175話『誰1人と離れたくない』セリ編

帰ってきてからレイは俺のために会わないように避けていたが、今は昼間なら普通に会えるようになった

夜は自分を抑えられる自信がないと言って、レイはずっと自分と戦っている

心配なのに、俺は何もできなかった…俺が傍にいればそれだけレイに負担がかかるから

そして、昼間でもフェイと一緒じゃなきゃいけないってコトで2人っきりになれないのもアレだが

またフェイが一緒ってのが最悪でしかない

「久しぶりにダンスのレッスンは疲れるな…でもレイの新曲が踊れて楽しいから良い」

次のコンサートまでにちゃんと覚えなきゃだし、頑張ろっと

「セリ様は覚えが悪いですからね」

「言われなくてもわかってますけど…?

なんでオマエはいつもムカつくコトしか言えねぇの?」

「好きな子に意地悪したり言ったりする、アレだろ」

フェイは小学生と言わんばかりのレイのツッコミ

いやいや俺のコト嫌いなんだってフェイは、レイって鈍いよな

みんな俺のコト好きって思ってんだろうな

そんなモテないからね俺

「はい!?誰がこんな奴…!!好きじゃねぇよ!!こんな可愛くねぇ!!綺麗な顔も良い匂いも足が小さいのも肌が白くて綺麗なのも心地良い声も小さな手も美しい黒髪も言い切れない全て、全て大嫌い」

あーあ~あらあら、フェイの奴顔真っ赤にしてめっちゃ怒ってんじゃん

そんだけ俺のコト嫌いって………さすがにちょっと傷付くぞ

「それ褒めてるだろ」

「……まぁ…フェイが俺のコト嫌いなのわかってるから、そんな詳しく嫌いなトコ上げなくても」

きっとフェイは男なら男らしい人が好みなんだろう、友人のレイを見ても男らしくイケメンでカッコ良いもん

女の好みはセリカだろうけど

なんやかんや言っても寂しいなって顔に出てしまったのかもしれない

フェイは慌てて

「いえ!大嫌いって言うのは…また違うと言いますか……セリ様…」

俺の頬に触れて顔を覗き込む

……フェイは変な奴だ

俺のコト嫌いなくせに、守ってくれるし助けてくれる

レイと2人っきりになれないのは、強さを失ったレイが俺を守れないからいざって時は代わりに守ってほしいってフェイにお願いしたから一緒にいるコトになってて

いくら友人のレイのお願いだからってフェイなら断れるのに、嫌いでも守ってくれるなんて…変じゃん

って言うか……嫌いなのに、キスしたり…慰めたりしてくれたのは…なんで…?

嫌いな俺を寝取るなんて…

俺が苦しむ姿を見たいからか、納得

「そういやレイ、今度イングヴェィとコンサートするって話だけど日は決まったのか?」

イングヴェィとレイも仲良くはないが、お互いの才能は認めているからたまにイングヴェィの城でコンサート開いてるんだよな

レイの生演奏とイングヴェィの歌声が合わさると感動しかない

この世の感動と奇跡の音楽

レイの曲が素敵すぎるだけじゃなく、イングヴェィの透き通るような綺麗な歌声は人間離れした天射す光のよう

明るくて元気な歌って踊れるアイドルの俺と違って、クラシックとバラードで凄い良いんだよ楽しみすぎる

「日はまだ決まっていないんだが、イングヴェィさんにしか歌えない新曲に自信があるから是非セリに聴いてほしいんだ」

「うん!絶対聴きにいく!!超楽しみ」

「あぁそういえばレイは音楽の天才でもありましたね

全てセリ様に贈る曲で有名な、愛の曲ですよね」

えっ!?そんな………かもしれない

いつもレイの作った曲を聴く時、俺のために作った曲とか俺を想って作った曲とかしか聞いたコトない…

レイの音楽は全て俺で出来てるのか……恐れ多い…

そりゃ歌声だけじゃないイングヴェィにしか歌えないわな、セリカへの曲だもん

「セリがいないと曲は作れないが、そんな事を誰かに言った覚えはないような」

レイは俺に出逢う前は音楽はそんなに興味がなかったそうだ

作曲もしたコトがないし、曲が浮かんできたコトもないと

レイが音楽をはじめたきっかけは俺との出逢い

俺と出逢って曲が次々と浮かんでくるらしい

そんな天才のレイに影響与えたのか俺…もしかして俺って自分が思うよりスゲーんじゃないだろうか

魔王の香月の恋人ってだけでもスゲーし、神族の和彦の恋人もスゲーし、伝説の存在のイングヴェィと特別な関係(自分であるセリカが)なのもスゲーし、そもそも勇者だし!?

思ってたより俺ってスゲーじゃん、ヤバいな

「2人の関係を知っている人なら気付きますよ

レイの曲はコンサートで聴いた事はまだありませんが、音楽室で何度も聴いて気付きました」

そのコンサートは私も行きますとフェイもレイとイングヴェィの音楽を楽しみにしてるみたいだ

「へぇ~フェイに音楽を嗜むなんておしとやかなとこもあるのか

クラシック系だから寝るんじゃねぇの?」

アハハといつも意地悪言われるから言い返したら、口に指を突っ込まれて舌を引っ張られた

「ぃっ…いひゃい……!?」

「私でも音楽の良さはわかります、生意気です」

それはこっちの台詞じゃボケ!?いつもいつも生意気言ってんのオマエだろ!?俺年上やぞ!!!

