149話『対等じゃない者達』セリ編

イングヴェィの城へ帰ると、セリカは無事だった

そして光の聖霊が来ていて、結夢ちゃんが俺を殺すコトになったって話をしに来たみたいだが

どうやら入れ違いでその情報は遅くなってしまった

光の聖霊は結夢ちゃんのコトが心配で引き続き様子を見ていてくれた

神族一同集まった時に神族がタキヤが俺を狙っているコトを知り、まずは最初にタキヤの女神である結夢ちゃんが殺すようにと神族一同に言われたようだ

光の聖霊そんな大事な話し合いを盗み見出来るってスゲーなって話を聞きながら思った

和彦は鬼神と合流するからと別行動でここにはいない

石化のフェイも鬼神が運んでくれたみたいだ

「それじゃレイ達はもう女神結夢に襲われた後だったのね」

「あぁ、女神結夢が相手だと守護の加護を受けた人間の敵は不死身だから逃げ帰るしかなかった」

「あららそうねぇ、複雑になったわね

女神結夢を助ける為にタキヤの守護の加護をどうするかって話が、女神結夢と戦うのに守護の加護をどうするかになって」

光の聖霊の言葉が突き刺さる

「俺は結夢ちゃんと戦うつもりはない

でも、俺がいたらここも危ないかもしれない

みんなを巻き込む…」

「心配しないでセリくん、俺は巻き込まれたと思っていないからね」

イングヴェィは相変わらず優しいけど、俺はどうしても気にしてしまう

自分のせいで周りを巻き込むコトを…

いつものコトと言えばそうなのかもしれないが、自分だけで解決したいと思ってても出来るほど小さな問題じゃない

「結夢ちゃんが…俺を殺そうとするなら、いつかセレンだって俺を…

相手が、知り合いだから…辛いんだ」

「セレン様と喧嘩したの?」

天使は面識のあるセレンの名前を聞いて反応する

心配そうに天使は俺の顔を覗き込む

さすがのセレンも天使の前で腐ったコトは一切言わなかった記憶がある

見た目は俺でも天使はセレンの中でも子供と認識したようだ

普通に女神やってた

「喧嘩と言うか…」

俺は言葉の代わりに天使の頭を撫でてごまかした

「辛いコトだけど…それでもね、君を殺すと言うなら俺は黙っていないよ」

イングヴェィは和彦と同じように言った

わかってる…でも、それじゃ殺し合いになるから俺は状況を変えたかった

「……結夢ちゃんはタキヤがいるから無理だとして、セレンにはもう一度話してみない?」

俺の僅かな希望をセリカが口にする

上手く行くと思ってないけど、このまま時が過ぎて殺されるのを待つのも殺すのも嫌だったから

「無理じゃないか、セレンとのやり取りはオレも目の前で見ていたが女神が人間の言葉を聞いてくれるとは思えない

とくにセリは他の人間とは違うから」

「そっか…それだよレイくん」

イングヴェィの思い付きにみんなが注目する

険しかったイングヴェィの表情が笑顔と変わった

その笑顔はいつだって安心する

「人間のセリくんが無理なら、俺達が話をすればいい

可能性はかなり低いかもしれないけれど、他の神族より面識のあるセレンさんなら説得が出来るかもしれないね」

「なるほど、イングヴェィさんは人間じゃないしオレも人間ではなくなった

万が一でも状況が変わると言うならやるしかない」

イングヴェィもレイも任せろと言ってくれるけど、自分で出来ないコトが歯がゆく辛い

でも、こうなったら俺じゃ無理だってのはわかってる

「それなら私も行くわ!伝説上の存在のイングヴェィにエルフのレイ、そして光の聖霊の私

この3人に耳を貸さないお馬鹿さんはいないでしょ」

「助かる、骸骨天使は光の力に弱いみたいだから光の聖霊がいるといざって時は頼りになるよ」

「や~ん!レイが珍しく私を褒めてくれたわ♪」

光の聖霊は赤らめた両頬を手で押さえ身体をくねらせた

この2人の関係も吹っ切れたコトで良い関係を築けてるのが見えてちょっとホッとする

「でも、セレン様に簡単に会えるの?

