタキヤはどうなってたかわからないし

僕が会話するコトも出来なかった

タキヤのコトは嫌いだけど、タキヤが僕に優しいのは…まぁ悪くはねぇよな……



タキヤと一緒に女神結夢の神殿に帰ってきた僕は、すぐにウサギの姿に戻ってふかふかのベットで眠りについた

さすがに疲れちまった…体力的にも、精神的にもさ

そんな眠る僕の頭をタキヤは撫でた

いつもモフモフの僕を触り撫でたがるタキヤはキモイけど、最近はまぁ許してる

ウサギのモフモフの身体に顔突っ込んできたら蹴り飛ばすけど、それは許してない

「……カーニバルくん…ごめんなさい

あのような恐ろしい化け物をカーニバルくんに倒せなんて事は間違っていました…」

僕はウサギだから完全に眠るコトはない、タキヤは僕が寝てると思ってるが

へぇ、オマエでも反省するコトあるのか

「カーニバルくんも恐かったはずです」

正直……めちゃくちゃ恐かったって!!!!

いつもセリちゃんと一緒だったからちょっと恐い人くらいだったが、セリちゃんがいない時の本物の香月の恐怖と言ったら言葉にならねぇ!!

僕がセリちゃんのペットじゃなかったら泡吹いて倒れてるぞ!?

飼い主が勇者だから意地でも情けねぇ言動できねぇって耐えただけで

逆によくあんな恐怖の塊と恋愛できるなセリちゃん!?って思ったわ!!

僕の飼い主って実はめちゃくちゃ凄いんじゃ……

それにしても、今思ったけど

タキヤは精神的な攻撃が弱点なのかもしれない

身体は女神結夢の加護で不老不死だ

勝てない相手だと思われていたが、タキヤは所詮人間だ無敵にはなれない

香月の恐怖だけじゃない

前に聞いたコトがある天使の鬼ごっこも恐れてる

今まで痛い目を見て来なかったから性格が歪んでしまったのかもしれないが

女神結夢が好きな所から見ても愛情がない奴ではない

ウサギの僕にもメロメロだし

タキヤは嫌な奴だし、セリちゃんにしたコトは許せないが…

タキヤが変われるなら……

「しかし…やはり私は小僧が憎い……!!悔しいです!!

