152話『大悪魔との契約』セリ編
イングヴェィとセリカが綺麗にくっついてくれて、やっとかって思いながらもホッとした
セリカから伝わる恋も愛も幸せも、太陽みたいにあったかくてキラキラ輝いてる
イングヴェィもセリカも恋愛初心者で、まだまだ初々しい2人だけど
2人のペースで幸せを積み重ねてくれたらなって思う
俺とは違って、なんてピュアなんだって羨ましいと感じるけど
俺は俺でちゃんと幸せだから、これで良いんだ
イングヴェィとセリカが上手くいった
その代わり…
レイが死ぬほど落ち込んだ
「セリカがオレ以外の男を好きになるなんて…」
なんでコイツ望みがあったなんて自信満々だったんだ…
途中からセリカの中でレイへの好意はマイナスだったぞ
「セリがオレを好きになってくれたから、セリカもオレの事を好きなんだと思ってた…」
う、うーん…それもそうか
「俺とセリカは文字通りの一心同体だけど、全てが同じになると2人で存在できなくなるから
好きになる人は違うのが俺とセリカだから
…」
なんて言えばいいのか…レイのこの落ち込み具合にどうやって元気になってもらえばいいんだろう
「ってかレイには俺がいるのに、俺1人じゃ不満だって言うのかよ」
よくよく考えたら、ムッとするとこだ
2人も恋人いる俺が、1人で不満かって事もおかしいと思うが
レイは俺だけ見てたらいいじゃん…バカ
「セリ1人が不満ってわけじゃないさ
セリとセリカの存在の在り方もわかっている
でも、セリと言えばセリカは絶対外せないじゃないか
セリの全てを知りたいって思ったら…セリカもほしくなる」
「そこまで…想ってくれるのは嬉しいけど……
無理だよ、セリカがレイを好きにならない限り
セリカはイングヴェィしか見えてないし、1人しか愛せない」
俺と違ってセリカはこの人って決めたら一途なんだよ
俺も元々はそうだぞ!?
色々巻き込まれて押しに負けて強引に脅されて…今の関係になってしまっただけでな…
今は香月も和彦もレイも大好きだから、良いけど
「それならセリカに好かれたらいいのか」
話聞いてたか?
ハッ良い事に気付いたみたいな顔するな
こういう時のレイって話聞かないんだよな
「潔く諦めろ!!?セリカに手を出したらオマエとは絶交だからな!!
これ以上、セリカのコトで落ち込んで俺に構ってくれないならもう毎日のキスもしない」
ふんって俺はそっぽ向く
すると、レイは後ろから俺を抱き締めて頬に触れてくる
「…自分にヤキモチかい?」
そうじゃなくて、レイが構ってくれないから…
「セリはオレの他に2人も男がいて、オレ1人で満足してくれないくせに」
レイの指が俺の唇へと触れて
「それは……っ」
口を開くとレイの指が入ってくる
舌で押し返そうとしたら、ぐっと押さえられてしまった
「セリの中…熱くてぬるぬるして…もっと奥まで入れても」
耳元で囁かれて急激に熱が上がってしまう
恥ずかしくなった俺はレイの指を噛んだ
「酷いじゃないか」
レイは素直に俺の口の中から指を抜いた
「お、おおおっオマエが!?変なコト言うからだろ!?」
「慣れてるくせに」
自分は悪くないとレイは態度で示す
レイと言いフェイと言い、年下ってのはなんでこうも生意気でムカつくんだ!?
