171話『偽勇者の正体』セリ編

なんとか和彦が迎えに来てくれるまで何事もなくその日を迎えるコトできた

これもマールミのおかげだな

結局、フェイはマールミのコトは信用できないとしつこく疑ってるが何かしようと言うコトはない

「セリくん、無事でよかった」

国の外で待っていてくれた和彦に会えると心からホッとする安心感が得られる

「迎えに来てくれてありがとう和彦

俺は無事だけど…レイが……」

レイが一緒じゃないと見てわかる和彦はなんとなく察してくれて

フェイは俺を和彦に引き渡すと、すぐにレイを迎えに行くと言う

「それでは和彦様、セリ様を頼みます

私はレイを迎えに行きますので」

俺も心配だから行きたいと言いたかったが、レイのコトを思うなら大人しく待ってろしかない

それにしても、大悪魔には殺されないとなるとレイなら追い付いてくるハズなのに

まったくそんな気配がないのがさらに心配になってしまう

あの時…半分魂を取られたみたいになって……そのせいで動けなくなってるとか?

レイ……

フェイもその考えがあって迎えに行くと言って行ってしまった

友達だから出来る行動だよな…俺はもう永遠にレイの友達にはなれない……

「その娘は?連れて帰るのか?」

当たり前のように隣にいたマールミはやっと声をかけてもらったのが嬉しかったのか満面の笑顔で自己紹介

「はじめまして、生死の神様!

最近交代したそうで和彦様ですよね!!

アタシはマールミ、10歳です

女神結夢様の加護を受けた民の1人です

よろしくお願いします!!」

「よろしく」

「元は人間だったそうで、神様になっただなんて凄いです!尊敬します!!

大人の色香漂う和彦様を間近でお目にかかれる日が来るなんて光栄です!!」

あの和彦がマールミの勢いにちょっと引いてる…

女好きな和彦でも子供相手にはタジタジなのかもしれない

「補佐は女神セレン様とお聞きしております

とてもお美しい女神様と聞いているので、お会いできるのが楽しみですね!」

止まらない神様トークがもはやマニアレベルだった

セレンは見た目と違って腐ってるからな

子供は近付かないように

「美と愛の神フィオーラ様が死者の国で占いの館をやってらっしゃるとか、アタシも一度占って頂きたいものですねぇ」

「フィオーラが占いの館?そんな話は聞いていないが」

マールミの情報が本当なら無許可だな

その後の帰り道もマールミの神様トークが止まるコトなく炸裂

フェイと違って和彦は聞き上手だから、マールミの本来のお喋りな性格が止まらなくなってる

さすがの和彦も右から左に聞き流しながらの相槌だけになってしまった

和彦にこんだけお喋りする人も珍しいってか普通は無理だ

香月ほどじゃないが和彦も近寄りがたい雰囲気があるのに

スゲーなマールミ


無事に死者の国に帰るコトができて、俺達はその足で結夢ちゃんの部屋へ向かった

ドアをノックして返ってきたのはセレンの声だ

なんだセレンが結夢ちゃんと一緒にいるなんて珍しい

光の聖霊なら仲良いからよく一緒にいるのを見かけるが

ドアを開けると部屋一面に薄い本が並べられていた…無言でドアを締める

「部屋間違えたかもしれん…」

ヤバい…あれを片付けないとマールミを入れられねぇ

ちょっと廊下で待ってろとマールミに言うと素直に待ってくれる

そして俺は深呼吸して和彦と一緒にセレンのいる結夢ちゃんの部屋へと入った

「あら和彦様セリ様おかえりなさいませ」

セレンは何事もないかのような笑顔で言う

結夢ちゃんは俺達がいるコトも目に入らないくらい顔を真っ赤にして固まってしまっていた

「何やってんだセレン!?」

「結夢さんに私の趣味をお話しておりましたわ」

「やめてやれ!!結夢ちゃん困り果てて固まってんじゃん!?」

「えぇ!?セレンは結夢さんが一生懸命聞いてくださってるのかと」

セレンに相手の表情を読み取ったり空気読んだりできるワケがなかった

結夢ちゃんの目に入る本から片付けていく

和彦も片付けるのを手伝うと見せかけて読んでいた

「ふーん」

「読むな!!」

「今度この本と同じ事し」

和彦を突き飛ばして本を取り上げる

「オマエも出て行け!邪魔だ」

はじめてこういう本を見たが面白かったのにと和彦は笑いながら片付けを続けた

面白いってオマエがしたいだけだろ、それに付き合わされるのは俺だぞ

「はぁ~和彦様とセリ様のセットなんて眼福…

うふふセリ様は結夢さんの表情を読むのがお得意みたいですけれど、間違っていますわ」

「何がだよ」

「何も何もありません断言します!女子は皆さんBLが大好物なのですわよ!!」

「そんなコトないだろ!?」

まためちゃくちゃ言ってやがる!?

そうですわよね!とセレンは結夢ちゃんに詰め寄るが、結夢ちゃんは困った顔のまま愛想笑いで流そうとしている

いやいや、コイツはもうそんなんで気付くような奴じゃない

「結夢ちゃん、時にはコイツを殴ってでもわからせるコトもしなきゃいけないんだぞ」

「女は殴らないってセリくんがそこまで言うなんて」

「セレンは女と思ってない」

調子に乗らせてはダメなタイプだ

まぁだからと言って俺はセレンのコト殴らないし、それが調子に乗っておもちゃにされてるのかもしれねぇけど

「とにかく、結夢ちゃんが困ってるからやめてやってくれよ」

「セリ様がそうおっしゃるのなら…押し付けはよくありませんものね

ですが、セレンはいつでも大歓迎ですわ!」

いつ目覚めても良いんですのよとセレンは結夢ちゃんの手を取って諦めない様子を見せた

結夢ちゃんはやっぱり困ったように愛想笑いで流す

それじゃ危ない本も片付けたコトだし、マールミを呼ぶか

「結夢ちゃん、ちょっといいか

君に会いたいって子がいるんだ」

俺の言葉に結夢ちゃんは何かに気付いたような反応があって頷いた

さっきまでセレンに押されて気付かなかったみたいだが、やっぱり自分の国の人間のコトはわかるみたいだ

セレンには静かにするように釘を刺した

部屋の外で待っているマールミに声をかけて中に入ってもらった

「あっ!貴女様は女神セレン様では!?肖像画で拝見した時より実物の方がとてもお美しいです!!