イングヴェィもレイも光の聖霊も、セリくんの味方だってコトは神族もわかってるよね

それじゃあセレン様に会いに行くのも大変じゃない?」

中身が子供の割に天使は鋭かった

「確かに、セレンに会う前に門前払いされそうだな」

俺は話をする3人がどうセレンに会うか考える

後、光の聖霊がいるとは言えイングヴェィとレイが一緒なんて混ぜるな危険しかないんだが…それも不安だ

「セリ、それはきっと問題ない

セレンに会えないなら釣ればいい…だろう?」

レイの言葉に首を傾げるが、少ししてハッとした

またレイとイチャイチャして釣るってあの作戦か!?

「いや!?それはもう無理だろ!?もうセレンは俺なんて興味ないだろうし…それに」

そのイチャイチャをイングヴェィと光の聖霊にも見られるってコトなんだぞ…?わかってるか?

イングヴェィは笑ってるけど、察したのか雰囲気めっちゃ恐い

あれは怒ってる時のイングヴェィだ

光の聖霊はとくに気にした様子はないけど、レイは振った女の前でイチャつくってどんな最低な神経してんだ

いくらセレンを釣るためだと言っても

「ねぇセリカちゃん、セレン様を釣るってどうやって?お魚さんなの?」

「天使は知らなくていいコトだよ」

天使は首を傾げてハテナを浮かべていたけど、セリカに頭を撫でられるとどうでもよくなったようだ

みんな天使に知られないように、セレンをどうやって釣るかは黙ってそれぞれが察した

「んー…気に入らないけど、それしか方法がなさそうだね……」

「セレンの趣味は私は理解出来ないけど、セレンは趣味が命な人でしょ

こんな事になっても一押し」

光の聖霊はセリカに目を向け、気付いたセリカはさっと天使の耳を塞いだ

それを確認してから光の聖霊は続ける

「カップルのイチャイチャが行われてたら我を忘れて食いついて来ると思うわ

それこそ、自分が女神だと言うコトも忘れてね

後は勇者は会話に加わらず私達3人に任せればいいのよ

なんならセレンの心を腐で満たしていた方が何でも言う事聞いてくれそうだから

会話中もレイの膝にでも座ってなさい」

セレンって……そんな単純……かもしれない

人間の俺が神に逆らう発言に女神としての在り方を引き戻してしまうだろうが

黙ってレイに寄り添ってたら、セレンは腐った目でしか見ない

それなら…いけるかもしれない!セレンとまともに会話……逆に無理なんじゃ…

アイツ腐ってる時はだいたい話聞いてないぞ

「その作戦しかないのかもしれないが…光の聖霊はいいのか?