「う、うるさいな!!もう怒ったから今日のキスはなし!!」
後ろから抱き締めるレイに離せと身動ぐ
「わかった」
珍しく聞き分けがいいな、どうした
「じゃあ離…」
またレイは俺の口の中に指を入れる
今度は噛んでも抜いてくれず、奥まで突っ込まれる
「キス『は』なし、ってセリが言ったんじゃないか」
そんな揚げ足取り…
「もっと優しく舐めて、オレも舐めるから」
そう言ったレイは反対の手で俺の手を掴み自分の口元へと持っていく
人差し指がレイの唇に当たって微かに身体が反応する
指にキスされて、それだけでもゾクッと背中に流れるのに
レイの口の中に指を入れられるとゾクゾクが止まらなくなる
「んっ…」
思わず口の隙間から声が零れ、自然と目を閉じて感じる
レイの口の中…凄い熱い…ぬるぬるして……気持ち…良い……かも
たまに甘噛みされて舌が絡み付いて、気分が引き込まれる
俺もレイの、もっと舐めたい…
さっきまではこの口の中にあった指が憎たらしかったけど、今はお互いのコトを感じていたい…
「……セリ様って…和彦様以外にも男いたんですね」
「………うわっ!?えっ!?フェイ!?!?」
また下の方から声が聞こえて、閉じた目を開けると目の前でフェイがしゃがみ込んで俺達を見ていた
こらこら何人目だよ!?この登場の仕方!?
レイは絶対気付いてただろ!?やめろよ!?いるって教えろよ!?
俺はフェイの存在にビックリしてレイの口から指を抜いて離れた
「魔王の香月様と関係があると聞いた事はありますが、まさかこの男とも関係があったとは…小悪魔ビッチは健在ですね」
フェイはやらしい笑みを向ける
ガーン!フェイにまでビッチと思われてたのか!?
「うるさいな…(否定出来ないから悔しい)
でも、フェイ…石化が解けたんだな
よかった…フェイ…」
「お陰様で、セリカ様にご報告とお礼に参りました」
じゃあ俺のコトほっといてさっさと行けよ
「それと…約束通りセリ様を寝取りに来ました」
フェイは俺に近付き顎に触れようとしたが、レイが俺を引き寄せ不発に終わる
「約束!?した覚えはねぇぞ!?オマエが勝手に言ってただけで!!」
「邪魔をしますか、貴方はよくセリ様と一緒にいた男ですね
過去に私がセリ様を寝取った事を随分気にしておられましたが、今ここで貴方の前で寝取ってあげましょうか」
フェイはレイを煽るように微笑む
「やっぱりあんたは気に入らないな
セリカを助けてくれたみたいだから過去の事は見逃してやろうと思っていたが、セリに手を出すと言うなら殺す」
やべー…この2人が衝突したらどっちかが死ぬまで殺し合うぞ
俺は2人の間に入って止める
「待て待て!俺は寝取られないから、2人とも落ち着けって
ほらフェイは早くセリカに会いに行ってやれよ
セリカはスゲー心配してたから顔見せてやってくれな?」
そう言ってフェイの方へ顔を向けると、フェイは俺の腕を引っ張り顔を掴み引き寄せてキスをした
レイの前で……
「寝取られないってセリ様が決める事じゃないんですよ
私は…そう、その顔が見たかったんです
嫌ってる私に無理矢理犯されて、悔しがって泣いてどうしようもない弱いセリ様の姿に興奮するんです」
「殺す」
反射的にレイは俺を引っ張り後ろにやると、短剣を引き抜いてフェイに襲いかかる
が…寸前のところで止めた
「フェイが来てるって!?」
タイミング良くセリカが部屋にやって来た
それに気付いたレイは短剣をしまいフェイから下がる
「セリカ様、お陰様でこの通り」
フェイは何事もなかったかのようにセリカへと向き直った
レイはセリカと普通に喋っているだけでもフェイが気に入らずイライラしている
「よかったフェイの石化が解けて…
助けるのが遅くなってごめんね」
「いいえ、絶対に助かるって信じていましたから」
「そっか、よかった…よかったねフェイ
たくさんお世話になったから
ちゃんとお礼が言いたかったの」
セリカは恋を知って、表情が柔らかくなった
とくに心を開いている相手には特別に
「ありがとう、フェイ」
最高の笑顔を見せる
天からの贈り物のような、キラキラした
とっても綺麗で可愛い笑顔は、ここにいるみんなの心を奪っていく
「………セリカ様…」
誰もが虜になる
セリカにとって、フェイは大切な仲間の1人
言えないが…セリカの中ではレイよりフェイの方が好感度高かったりする
「……そんな笑顔を見せられたら、セリ様を寝取るのは…暫くはそんな気になりませんね」
フェイの聞こえないくらいの呟きに、セリカは首を傾げるがニコニコ笑顔は耐えない
釣られてフェイの表情も柔らかかった
フェイの奴…そんな良い顔で笑うコトも出来んじゃん…
俺には意地悪な顔ばっかするのに
本当、みんなセリカには甘いよな
「セリカ様、雰囲気が変わったような…恋人でも出来ましたか?」
ハッ!?そういえば、フェイは恋人がいる人に惚れる傾向があって寝取るのが性癖のヤベー奴
セリカが危ない!?