お会いできて光栄ですセレン様」

マールミはセレンの姿に目を奪われて釘付けになる

女神と聞いて誰もがイメージする美しい姿、そのイメージ通りの女神がセレンと言われているみたいだ

それは俺もわかる、セレンは見た目だけは理想の女神の姿をしている

中身はどうしようもない大問題児だが…

「ほほほほほほほ」

めちゃくちゃ褒められたセレンは気を良くして調子に乗った笑いを飛ばす

「セリ様、この部屋にはアタシの国の女神結夢様もいらっしゃるんですよね?」

マールミは確認するように俺を見た

そうか、結夢ちゃんは姿が見えない女神だった…

俺とタキヤだけが結夢ちゃんの姿を見れていた

今は…違う…司る2つのうち1つを失って姿が誰にでも見えるようになってしまったんだ

それを何故かはマールミには言えないが…

結夢ちゃんはマールミの目の前まで近付いて視線を合わせるように屈んだ

「…………。」

マールミは目の前の結夢ちゃんの顔をまっすぐと見つめる

最初の一瞬はきょとんとした表情だったが、みるみる変わっていく

言わなくても…マールミには目の前の人が自分の国の女神様だってわかった

「……貴女様が…アタシの女神結夢様なんですね……

姿が見えない声も聞こえない女神様でした…

でも、アタシにはわかります

こうして見えても…

いつもアタシ達を見守っていてくださったのは貴女様だったんだって」

ずっとお慕いしていた結夢ちゃんに会えて嬉しいからなのか、それとも自分の国が変わり果てた後に会った結夢ちゃんの前で気が揺るんだのか

マールミの精一杯泣かないと我慢しきれなかった涙が小さく笑顔とともにこぼれ落ちる

「ずっとずっと…お会いしたかったです、結夢様」

きっとその小さな女の子の中には様々な複雑な感情が渦巻いて溢れ出してしまったんだろう

結夢ちゃんはマールミの心情を全てわかってると言うように自分の愛する人間を抱き締めた

「結夢様……帰ってきて…ください…」

結夢ちゃんに抱き締められるとマールミからの溢れ出す想いも涙も止まらなくなった

ずっと辛いのを我慢してきた、誰にも頼れず守ってもらえず

もうマールミにとって頼れるのは女神の結夢ちゃんしかいなかった…

結夢ちゃんはマールミの言葉を聞いて強く決心する

帰ると…マールミに強く頷く

俺は止められなかった…俺が結夢ちゃんを連れ出したからマールミの国は壊れてしまったんだから…

でも…今の状況で帰らせるのは…心配しかない

俺に視線を送る結夢ちゃんに俺は何も言葉をかけられなかった

行くなとも…

「はっ!?待ってください!!」

マールミは泣いて冷静になると、結夢ちゃんにストップをかけた

「帰るのは今じゃないです

結夢様にも事情があってここにいるんだってわかってますから!ねっセリ様?」

今度はマールミが俺に視線を送ってきた

「そうだ、今のタキヤの地獄の国に結夢ちゃんを帰すのは心配しかないし良くはならねぇ」

「そうじゃないんです…いえそれもそうですけれども」

マールミはなんでわからないかなぁって微妙な顔をする

「セリくん、そういうとこだぞ」

和彦まで!?何がだよ!?

どう考えても、結夢ちゃんの国はタキヤが支配して地獄と化しているのに今は帰らせられねぇだろ!?

いくら神族だからって万能じゃない、神族の影響は多少受けるだけで思い通りに国を変えられるワケじゃないって話だ

タキヤをなんとかしないと進まない話で、問題のタキヤは結夢ちゃんの加護で倒すコトも無理な無敵状態

俺だってちゃんと考えてるぞ、でもどうにも良い方法がないからお手上げなんだよ

何か打開策があれば…

「とにかく、今は帰る時ではありません

セリ様の言う通りタキヤ様をなんとかしない限り結夢様が帰られても何も変わらないでしょう」

結夢ちゃんは自分の国を捨てたワケじゃない

ずっと心配してるんだって気にかけてるんだってコトくらいわかる

マールミに会ったコトでその気持ちは一層強くなっただろう

でも今は危険だし、どうしようもないから俺は引き止めるコトしかできない

「それからお願いがあります…

アタシが結夢様のお世話をします

だからお傍に置いてください

アタシ…もう帰る場所がないんです」

結夢ちゃんはマールミを快く受け入れた

申し訳ないと頭を下げて…結夢ちゃんは自分は女神失格だと心を痛める

「結夢様、そんなお顔をしないでください

アタシは結夢様に守ってもらうだけが幸せとは思いません

結夢様だって幸せになっていいんです

アタシ応援しますから

そしていつかは一緒に国に帰りましょう

また結夢様の美しい平和な国で暮らしたいです」

マールミはどこまでも強かった

女神様を支える強い笑顔は、俯く女神様の微笑みを取り戻してくれる

よかった…結夢ちゃんもマールミも…

フェイはマールミを疑ってたが、もうその必要もないって言っておかないとな

俺は和彦とセレンに部屋を出ようとジェスチャーで伝える

暫くは2人で、マールミは話したいコトもたくさんあるだろうし

セレンは薄い本の入った紙袋を持って自分の部屋に帰り、俺は和彦と一緒に自分の部屋へと帰った


和彦は忙しい人だからあまり一緒にいられないけど、後少しは一緒にいられる時間があるって言ってくれた

「セリくんを迎えに行ったはずなのに、全然話せていない気がする…」

「う、うーん…まぁ、たまには

俺もマールミがあんなにお喋りな子とは思わなかったよ

楽しいから良いけど」

「オレは苦手かもな」

「女好きの和彦に苦手とかあったのか?」

「オレにも好みはある、見境がないわけじゃないよ」

和彦の好みの見た目は美人で巨乳なのは知ってたが、中身はどんな女の子がタイプかは知らないな

聞きたくねぇけど……

「今はセリくんにしか興味ないけど」

和彦は俺の頬に手を添えると自分の方へと強引に引き寄せて頬にキスする

「今はって引っかかるな…そのうちまた浮気するんだろうな~オマエのそういうとこは信用してねぇもん」

「でも、オレは永遠にセリくんを離すつもりはない

摘まみ食いはするかもしれないが」

「すんなボケ、腹壊して苦しめ」

「オレの隣にいていいのはセリくんだけ」

「はいはい、本命でありがとな」

浮気性だけど、俺だけは特別って言われるとつい許してしまうって言うか…

別れないのは俺も和彦のコトをそれだけ好きなんだな

和彦は俺の顔を自分の方へ向けさせて

「レイの事が心配なのはわかっているが、キスだけさせてほしい

帰って来るのを待ってた…我慢してた」

そこまで言われたら…和彦の顔が近付いてそのままキスを受け入れる

「セリ様のお部屋ここって聞きましたーーー!!!」

おいこら、ノックせずに部屋に突入してくるな

パッと和彦から離れたが、遅かった…

「………なるほど……四股の1人は和彦様と……」

ガッツリ見られていた…見ないフリしてくれよ!?

それにしても会いたがってた結夢ちゃんと話し終わるの早くね!?

「凄いです!神様の恋人だなんて!!憧れます!!種族を超えた愛ですよね!!

珍しいですよね、種族が違うのにそういう関係になるのってどんな感じですか?」

いや…和彦は元は人間だし、人間の時から恋人だったから…

まぁ香月は魔族だから俺は最初から種族を超えた恋をしてきたってコトだよな

そもそも考えたコトないな

魔族だから神族だから人間だからってのは

「どんな感じ…いや普通、普通に人間の恋人と何も変わらないよ」

待てよ…和彦は最初から普通の人間じゃないから、逆に普通の人間の恋人がどんなのかわかんねぇぞ…

俺はもう普通の人間とは付き合えないって誰か言ってましたけど

本当にそうかもしれん……

「そうなんだ~、もっと神様の新情報とか知りたいけれど

生死の神の和彦様の恋人のセリ様の他2人の恋人が気になるところね

他の2人も神様なの?」

2人?四股のうち1人はフェイって思ってるのか?違うぞ!!