レイと俺のイチャイチャを見るコトになるって…」

俺は遠慮がちに光の聖霊に聞いた

「俺は嫌なんだけどな?」

イングヴェィが先に口を挟む、その笑顔はめちゃくちゃ恐かった

「レイくんに触れられたセリくんの反応はセリカちゃんも同じように伝わる

直接セリカちゃんに触れていないとは言え、セリくんから通じてレイくんを感じてしまうってコト」

イングヴェィは話してるとだんだんと笑顔を失っていく

そんなイングヴェィにセリカは身を寄せる

「確かに、私はセリくんが感じるコトはありのまま感じるわ

でも直接触れられていないってイングヴェィもわかっているし

私にはこうして直接触れないコトに意味はないと思っているわ」

そしてセリカは微笑んでイングヴェィの手に自分の手を重ねる

その瞬間、イングヴェィの顔が真っ赤になって耳まで熱が上がる

小悪魔だな、セリカは

「君に直接触れていいのは…俺だけであってほしいな……」

誰もイングヴェィの小さすぎる声は聞き取れなかった

「わかったよ…セリカちゃんの言う通り

伝わってしまっても、それがセリカちゃんじゃないなら気にするコトじゃなかったね」

イングヴェィはセリカしか見えていない

照れてどうしようもないくらい真っ赤な顔で笑顔を見せた

セリカもイングヴェィの笑顔に笑顔を返す

端から見たらあの2人もう両想いなんじゃって思うな

「……セリカの手に触れるなんて…許せない」

今度はレイが激しい嫉妬で狂いそうになってる

慌ててレイの手を握って落ち着かせる

「もう皆イチャイチャしすぎじゃないの?」

光の聖霊は呆れながら天使を後ろに向かせ耳を手で押さえている

「さっきの勇者の質問だけど、私は平気よ

ちゃんと振られたら嫉妬なんて私の中からは消えてなくなってるわ

私は聖霊だから人間のように引きずらないのよ」

光の聖霊は言った通りスッキリした顔で笑う

光の聖霊って、会った時は俺のコトめっちゃ嫌ってたけど

良い奴だよな

1番良い男になかなか振り向かなかったこんな俺を嫌うのは当たり前で、それなら私を見てよってなるよ

もっと早く…いや、本当はこの世界に来てからずっと一緒だったレイのコトは良い男だってわかってた

大親友でいたかったけど、レイに愛されるのも悪くない

ちゃんと嬉しい…ちゃんと大好きだ…

「うーん…2人がわかってくれたのは良いんだけど、人に見られてるっての俺は嫌なんだよな」

「見たくないけど、覗きみたいになっちゃうよね

興味ないんだけどな覗きって」

「私も覗きの趣味はないからね~、レイと違って」

光の聖霊はレイを見てふふふと意地悪な顔で笑う

「レイって覗きが趣味なのか?」

レイの方を見ると視線を反らされた

わかりやすい反応したな…

「変態じゃん、セレンと一緒じゃん」

「ち、違うんだセリ!?はじめて覗きをしたのはたまたまで

どうしてもセリの事が気になって目を離せなくなって、それからセリの事が知りたくてオレの知らないセリの姿も声も」

軽蔑の目を向ける

レイは目が凄く良い、香月や和彦が気配を感じられない距離まで離れてもよく見えるみたいだ

それで俺は前世で二度殺されたコトがある

香月と和彦の部屋は高い位置にあって周囲に覗ける場所もないから、月明かりを頼りにカーテンを閉めないコトもあった

ふーん…そういう時…覗いてたんだ…へー…

声も?ってコトはもっと近くで覗いてたコトも?

それなら香月も和彦も気付きそうだが、アイツらわざとレイを放置して見せ付けてたってコト!?

うわーもうみんな最低!!大嫌いだ!!

「話はまとまったし、今日は解散で

レイはついて来んなよ」

完全に機嫌を損ねた俺は冷たくレイを突き放す

「またセリに嫌われた…」

「レイがメンヘラでストーカーで変態だから、嫌われてもおかしくないわね」

そんなレイのコト百年近くも好きだったのオマエだぞ光の聖霊!?