「ううん、まだいないよ」
………えっ?…えっ!?イングヴェィは!?
レイが隣でおっしゃっ!てポーズしながら顔を輝かせてる
「そうですか、残念です」
あっそうか、フェイの前だからウソついたんだ
フェイがヤベー奴ってのは事前にセリカに話してあったし
レイはなんかオレにもまだチャンスがある!とか言ってるけど、ないから
しつこいぞ
なんやかんや数日が経つ
イングヴェィがセレンと話してくれたコトで、あれから俺とセリカが狙われるコトは今のところない
セレンが神族を説得してくれたのか、たまたまこの数日は大人しかったのか…
「あんまり遠くに行っちゃダメよ」
そんな日の中、俺とセリカは城の近くの森でウサギ3兄弟を散歩させていた
久しぶりのお外にウサギ達は嬉しいのか跳ね回っている
とにかく可愛い
微かに聴こえるレイのピアノの音色を耳にしながらウサギ達の姿を眺めた
たまにセリカがおやつを出すとリズムが我先にと寄ってくる
頭を撫でると幸せそうな顔をして、カニバとリズムとパレと3羽とも
とにかく可愛い
「セリくんって、レイのコト好きなの?」
「…えっ!?なんで!?」
ウサギ達がまたその辺を遊び回るとセリカは意外な質問をしてくる
セリカは俺だから、俺の気持ちは自分がよく知ってる
香月と和彦のコトも、セリカ自身は恋愛感情を持っていなくても俺の影響で特別に想っているコトは当然で
俺がレイを好きならセリカも香月と和彦と同じように想うハズなんだが…
「んー…香月と和彦のコトはわかるんだけど、私も2人のコトは好きだもん
でも、レイは2人とは違うの…なんでかな
変な感じ、セリくんは私なのにまるで私じゃないみたい」
セリカは拗れた後もレイに助けてもらったコトがあったし、一生懸命なのは伝わってるけど
だからと言って好きかどうかはまた違うと言う
なんだそれ…俺とセリカの間にこんなコト今までになかったぞ
俺がこんなにレイのコトが好きなのを、セリカはそんなに感じてない?
ウサギ3兄弟が俺とセリカの前まで寄って来ると、足をダンッと強く地面を鳴らす
その合図に俺は頭を切り替える
「ウサギが危険を知らせてる、もしかしてアイツらが来たのか」
「みんな、イングヴェィの所へ帰るのよ
わかったわね
ほら早く行きなさい」
セリカはウサギ3兄弟のうさけつを軽くぽんっとして方向を示し逃がす
「俺達も逃げよう」
セリカの顔を見てそう言うとセリカが頷く
そして、俺は城とは反対の方へと走り出す
たぶんウサギが知らせてくれた危険は神族と骸骨天使の追っ手である可能性が高い
それなら俺とセリカがみんなのいる所に帰るワケにはいかない
みんなを危険にさらしてしまうから
神族は関係ない者には何もしない
でも、俺達を守ろうと邪魔をする者には容赦しない
みんな俺達を守ろうとしてくれるから、それでみんなを巻き込むのは嫌だった
「まずい、バレてる?」
やっぱりだった
骸骨天使の姿が視界に入って俺達は近くの木の陰へと隠れる
こっちにはまだ気付いてないみたいだけど、城とは逆方向にいるってコトはなんらかの方法で俺達の位置を把握してるのか?