「セリくんのもう1人の恋人は魔王の」

言わなくていいのに和彦が話そうとした時、マールミは魔王の所で反応する

信じられないと言った恐い顔をして

「魔王…って、魔族ですよね和彦様

冗談はやめてください、魔族は神族の敵のはずです」

信心深いマールミは魔族を受け入れられなかった

悪魔は当然だが、神族は魔族とも敵対関係だった

和彦は元は人間だし魔族に対してとくに何かあるワケじゃない

神族のルールすらもまだまだわからないコトも多く、フィオーラやセレンの助けあってなんとか神様初心者をやっている

「本当に魔王の恋人だとおっしゃるなら笑えません

そもそも神様の和彦様が自分の恋人を魔族に奪われるなんて、それをお許しになる事自体おかしいですよ

勇者様だって魔王は敵のはず、ありえませんよね」

うっ…マールミめっちゃ反対してる

いやこれが普通の反応なのかもしれない

今までが香月の…魔王の恋人だって言うのを受け入れられすぎた

セレンは腐女子だから敵対関係にある魔王と勇者が実は恋仲ってシチュエーションは最大の萌えとかなんとか言って良しとしてきてたし

フィオーラは愛の神でもあるからその恋も愛も否定しなかった

結夢ちゃんはめちゃくちゃ優しいから温かく見守ってくれる

今まで俺の周りで反対する声はなかったけど…世の中の見方としてはマールミが正しいんだろうな

「オレはセリくんの恋人が誰でも構わないが、変な男じゃなければ」

「マールミは、まだ本当の恋をしたコトがないだけ

好きになったら相手が何だとか自分が何だとか、関係なくなるよ

例え世界から反対されても、好きになったら止まらない…誰にも止められない」

「セリ様…アタシは別に神様と人間の恋を反対してるわけでは

種族が違うのは珍しい事で反対する人も多いですが、アタシは和彦様とセリ様の事は応援します!

あっでもそうなると結夢様の恋が……ブツブツ」

うーん…そこじゃないんだけど…

マールミには香月との事、簡単には言えないな

香月…暫く会えないって言われたけど…一体どうしたんだろう

レイのコトも心配だし、香月のコトも気になるし…

この瞬間、セリカが帰ってきたのを感じた

手の傷のコト、香月のコト、色々情報を共有したい

「ちょっと、用ができたから俺行くよ

和彦はマールミのコト頼んだぞ」

「わかった、鬼神にマールミの部屋を用意させて案内しておく」

「セリ様またね」

急いでセリカの部屋へ向かう

セリカも俺が来るのをわかっていた様子だ

部屋に入ると一緒に行ってくれたイングヴェィも隣にいた

「セリカ…」

いつもならセリカの可愛さに思わず抱きしめて愛でまくるけど、そんな雰囲気じゃなかった

「セリくん、大変なコトばかり起きてるわ」

困ったわとセリカは何があったのか話してくれる

この手の傷に回復魔法が使えない理由は、呪いのような武器のせいらしい

香月には呪いが効かないのに、その武器はどうも俺を殺さずにはいられなくなるみたいで

さらにその武器で攻撃されると回復魔法が効かないとか

なんだその反則級の武器は!?

もう香月の完全勝利になるじゃん!?回復魔法封じられたら絶対勝てねぇぞ!?!?

っつか、回復魔法を封じる武器を香月が手に入れても最悪良いとしても

俺を殺さずにいられなくなる呪いみたいな影響だけやめて!?!?

それじゃあ…香月が暫く会えないって言ったのは……俺を殺してしまうからってコト?

会えない…なんて………

「会えないのは…辛いけど、香月が俺を嫌いになったとかじゃなくてよかった」

それだけで…今は嬉しい

「セリくんの方も色々あったみたいね」

情報は共有しておかないとな、セリカに言われて俺はこれまでのコトを話す

「話を聞くと、レイくんは半分魂を奪われたみたいだね」

イングヴェィは悪魔のコトにも詳しいみたいで俺がこんな感じと話しただけでもすぐわかってくれる

「やっぱり…そうなのか…な」

「それはマズいかも、残りの魂を奪われるのも時間の問題だよ」

「えっ!?どういうコト!?

そんなの絶対させねぇよ、本物の破魔の矢を見つけてそれで大悪魔シンを倒す」

「破魔の矢、本物を見つけたとしてももう誰も扱えないよ

レイくんの腕があれば倒せたかもしれない

でも、魂を半分奪われたレイくんにはもう破魔の矢を扱えるほどの強さはないハズなんだよね

その時に失敗するべきじゃなかったんだ」

………イングヴェィの言葉に…レイが生きてればなんとかなる、何度だってシンを倒すチャンスがあるって思ってたのに

それが…崩れる

確かにイングヴェィの言う通りだ…魂を半分奪われてるのに何も変わらないなんてありえない

どうしよう……レイが……死ぬ…?

レイに…愛してるって…言えない…恋人になれない、ずっと?

ちゃんとレイのコト愛したいのに、愛してくれる分俺だって

「……まだ他に方法があるかもしれないから、セリくん…」

イングヴェィは優しく言ってくれるけど、たぶんない…

「…うん…だと、いいな…」

ないなら…どうしたら……

ふと、セリカが俺に寄り添って勇者の剣に触れる

「暫く勇者の剣を私に渡してくれる?」

いつもなら俺はセリカに渡してる

けど、今回は渡す気になれなかった

「いや、渡せない」

俺はセリカだぞ、自分が何を考えてるかくらいわかる

俺が何も出来ないからって…セリカがやろうとしてるコトは

弱い俺が弱い自分に押し付けてるだけ

もう俺はセリカに嫌な役を押し付けないって決めたんだ

「香月を呪いから解放するために倒そうって考えなんだろ」

「呪いじゃないわ、よくわからない何かよ」

細かいコトはいいんだよ

「俺は恋人に殺されたコトも殺したコトもある

もう二度と殺したくない…でも、やらなきゃいけないんだろ

じゃなきゃどうしようもないなら」

その嫌なコト、辛い、悲しい、苦しい、耐えられないコト…全部…逃げて自分に押し付けるのは俺が嫌なんだよ

セリカは俺だけど…確かに、違うよ

育ってきた環境が、生きた世界が違う

俺がセリカの世界で生きていたら絶対に俺もそうなっていた

俺とセリカの違いはたった1つだった

君には大切なものがなかった違う環境の運命を繰り返してきた

俺の運命に香月がいなかったら俺だってそうなってる

だからこそ、俺はセリカに幸せになってほしい

俺のために香月のコト背負わなくていい

セリカがやるなら俺がやる

「どうせできないわ、甘いんだから」

わかってる…でもセリカにさせたら

セリカはいつまで経っても同じ運命だ

「もう変わったんだよ…わかってるんだろ?