それだけ聞くと全然良い男じゃないな

そうして解散となり、俺はレイと暫く口を利かなかった

1日最低1回のキスもおあずけだ



そして、数日後

俺達はまた死者の国へとやって来ていた

イングヴェィとレイと光の聖霊と俺の4人

なんとも意外な面子だ

「ここまで来たのは良いけれど…勇者まだ怒ってるみたいだし、あんた達ちゃんとセレンを釣れるの?」

光の聖霊は苦笑する

俺はレイの方を見ずムスッとしたままだ

だって、覗きだぞ?自分があんな姿や声を他人に見られるのも聞かれるのも絶対嫌なんだよ

あの姿も声も、その時に好きな人だけのものなんだから

香月と和彦のものだけ…それ以外は例えレイでも嫌だ

レイはレイだけの俺を見せてあげるのに…

まぁ覗きしてた時はこうなるなんて思わなかったんだろうが

でも、俺はどうしても許せないんだもん

「それよりここまで来てなんだけど、死者の国って招待されていないと入れないよな」

思い出すのが遅すぎたと俺は言う

「それは大丈夫だよ

俺が掴んだ情報によるとセレンさんは死者の国から少し離れた場所にいるみたい

もちろんセレンさんに近付けば近付くほど骸骨天使がいるから気を付けてね」

骸骨天使は光の力で倒せるが騒ぎになると生死の神にバレて厄介だ

この前みたいに近付ける所まで行くしかないか

セレンは生死の神をしつこいと苦手としていたから一緒に住むのは嫌だったのかもしれない

そして俺達はセレンのいる館へと侵入する

「ここまでかな」

これ以上は骸骨天使の数が多く気付かれると近くの部屋に入り込む

いくつもある部屋はほとんどが使われていなかった

セレンがいる部屋以外は無人か

セレンが一国の主だった時はどの部屋も使われていて空き部屋の方が少なかったなって思い出す

またセレンが一国の主になって天使や人間達に囲まれる日来るだろうか…

そこに俺がいるコトは…?もう無理かもしれない…

「じゃあ私はクローゼットに隠れるわね!」

と光の聖霊はクローゼットに身を隠したが隙間から光が漏れてダメになった

「光の聖霊はバスルームに隠れて隙間を塞いだ方がいい」

「私は光だから隠れるのに向いてないのよね~」

ぶつくさ言いつつもレイの言葉には素直に従いバスルームへと入ると内側からタオルで隙間を埋めていく度に光が消えていった

「それじゃあ俺がクローゼットに隠れるよ

隙間から様子が見れるから何かあったらすぐに助けるからね

セリくんだけ」

セリカがイングヴェィを納得させたとは言え、やっぱりレイのコトは嫌いみたいで睨んだ

イングヴェィがクローゼットに隠れるとシーンと静まり返ってしまった

あっ…ずっとレイと口利いてないから急に気まずくなったぞ!?

「セリ…いいかい」

少しの沈黙の後、レイが俺の方を向くから反射的にぷいっとあっちを向く

イチャイチャしなきゃセレンは釣れないってわかってるけど、俺はまだ怒ってるし

こんな気分でレイと仲良く出来ない

「やっぱり嫌、イチャイチャするなら別にレイじゃなくてもいいし、それなら俺はイングヴェィとする」

セリカである俺でも絶対イングヴェィは何があっても俺を抱かないってわかってるけど、他に男がいないんだもん

セレンはBLじゃなきゃ釣れないから光の聖霊じゃダメだし、そもそも俺が女とイチャイチャ出来ないってわかってた

「こんなコトなら和彦と合流して和彦と…んッ!?」

レイは俺の顔を無理矢理自分の方へ向かせキスをする

「なんで…そんな事を言うんだ

オレが嫌だってわかっててセリはいつも1

番痛い所を突くんだな」

………俺って…性格めっちゃ悪い…

いくらレイに怒ってるからって…最悪、ここまで言うつもりはなかったのに

「性格悪いもん俺、嫌なら離れたらいいじゃん」

ちがーーーーーう!!!!そんなコト言いたいんじゃないだろ!?

何意地になってんだ俺!?