「ここにいても見つかるわ…」
わかってる
こんな時間稼ぎしたところで結果は見えてるコトくらい
じゃあどうする…あの数に、俺とセリカじゃ勝てない
待てよ、骸骨天使を操ってるのは神族だ
その神族を倒せばいい……
って!俺がそんな神族に勝てるワケないだろ!?
それにどんな神族かもわからねぇ、姿をまだ見てな…
「…えっ?」
いつの間にか、目の前に結夢ちゃんが立っていた
いくら骸骨天使を警戒してたとは言え、こんな突然現れるような形…全然気付かなくて
「セリくん、ずっと会いたかったわ」
そう言って結夢ちゃんは俺に抱き付いてきた
違和感しかない
結夢ちゃんは話せないハズ…それに、彼女の肌に触れると俺だけがこの世界の全ての不幸が流れ込むように伝わる
だから結夢ちゃんは俺に無闇に触れないし、そうならないように手袋までしてくれていた
その全てがない
「オマエ…誰だ?」
突き放すと右手にはナイフを持っていた
気付かなかったらそのまま俺の首に穴が空いていたかもしれない
「女神結夢が天の異物を殺すのに手間取っているから僕が代わりにさっさと終わらせてやろうと思ってねぇ
人間ごとき、それも天の人間を始末するのに時間がかかりすぎ」
結夢ちゃんの姿をした神族は、元の姿に戻ったのかそれともまた偽りの姿なのかイケメンの姿へと変わる
「やだイケメン」
セリカ……緊張感なくなるから
「褒めてくれてありがと
僕も君みたいな子が好みだから、そっちの女の子を僕にくれたら見逃そうかな」
「ふざけるな!!神族が人間相手にそんなコト言うか!ましてオマエ達の嫌いな天の子だぞ」
俺はセリカを庇うように背に隠す
「僕はねぇ、別に人間だとか天だとか
どうでもいいんだよねぇ
ただ神族の掟は絶対で、多数決で決まった事には逆らえないだけ
君にも心当たりがあるんじゃない?」
言われて、結夢ちゃんやセレンのコトが過る
「いや、さっきと言ってるコトが違うだろオマエ
人間ごときとか天の人間を始末するとか」
「その問題で神族は一同に集まって帰れなくなったからね
早く帰りたいじゃん?
でも、実際に天の子を目の前にして見ると綺麗だねぇ
ここまで綺麗な子を創れる天が羨ましいなぁ」
まただ、またいつの間にか後ろに回り込まれセリカを奪われる
めっちゃ褒めてくれるけど、それって好みの問題じゃないか
「そうだ、君だっていつまでも命を狙われるのは嫌じゃん?
だったらこの女の子の方が僕と結婚したら神族も仕方なく認めて諦めてくれるかもねぇ、どうだい?」
ナメやがって…!カッとなって俺が口を挟むより先に、セリカが神族の男をひっぱたいた
「オマエと結婚するくらいなら命を狙われ続けた方がマシ
もちろん命を狙われるのだから、オマエ達神族もそれなりに覚悟するのね
オマエが私を殺すと言うなら、私もオマエを殺すわ」
さすがセリカ!!