あんな若造に女神結夢もカーニバルくんも取られるなんて!!」

……うーん…変わるには相当な時間と根気が必要かもしれねぇな…じじいだし…

最初から女神結夢も僕もオマエのもんじゃねぇし

その勘違いから正していこうか



それから数日後、オミノが僕の朝食を運んでくれる

「ねぇ、この前買った松ぼっくりのおもちゃどこ?」

美味しいご飯をモグモグしながら、目の前の破壊した藁のおもちゃに興味をなくし新しいのを要求

「後で持ってきますよ

それにしても、未だにおれは驚いてんですよねぇ

悪魔の首輪もないのにタキヤ様と一緒に帰ってくるなんて」

「僕だってセリちゃんと一緒が良いよ

でも、タキヤを調教できるのは僕だけだろ」

このバナナ美味い、リンゴもシャリシャリ甘い

「今やタキヤ様は頑固オヤジがペットを迎えたら人が変わったようになっちまって、ウサギ様の言う事を聞いて慈善事業まではじめちゃいましたよ

そこんとこペットには不思議な力がありますよねぇ」

それでもタキヤがしてきたコトは許されねぇけどな

「タキヤはまだダメだ、僕に言われたからやってるうちはな

それじゃ僕がいなくなったらタキヤはまた私利私欲のために動く

根本からアイツの根性叩き直してやるのが僕の役目」

悪魔に漬け込まれやすいタイプだ

本人は自分が悪魔を利用してると思い込んでるが、いくら神のしもべでもタキヤは所詮人間

「カーニバル様はそのウサギ様の魅力でタキヤ様を変えられる事が出来たのは幸運でした

この国も良い方に変わる事が出来れば、女神結夢様も帰ってきてくださるでしょうしねぇ

でも、その魅力が通じない相手は厄介かもしれねぇですよ」

オミノの言葉は不穏な予感に気付かされる

ウサギの僕は可愛すぎるが…そんなコトは知っている

「そろそろ時間ですかねぇ

おれも…さすがにあのお方達には逆らえないんで、カーニバル様の味方に付けるかどうかは貴方次第」

「オマエ……誰に飼われた?」

オミノは僕について来るように言った

動物の勘ってのは嫌なほど当たるんだよ

大人しくついて行くと、本来ならこの国の神族である女神結夢が座るハズの玉座には大空の神がふてぶてしくカッコ付けて座っている

「おい、なんだあれ?

あんなのタキヤが許すと思ってるのか?」

いくら位の高い神族でも、他の神族の玉座に座るコトなど許されないだろ

「タキヤ様が出掛けてる間に突然天空様がお訪ねになられたんですよねぇ

それでタキヤ様ではなくカーニバル様を呼べと、正確には勇者のペットと名指しされたんですわ」

ふん気に入らねぇな、だいごろうの奴

アポなしでその身勝手な振る舞いかよ

突然来るのは構わないが、もっとおしとやかにできねぇのか?

「僕を呼び出したのはオマエか、話をする前にその椅子から…」

気付いた時には目の前に立っていた

天空の影が僕を覆う

天空は僕の前に立つと顔を首元まで近付けられてその匂いを嗅ぐ

「勇者のセリくんの匂いがするね」

いきなり匂いを嗅がれゾワゾワと拒否反応が身体を巡る

セリちゃんと会ったコトを言い当てられ、天空は不適な笑みを浮かべた…カッコ付けて

「君の本当の飼い主がセリくんかぁ…

うんうん…セリくんに似て君も可愛いねぇ」

心が籠もってないな、そんなの簡単に見抜けるぜ

「君にお願いがあるんだ

ボクは勇者を気に入ってね

仲良くなるのに協力してくれるかい?」

張り付いたような嘘臭い笑顔で僕の顔を覗き込む

この近い距離腹立つな~

「勇者はモテますね~

タキヤ様が尻軽と罵っていましたが、こんなイケメンから好かれたら尻も軽くなりますよねぇ」

オミノはなんの危機感もなく笑っている

おいおい笑い事じゃねぇぞ…

セリちゃんを侮辱するな

コイツはセリちゃんのタイプじゃねぇよ

(タイプなら尻が軽いのかって話だが…)

天空の笑顔に疑いすら持たず、本当に好意的だと受け取っている

だが違う…僕にはわかる

天空の笑顔は胡散臭いんだ

動物の勘と言うのか、この男は最初に会った時から怪しいしか感じない

僕には裏があるように見えて警戒する

コイツはセリちゃんに好意はない

タキヤ以上に増悪がある

神族は天を忌々しい存在としてる

コイツはその中でもとくにそれを強く感じるぞ

その天が創ったセリちゃんに好意を持つなんてありえねぇ……

「協力…?出来ねぇな」

僕が断るとその薄っぺらい笑顔にヒビが入る

「頼むよ、仲良くなりたいんだ…深い仲にね…」

「セリちゃんに手を出したら殺すぞ」

天空は僕の目を見て察したようで目の色を変えた

僕が天空を見破ってるコトに気付いたか

「……神族のボクを殺すだって?食われる側の動物の君が?

…ウサギの肉はどんな味がするのか興味あるなぁ

ボクは気が強い性格が嫌いでね

それともう1つ動物も死ぬほど嫌いなんだ!!!」

天空は僕の首を鷲掴み持ち上げる

「…簡単に本性表すじゃん、小物だな」

「不死の君は死なないからと強気だねぇ…」

天空の手に力が入る…苦しくなってきた……

「ちょっとちょっと、カーニバル様は結夢様不在の今この国の最高権力者なのでやめてもらってもいいですか?