「他の男の名前が出たくらいで、他の男が良いって言ったくらいで、俺のコト全然わかってないじゃん」

だから俺は最低か!?なんでこんなレイを傷付けて自分も追い込むようなコトを…

大好きな人を傷付けるって自分も傷付けるってコトなんだぞ…

レイは俺の減らず口に指を突っ込む

口が閉じられなくなった隙間にレイの舌が入って絡め取られていく

やめろって言葉も出ず、その代わりに吐息が漏れる

レイに離れろって身体を押しのけようとするが、レイはそんな俺の両手首を片手で拘束する

「…わかっているさ、セリの事くらい」

そのままレイは俺を近くのソファへと押し倒した

馬乗りにされて身動きが取れなくなる

「オレを怒らせて最後までしたいんだ」

「…はっ?」

「だって、セリは犯されるのが好きなんだろう?」

その言葉にゾクッと身体が震え妙な汗が伝う

「ち…違う…そんなんじゃない、だってイングヴェィも見てるし…そのうちセレンだって来る…」

「イングヴェィさんが見ている前でセリを犯せるなんてオレにとったら最高な事だ

香月さんと和彦さんには悪いが」

レイは本気だ

俺は調子に乗ってバカやった

レイがまた前のように優しいからってやりすぎてしまった

メンヘラスイッチの入ったレイは手に負えない

「ま、待って!レイ、ごめんなさい

意地になって酷いコトたくさん言っちゃった

ごめんなさい…許して…」

メンヘラのレイを前にして俺は怖くなって震えてしまう

「それもわかってる

セリと喧嘩すると、思ってもいない事まで言ってしまう事くらいさ

それが余計に腹が立つんだが、それがオレに甘えてるだけなんだって事もわかっているから」

レイは俺へと顔を近付ける

「舌、出して」

レイの声も表情も怖くて俺は言われるまま舌を出すと、レイは俺の舌を思いっきり噛んだ

「いっ…!?」

激痛に引っ込めると口の中に血の味が広がる

ジンジンと強い痛みが涙を刺激して視界が霞む

「減らず口のお仕置き

その顔…良い、好きだな…

フェイは気に入らないって思っていたが、セリのこんな顔に興奮する気持ちはわからなくないかもな」

自分がどんな顔してるかなんてわからない

とりあえず痛みに涙を我慢してレイを睨む

顔も身体も熱くて…思考もおかしくなりそうだ

レイは俺を見て意地悪で満足そうに笑う

「そういえば、セリは耳が弱いんだったな

和彦さんに開発されて…」

レイの唇が耳元に近付いただけで背筋がゾクゾクとする

まだ触れられてもいないのに、触れられるって予感だけで身体が反応してしまう

「嫌…耳は…本当に………」

「それは楽しみだ…」

レイの親指が口の中に入って舌の傷を刺激されて痛みが増す

耳に唇が当たって舌が入ってくる

「んっ…あっ…」

「痛みと快感どっちが勝つんだろうか

セリにとったら痛みも快感かい」

身体がどんどん熱くなって汗になる

噛まれた舌は痛いのに…耳の気持ち良さと、意味わかんない快感になってる

和彦のせいでちょっとのコトで敏感に反応してしまうのか、レイが上手いのかわからない

とにかく、このままだと俺は人の見てる前で…それは嫌だ

耐えて我慢しても、内側から込み上げて来る

手も足も痺れてきて…もう…ダ…メ……

この快感に逆らえない

…ふと、目を開けるとドアが少し開いているコトに気付く

………つ、釣れてる!?釣れてんぞあの女!?

ドアの隙間から覗いてる女はいつもと変わりない腐った表情で俺達を見ていた

俺がセレンに気付いたコトに気付いたレイは俺の口から親指を抜いた

レイならもっと最初からセレンの存在に気付いてたよな!?言えよ!?

「確保ーーー!!」

俺が叫ぶとレイとイングヴェィがセレンを捕まえ部屋の中へと引きずり入れた

光の聖霊も俺の声に終わったのねと出てきた

「どういう事なんですの!?最後までするってレイ様おっしゃったじゃありませんの!?

セリ様を犯すと!?心残りですわ!!!