神族の男はセリカの意外な抵抗に面食らっている
叩かれた頬を押さえて、理解すると笑った
「ハハハハ、僕が神族と知ってその態度
勝てもしない人間ごときが大口叩く
気に入ったよ、是非とも僕の嫁にしたいねぇ」
うわーよく少女漫画にある流れきたな
コイツ勘違いしすぎだろ
セリカは嫌いなものは嫌いってハッキリしてるから、何があってもオマエの嫁になるコトないって
「さすが…女神結夢と女神セレンが始末するのを躊躇う人間、天の子って特別さだけではないようだ」
「早く消えなさい、また叩かれたいの?」
セリカ、叩かれたり蹴られたりするのがご褒美だと感じる奴もいるから
たぶんコイツそれやぞ
「協力してあげようかぁ?」
神族の男は笑みをたえさなかった
それが胡散臭くも感じるが、コイツ自身はその笑顔でこっちの信用を得ようとしてるのかもしれない
「さっきも言ったろ、神族の掟は多数決で決まる
守護と純潔の女神結夢、無職の女神セレン、そして愛と美の神フィオーラの僕
もっと神族を君の味方に付ける事が出来れば、君が望んでいる対話も可能かもねぇ
死者の国を変えられるかどうかは別として、あれ自体は生死の神が決める事」
どうする?とフィオーラは笑う
神族の間でもセレンは無職って言われてるのか…
コイツのコトはまだ信用していいかはわからない
だけど、どうしようもない状況なら…どうにか良い方に変わる可能性があるなら
「逆に言えば、生死の神を引きずりおろして君の話を聞いてくれる神族をあてがったら死者の国は変わると言う事さ」
セレンの就職先が決まったぞ!?やったなおい!!
「いや…おかしい、神族は人間と対等じゃないハズ
いくら俺の味方をしてくれるからって、俺の話で死者の国が変わるとは思えない
オマエの言う通りにして万が一上手くいっても俺が狙われなくなるコトくらい
死者の国の仲間を救えないんじゃ…まだ足りない」
「欲張りだねぇ」
「俺は欲張りだよ、恋人は2人いるし
恋人の他に好きな奴もいる
それくらい俺は欲張りなんだからな」
「女神セレンから聞いた通り、小悪魔ビッチなんだってねぇ」
ちょっと待て!?何を聞いたあの女から!?
アイツはあるコトないコト吹き込むぞ!?
小悪魔ビッチはもう否定しないが!!
フィオーラはハハと短く笑って真面目に話す
「死者の国については、僕も必ず変わるとは約束できない
その時の生死の神次第だからねぇ
でも、君の顔
少しでも可能性があるから諦めたくないって言ってる」
「もちろんだ、オマエのコトはまだ信用出来ないがやれるコトはなんだってやる
だから…フィオーラの協力もお願いしたい」
俺はフィオーラに頭を下げた
「綺麗な子のお願いなら聞かないわけにいかないねぇ
僕が言い出した事だし」
頭を上げるとフィオーラは俺達から一歩離れる
「おっと、他の神族に見つかる前に今日はこの辺で
あそこでうろついてる骸骨天使は僕じゃないから誤解しないでねぇ
それじゃセリ様、セリカ様また」
それだけ残すとフィオーラは瞬きする間に消えてしまった
胡散臭い奴だったなって感想しかないが、どうしようもない状況の方向性が見えたような気がした
かと言って他の神族を味方に出来るなんて簡単じゃないだろうが
「ハッ今は逃げないと!?」
骸骨天使の足音がこっちへと近付くのに気付いて俺はセリカの手を掴んで走った
あのフィオーラって奴、この状況で俺達を放置かよ
協力する前に俺達が死んだら意味ないだろ
セリカに嫁になれとまで言っておいて、セリカに何かあったら…
だけど、フィオーラは俺達が助かるってコトをわかってたみたいだ
「セリ、セリカ、大丈夫かい!?」
レイの声が聞こえて、振り返るとそこには骸骨天使を殲滅させたレイとイングヴェィの姿があった
操ってた神族はまた逃げたみたいだが、俺は2人の顔を見て安心する
「2人ともダメだよ、どうして反対方向に逃げちゃうの
ちゃんと守らせてよ」
イングヴェィもレイも心配したと俺達を叱った