「フェイ、やめてやれ嫌われるぞ」

「………嫌われたいんですけど…

次生意気言ったら噛みちぎるか、引っこ抜くか選ばせてあげます」

レイに言われると素直にやめるんだよなコイツ、まぁ和彦に言われても主人だから必ず従うが

俺が言ってもやめてくれないどころかエスカレートしかしないのに

「いたた…クソ、暴力反対!!」

引っ張られた舌は解放されたが、ちょっと痛みが残る

……ん?この気配……

ある程度の距離まで近付くとその気配を感じるコトができる

誰よりもいち早く気付けるのは俺だけ、レイもフェイもまだ気付けない

魔族の気配…それが誰の気配かまで知っていればわかる

「ちょっと…別行動で」

レッスンの途中だったが、それどころじゃない

レイとフェイも一緒には連れて行けない

だって、その気配の相手は香月だから

本気の香月だと今は回復魔法を封じられる俺が2人を守れる自信がない

「しかしセリ」

「大丈夫、この国からは出ないから心配はないよ」

レイもフェイもついて来ようとしたが、ここにいてほしいと言って俺は気配のする方へと走る

近々和彦と一緒に香月に会いに行くって話はしていたが、まさか香月の方から来るなんて

どうして香月が死者の国に向かって?

もしかして本気で俺を殺しにきた…?

離れていればその衝動はないって話だったのに……

でも、不思議だ

香月から殺意や敵意を感じない

それじゃあ…あの呪いみたいなよくわからんやつを克服できたとか?

とにかく会って確かめたい

死者の国の出入り口近くまで来ると和彦が待っていて止められた

「和彦も…香月の気配に気付いたのか」

「セリくんなら来ると思ったよ

忘れたのか?今の香月にセリくんが会うのは危険だ」

「忘れてねぇけど…

香月がわざわざ来るってコトは何か状況が変わったってコトだろ?

心から支配されて俺を殺したいってワケじゃないんだもん

何も変わらずに来るコトはない」

「セリくんは良い方に考えてるだけ

もしかしたら悪い方に変わったかもしれない

オレが先に香月と話すから、セリくんはここにいろ」

俺は香月のコトを信頼してるから、それが和彦にしたら危なっかしく見えるのかもしれない

俺がもっと警戒して慎重なら、わざわざ和彦は出てこない

香月相手なら誰より俺が1番強いから

ここは和彦が心配してくれるなら任せるしかないか

「…わかった…気を付けて」

「オレの心配するならセリくんも香月に自信がないんじゃ?」

「そういうワケじゃ…」

香月のコトはずっと昔から…知ってるけど、信頼できるのは俺のコトだけ

他の人にどういう対応するかはまだよくわかっていない

永遠のような生まれ変わりの繰り返しも、他の人が関わるのは今回がはじめてだからだ

和彦は上手くやるだろうし、香月も俺の知り合いってわかってるからマズいコトはしないだろうけど

どっちもバカじゃないが…不安だ

和彦が先に香月に会いに行き、俺は待つコトにした

大丈夫だろうか…香月がここに来た理由も気になるし

えっ…俺に会いたかった?

和彦と旅行の後に暫くは香月と一緒にいるつもりだったけど、なんやかんやあってちゃんと会えてないし一緒にいる時間がなかったから

そんなに俺に会いたかった?だったらスゲー嬉しい

ポジティブに考えながら待って暫くして、和彦が香月と一緒に来る

目で確認できる距離にいるのに、香月からは殺意を感じない

おぉ…!これは克服しているのでは!?

大丈夫ってわかった俺は2人へと駆け寄る

「香月!よかった…目の前まで来ても…変わらないね」

「セリ」

いつもの香月だ

……久しぶりでちょっと緊張するな…

ずっと会いたかったし、でも久しぶりだから甘えたくても甘えづらい…!!

「この姿ならなんとか抑えられているようです」

香月は人間の姿で来てくれた

いつも見慣れてて気付かなかった

香月は人間の姿になるのがあまり好きじゃないけど、俺と一緒にいる時で魔族以外の種族がいる時は気を使って人間の姿でいてくれる

魔王の姿だと、そのオーラと言うか雰囲気と言うかそこにいるだけで周りに強い恐怖を与えてしまいその恐怖で死人まで出るためだ

勇者の俺でも恐いって感じるが、そこは好きな気持ちが勝って大丈夫になった

人間の姿になってもその近寄りがたい雰囲気はなくならない、死人が出るほどの恐怖は抑えられるってワケだ

でも、香月は見た目が超美形で高身長だから人間の姿の時は離れた場所からもやっぱりモテてる

人間の時と魔王の時とそれほど姿形の違いはないが

魔王の時はそれで魔族の女性達からの憧れだし

なんで俺の周りってみんなスゲーモテるんだろう

「セリくんも尋常じゃないくらいモテるじゃん、男から」

和彦はたまに俺の思考を読みやがる

「男からってのは嬉しくねぇし…そんなモテてないぞ」

「みんなセリくんが好き」

「それはオマエ達だけ」

偶然にも周りに集まっていただけ、いや運命か

どの前世もホントにモテたコトないし、恋人も香月だけだったから

今が不思議なくらい

「でも、抑えられているだけってコトは解決したワケじゃないのか…」

「わかった事はあります」

「えっ何!?」

そこから何か解決方法が見つかるかもって香月を見上げると、香月は俺の腕を掴んで自分の方へと引き寄せた

…ん???

「セリは連れて帰ります」

解決方法は!?

「もう二度と渡さない」

香月が俺の肩を抱く手に力がこもる

急な思いもよらない発言に固まって思考が停止する

和彦も一緒で、先に言われた意味がわかった和彦は香月を睨み付けた

「………あ?」

一瞬で和彦がキレてるのに気付いた俺もハッとして慌てて間に入る

あの薄情でヤバいけどなんやかんや言っても滅多に怒らない和彦がキレてる…

「ちょ、ちょっと香月それは無理だぞ!?」

気持ちは嬉しいけど、誰にも渡さないなんて言われたら嬉しいけどさ

俺達はそうじゃないだろ!?!?!?!?

ってか話が変わってないか!?

「この男は信用なりません」

「それはこっちの台詞だろ」

ピリつく空気が激痛のように突き刺さる

この2人が本気で衝突したら世界が壊れるぞ!?!?!?!?

「大人しく引き下がらないなら」

「その手を離さないなら」

だーーーーーーー!!!!!?????挟まれてこえええええええ!!!?

やめろ!!!!!????