今までとは違うって

隣にイングヴェィがいるってコト、忘れんなよ

もういいんだよセリカ、もう…」

儚い自分…いつか消えてしまうんじゃないかって、新しい運命を受け入れられなくて

自らそれを手放してしまいそうだ

そんなの俺は許さない

セリカが幸せにならなきゃ俺も幸せになれない

俺はオマエなんだから

「…いきなり生き方を変えろなんて無理だよ

私」

「イングヴェィはわかってくれてる

そんなセリカを永遠をかけて、本当のセリカにさせてくれるって」

「私はきっとまた同じコトをするわ」

イングヴェィはセリカの隣で微笑む

その自分に向けられる温かい笑顔にセリカは照れくさそうに俯いた

「俺と変わらない、だって俺はセリカだもん

セリカは俺なんだから俺みたいになれる」

だからこれからの俺は俺じゃなくなる時もあるかもしれない

受け入れるよ、自分を、これまでの運命も全て

「えっ四股の尻軽ビッチにはなりたくないな」

「そこには触れなくていいし!!なってほしくねぇよ!!」

俺は和彦のせいで人生狂ったようなもん

もう後戻りできねぇから、みんな平等に愛するって決めた

とにかく…俺だってセリカの一面があるってコト

香月を失ったらそうなるって知ってる

だから、俺と同じ勇者の力を持つ奴がいるってなら…さぁ…どうしようか

「まぁ…わかったわ、でもセリくん抱えすぎでしょ

私が半分背負うわ、セリくんのやり方で解決できるように頑張るし」

うーん…どれも任せられないような

香月は俺が、レイのコトも俺が、結夢ちゃんのコトもタキヤとの決着は俺が付けたいし

レイのコトなんて絶対にセリカには…あっそうだ、確認しとくか

「セリカ、レイのコトどう思ってる?」

「えっ嫌いだけど?」

即答

これは…大悪魔シンの契約がなくなったら、俺も嫌いに変わるってコトだよな…

どうにかしてセリカにレイへのポイントを稼がないと、契約がなくなってもレイのコト好きでいたい

ずっと愛されたいし恋人になりたいもん…って思うのも、大悪魔シンのせいだよな

「レイはメンヘラな時はヤバいけど、良い奴だぞ?いつも守ってくれるし助けてくれるし優しいし甘やかしてくれるし一途だし」

一生懸命レイの良いところを伝えてみたが

「だから?」

冷たく返された…

こんなん泣く

セリカに冷たくあしらわれたら泣く

「なんでも好きなもの好きなだけ買ってくれる」

「それはポイント高いわね」

愛より金か!?セリカは愛を知らないお子様なんだ、なんとかしろイングヴェィ

「しかも超イケメン、背も高い理想の身長差」

「見た目だけ良くてもね」

女の子って意外に冷静でイケメンに厳しい時もあるよな

はぁ…ダメだ、セリカは一度嫌いと思ったらとことん嫌いだもんな

「セリカちゃんは素直じゃない所もあるからね、セリカちゃんの言葉と心は別かもよ?

セリくんが思ってるより、セリくんは本心からレイくんのコト信頼しているんじゃないかな

恋人としての好きかどうかはわからないけれどね」

ツンとするセリカの隣でイングヴェィは笑って言う

「イングヴェィ……ちょっと前までレイのコト嫌ってたのに、そんなコト言ってくれるなんて」

「もちろん嫌いだよ?セリカちゃんにちょっかいかける男は許さないよ

でも、セリくんが悩んでるから教えてあげる

女心は複雑ってコト

いくら自分でも男のセリくんには女の子のセリカちゃんの心は難しいのかもしれないね」

それはセリカと会った時から痛感してる

今でもまったくわかんねぇ時あるからな

言ってるコトと全然違ったりとかよくあるし

「つまり…自分の本当の心は、大悪魔シンを倒さないとわかんねぇってコトか」

しかし、そのシンを倒すのに破魔の矢は使えなくなったってコトなのか…

他の方法を探さなきゃなんねぇな

とりあえず…今抱えてる問題を一度整理するか

香月が俺の顔を見たら殺そうとするのは…後回しにしよう

何か良い解決方法が見つかるかもしれないし、何より香月を倒して復活させる方法と言うがかなり難しいぞ

倒せるのは勇者の力を持ってる俺だけだが、回復魔法が封じられてしまうなら正直勝ち目はない

レイの大悪魔シンを倒す話も、破魔の矢が使えないならこれも後回しだよな

そうなると、結夢ちゃんの問題だってそうだ

タキヤは結夢ちゃんの加護を受けていて、俺がタキヤを倒そうとしても結夢ちゃんが身代わりで傷付いてしまうだけ

タキヤと結夢ちゃんの加護を引き離さないとどうにもならない

その方法も何もないまま

うーん…どれも解決出来る気がしねぇし、どれから手をつけていいかまったくわかんねぇ

他はと言うと…勇者の力を持った奴が他にいるって話だよな

ソイツから先に始末するか

「ダメよ、まずは私達以外に勇者の力を持つその人を探し出してどんな人か確かめなきゃ」

邪魔な奴は殺す、過激な発想にセリカのストップが掛かる

オマエは甘いな…そんなちんたらしてて香月が倒されるか、ソイツに心変わりするかもしれないって可能性が少しでもあるなら潰すしかないだろ!?

「もっと自信持ったら?香月とセリくんはそんなポッと出のよくわからない人に壊されるような関係なの?

気の遠くなるような運命で結ばれてきたんでしょ

それに香月は強いわ、レベル1のはじめて生まれたての勇者に負けるワケないもの」

「そ、そうだけど……こういう時って不安になるもんなんだよ」

ハラハラする、気が気じゃなくなる

香月のコト好きであればあるほど…会えないから余計に膨らむ

「それならさっさと見つけ出してどんな人か会ってみましょうよ」

「でも、ソイツがドコにいるかわかんねぇぞ」

セリカと一緒にどうやって探し出すか唸っていると、イングヴェィがふふっと笑う

「簡単だよ、勇者の力を持ってる人の行動なんてセリくんが1番わかってると思うけどね?」

イングヴェィに言われて俺は難しく考えすぎていたコトに気付く

勇者が目指す場所なんて…1つしかない

「はっ…そうか、魔王を倒すコト」

「当たり、魔物が殺害された場所を確認すると少しずつだけど魔王城へと近付いてる

突っ走れないのは、その人のレベルが魔王を倒すには達していないのかもしれないね

少しずつ確実にレベルを上げているから……そうだね、きっと今いるのはこの辺だよ」

地図を取り出してイングヴェィは指を差す

なるほど、この辺を絞って探せば会えるかもしれないってコトか

ふっ、レベル上げなんて俺より弱いな

俺は勇者レベルだけは生まれた時から最高だもんな

自分の方が香月に相応しいって思い込まなきゃおかしくなりそうなくらい俺以外の勇者がいるコトに動揺していた

「さすがイングヴェィ、頼りになるわ」

セリカが微笑んで見上げるとイングヴェィは顔を赤くして頬を緩ませた

「それにしても、君達以外の勇者って存在には引っかかるんだよね

天はたった1人の人間しか創らなかった

それは過去にもこの先の未来永劫もね」

「どうしてわかるの?気が変わってもう1人創るかってなったのかもしれないよ?」

イングヴェィの疑問にセリカが首を傾げる

俺もセリカと同じ意見だが、ハッキリ言って天が何か知らん

天が創ったたった1人の人間が自分と聞かされて、へーそうなんだくらいで

「天は、君達以外の沢山の人間を創った神族とは違うからだよ

言葉で説明するのは難しいんだけど

空があって地面がある、それって当たり前のコトだよね

どこから見ても空は1つに繋がってて地面も1つに繋がってる、2つはない

ちょっと違うけど、君達が1人なのはそういうコトなんだよ

2つはない、それが天の決まりと言うか当たり前

君達が2人以上存在するコトは当たり前じゃなくなってしまう

セリくんはセリカちゃんであってセリカちゃんはセリくんであるコト、文字通りの一心同体の自分

勇者の力はそんな天からの授かり物だよ」

つまり、とにかく1人だけってコトなんだな!!