だって…って言うとまた叱られるから、うん…俺がちゃんと2人に頼らなかったのが悪かった
レイは光の魔法を使えるから簡単に骸骨天使を倒せるし、神族だって逃げるってコトはこの2人を脅威に感じているのかもしれない
俺はいつも…心配かけてる
「レイもイングヴェィも、心配かけてごめ…っ!?」
2人に近付こうとした時、地面が滑って転けてしまった
ぬかるんでいたみたいでドロドロの泥塗れになる
「ビックリした…」
俺もセリカも最悪と泥塗れの姿に肩を落とす
「ったく、何やってるんだ
ほら早く帰ってシャワー浴びよう」
レイが笑って尻餅ついてる俺とセリカへと両手を伸ばす
レイのセリカの手の方をイングヴェィが叩き払って、セリカはイングヴェィの手を掴んだ
俺は…レイの手を取る
「本当に心配したんだぞ、いつもセリはもっとオレを頼って甘えてくれ
どんな事だって迷惑じゃないから、何があってもセリの事なら必ず守るからな」
レイの手をしっかりと握ると引っ張り立たせてくれる
レイってば…本当に俺のコト大好きなんだな…
いつも、どんな時も、助けに来てくれる
守ってくれる
俺の味方で協力してくれて
それが俺は嬉しかった
レイが俺しか見えないくらい大好きで愛してるってのを感じると、たまらなく嬉しくなる
俺だってレイのコトが大好きになってるってのはわかってて
でも…どこからが愛なのか愛じゃないのかわからなくて
だけどもう…こんなに大好きなら、俺はレイのコトも特別に想ってると言える
イングヴェィとレイにフィオーラのコトを話したかったが、泥塗れになった俺達はその話は明日にしようと考え風呂に入った
風呂から上がって夕食も済ませて、疲れていたからすぐに寝たかったけど
まだ今日はレイとキスしてなかったから頑張って起きる
部屋でまだかまだかと待ってソワソワする
…俺って、やっぱりレイのコト大好きなんだな
「セリ」
待ってた…レイはいつもちゃんと俺を愛してくれるから
レイの手が頬に触れて、顔が近付く
目を閉じて唇が触れる感触、毎日変わらないレイなのに
いつもこれが良くてほしくなる
「……今日は、先に寝ててくれるかい」
珍しくレイは1回のキスで俺から離れた
いつもなら満足するまでしつこいのに
「えっ」
レイは俺を部屋に置いて出て行ってしまった
………なんだよ、それ
もっと…してほしかった……
もっと、触ってほしかったのに
こんな夜中にどこに行くって言うんだよ…
俺はちょっと拗ねてベッドに潜り込む
いつものレイなら、俺がもういいだろって止めてもまだ足りないってしつこいのに……
そんなレイが良いんだけど…
むー、今日はもっと甘えたかった
もっと可愛がってほしいし愛されたいのに
レイのバカ……
もういい寝よって目を閉じた
…………寝れない……
レイのコトが気になって寝れないぞ!?
もしかして、レイは浮気してるんじゃ…
って疑いの心まで湧いてくる
いやいや…レイは恋人じゃないから浮気とか言えないし
俺の方が2人も恋人いてレイとも関係持ってるのに!?
それはレイも2人も理解してるから良いとは言え…
俺ばっかりワガママで欲張りだな
…………やっぱり気になる…
レイに会って安心したいし、もっと触れ合いたい…
いてもたってもいられなくなった俺はレイを捜しに行くコトにした
もし浮気だったら許さない…
って、レイに限って和彦みたいなコトしないだろうが…和彦のせいでもしかしたらって不安だ
俺は広すぎる城の中を歩き回ってレイを捜す
外に出てる可能性もあるかもしれないなって途中で思ったが、とりあえずは城の中を捜すか
夜はシーンと静まり返ってるな
俺の足音しか聞こえない廊下、ふと近くの部屋からレイの声が聞こえたような気がした
ここって普段は使われてない部屋…だよな
聞き耳を立てると、誰かと話してるようだ
「そろそろ良いだろう、その醜い魂を渡す時」
ん…?この声って、シン?あの大悪魔シンがなんでレイと!?