「落ち着け2人とも、喧嘩するなら2人と別れるぞ!?」

会話の内容からして俺のコトだってのはわかる、ならなかったコトにして喧嘩を収めるしかねぇんじゃ…

別れたくないけど、そうでもしなきゃ止まらないなら…

「「セリ(くん)の意見は聞いていない、関係ない」」

………知ってた

そうだった…コイツら俺の気持ちは関係ないって考えだった

俺が香月を和彦を嫌いでも拒絶しても、何があっても離さない

別れるとか離れるとか俺に選択権はない

コイツらが俺に飽きるか愛想が尽きない限り俺は逃げられないんだ

いや、嫌われたくないし捨てられたくないけど……複雑

「とにかく待てって」

俺は押しのけてお互いの距離を取らせた

「香月がそう言うにはそれなりの理由があるんだろ

俺が話を聞くから和彦は一度下がってくれるか?」

香月の話を聞くと言うと、和彦は俺の顔を立てて一度引き下がってくれた

香月に釘をさして

「…話すのはこの国の中でしろ、外へ連れ出したらセリくんが止めても聞かない」

それだけ伝えて和彦は姿を消した

あれは相当怒ってるな…あとでご機嫌取りしなきゃ

まぁ和彦が怒る気持ちもわかる

信用ならないって言われて二度と俺と会わせないなんて、俺だってキレるわ

でも、香月には私情以外の理由が必ずある

香月は俺を好きな愛する感情以外はない、嫉妬もしないし独占欲もない

つまり、和彦が何で怒ったのかも感情としてはわからない

どうしたら何を言ったら相手がどんな感情を持ち反応するかはだいたいは頭ではわかるみたいだが、それがどんなものかは感じられない

だから香月がそういう理由じゃないとわかる

香月と2人になって俺は詳しく聞くコトにした

「香月…和彦が信用ならないって、何か理由があるんだよな」

和彦が信用ならないなんて……俺は信頼しきってるんだけど…

「セリ、この得体の知れないものですが」

俺を殺したくなる武器だっけ、しかも俺の回復魔法無効にしてくる超厄介な呪いみたいなやつ

「微かに和彦の気配を感じるのです」

「……………。」

あまりに香月が真面目に言うから時が止まる

いや香月って一切冗談とか言わないって知ってるけど

「………ん?」

いやいや…ないだろ、なんでよくわからん呪いみたいなやつから和彦の気配がするんだよ

関係ないやろ!!!!!!????

アイツは呪いなんてまったくわからないし、魔法関係だってからっきしなのに

「何故かはわかりません

キルラに聞いてもわからないと言っていたので

セリに話しても信じて貰えないでしょう

それでも構いません

私は和彦からセリを引き離す」

香月は…和彦が敵だって言うのか?

和彦とは前の世界からの付き合いで長いんだ

香月より俺の方が和彦がどんな奴か知ってる

だからと言って、どんなに和彦は信じられると訴えても香月は聞かない

説得…難しいかもしれないが、やってみるしかない

俺は和彦と別れないし離れたくない

俺の恋人は香月と和彦だから、2人のどちらか欠けるなんてありえねぇだろ

そうしたのはオマエ達2人のくせに、いまさら関係を変えるなんて勝手すぎる

俺のコト振り回しやがってふざけんなっての

俺は2人と付き合うコトに悩んで、やっと受け入れたって言うのに

そっちが勝手するなら、俺だって絶対に今の関係を壊させたりしねぇからな

「和彦は信頼出来る男だ

俺達とは違って特別だって、和彦は運命に抗える奴だって言ったのは香月とイングヴェィだぞ?」

実際に和彦と関わったコトで俺は永遠の似たような運命の生まれ変わりの繰り返しが、今回だけかなり変わったんだってわかってる

こんなにたくさんの仲間に出逢えたコトなんて一度もなかった

23歳で死ぬ運命も、みんなとなら乗り越えられるって信じてる

「えぇ…その時まではそう思っていました

ですが、本当にそうでしょうか

運命の結末は変わらないかもしれない

前の世界で貴方は和彦に殺されたと言っていましたね」

香月に聞かれて、ズキッと胸が痛む…

思い出したくない過去の1つだ

「ッ…そうだけど」

「何故、急にそのような事をしたかわかりますか?」

聞かれて、答えに詰まる……

俺は思い出したくなくて深く考えなかった……

改めて言われると……おかしい

和彦は俺のコトが好きでたまらなくて気付いたら殺してたって、それを凄く後悔したから…って…

再会した時に聞いたけど……本当にそうか?

俺の運命が和彦をそうさせたんじゃないのか……?

今までの前世は仲良い奴らがいなかったから、仲良い奴に殺されたって経験がないから

仲良いなら殺されないって勝手に思い込んでないか?