それじゃあ…やっぱり俺達以外に勇者の力を持ってるのはおかしいってコトになるが

勇者にしか魔族と魔物は殺せないのに

実際には魔物を殺されているワケだし…もうワケわかんねぇな

「とにかく確かめなきゃなんねぇってコトだな」

ソイツが香月に辿り着く前に…こっちも動くか

イングヴェィのためになる話を聞いた所で一度解散ってコトになった

すぐに動きたい気持ちもあるが、レイの無事を確認できないと俺は気が気じゃないってコトをイングヴェィが気遣ってくれる

だからフェイとレイが帰ってきてからにしようってなったから

そうして暫く経った頃、フェイが帰ってきた



フェイは俺の部屋に1人で訪ねてきた

当然、レイも一緒だと思ってた俺は笑顔でドアを開けて迎えたんだが…

「おかえりレイ、無事に帰ってきて……あれ、フェイだけ?…レイは?」

レイの姿が見えなくて俺は不安に笑顔を失う

「レイは私が連れて帰って来ました

ですが、セリ様とは会えません」

どうして……会えないってなるんだよ……

「レイは大悪魔シンに魂を半分奪われています

生きてはいますが、以前の強さは失われておりとても会えるような状態ではありません」

「別に俺はどんなレイも…」

変わらず好きだって、フェイの顔を見てたら言えなかった

フェイは今のレイを認めていないと強く否定する

「セリ様を守れる強さもない、それどころか貴方を傷付けるだけでしょう

そんなレイは私も見たくはないのです…

どんなレイでも良いなんて、私はそうは思いません」

レイがどんな変わりようなのか俺は知らない

フェイはきっとレイに完璧を求めている

俺は甘かったんだ

レイもそんなコト望んでいない、今の自分の姿を1番見られたくないのは俺なんだろう

だったら…俺も、レイに会いたくても…やっぱりまだ会っちゃいけないんだ

フェイがいなかったら俺は誰にも止められるコトなくレイに会いに行ったかもしれない

レイが望まないコトを、会いたくても会えない辛さを抱えながら

フェイは唯一の友達のために、強い決心を抱いていた

「そうだな…俺も、いつものレイが好きだ

レイもいつものレイじゃない姿は見られたくないと思うんだ

俺がレイだったらそうする

自分の情けねぇ姿見られたくねぇもん

それが好きな相手ならなおさら…」

「待っていてください、セリ様

私が、大悪魔シンをレイの代わりに討ってみせます」

この破魔の矢で

とフェイは本物の破魔の矢をあの村で見つけ出して持ってきていた

「その矢、本当に本物か?」

「さっきここへ来る前に光の聖霊に確認して貰いました、間違いありません

レイは何処へやったとしつこかったですが」

光の聖霊なら喚く姿が目に浮かぶような…

「光の聖霊もレイに会いたいんだ、早く大悪魔シンを倒すしかないな

でも、破魔の矢はレイくらいの弓の腕がないと扱えないんだろ?

レイくらいの名手って他にいるか?」

「レイは別格ですからね

超遠距離で本気を出されて勝負されたら和彦様でもそう簡単には勝てません」

それはそうかもしれない…

俺は前世で2回レイに殺されている

魔王の香月が傍にいるのにだ

香月が防げないくらいの気付けない距離から正確に射抜く

「敵なら恐ろしいけど、味方だと心強くてカッコ良くて頼りになるんだよな」

イケメンで強くてとか最高じゃん

いつも俺の隣にいてくれるからレイは力を最大限に発揮出来ていないだけ

距離があればあるほどレイは有利で強さは無限大だもん

近距離でも十分強いからいつも守ってくれる

それが嬉しかった

そんなに俺のコト好きなんだって思い知るから

「とにかく、レイくらい強い弓の名手を探し……ん?そういやさっきフェイがレイの代わりにシンを討つって言ってたけど」

「はい、私がレイの代わりに弓を引きます」

フェイの武器って槍だったよな、弓も使えるのか?

「弓は扱った事はありません」

「じゃあ無理じゃん!?」

「私はセリ様と違って器用なので」

いちいち俺を貶めた言い方すんなよ!!

「そんな初心者がレイのレベルに達するなんて千年かけても無理だろ」

「レイと同じレベルに達するのは無理でも、破魔の矢を扱えるレベルまではやってみせますよ

そこから大悪魔シンに矢を当てるにはレイでなければ無理でしょう

なら、シンには当たって貰えばいいんです

どんな手を使ってでも」

どんな手を使ってでもってのが怖いわ

破魔の矢は無理なんじゃねぇかな…他の方法で大悪魔シンを倒す方法を探した方が早いか

フェイの自信過剰な所に不安を感じ、他の方法のコトを考えていると

フェイがそれに気付いたのか、俺の顔を上げさせて目を合わせる

「私を信じてください、セリ様

必ず大悪魔シンを倒してみせますから」

まっすぐと逸らすコトなく見つめるフェイの瞳に囚われる

こんな時はいつも…信じてしまう…不思議なくらい、フェイが信頼できると思わせてくれるんだ

「フェイ…本当に、信じていいんだな?」

大悪魔シンを倒さない限り、レイに会えないってコトは言ってしまえば二度と会えない可能性もある

「後は私のやる気ですかね」

やる気ないんか!?カッコ良いコト言っておいて無責任に投げ出すつもりかよ!?