カーニバル様が生意気な口を利いた事は謝ります

見ての通りまだ子供ですし」

早々にコイツに飼われたような発言してたくせに、まだ僕の味方をしてくれるのかオミノ

オマエも食えねぇ男だな

最高権力者がタキヤじゃないのなんか笑う

しかも僕はこの国の人じゃないし女神結夢の加護も受けてないぞ

「その手を離してくださーーーーーーい!!!!!」

タイミング良く帰ってきたタキヤが異変に気付いて駆け付けてくれたようだ

「天空様!一体カーニバルくんがどのような粗相をなさったと

どうかお気をお沈めくださいませ」

タキヤは天空の足元で地面に頭をこすりつけて懇願する

「女神結夢のしもべタキヤ、こんな動物のガキがこの国の最高権力者?正気かい?」

「そうです」

タキヤがアホ

「馬鹿馬鹿しい話をするねぇ…」

天空は僕を放り投げたが、慌ててタキヤがキャッチする

「ボクはさぁ…地上で拠点を探してるんだよねぇ…

そうしたらちょうどここが空いてるって事を思い出したんだ」

嫌な予感は…当たる…

タキヤもオミノも、それを今感じた

「ありがたく思いなよ

ボクが女神結夢の代わりにこの国の神をしてやろう」

勝手な振る舞いだ

でも相手は位の高い神族…

そしてタキヤやオミノ、人間を創った存在

父親であり母親であるその相手にオミノは逆らえない

タキヤだってそうだ

でも、タキヤはそれ以上に…女神結夢への忠誠心は他の誰をも立ち入らせない

「お待ちください天空様!!

ここは女神結夢様の聖地でございます

神族のルールとして、他の神族の聖地を奪う事は御法度ではありませんか!?」

「奪うとは言っていないだろう?

ボクが君達を見捨て放棄した無責任な女神結夢の代わりに救ってやると言ってるのさ

神族として当然の役割だ」

目に見えてタキヤがカッとなる

「女神結夢様への侮辱は聞き捨てなりませんねぇ!?」

うおーーー!!タキヤが珍しく男見せてんぜ!?カッケーぞ~!頑張れタキヤ!

このまま追い出せーー!!

「……ボクは大空の神の2代目なんだけどさぁ…

女神結夢もそろそろ2代目に交代してもらうのもありじゃないかなぁ…

もちろんボク以外の誰かをあてがう事になるけどね」

それは女神結夢をいつでも潰せると言う脅しだった

タキヤはいくら位の高い神族でもここは結夢様の聖地ですと反抗したが、女神結夢を人質に取られれば納得いかなくても黙るしかできなかった

一旦引いたが内心は天空への不信感がある

「それにボクはタキヤにとって悪い話じゃないと思うよ」

また胡散臭い笑顔を貼り付けてタキヤの顔を覗き込むように近寄る

「タキヤは勇者を追い詰めて殺したいそうじゃないか

ボクもそう思っててさぁ」

「もう隠さねぇんだな、その甘いマスク剥がれてんぜ?」

「動物は黙っていなよ、僕は人間と話してるんだからさぁ?」

「勇者を追い詰める……話を聞きましょう」

タキヤはあえて天空の話を聞き出して、わかった上で止められるってコトか

悪知恵は働く奴だからな、その辺僕は頭が回らなかった

セリちゃんを追い詰めるって聞いたらカッとなって突っかかっちまう

「勇者を自殺に追い込むのに、まずはボクに惚れさせる

散々酷い扱いをして身も心もぼろぼろに壊してやるのさ」

なんて自信満々に話すんだろう…自分の容姿に絶対的な自信を持っている

その自信は独りよがりではなく、実際に数多のメス達がこのオスの虜になった上での振る舞いだ

みんなボクが好き、そうだろうな

そんなラッキーが続いただけ

「ぷっ……ククク…ハハハハ!!!バッカじゃん!?アハハハハハハ!!!

オマエ自分のコト勘違いしすぎじゃね?