そもそも、レイは俺に惚れていながらも2回も俺を殺したじゃないか

「それは和彦の意思ではなく、セリの運命がそうさせたとしたら…」

やっぱり…香月もその考えに至ったのか

信じたくないが……なくはない話だ…

逃れられないバッドエンドの運命か……強力すぎ

「もうあまり時間がありません

誰かが貴方を殺す、23歳の貴方を

今回の運命も変えられないかもしれない」

自分が自分を殺すか、誰かに殺されるか

いつもそうだった

病気や事故では死んだコトはない

今回は誰が俺を…そんなの疑心暗鬼になる

「……そんなコトありえねぇ…

今回は…今回だけは、いつもと違うじゃん

似たような運命を繰り返してきたよ

でも今回だけは、みんながいる

香月だっていてくれる

今度こそ変われるんだよ

俺はそう……信じてる

みんなともっと一緒に生きたいから」

なんて、願望だ

こうなってほしいって願い、保障じゃない

「私も阻止したい…

生まれ変わっても必ず出逢えるとわかっていても……

いつも守りきれない事が……」

目の前で、俺を殺されるコトもあった

離れていて殺されてしまったコトも

香月は全部覚えてる……

俺は人間だから生まれ変わったら記憶はリセットされる

今回は前世の宿でたまたま全ての前世の記憶が蘇ったから覚えてるだけで

本当なら…俺は香月のコトも忘れて……また1から……

俺が香月だったら、ずっと辛いかも

いつも恋人を守れず死なせてしまうって、気が狂いそうな想いだ

香月の辛い気持ちを知って、どうしようもない気持ちが溢れて

静かに香月にもたれかかる

「香月……

香月は俺のコトを想ってくれてる

でも、他の人と離れるなんて…それじゃダメだ

それこそ香月の言う俺の運命が仕向けた変わらない最悪の結末かもしれない

誰かを疑うくらいなら……結局、俺が死ぬ運命を変えられないなら

それなら…みんなと一緒にいたい

どんなに傷付いても、大好きなみんなと一緒にいる

俺は大好きなみんなを信じてるから

香月だって…守ってくれるだろ?」

香月の顔を見上げる

まっすぐと俺の目を見て離さない

香月の腕が俺を優しく抱き締めてくれる

「…今度こそ…」

うん…きっと香月なら大丈夫

抱き締め返して香月の胸に顔を寄せる

香月がいてくれるから俺はずっと何度も生まれ変わる最悪の運命を乗り越えられてるんだよ

死んで生まれ変わっても必ず香月に出逢って…また俺は香月に恋をする…大好きになる……

それだけでいつだって死んでも構わない

最悪ね、最悪

絶対死なないでみんなと一緒に生き抜くのがハッピーエンドだから

「和彦も同じコト言うよ

それにわからないなら、今度は香月に殺されるかもしれないじゃん…ね……

でも、俺は例え大好きな誰かに殺されても構わないから

疑って距離取って死ぬより、信じて大好きなまま死ぬ方が良い

ううん…そもそも俺が死ぬなんて認めない

今度こそ、上手くいく

生きてみせる…から」

「………それは和彦から引き離すなと」

「そういうコト、レイも俺を殺した前科あるから疑ってるだろうけど

俺はレイのコトも信じてるから」

「……わかりました

私が守り抜けば良いだけの事です」

「そうそう、わかってくれて嬉しい」

説得無理だと思ったけど、なんとか上手くいってホッとした~~~!!!

香月が俺の肩を掴んで顔を近付ける

……ぁっ…久しぶりで……緊張する

いつまでも香月には慣れない

いつまでも初恋って感じだ

ドキドキが大きく熱く震える…恥ずかしさで突き飛ばしたくなるけど

勇気を出して受け入れる…ちゃんと俺も好きだって応えたいから

目を閉じると、香月の唇が触れる

……死にそう…死なないって決めたばっかなのに、ドキドキだけで死にそう

香月……大好き…大好き…死ぬほど愛してる

「今日から一緒に」

「俺も……あっダメだ、今日は先約があるから」

一緒にいたかったけど、レイと約束してるんだった

今日はレイと一緒にいるって

「ごめん香月、でも明日からなら暫く一緒にいよう

約束だったし…」

和彦と一緒にいすぎたから旅行の後は暫く香月と一緒って話だったもんな

夜は和彦に香月のコト話さなきゃいけないし

「約束しましたね」

香月はまた明日と俺の額にキスしてくれる

お返しに香月の頬にキスをして、俺はレイとフェイの所へ戻った


少しだけレッスンの続きして部屋に帰る

夜は会えないから後少しだけかな、レイと一緒にいられるのは

「でも2人っきりじゃないんだよな…」

レイから今日は一緒にいようって言われたけど、ずっとおまけのフェイが付いてる

いまさらだが、さっき香月とイチャついてたくせに今度はレイとイチャつくとか俺って切り替え凄すぎねぇか

そうじゃないと恋人2人って無理だけどな、増えるかもしれないのに

慣れたよなこの気持ちの切り替えも

「気にせずイチャついてください」

「気になるわ!!!!!」

「そうですね、私は寝取られフェチではないので目の前でイチャつかれるのはちょっと」

「どっちだよ!?

ってか、人前ではイチャつきたくないんだよ俺は」

「いいですねそれ、今度私がセリ様を寝取る時は和彦様とレイに見て貰いましょう」

はいー俺が嫌がるコトはなんでもやる変態クソサド野郎、嫌いだわ~フェイ

コイツとまともに会話交わせる奴いんの?

なんでレイはコレと友人関係築けるんだ

「ま、いいや

明日から暫く会えないよ」

「良いとセリ様から許可を頂きました」

オマエに言ってねぇ、それじゃねぇ、黙ってろ

「暫く…和彦さんかい?」

「いや、香月と」

「そういや、香月さんと前から約束していたな

…そうか…暫く……」

レイは少し考えると、フェイに部屋から出るように言った

「嫌です、私も混ぜてください」

まだ夕方だから少しならレイと2人っきりで大丈夫でも、フェイは仲間外れにするなと言って居座る

「おいおい空気読めよ、今からスゴロクして遊ぶんじゃないぞ」

そう俺が言うとフェイに首を掴まれ引き寄せられると、そのままキスされた

「こういう事…レイとだけするのはズルいです」

笑えよー!?俺のボケになんか言ってくれよ、つまんねぇぞオマエ!!

つまんないのは俺か

「ふ、ふざけんな!なんでオマエともしなきゃいけねぇんだよ」

パッと離れてレイの後ろに隠れる

「いつも和彦様と香月様となさってるではありませんか」

いつもはしてねぇよ!!たまにだよ!!俺だけしんどいし大変だもん!!

「だから何!?フェイは関係ないじゃん!?

レイからも何か言ってやれ、アイツ本気やぞ」

「そうだな…いつもセリが香月さんと和彦さんとしてるのはオレも気になるな

一度くらいは…」

だからいつもじゃねぇよ…

「言ってましたよ和彦様、いつか5Pしたいって」

「殺す気か!!!!!!!!!!????????」

レイは俺を理解して合わせようって思ってくれてるのは凄く嬉しいんだが、それはいきすぎだ

「いつかはするんですから、いいじゃないですか

今日は3人でも、最後まではしませんし」

レイが大悪魔シンの影響で俺が好きになってると思ってるから、シンを倒して俺の本当の気持ちを聞いてからって言ってたからフェイは配慮してる

キスまでしかしない

コイツ配慮なんて出来たんだ……

いやいつかするって決定なのか!?恐ろしいぞ!?