フェイは俺の喉に手を伸ばして触れると、そのまま片手で首を掴む

「細い首…いつも締める時に折れるかと思うんですよね」

優しく掴まれて苦しくもなければ、ちょっとくすぐったい気もする

フェイの顔がゆっくりと近付いてきて、途中でキスされるってわかって俺はフェイの肩を押しのけるように手をついた

「はっ…!?何すっ…ん!?」

だけど、フェイは力付くで唇を奪ってきた

「これでやる気が出ました

この先は約束通り、レイがいつものレイに戻ってから寝取ってあげます」

「ふざけんな…誰がオマエなんかに寝取っ」

首を掴むフェイの手に力が入って言葉が詰まる

「何度もその生意気な口を私に利く所が可愛くてたまらないですね…喉を潰したくなります」

本当にコイツなら潰しそう…

拒絶すればするほどコイツに火をつけるだけってのはわかっているが、素直に従う方がムカつくし悔しいから嫌だ

「また痛い思いしないと…」

フェイの顔が近付いたと思ったが、言葉の途中で手を離し俺からも離れた

クソ…やりたい放題しやがって…俺がフェイより強かったら…

弱い俺は一方的に遊ばれてる、ムカつくぜ

フェイが俺から離れた理由はすぐにわかった

人が来る気配を察知したからだ

セリカが訪ねてきて、ひょこっと顔を出す

相変わらず可愛すぎる

俺が声を掛けるより先にフェイがセリカの傍へ寄った

「セリカ様」

「フェイ、おかえり」

フェイはセリカの怪我をした手をそっと掴んで優しく心配した

さっき俺の首締めてた奴と同一人物かコイツ?

「お可哀想に、セリカ様の手に傷が残ったらと心配です」

「ありがとう、傷は大丈夫よ

鬼神が綺麗に治る薬を塗ってくれたもの

もうそんなに痛くないし」

終始セリカにだけは優しいフェイ…いやこんなん絶対好きじゃん!?

他の女の子にこんな距離近くないし、優しくもしない

俺なんかいつも意地悪されるし、セリカと違って俺の怪我なんて心配してるとか口では言ってたが、強く握られてめっちゃ痛かったし

でもまぁフェイが俺にしてきたコト全部セリカに伝わってるんだけどな

「セリくん、イングヴェィが早めに動いた方が良いと言っていたわ

とりあえずレイの無事は確認できたみたいだし、明日出発できるなら」

セリカに言われて、そうだったと大事なコトを思い出す

勇者の力を持ってる奴を止めるには早く動かないと手遅れになる

俺は今の香月には近付けないからな

「何か用が?」

フェイが気になって口を挟むと、セリカは言わなくてもいいのに喋ってしまう

「他に勇者の力を持つ人……なるほど、わかりました

私もお供しますよ」

ほらー!?言ったら絶対ついて来ると思ったもん!!なんで言うんだよ!?

フェイはセリカと一緒が良いんだろうけど、俺はなるべく一緒に行動したくねぇの

「フェイが一緒なら心強いね」

「ありがとうございます」

うふふあははとほのぼのな雰囲気を醸し出しているが、俺だけ反対……嫌だけど

セリカは素直にいてくれてるから、きっと俺もそうなんだろうと余計思い知らされる感じがして…やっぱり嫌だ



そうして、イングヴェィとフェイと俺とセリカの珍しい組み合わせで行くコトになった

「フェイくんも一緒に来てくれるんだ、よろしくね」

「イングヴェィ様、こちらこそよろしくお願いします」

そもそもイングヴェィとフェイってそんなに話したコトもないほぼ初対面みたいなもんか?

顔を合わせるコトはあったろうけど、話すコトはなかったよな

フェイはレイと違ってイングヴェィに敵意殺意剥き出しじゃないから平和と言ったら平和か

「はじめてイングヴェィ様とお話しましたが不思議な方ですね」

道中フェイがこっそり俺に話し掛ける

「不思議?うーん…俺はそんなコト思ったコトもないが」

「とても明るくお優しい方で私にも気軽に話し掛けてくださるのに、何処か近寄りがたく感じます」

「言われてみれば…なんとなくそんな感じかもしれねぇな」

俺は別に近寄りがたいと思ったコトはないが、イングヴェィの綺麗なルックスと伝説上の存在として憧れ含めた意味でもモテまくる

無意識に老若男女を魅了する能力を持ってるみたいだし、性格の良さも相まってイングヴェィの下には様々な種族が集まる

まぁセリカに対してだけヤンデレっぽいところもあって危ない時もあるが…

それに忘れがちだが一城の主でもあるしな

でも、レイとのモテ具合とは異なるんだよ

どんなにモテても、レイの場合は距離近めでキャーキャーと群がっちゃう典型的なモテキングみたいな感じ

イングヴェィの場合は、どんなにモテても周りに近付く者はそう現れない

イングヴェィのコトが好きな乙女達曰わく簡単には近付けない魅力の持ち主だそうだ

例えば伝説上の生き物、ペガサスとかが目の前に現れたら

えっ……ウソだろ?ってビックリして動けなくなって、その神秘的な姿に圧倒されながらも目が離せないみたいな感じか?

とは言っても、伝説上の生き物であるペガサスさんもイングヴェィの所にいるんだけどな

懐いてて凄く可愛い

だけど、言われてみると確かに他の人とは違うかも

なんだろう…言葉では表せられないけど、イングヴェィがいると良い意味で夢みたい

「伝説上の存在だから無意識に私が遠慮しているのかもしれません」

「まぁでも、イングヴェィは良い奴だからそんなに身構えるコトも遠慮するコトもないって」

「それは彼の特別であるセリカ様だから言える事であって、私は貴方のようにはいきませんよ」

「かもな、セリカに手出したら殺されるぞ?諦めるんだな」

いつも気にしてなかったが、伝説と恋か…セリカ凄いな

まっセリカにとって恋をするコトが奇跡みたいなもんだけどね

って言うか、まだ付き合ってないって聞いていたような!?

両想いなのに付き合ってないってどういうコトなんだよ!?

いつ付き合うんだよ!?ヤキモキするぞ!!


さて、イングヴェィが地図で次に偽勇者が現れると予想した辺りまでやってきた

勇者の力を持つ者がいればイングヴェィも俺もセリカも会えばわかるハズだ

それなら二手に分かれた方が効率良く探せるワケだが…

この4人なら俺はフェイとペアになるよな…

危なすぎてフェイとセリカと2人っきりにはさせられねぇし

まぁフェイはセリカには紳士で変なコトしないが、それでも心配だ

俺とセリカの2人って言ってもイングヴェィもフェイも心配で許されないし

仕方ねぇかな……

「セリくん、二手に分かれて大丈夫?」

嫌そうな顔してるけどってイングヴェィの気にかけてくれる言葉が優しすぎた

フェイと2人っきりなんて嫌な気持ちも顔に出るわ

やっぱり不思議なのかも

イングヴェィが笑うと笑顔になるし、優しくされると凄く落ち着いて優しい気持ちになるし

あっそうか…これって特別だけど特別なコトじゃない

セリカはそれが好きな気持ちってのがまだよくわかってないんだ

フェイの不思議とはまた違うけど、セリカからするとこんな気持ちにさせてくれる人は不思議なんだよ

なら、2人っきりにしてやらないとな

「大丈夫だってイングヴェィ、フェイはヤバい奴だけど強いもん

じゃあまた後で」

邪魔者は消えるつもりでフェイの背中を押してさっさと行こう

イングヴェィから離れて暫くするとフェイがキモいコト言ってくる

「イングヴェィ様より私を選んでくれるなんて意外でした

そんなに私と2人っきりになりたかったんですか?」

「……はっ??バカかオマエ

勘違いとか恥ずかしい奴、アホ言ってないで偽勇者見つけてさっさと帰るぞ」

その辺をウロウロしていると、魔物の気配を感じた

偽勇者は魔物退治もしている…なら魔物を見張っていれば姿を現すかも

その考えは当たっていた

俺はフェイに魔物のいる方へ行くぞと言って駆けつけた時にはもう遅い……

遅いと言うのは偽勇者を逃したコトじゃない

魔物の気配を感じていたのに、そこについた時には魔物達は殺されてしまっていたからだ

間に合っていたら…助けてやれたかもしれないのに……

「オマエが……偽勇者…?」

魔物を殺した直後だったようだ

その中心に佇むのは、神々しい剣を手にした人…?フードを深く被っていて顔は見えない

大きめのマントで姿も隠しているから男か女かもわかりにくい

それにあの手に持ってる剣…勇者の剣とは違うが特別な力を感じる

偽勇者は俺達に気付くと逃げようとした

「あっおい、待て!!」

だけど、フェイが一歩速く追いつきその右手を掴んだ

「逃がしません」

偽勇者は咄嗟にフェイの手に噛み付いて、フェイは驚いてパッと離してしまい逃げられてしまった

「大丈夫かフェイ?