今までさぞメスにチヤホヤされてモテてきたんだろうよ

でも、セリちゃんはオマエなんか相手にしねぇから」

そもそも、オマエなんか香月も和彦も近付けさせねぇって

笑いすぎて涙が出る

天空の嘘臭い笑顔にまた大きなヒビが入った

「ふぅ……確か勇者には」

「あっ、今メスのセリちゃんならチョロいと思っただろ?

残念だったな、メスのセリちゃんはオスのセリちゃんより手強くて冷酷だぞ?

オマエのプライドズタボロにされるだけだからやめとけって」

図星で嘘臭い仮面が裂けそうだ

情に流されやすく押しに弱いのはオスのセリちゃんの方なのは間違いない

でも、セリちゃんは誰でも良いってワケじゃない

天空には無理だ

それこそ悪魔の契約でも……

「どうやらその動物の飼い主の躾が悪いようだ」

「ですよね!!私も常日頃そう思っています!!」

マズい…そうだ、そうだった

セリちゃんの気持ちなんてどうにでもなる悪魔の契約があるじゃねぇか

神族だから悪魔と手を組まないって思い込んでいるだけで…

僕が煽って天空のプライドをズタズタにしてキレさせたら…それがセリちゃんに向くかもしれない

って、僕は今になって気付くなんて

バカすぎだ

「ボクに惚れないなら惚れないで、死にたくなるほど陵辱し尽くすまでさ」

「それは残酷すぎて素敵ですね!!やっちゃってください!!」

「タキヤてめぇ!?!?!?」

セリちゃんを追い込むコトを諦めていないタキヤに突っかかる

「これはこれ、それはそれ、ですよ

私は小僧への憎しみは失っていませんからねぇ

それに、あの小僧の周りがそんな事はさせないでしょうが

カーニバルくんは心配しすぎなんです」

「僕が天空を煽ったから……こんなコトに」

「それは違いますね、天空様は小僧になんか眼中ないです

神族から見れば小僧は私達と同じ人間の立ち位置

天空様が気になさっているのは勇者を創った天のみ

しかし、その天は実体がないわけで矛先が小僧に向いているに過ぎません

小僧が苦しめば天も苦しむと盲目に思い込んでいるだけです」

タキヤは人間として神族にもっとも近いしもべ、普通の人間より神族の事情をよく知ってわかってる

「それに陵辱された所であの小僧は慣れてるじゃないですか」

思わずタキヤの頬を力いっぱい殴った

「オマエ……やっぱなんも、わかってねぇんだな……

そんなの…慣れるワケねぇだろ」

僕はそんな目に遭ったコトはない

でも、わかるよ…それがどんなに辛いコトかくらい

全部はわからないけど

セリちゃんは言わないけど…それでも僕に笑ってくれるから

「………僕は、セリちゃんを守るって決めたんだ

天空が敵ってわかったなら、戦うしかない」

「…どうやってですか?」

タキヤは謝りもせず不機嫌な態度を示す

それは僕が取りたい態度だ

でも、タキヤの言う通り天空にウサギの可愛さは通用しない

タキヤのようにはならねぇってコト、厄介だな

僕には特別強い力があるワケじゃない

あるのは不死の力と神剣

神剣は神族の剣だから神族には傷一つ付けられないだろう

不死の力は僕が死なないだけの話だし

コイツにどう立ち向かえって言うんだ……

セリちゃんを守るって言ったのに……

「さっきの威勢はどうしたのかな、ウサギくん?

ボクも悪魔じゃない、君はまだ子供だ

君が態度を改めるなら、君の飼い主に優しくする事も考えよう」

迷うコトもない、僕は天空に頭を下げた

「…生意気言って……すみませんでした……」

「それで改めたつもり?

頭を地面にこすりつけてボクの靴を舐めろって言ってるんだよ」

………調子に乗りやがって……このクソ野郎

僕は地面に手をついた

セリちゃんのためなら…どんな屈辱だって呑み込んでやる

「おやめなさいカーニバルくん!!

天空様!お許しを!!今のこの子の保護者は私です

お望みなら私がいくらでも何でもしますから!!