「レイとイチャイチャしたいのに…

それにオマエは俺のコト嫌いじゃん、なんでそんな積極的なんだよ」

「………セリ様の嫌がる顔が見たいからですが?」

答えになってるようでなっていない……!!

「さて、長話の暇はありません…夜になる前に」

フェイはいつの間にかレイの後ろに回り込んで隠れていた俺を捕まえる

引きずられるようにベットへと放り投げられた

もっと優しくしろや!!ってフェイはそういう奴じゃなかった

「うーん…ただ仲良く分け合って、ってのは面白くないですね

こういうのはどうですか、レイ?

力付くで私からセリ様を奪ってみてください

出来なかったら、お可哀想に暫くおあずけです」

勝手にルール決めて勝手に仕切るフェイ

「待て、それはズルいだろ!レイは力を失ってるんだから力付くでフェイに敵うかよ!?」

「ハンデは、私はセリ様しか見ないです」

自分は無防備だって言いたいのか

「オマエのお遊びに誰が付き合うか、レイそんなの無視だ」

ベットから下りようとするが、そう簡単にフェイから逃げられはしないよな

フェイは跨いで動きを塞いで、レイに背中を見せた

「無視出来ます?セリ様は無理でしょう

一度も私から逃げられた事ないですよね」

フェイに首を掴まれ固定される

その手は俺がいくら力を入れても外れない

無駄だってフェイの笑みがムカつく…

「そんな力で抵抗されても可愛いだけですって」

フェイの顔が近付いてまた唇を奪われる

突き放そうとフェイを押すが、抵抗するなと言わんばかりに掴まれた首の手に力が込められていく

これ以上暴れたら首折られるかも…苦しくなってきた……

自分の力が抜ける頃、フェイの手の力も緩んだ

「…さすがにその気で来るとは思いませんでしたよ、私を殺す気ですか?」

どうしたんだって思って見上げるとフェイは後ろを振り向いてレイの手を掴んで止めている

レイの手には短剣が握られていた

「前のオレなら手加減でフェイを抑えられても、今のオレは違う

フェイを止めるなら殺す気でやらないとな

それでもフェイに勝てるとは思っていないが、黙って寝取られるのを見ているほど大人しくはないぞ」

「わかっているじゃないですか…」

レイの本気の殺意は表情を見ればわかる

いつも優しいレイの爽やかな笑顔はない

いつからこうなった!?仲良く3人でって話だったろ!?

フェイはレイの短剣を簡単に奪い、さすがに背後を向けるのはやめたのか俺の隣へと寄り添って寝転んだ

自分で言っておいてハンデ解除するなんて卑怯な奴

「でも短剣を奪われたらもう私は殺せませんね」

そんな重い展開だったっけ!?殺し合いになってる!?

「私に武器を渡したら人質にして手も足も出ないようになるかもしれないと考えなかったのですか?」

フェイは短剣を持った腕を俺の肩に回して引き寄せると、そのまま首元に突き付けてきた

フェイに抱かれるようになって離れたいが、ちょっとでも動いたら刺さる距離…!?

「セリ様も動いたらいけません、うっかり傷付けてしまうかもしれないので

まぁ私はその方が好きですから、私を興奮ささせたいのなら動いても構いませんよ」

本気でコイツ俺を刺す気だ…

息を呑むだけでも短剣の切っ先が触れる

こんな時に回復魔法使えないのがフェイに良いように使われてるような気がするぞ

「レイは残念でしたね、そこで見てるだけになりそうです」

ちょっと動いただけで切っ先が突き刺さりそうなのに、フェイが動くと揺れもしない

フェイは短剣を持つ反対の手を俺の服の中に入れて肌が撫でられていく

…や…ヤバい…反応しそう…そしたら短剣が首をパックリ切るってわかってるのに…

「フェイ……やめて……危ないから」

「嫌です」

フェイの足が俺の足に絡んで、開いた片足の太ももをフェイの手が撫でた

少しずつ…感じてる……その手つき…やらしすぎる

嫌…レイが見てるのに…

「もっと力抜いたらどうですか?」

フェイの囁く息が耳にかかってゾクッとする

そのまま耳を齧られて、思わず身体が反応すると短剣の刃が首を軽く引き裂いた

「動いたら駄目って言いましたのに

傷が残ったら和彦様に怒られるんですけど」

齧られた部分の耳と引き裂いた首の傷に熱い痛みが走る

我慢できない痛みじゃないが、いざって時はフェイは短剣を離してくれると思ってた

でも甘かった

コイツは俺が思ってるほど優しくない

「ぁっ…」

首の傷の血が垂れるとフェイはそれを舐め取って吸う

「んんっ…!?」

痛いのか気持ち良いのかわからない感覚

「白い肌に映える紅…綺麗ですよ

そんなに深くないので早く血が止まりますね、もっとほしいです」

フェイは傷口に爪を立て広げて、また滲み出る血を舐め取る

「ッそれは痛い…!!やめて、フェイ……助けて、レイ」

レイはフェイの気がそれるのを待っていたのかもしれない

血を見て興奮したフェイはレイに短剣を持った手を掴まれるまで気付かなかった

「……ですが、私から短剣を奪い取る事は出来ませんよ?」

フェイも自分が我を忘れていたと気付いたようだ

「奪えるとは思っていない

こんな事はやめて元に戻そうじゃないか、3人でするって話だったろう?」

「いいですよ、今のレイでは張り合いないですし仲良くセリ様を分け合いましょうか」

レイがフェイとは反対側から寄り添う

フェイは短剣を手放してくれたが、2人に挟まれて…嫌な予感しかしない

「こら!俺の意見は無視か!!?3人ではしないって言っ」

レイとフェイが同時に俺の口を手で塞ぐ

「セリ様も3人でするのが好きですもんね」

「たまには良いじゃないか」

よくないよくないよくないって口を塞がれて何も言えない

勝手に都合良く2人が好きに言う

合図もしてないのに2人が左右から俺の頬にキスする

「早くしないと本当に夜になります」

「暫く会えないなら手加減しなくていいか」

レイ!?どうした!?オマエはもっと優しい奴だった!!