そんなすぐに遠くまで逃げられねぇ、イングヴェィと合流して探そう」

フェイの噛まれた傷を回復魔法で治す

「………私が噛まれたくらいで手を離して逃がすわけありません……」

「えっ?」

まぁそうだよな、フェイが噛まれたくらいで逃がすワケない

じゃあなんで逃がしてしまったんだ?

「さっきの人の手を掴んで驚いたのです

あれは……あの手は…」

フェイは信じられないと言葉に詰まる

「……セリカ様の手でした…」

「はっ?ウソだろ?」

セリカの手ってコトなら…これまでの魔物殺しはセリカの仕業って言うのか?

ありえない…俺が…魔物を殺すなんて……絶対ありえねぇぞ…

「私がセリカ様の手を間違える事はありません……」

イングヴェィと合流しなきゃ…セリカと一緒にいるハズだもん

セリカじゃないってイングヴェィが証明してくれる……


イングヴェィと合流すると、セリカの姿がなかった

なんで…どうして……

「偽勇者を見つけたって?」

「はい…」

フェイは偽勇者の手を掴んだ時、それがセリカの手だったと話した

「セリカちゃんの手…顔は見ていないんだよね?」

どうしよう…どうしよう……あのフードの下を暴くのが怖い

それが自分の顔だったら……俺は自分がわからなくなる

魔物を殺すってコトは…いつか魔王を、香月を殺すって意味だ

本当は偽勇者なんかいないんだ

唯一無二の勇者は結局自分だけ

俺は自分でもわかってない無意識で魔物を殺してるのか?

いつか香月を殺してしまうって…?

香月が暫く会えないって言うのは、本当は……香月が俺を殺そうとしてるんじゃなくて

俺が香月を殺そうとしているからなんじゃ……

混乱してる…悪い風に考えが巡る

「セリくんしっかり、弱さに付け込まれてしまわないように自分をしっかり持つんだよ」

「イングヴェィ……」

俺はイングヴェィにどうしてセリカと一緒じゃないのか聞けなかった

でも、イングヴェィの言葉を受け止めて俺は自分を見失わないように耐える

「すぐに探しに行きましょう」

「…そうだな」

フェイに言われて偽勇者が逃げた方に足を向ける

その時、イングヴェィが崩れて地面へ膝を付く

「イングヴェィどうし」

「ふはははははははははははははは!!!!!」

何度も聞いた下品な声の笑いが響く

こんな所まで追い掛けてきたのか、タイミングが悪いな

「タキヤ…と、偽勇者?」

声の方へ振り向くと相変わらずな態度のタキヤとその隣にはさっき逃げ出した偽勇者の姿があった

いや…セリカか…?

「まさかこのような所で伝説の存在を捕獲出来るとは思いませんでしたよぉ?」

捕獲…?イングヴェィの方へ視線をやると、魔法か呪いか鎖が巻き付いて拘束されていた

「タキヤてめぇ!イングヴェィに何しやがった!?」

「幸運ですねぇ、早速使える機会がやってきて

そちらは伝説の存在、生半可に拘束は出来ない生き物ですから数百人の生贄を使わせて貰いましたよ」

数百人の生贄…?もしかしてマールミが言っていた子供達を生贄にして……?

この…クソ野郎……

そういうコトか…タキヤは俺を追い詰めるためになんでもやる男だ

俺さえ消えれば結夢ちゃんを取り戻せると思い込んでいる

そして俺の周りから潰して追い詰めていく

和彦で一度失敗したが、タキヤの執念は諦めるコトを知らない

今度はイングヴェィを狙ってのコトか

どうする…ここでイングヴェィを奪われるワケにはいかない

でも…あの偽勇者…タキヤ側にセリカがいて協力してるってコトになるなら…

判断ができない、どうしたらいいんだ

「困りましたね…こうなっては私がセリ様を連れて逃げるしかないのでしょう」

「フェイ!?でも」

イングヴェィを置いていくなんて

フェイにとってイングヴェィは眼中になかった

伝説の存在として特別に一目置いてはいても、フェイにとっては簡単に見捨てられると言うのか

「ですが、逃げる前にあの偽勇者の正体をはっきりさせましょうか」

もしセリカだった場合、フェイはセリカを置いてはいけない

フェイが一歩前に出ると、タキヤは自分に危害を加えられると勘違いしたのか偽勇者を引っ張り出して刃物を突き付け脅してきた

「それ以上近付いたらわかりますね?

そのまま大人しく伝説を置いて尻尾巻いて逃げていいんですよぉ?」

タキヤの目的はイングヴェィのみ、俺を追い詰めるコトだけが目的で自ら俺の命を奪うようなコトはしない

「クソ…タキヤの奴…セリカを人質に取るなんて」

フェイも俺も動けなくなってしまう

だけど、イングヴェィは小さく笑みを零す

「セリくん、落ち着いて

タキヤは人質を殺すつもりはない」

はっそうか、セリカを殺すってコトは俺を殺すコトと同じ

タキヤは俺を自殺に追い込みたいためにありとあらゆる嫌がらせを続けてきた

そんなタキヤがセリカを殺すコトは絶対にしない

それじゃあ気にせずにフェイと俺の2人でタキヤを退けられるか?

考えを巡らせているとイングヴェィの優しい声が続く

「そもそもあれはセリカちゃんじゃないよ

今回セリカちゃんは最初から一緒じゃないからね」

「えっ?」

「しかし…あの手はセリカ様のものです」

「セリくんはずっと勘違いしていただけ

そしてフェイくんの言ってるコトは本当」

俺が自分を勘違い…?

でもフェイが言うセリカの手は本当って?

ますますわかんねぇぞ!?