……待てよ、セリカから聞いたコトがある
レイは大悪魔シンに魂を売ってまで俺を手に入れたいって……
「お前の願いは叶った
あの小僧から愛されたいって願いを叶えてやったではないか
我の力なくして、あれだけ愛される事はない
本来なら今もお前は嫌われたままぞ」
「わかっている…
でも、もう少し待ってくれないか
まだオレはセリと一緒にいたい」
なんて……言った?
大悪魔シンとレイは契約して、その願いは俺に愛されるコト…?
その話を聞いて、身体が絶望に震える
俺がレイを大好きだって感じてるこの気持ちがウソだって?コト…なのか……
大悪魔シンの力で俺はレイを好きでもないのに、好きにさせられたって…言うの?
そんな…ウソだ……この気持ちが強制された偽りなんて……
そんな、ショックなコトあるか…
涙が…視界を覆う
「醜い魂がまだ望むか」
俺は涙を拭って、ドアを開けた
「セリ…どうして」
レイはいつもなら俺の気配に気付いただろう
でも、大悪魔シンとの話にいっぱいいっぱいで俺のコトには気付いていなかったらしく
聞かれたくなかったと目を逸らす
「小僧、知らぬままが幸せな事もあるだろう
自ら知りにきたか、愚かな」
「黙れ!!レイの魂は醜くなんかない!!
俺のコトが好きすぎて死ぬほど殺したいくらい愛してる
メンヘラだしヤベェ奴だけど、百年近くも俺だけを想って見てくれたんだ
そんなレイの恋も愛も、俺は醜いなんて思わねぇから!!」
「無理矢理にでも偽りの愛を植え付けられても、言い切るか?
小僧の気持ちはお構いなしにこの男はお前の心を変えた
自分勝手であまりに醜いとは思わないか?」
大悪魔シンは、レイとの契約を完了させてその魂を奪うのが目的だ
ならそれを俺は回避する
「レイはそういう奴だよ、知ってて俺は受け入れた
どんな手を使ってでも俺を手に入れたい
だから脅されたコトもあるし殺されかけたコトもあるし無理矢理犯されたコトもあるし周りを危険な目に巻き込んだコトもあるし
それでも、俺が決めたコトだ」
「小僧が決めた事ではない、我がそうさせた
我が、あの男を愛するように」
それを否定したかった
上手くいくかわからねぇが、一か八かで…
「俺はレイを愛してないよ
ずっと言ってるからそれ、レイだってわかってる
俺にとってレイは大好きで大切な大親友なんだ
キスだってするし身体の関係だってあるが、俺はレイを大親友としか思ってない
俺がレイを心から愛してなかったら、オマエの契約は完了しないだろ!」
「……屁理屈を」
「なんとでも言え、レイの願いを叶えていないオマエが魂を持っていけないって言ってんだよ
失せろ」
大悪魔シンが怯んだ?効果ありってコトか
レイの魂は持っていかせない
俺だって…レイとこれからもずっと一緒にいたいから
「セリは生意気に口が達者だからな
シン、オレの願いを叶えていないなら魂はやれない
オレはセリに愛されたい」
そのレイの言葉にまた視界が緩む……
バカだな…大悪魔シンなんかとバカな契約するなんて……
もうレイのコト……心から愛せないじゃん
こんなに大好きなのに……
それも大悪魔シンに植え付けられた偽りの好意って知って…ショックだよ
でも、それだけ…レイはどんな手を使っても俺がほしかったんだ
ずっと俺を愛してくれてた…
「見届けよう、愛せない苦しみを知れ小僧」
大悪魔シンは失敗したと舌打ちして姿を消した
愛せない苦しみか……もう知ったよ
どんなに大好きでも、この先レイを心から愛するコトは出来ない
そしたら大悪魔シンに魂を持っていかれてしまうから
本当は…少しずつレイのコト、特別に想って来てた