罰をお与えになるなら保護者である私に!!」

タキヤは地面をえぐる勢いで頭を押し付けた

「オマエがやめろ!プライドないんか!?そんな簡単に頭地面にこすりつけやがって!!

タキヤ、これは僕の問題だオマエは引っ込んでろ」

「そうそう、プライドのないタキヤの安っぽい土下座なんていらない

そんなにその動物が大事かい?

それならタキヤは選ぶがいい

そのウサギくんを守りたいなら…どんな事でも代わりに受けるんだろう?」

「覚悟の上でございます!!」

「タキヤ!?」

簡単に答えやがって、コイツ世間知らずか!?

天空はタキヤがもっとも嫌がるコトを言ってくるに決まってるハズ

嫌な予感しかしない、それすらもわからないのか……

それとも、それをわかっていて僕を守っているのか?

「そうだねぇ…タキヤが嫌がる事……

そうだ、勇者と同じように男達に陵辱されるっての良い考えだと思わないかい?」

天空はさらっと残酷なコトを言い放つ

「はぃ……?」

タキヤは自分が何を言われたのか理解が追いつかない

バカ野郎……だから、ろくでもないって…絶望する

「……それは…私が断れば、カーニバルくんが犠牲になると……」

「ははは、ボクは神族だよ?子供にそれは禁忌

あの女神セレンですら子供の前では徹底してその手の話をしない」

あの女神セレンですらって、セレン同族からも相当やべぇ奴って思われてんぞ…

「そうだなぁ~…ウサギくんには…痛い思いしてわかってもらおうかな」

さっきは謝ればいい話だったのに、どさくさに紛れてハードル上げやがったな

天空のコトだ、痛い思いは不死の僕を死ぬまで痛めつけるコトだろう

僕なら…迷わず選ぶ

「もう一度言う

タキヤが男達に陵辱されるか、ウサギくんが痛い思いをするか…選んでね?」

天空の言葉に、タキヤは迷わなかった

「私を選びます」

僕は僕を選ぶ

「……タキヤ…オマエ…わかってんのか?」

そういうところ……スゲーイラつく

セリちゃんに酷いコトするのに、今だって改心しないでずっとセリちゃんのコト憎んでるくせに

オマエがもっと最悪最低に嫌な奴だったら…僕はこんなに悩まないのに……!!

「わかっています……最高に最低で屈辱な事だって話です」

超…ビビってんじゃん…相変わらず情けねぇ奴……

これでセリちゃんの気持ちがわかったか?なんて言えねぇよ…

僕は天空の前に出た

「元はこの話、僕のコトだ

タキヤは関係ねぇんだから、天空は僕を好きにしろ」

「カーニバルくん!いけません!ここは私に任せて…」

タキヤが僕の腕を引っ張るが振り解く

「うるせぇ!!!オマエは黙って下がってろ!!

オミノ!タキヤを連れてここから失せろ!!

僕が、痛い思いする方がマシなんだよ!!」

キッと強い視線をオミノに送ると、タキヤも引き下がらずオミノに強い視線を送る

「オミノ、私の言う事を聞かないと首にしますよ!また路頭に迷いますか!?

カーニバルくんを連れて行きなさい!」

「黙れ黙れ黙れ!!!オミノ、オマエ言ったよな!?この国の今の最高権力者は僕だって

なら僕の言うコトを聞け!!!!