イングヴェィは拘束されながらも一度地面に付いた膝を離して立ち上がる

「だってそこにいる人はセリカちゃんじゃないけど、その右腕だけはセリカちゃんで間違いないからね」

ど……どういうコトだ??イングヴェィはなんでもお見通しな所が不思議で時には不気味に感じる時もある

俺達とは違う次元で生きているかのように、さすが伝説上の存在と言ったところなのか

「数百人の生贄で俺を拘束なんて、無意味だからやめた方がいいよ」

そう言ったイングヴェィの拘束された鎖に次々とヒビが入って深く刻まれた時には音を立てて弾ける

「正直ちょっとビックリしたけどね、この世に俺を拘束できる代物がないワケじゃないからさ

でも素人と底辺悪魔が短期間で作ったものでどうこうはできないよ」

ビックリしたと言ってるわりにかなり余裕な笑顔で自分で解放してしまった

底辺悪魔って大悪魔シンのコトか?イングヴェィからしたら大悪魔は底辺なのか!?

「ビックリなのは俺の方だぞ!?イングヴェィが無事でよかったけど…」

「ふふ、無理だったらすぐにフェイくんに頼んで君を逃がしているよ」

それもそうか…

「イングヴェィ様…本当に何ともないのですか?」

「……フェイくんも俺の心配してくれるの?意外だな」

「私は心配はしておりませんよ」

うー……ん????なんか引っかかるけど…

「ぐぬぬぬぬぬぬぬ……伝説の力は未知数と言う事ですか……失敗するとは悔しいですねぇ

それならば……逃げます!!!!」

タキヤの腹の底からの悔しい唸りとともに潔い尻尾巻いて逃げる宣言

消えてくれるのはありがたいが、このまま偽勇者を逃してたまるか

セリカじゃないとイングヴェィは言ってたが、右腕はセリカだと言う

その右腕があれば魔物は殺せるのかもしれない

気になるのは、その俺の右腕を付けてるのが誰かってコトだ

タキヤに利用された誰かはわからないが、俺以外に勇者の力を持つ奴は殺すしかない

「タキヤを倒すコトはできなくても、偽勇者だけはここで殺す

逃がしてたまるか!!」

タキヤは逃げると言ったが、偽勇者の方がもたついて逃げ遅れてる

すぐに追い付いた俺は勇者の剣を引き抜く

「セリくん待って!?」

イングヴェィの声を無視するほど、俺は自分と同じ力を持つ存在を見逃せなかった

この力は脅威だ…香月を殺せる力……

香月が殺される可能性があるならここで潰すしかないんだ

オマエは利用されただけかもしらねぇが…悪いが死んでもらうぞ

偽勇者を捉え勇者の剣を振り下ろした時、咄嗟にタキヤが前に飛び出して偽勇者を押しのけた

俺が振り下ろした剣はタキヤを斬ったが、タキヤは結夢ちゃんの加護ですぐに傷は塞がる

ふーん…そんなにその偽勇者が大事か

そりゃそうだよな、タキヤは俺の周りをなんとかしようと考えている

偽勇者が勇者の力を持っているのは、対香月用

この偽勇者を使って香月をどうこうして俺を追い詰めるって魂胆だろう

させてたまるか…この偽勇者が香月を倒すレベルになる前に…殺して……

「……オマエ……なんで……」

タキヤが偽勇者を強く押しのけた拍子に深く被っていたフードがズレて顔が覗く

その顔は俺のよく知っている顔だった

目を疑う…

「カニバ……オマエが、どうしてタキヤと一緒に……?」

一体どういうコトだ…

カニバは俺の飼っているウサギでこうして人の姿にも変身できるが、確かイングヴェィの城でお世話になっているハズ…

なのになんでこんな所に…しかもタキヤと一緒になんか

「セリ…ちゃん……」

カニバの表情はどうしようもなく辛そうだった

それだけでタキヤといるのは本意じゃないとわかる

「どうした?脅されてるのか?でももう大丈夫だ、俺と一緒に帰ろう」

手を差し出してもカニバは俺の手を取れなかった

俺の手はタキヤによって払いのけられる

「セリくん…無理だよ…カーニバルくんの首にあるものを見て」

イングヴェィに言われて、俺はカニバの首に見慣れない首輪をされているコトに気付いた

それは悪魔の首輪

その首輪を付けた者が主人となり付けられた者は主人に逆らえなくなり逃げられなくなると言うのだ

悪魔の首輪はそんな簡単には作れないもの

イングヴェィでもどうにもできない強力なアイテムの1つ

カニバは誘拐されて無理矢理タキヤの言うコトを聞かされてるってコトなのか?

誘拐っていつ…?全然気付かなかった

イングヴェィの城にいるから何かあったらイングヴェィに連絡がいくハズだけど、タキヤならそう簡単に気付かないように上手くやるか

「嫌だ!俺はカニバを連れて帰る!!」

「ククク…ネタばらしはもっと先にしようと思っていましたが、十分効果があったようですねぇ」

ネタばらしはもっと先…?

それはカニバに香月を殺させて、俺が敵討ちをするってタイミングで実はってやられたら確かにそっちの方がダメージが死ぬほどデカい

「セリちゃん心配するな!僕は大丈夫だから」

「だまりなさい」

カニバの言葉を途中でぶった切る

タキヤが悪魔の首輪を使って主人の命令には逆らえないってのを見せ付けられた

カニバは何かを言いたそうだが何も喋れなくなっている

「このウサギは私の命令には逆らえません」

「タキヤ…てめぇはとことんやりやがるな……

カニバに酷いコトしたら許さねぇぞ…」

悪魔の首輪がある限り俺は何もできないって言うのか

タキヤが逃げる形なのに、俺が負けたみたいになって悔しい

このまま…タキヤがカニバを連れて逃げて行くのを見ているしかなかった

「セリ様…きっと助ける術はあります」

「そうだね、手っ取り早いのは悪魔の首輪で主人になったタキヤを倒すコトが出来たら解放されるんだけど

タキヤを倒せない今はカーニバルくんの解放は困難かも」

フェイもイングヴェィも俺を気遣ってくれるが、俺は色んな考えが巡っていた

タキヤがカニバを選んだのは俺のペットだからってだけじゃない

3羽いるウサギの中でカニバだけが不死の能力を持っている

いくらセリカの腕を持ったとしても本体が死んだらそこで終わりだ

だが、カニバの場合は死なない

だから香月と戦わせて勝てなくても何度でも挑める

そしていつか倒すコトを期待している

不死の能力は香月にとっても厄介だし、俺からすればそれがカニバってだけで何もできない

ただ辛いだけのこの状況をよく作ったな…あのタヌキじじい…ふざけやがって

「……カニバは魔族との戦いの経験がない

レベルを上げるとしても香月にたどり着くまではかなりの時間がかかる

その前にタキヤを倒す方法を見つけ出して、カニバを取り戻す

あのクソ野郎の傍にカニバを置いておくなんて…どんな酷い目に毎日遭わされてるかわからない…

できるコトなら代わってやりたい…カニバは俺の大切なウサギなんだ」

まさか偽勇者がカニバだなんて思いもしなかった

ショックは大きいが、落ち込んでる場合じゃない

カニバを助けてまた一緒に暮らすんだ

「協力します、タキヤを倒せないなら他の方法を探すしかありません」

「うん、カーニバルくんを助ける方法を見つけようね」

俺にはいつも助けてくれる人達がいる

だから…諦めないし、なんとかなるって前を向ける

待ってろよカニバ、絶対助けてやるからな

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