コイツらDV気質同士合うのか……

フェイに耳を責められ、熱い舌を感じてゾクゾクが増していく

「んっぁ……」

レイは俺の服をめくると、ヘソにキスして舌が這う

レイの手がズボンにかかって、ハッとする

「ちょ、ちょっとそれはダメだろ…!?」

って言ってもレイは聞いてない

「まっ…待って!?それはやりすぎだって…!?今日はそんな話じゃなかった…あっぁっ…レ…イ…んっ」

上も下も同時に責められて…おかしくなる……何も考えられなくなるくらい……気持ち良い……

あぁもうむちゃくちゃだ

フェイは止めないし、力を失ったからと言って俺はレイの腕力には適わない

夜になるまで2人は俺が止めても聞かずに楽しみやがった

……挿れられはしなかったが、そこは守ってくれた


夜になる少し前にやっと解放される

キッとレイを睨むと

「すまないセリ…あまりに可愛かったから止まらなくて……つい」

そんな怒らなくてもとレイはいつもの優しい感じで俺を宥める

「言い訳するんじゃねぇ!!!!???」

オマエら勝手すぎ、途中まで怖かったし

フェイなんて本気で喉元切るし

「やっぱり…フェイのコトは……大嫌い…」

思い出すと、やっぱりフェイは怖い

少しは良い奴かもって思ってたのに…思ってたから……涙が出るほど悲しいのかも

全然良い奴じゃない、いつも俺のコト傷付けてばっかだもん

痛いコトいつもするじゃん……

俺が泣くとレイは涙を拭いてくれる

「……その言葉は傷付きます」

「自業自得だろ!!?なんで嫌われないと思うんだよ!?」

「それから今日はレイも嫌い…」

目の前の泣いてる俺を心配するレイを突き放す

「セリに嫌われたら死ぬしかない…」

極端!!フェイの影響なのかもしれないが、話が違うって言ってるのにやめてくれなかった

「ふん!」

散々好きにやっといて、この世の絶望みたいな自分達が可哀想って被害者面の2人を無視して俺は部屋を出た

どう考えてもアイツらが悪いだろ!!

別に俺は、嫌よ嫌よと言いながらもまぁ3人でしてもいいかなって思ってたよ

でもあれは違うだろ!?やりすぎなんだよ

首の傷がズキズキ痛むと怒りが収まらない

和彦の部屋で風呂に入る

もう少ししたら和彦帰って来る時間か

浴槽に浸かりながら疲れを癒やす

暫く会えないって言ってるのに俺を怒らせるなんて

まぁ……2人を本当に嫌いになったワケじゃないけど

レイはずっと我慢してるようなものだから止まらなくなるのも……ちょっと冷静になった今なら、わかるかな…

フェイはまったく理解できん

もっと優しくしてくれたら……いいのに

「セリくん風呂か、それならオレも一緒に入ろうかな」

考え事をしていたら和彦の声が聞こえた

「うん、いいよ

俺も入ったばっかだから」

今日はいつもより早い帰宅だな

やっぱり和彦もさっきの香月とのコト気になるよな

少しすると和彦が入ってきた

湯煙でぼんやりとしか見えないけど、和彦が傍にいるって落ち着く

「セリくん元気ないな、香月と何話したんだ?」

「あっそうだ」

元気ないよ…本当

酷い目に遭った……俺だけ1回イカされたし…もう最悪

「それにこの首の傷……フェイか?」

香月といたハズなのに、なぜフェイの痕跡が…って思うじゃん?俺もそう思うわ

「大したコトねぇけど…アイツら嫌い…」

「あいつ、ら?」

俺は和彦に甘えるように抱き付いた

「和彦…俺もうヤダ…アイツら2人になったら嫌い

フェイの飼い主はオマエだろ!?ちゃんと調教しとけよ!」

「してあれだ」

和彦にとっては完璧な仕上がりってコトかい、臆せず主人の恋人寝取ってくるもんな

「そんなに嫌なら処分してもいい」

「ウソ言わない和彦がそれ言うとめっちゃ恐いからやめてくれ!?」

絶対うんって言えないやつじゃん!?

フェイは…嫌いだけど、いなくなってほしいとまでは思えない…

酷い奴だし意地悪するし痛いコトするし泣かせてくるし、とにかく最悪の権化みたいな鬼畜サド野郎だけど

………優しい時のフェイのコトも知ってるから…知らなきゃよかった…!ずっと非情でいてくれればよかったのに

まぁもう近付きたくないけど

「ご飯食べに行こうか

そこでゆっくり話を聞く、香月の話も一緒に」

「夜デートだ!うん行く!!楽しみ」

そうして俺達は風呂から上がると、近くの夜の街まで出掛けた


レストランでご飯を食べながらお喋りする

フェイと何があったのか聞かれたから話すと

「それはフェイの愛情表現だ」

さすが飼い主の和彦は、言うコトが違うな

「歪みすぎだろ!?受け止めきれねぇよ!?

ってかフェイは俺のコトが嫌いなの!!だからそんなコトするの!!」

「セリくんの身体に傷を残さない、殺さない、を守ってる

そのくらいの傷なら薬塗っておけば綺麗に治るよ」

「そういう問題じゃねぇんだよ

オマエ達の間で決めたコトな!俺は知らないから!!」

和彦がわかってくれなくて膨れる

俺の味方誰もしてくれないじゃん…えっ俺がおかしいのか?

「わかったわかった、フェイにはやり過ぎるなと言っておくから」

「はいー!それ前も聞いたー!変わってないどころかエスカレートしてんだよ飼い主さんよ!!