でも、レイとは永遠の大親友…最初から
いくら身体の関係があっても…心だけはレイを守るために
愛しちゃいけない…
ダメって言われると…ちょっとキツいな
こんな時に、自分の気持ちに気付くなんて
もう遅いっての
大切に大好きって想うのは許されるなら、俺はいっぱいの大好きを持って
レイにいっぱい愛してもらう
それしか無理なら、そうするしかないじゃん………
もっとも、この大好きな気持ちも大悪魔シンの仕業って言うなら
ショックでしかないが
「セリ…すまなかった…」
俺はレイの方に振り向くコトが出来なかった
こんなに大好きなのに、これがウソって気持ちが複雑すぎて
よくわかんなくて……
セリカが言ってた香月と和彦が好きなのはわかるけど、レイを好きなのはわからないってこういうコトだったんだ
そりゃそうだ、酷いコトたくさんされてなんで好きになれる
だけど……ウソでも、俺はレイに抱き締めてもらいたいって思うんだよ
どうして…こういう時、抱きしめてくれよ
レイ……
「許される事じゃないのはわかっている
セリに嘘の気持ちを植え付けるなんて…
でも、それでもオレは愛されたかったんだ
なんて……勝手だよな…」
レイの声が弱々しく聞こえる
顔を見なくても、レイだって苦しんでるってわかった
「レイのコトは…愛してないよ
でも…大好きだから…ちゃんと大好きだから」
思わず涙が伝う
言葉にして伝えられない辛さ
迷ったよ、この偽りの気持ちに
そして、愛する心を禁止される辛さに
もう…愛してるって…言えないんだ…レイには
レイは後ろから俺を抱き締めてくれた
「オレはセリを愛してる…それで十分だ」
強く優しく抱き締めてくれる
好きなだけ触れてほしい、レイが満足するまでキスしてほしい
もう偽りの気持ちでもいいよ…
こんなにも愛されたら、愛してあげたい
愛する気持ちは無理でも
大好きって思えるコトが嬉しいんだ
大悪魔シンがこの気持ちをくれなかったらレイを好きになれなかったかもしれない
俺にとって幸運なコトだ
レイが幸せならそれでいい
俺も偽りの気持ちでも幸せを感じられるならそれでいい
いつか…大悪魔シンを倒さなきゃいけない日が来るだろう
その時になっても俺はレイを好きだろうか…
それとも、心から愛せる日になるのかもしれない
「レイ…さっきの続き…したい…」
俺はレイの方へと向きを変える
「嫌じゃないのか…セリのその気持ちは」
「ウソでも偽りでも…今はレイが大好きだから…ほしいんだもん……」
「そんな事言われたら…オレは我慢出来ないぞ」
レイの手が頬に触れて顔を上げられる
気持ちが弾む…身体も熱くなって
これが偽りでも、そんなの考えたくないくらいレイが大好きだから
「俺が拒否ってもレイはするじゃん…」
「そうだったな…」
レイが俺の唇を塞ぐ
いつもと違って遠慮がちなキスに心が痛んだ
最初から俺が…本当に…心からレイを愛してたら…
よかったのに…
無理か、レイと俺は大親友だったんだ
こんな関係になるなんて思いもしなかった
「…こんなの違う、もっとちゃんとして
レイが好きにさせたんだから…ちゃんと…責任取ってよ」
いまさら罪悪感?
こんなに好きにさせといて、勝手すぎる
レイはずっと自分勝手だったんだからそのまま貫いてよ
レイは何も言わなかった
応えるように俺を強く抱き締めてキスをする
俺もレイを抱き締め返す
そのレイの重すぎて歪んで異常な恋も愛も受け入れて、俺は大好きだよ
これからもずっと一緒にいたい
俺の大切で大好きな大親友
-続く-
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