じゃないと死刑にするぞ!!!!」

僕も引かない、タキヤも引かない

挟まれたオミノは苦笑する

笑える場面じゃないのに、それでも頑固な僕達にオミノは笑うしかなかった

そして、オミノは天空の足元に跪いて頭を地面に付ける

「路頭に迷うのも死刑も嫌ですねぇ……あんたら2人…本当に……バカじゃねぇですか……

天空様、お許しを…どうか……どうか」

「外野は黙って

なーんか…白ける……お互い庇い合って馬鹿馬鹿しい

いいかなぁ…このツケはまとめてセリくんに払って貰おう

その方が効果ありそうだしねぇ」

ちらっと天空は僕を見て嫌な顔で笑う

「ほっ、あの小僧になら遠慮せずに何でもやっちゃってください!」

キッとタキヤを睨むとタキヤは大袈裟に視線を逸らした

天空は指を上に向けて、何やら語り出した…カッコ付けながら

「ボクは君達の事は眼中にない

ここをボクのものだけにしたい

上にボク以外が存在する事は許せないんだ

天を消滅させる

そうすれば勇者の生まれ変わりもなくなるだろうね、ウサギくんの大好きなセリくんは二度と存在しなくなる

天が創った人間は天が消滅したら消滅するのは当然だろう?」

「させねぇぞ…天空」

「ちっぽけな君に何が出来る

威勢が良いだけでは救えないだろう

なぁタキヤ?」

「その通りでございます!さすが天空様は素晴らしい!!」

またタキヤを睨むと口を閉じた

「あの綺麗な容姿は惜しいけどさぁ

だから消滅する前にたっぷりとあの身体を楽しみたいねぇ」

「殺す……」

「犬でもないのに吠えるんだねウサギくん

そういう事だから今日からボクはこの国の神様、先に休ませてもらうよ」

タキヤは女神結夢の聖地を勝手に乗っ取った天空にムッとしたが、天空は手をヒラヒラさせて消えていった

「はーーー!!一体どうなる事かと焦りましたよ、カーニバル様もタキヤ様も無茶しないでくだせぇよ」

オミノは息止まってたかのように大きく息を吐いて深呼吸する

「だってムカつくもん、セリちゃんに酷いコトするって言う奴だぞ」

「腹が立ちます、女神結夢様の聖地で好き勝手なさる

いくら位の高い神様だからと言って、女神結夢様に対して無礼極まりないですよ」

「落ち着いてくだせぇよ、所詮おれらは人間と動物ですよ?

神族相手に何が出来るって言うんです?」

オミノは一生分の冷や汗をかいたって早くシャワー浴びたいとぼやく

「なんもできねぇ自分にもムカついてんだよ」

「女神結夢様の聖地をお守り出来ないとは、大神官失格です…」

「あーもっと冷静になってくれねぇですかね

神族を殺す方法…2人は忘れたわけじゃないでしょーよ」

あちーっとオミノは服をパタパタさせて身体に風を送り込んでる

「……神族を…殺す方法……」

「……堕落させる……」

それだ!!って僕とタキヤは顔を見合わせる

「ま~あの大空の神を堕落させるなんて簡単じゃねぇでしょうけど」

「さすがタキヤの部下!悪知恵働くのは一丁前じゃん!!」

「やですね~それ」

「確かに大空の神は手強いですが、結夢様の聖地をお守りするにはそれくらいしなくてはなりませんねぇ」

「難しくてもセリちゃんを守れる方法があるならそれに賭けるっきゃねぇ!!」

守りたいものは違っても、僕とタキヤの目的は同じ

昨日の敵は今日の友と言わんばかりに手を結ぶコトになる

「簡単にいかねぇのはわかってる

でも、あのスカした勘違いナルシストクソ野郎に僕達を敵に回したコトを後悔させてやりてぇんだよ

ナメられっぱなしは性に合わねぇ

首を取れなくても足の小指をタンスの角にぶつける痛みくらいの反撃はしてやるぜ」

「まったくカーニバルくんは口が悪いですねぇ…飼い主の責任ですよそれは

壁にめり込ませるほどの反撃は同意しますけども」

もっと過激になってる!?

「私はこれでも粘着質なんですよぉ」

「意外みたいな言い方してるけど、知ってる!!」

「やれやれです、自分勝手な上司持つと苦労しますわ

転職したくても他に働くとこねぇですし、そろそろこのブラック企業に骨埋める覚悟しますかねぇ」

こうして、僕とタキヤとオミノの3人は守りたい人のために協力し合う

見てろよ!天空…いやだいごろう!!てめぇの好きにはさせねぇからな!!

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