首輪ちゃんと付けとけや!!」

「セリくんはアルコール入ってないのに酔ってるみたい」

「オマエに俺の気持ちがわかるか!?」

人に指差してはいけませんを和彦にやる

その突き出した左手を和彦は掴むと指を絡めてくる

「わかるよ、オレの事すげー好きなんだって」

言われて顔がボッと熱くなる

和彦とお揃いで付けてる指輪が…目に入る

「いつもオレと2人で会う時は付けて来てくれて嬉しい」

「っ…今は……そんな話じゃ、ない……」

話そらして俺の気もそらそうっての…?

どうしよう…恥ずかしすぎ…和彦の顔見れない

フェイとレイのやったコト一瞬でどうでもよくなった

だって…お揃いの指輪嬉しいんだもん

プロポーズされたコトも昨日のように思い出す

うん…香月が疑う和彦が俺を殺すなんてない

この指輪に誓ってくれてるから…そうだよな和彦

香月と話したコトは全て隠さずに伝えるコトにした

それと一緒に俺の考えと気持ちも

「つまり…香月もセリくんも、またオレがセリくんを殺すかもしれないって?」

「和彦だけじゃないよ…誰でもありえるかもって話で

それに俺は和彦のコト信じてるし!!みんなのコトも信じてるぞ!!」

和彦はとくに機嫌を悪くしたり怒ったりはなく、和彦自身もその可能性はなくはないと考えてるようだった

俺の運命が、今までの運命から外れようとしてる俺を無理矢理にでも戻そうとするかもしれない

でも…もし、香月でも和彦でもレイでも、俺の大切な誰かが最後に俺を殺しても恨んだりしない

そうさせたのは俺の運命だってわかってるから

それまで幸せだったし、だから……もしその時が来て、叶うならみんなと一緒に生きたいけど

死んでも構わない

また生まれ変わって1からになっても、大好きな人達と出逢るなら俺は自分の運命を受け入れて

限られた時間の中で幸せになって永遠を繰り返す

大丈夫……絶対大丈夫、もう不安なんてないから

「オレは絶対にセリくんを殺さないと思っているが…その時になってみないとわからないな

前の世界で、セリくんの事が好きすぎて殺したんだって思っていたが…それはそうさせられていたのかもしれないなら」

「和彦……」

「……オレはセリくんを殺さない、絶対に」

「そんな簡単に言って…はじめてのウソになっちゃうかもしれないぞ?」

「ナメられたものだな、セリくんも香月も

オレがセリくんの運命に飲み込まれて思い通りに動かされると思うか?」

「前の世界じゃそうだったじゃん」

「過去は振り返らない主義だ」

「都合良すぎ」

「セリくんはオレが過去から変わらないとでも?

過去のその時のオレより今のオレの方がずっと強いよ」

自信しかない和彦の言葉を聞いてると、そうだなって安心感がある

俺は和彦のコト信頼してるし、万が一俺の運命に負けて俺を殺すコトになっても

和彦なら良いよ

ってくらいの気持ちでいようかな

ちょっと前までは好きな人に殺されるなんて死ぬほど辛かったからもう嫌だって思ってたけど、仕方ないんじゃ仕方ないよな

「それと、香月がかかってる呪いか?得体の知れないものにオレの気配を微かに感じるって話が気になるな

オレは魔法を使えないし呪いの類にも疎い

そんなオレがあの魔王の香月をコントロールするほど何かが出来るとは自分でも思えない

だが、香月は嘘を付くような男でもないし勘違いもないだろう」

「そうなんだよ、だからどうなってんだって話」

最後のデザートを口に含めると、甘さと旨味にとろける

甘いもの食べると幸せな気分になるな

あったかい紅茶にミルクを入れて飲む

「明日から香月と暫く一緒に過ごすんだったな」

考えてもわからないかと和彦は話題を変えた

「うん、オマエとの旅行の時から約束してたし」

「いつもなら香月は信頼出来ても、今回は心配だ」

「心配してくれるのはありがたいが、香月なら大丈夫だよ

俺は和彦と同じくらい香月を信頼してるから

本当にダメなら会いに来ないって」

は~美味しいもの食べてお腹いっぱい

和彦は10人前食ってた

「そうかもだが」

「運命で考えるなら誰といたって危ないって話になる

でも、みんなと離れるくらいなら俺は最悪のコトがあっても良い

万が一和彦にもう一度殺されるコトがあっても良いよ」

「オレはセリくんを殺さない」

「香月でもレイでもフェイでも…むしろ最期は好きな人を目に焼き付けて死にたいから、好きでもない奴に殺される方が嫌かな」

ガチャっと和彦は持っていたカップを音を立てて置いた

そして黙って席を立った和彦は俺の手を掴んで引っ張っる

「か、和彦?」

掴まれた手が痛い、ちょっと怒ってる…?

名前を呼んでも声をかけても和彦は返事をしてくれなくて、取っていたホテルの部屋に連れて行かれて2人っきりになるとやっと口を利いてくれた

「……セリくんが死ぬ時の話なんてしたくない…」

「…ごめん…気分悪くさせて」

でも、いつか来てしまう運命なら……どうせ死ぬなら…って考えてしまった

俺が和彦の立場なら気分悪くなるよ…

好きな相手が死ぬなんて…そんな話したくない

「オレはセリくんを殺さないし、誰にも殺させはしない

何度でも言ってやる」

「……うん…和彦…もう言わないよ」

「言ってもいいが、セリくんが不安になる未来にはさせないって事

ちゃんと覚えていて」

「わかった」

「気分を変えようか、明日から暫く香月に貸してやらないといけないからな」

和彦の中ではやっぱり俺は貸してるって感覚なんだ

お互いそう思ってそう

「このホテルの部屋もまた広くて豪華だな」

「セリくんと過ごすなら最高の部屋を取らないとな」

「ありがとう和彦、嬉しいよ」

別に俺は和彦と一緒ならどこでもいいんだけどな

出掛ける前に風呂入ったばっかだけど

寝る前にまた和彦と一緒にお風呂に入るコトになって、バスルームも広くてゆったりできる

「和彦の所もこれくらい広くて余裕があるバスルームだったら良いのに」

死者の国の城の部屋のバスルームは1人で入るには広い方だが、2人で入るには少し狭かった

「改装するか

5人くらい入れるくらいの広さにして」

「その5人で入るコトはねぇからな…」

大人数なら大浴場あるし

「いつか5Pする時のために

それならベットももっと大きい方がいいな」

「まだ言ってんの!?したくないが、するなら3Pまで!それ以上は死ぬから」

「死なないって……たぶん」

和彦が断言しないのはじめて!?いつも自信しかない和彦が自信なく答えてるぞ!?

和彦もわかってる、全員歯止めが利かない奴らだって…

「セリくんが他の男に寝取られてるのを間近で見たい」

「オマエが寝取られフェチなのは知ってるが、それに3人もいらんだろ」

「自分の恋人が複数の男から責められるって興奮する」

「まったくわかんねぇなオマエの気持ち」

「明日から香月にセリくんが寝取られるんだって想像しただけで…」

危ねー奴……

先に風呂上がろってバスタブから出ると和彦に手を掴まれる

「風呂から上がってからと思っていたが

ベットまで我慢できないな…セリくんとセックスしたい」

寝取られの話なんか無視すればよかった!

和彦が欲情してる!?

「…今日はちょっと」

この様子じゃまた朝まで寝かせて貰えないかもしれない…

明日は朝早くに香月と約束してるから早く寝たいんだが

「これから香月とは毎日ヤるのにオレは暫く我慢しなきゃいけないんだぞ」

「香月はオマエほど性欲強くねぇよ」

和彦の手が腰に回る

「それに香月に二度と渡さないなんて言われて、かなり頭にきたのに」

「まぁまぁそれはなんとかなったんだし」

やっぱ怒ってたか

「…セリくんが嫌ならしないが?」

嫌…なんて言えないじゃん…

いつもなら嫌、今日は我慢してって言えても、暫く会えないのに和彦に我慢しろってのは酷だよな

それに和彦に求められて愛されるのはやっぱり嬉しいし…

「……嫌…ではない…かな」

照れて答えると、和彦は一度俺から離れた

「うーん…たまにはセリくんからしたいって言葉が聞きたい」

そういやいつも和彦からだっけ

言わなくてもそうなるしな

「1年くらい我慢したら俺から言うよ」

「1年もセリくんを抱けないとか死ぬぞ

1ヶ月も我慢出来ない、1週間も無理

むしろ毎日したい」

「付き合いたてのカップルか!?」

オマエとどんだけ一緒にいると思ってんだ!?

「俺は和彦と一緒にいられるならエッチなしでも我慢できるぞ」

「……………。」

和彦が珍しく深く考えてる…

「…セリくんが傍にいるのに我慢する意味がわからない」

長いコト考えた結果わからなかったのか…

でも、そうやって考えてくれるだけ大きく変わったのかも

最初の頃より和彦は俺のコト大切にしてくれてる気がする

最初は俺の気持ちなんてお構いなしだったし、本当丸くなったよなコイツ

そして俺も和彦への好きが大きくなってる

「って言うか、和彦が俺から言ってほしいなんてらしくねぇじゃん

強引なオマエは俺が言う前に来るもん」

「レイがなかなか抱いてくれないから、セリくんから言ったって話を聞いて

セリくんから言われるってどんな気分なんだろってね

ふと思い出した」

……そ、そんなコト…い、言ったか…言ったよな…

言われると恥ずかしさが込み上げてくる

レイにしか言ったコトないもん…だってあの時は俺のコト好きなのに全然手出して来ないから痺れを切らして

好きなら……したいし……でも、今はレイのコトわかってるから言ってないしその時を待ってる

「だから、セリくんから言ってほしい」

「それ言わされてるってコトにならないか…言わねぇぞ」

「レイだけズルい」

「じゃあレイと同じくらい我慢するんだな、そしたら言ってやるよ」

数ヶ月我慢できるかな和彦に、ふっと俺は鼻で笑う

「無理だろうけど、俺は先に上がるよ」

和彦に背を向けてバスルームから出ようしたら後ろから和彦に押さえつけられた

「か、和彦!?」

「……セリくんの言う通りオレには無理そうだ

こうして目の前にセリくんがいるのに、我慢出来るなんてレイはどこかおかしいんじゃないか」

ガラスのドアについた手がひやりと冷たさを感じるのに、和彦に掴まれた手首は熱い

「それとも、セリくんを目の前にしたオレがおかしくなってるって?そうかもな」

あ…煽りすぎたかも…和彦に火を付けた俺が悪いかも…

首筋に熱い舌が流れるのを感じて小さな声が漏れる

「…ま…待って…和彦、それはおかしいって

だって和彦に出来ないコトなんて何もないじゃん

何でも出来る和彦なら、我慢だって出来るはっ!?」

背中を優しく撫でられてビクッと反応する

「確かに、我慢は出来るかもしれないが…したくないが正解かもな」

そういうコトで納得した!?

我慢したくない…か、和彦らしいよ

「わ…わかった…でも、ここじゃなくてベットに」

「後で」

止まらない愛撫が身体の熱を上げていく

俺だって和彦に我慢してほしいワケじゃない

和彦がしたいなら受け入れたいよ

でもいつも恥ずかしいし…自分からなんてなかなか言えない

レイだけズルいって言うけど、和彦とレイは違う

ズルくなんてないよ、レイはレイで和彦を羨ましがってるし

みんなのコト平等に愛してるつもりなのに…

「セリくんは後ろからされるのが好きだったな」

「あっ…そん…な…っ」

いちいち言わないでくれないか!?恥ずかしいから!?

もう溶けてしまいそうなくらいの愛撫からの

「深ぃっ……奥まで、入って…はぁ、ぁっあ」

普通の人じゃ届かない場所まで刺激されて…いつもどうにかなってしまう

暫く会えないから、和彦に一晩中いっぱい愛されて

俺も和彦のコト愛してるよ…

いつも…俺のコト大好きで愛してくれて、嬉しいし幸せだ

ずっとこの幸せな時が続けばいいのにな

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