最後まで最後まで拝ませてくださいませ!?」

………相変わらずだなこの女

それが今じゃありがたいって皮肉

「何度も言ってるけど、人が見てるのに最後までやるワケないだろ

セレンは陵辱プレイが好きだってこの前知ったからそれで釣ったんだよ

わざと喧嘩してな」

喧嘩のきっかけレイの覗き発覚はたまたまだが、俺はそれを利用した

いくらレイに怒ってても一晩寝たら許すもん

レイもそれに気付いたみたいで乗ってくれてたってコト

「さすがレイ、俺のコトわかってる~」

「そう思ったが、本当にセリを怒らせたんじゃないかって冷や冷やしたよ」

「んー覗きは嫌だったけど、過去のコトじゃん

もう覗きなんてしないって約束してくれたら許すよ

レイはレイだけの俺の姿を見て声を聞いてくれよな…」

「あぁ…もうセリの甘い姿も声もオレに見せて聞かせてくれるなら、覗きをする事もないさ」

レイはみんなが見てる前なのに、俺に仲直りのキスと言って唇を当てる

バカ野郎…そういうみんなが見てる前ってのが嫌なんだってば

セレンは鼻血を吹いて倒れた

「セレンさんを釣ると言ってもセリくんに酷いコトするんだね、レイくん」

イングヴェィはレイを睨む

「イングヴェィさんはセリを、セリカの事をわかっていないだけだろう」

レイは自分の方がその辺は上だとマウントを取る

やめてねーセリカまで巻き込むの

セリカは俺だから、セリカもそうであるコトは否定出来ないが

イングヴェィはイングヴェィでいてほしいから変なコト吹き込むな

「とりあえず、俺達はセレンに話をしに来たんだ」

2人の間に入って衝突するのを止める

ここから俺は会話に入らず聞く側に回った

セレンが喜ぶからと光の聖霊に言われた通りレイの膝の上に乗せてもらって大人しくしていた

それにしても…さっきの耳責めはヤバかった…

レイは少しずつ俺の身体を知っていってる気がする

耳は和彦が教えたのもあるが

俺を知ってくれるのは凄く嬉しいけど、めっちゃ恥ずかしいな

そのうち本番もレイと迎えるんだよな…

今までレイには犯されたり薬の副作用での身体の関係はあったが、はじめてレイを受け入れてするのは……どんな感じなんだろう

楽しみなようで、ちゃんと出来るか不安かも

「セレンさん聞いてる?」

「はぁはぁはぁ…セリ様がエロい顔をなさるのでイングヴェィ様達の話が耳に入って来ませんわ」

うっ…セレンに言われて俺はレイの肩に顔をうずめて隠す

やっば、俺は喋れないからって他のコト考えすぎた

しかもスケベなコト…

言い訳するとさっきの余韻のせいだ

切り替えよう、とりあえず今日のごはんのコト考えよう

じゃなくて!!ちゃんと話聞こう

レイの手が俺の背中に触れる

それが気にするなって言ってるようで落ち着く

「セレンさん、話はセリくんとレイくんから聞いたよ」

「そういう事ですわ、これは神族と人間の問題

イングヴェィ様達のような他種族には口出しされる事ではありませんの」

「そう言うと思った

でも、俺は話し合いに来たんじゃないんだよね」

「はい?」

セレンの聞き返しに俺も、えっ?とイングヴェィの方を見る

俺は話し合いのつもりでここに来た

イングヴェィの話し合いに来たんじゃないなんて聞いてないぞ

一体何を考えて、俺が口を開こうとしたらレイに手で口を塞がられる

レイはイングヴェィに任せろって言うのか?

「対等だと思ってもらったら困るな

俺はね、天の異物とかなんとか言ってセリカちゃんの命を狙う神族を許さない」

「まさかイングヴェィ様…神族と全面戦争をなさると?」

「するワケないでしょ、そんな対等なコト

セレンさんってリジェウェィのコトが好きだったよね?」

リジェウェィの名前が出るとセレンは一丁前に女の子らしく顔を赤らめた

いつもセレンの趣味としか見られてない俺には見せない表情

「あれは俺が兄として作ったものでね

なかなか上手くいかないから何度も壊して作ったんだ」

イングヴェィはいつもと変わらない笑顔で猟奇的な暴露をする

衝撃だった…いつも優しいイングヴェィも、また人ではなかった

セリカに見せる顔も本性であり、またセリカ以外に見せる顔も本性なんだ

「なんですって…リジェウェィ様は…作りもの?

セレン達神族が人間を作るのと同じだと…おっしゃるんですの…?」

「そうだよ、冷めたかな?」

「そんな事くらいでセレンの愛は冷めませんわ!!そんな事くらいで…」

セレンはリジェウェィが作られたもの

自分達が作った人間と同じような生まれと知って複雑な思いに動揺しているのが見てわかる

好きな気持ちはそう簡単には冷めない

セレンは…神族である自分より、乙女である自分を選ぶ

「冷めませんわ、それがなんだと言うんですの」

「俺のこれから出す要望が呑めないと言うなら、リジェウェィを壊すよ

俺は今力を失っているからリジェウェィを作り直すにはいつになるかな

いや、それじゃ違うかな

セレンさんが恋をしたリジェウェィは二度と戻らないね」

イングヴェィは終始ニコニコといつもの笑顔を崩さない

時折ゾッとする恐さを感じさせながらも…

演技?違う…イングヴェィはリジェウェィを壊すコトに何も感じないんだ

イングヴェィは演技が出来るほど器用じゃない

イングヴェィにとって何度でも作れるなら…何度壊したって同じだって言う

本当にそうだろうか…姿形はリジェウェィでも、それは本当に俺の知ってるリジェウェィなのかどうか…

イングヴェィ自身も、セレンが恋をしたリジェウェィは戻らないと言っているのに

「卑怯…ですわ……最低ですわね」

「そうでもしないと話にならないでしょ

俺はセリカちゃんを守る為ならなんだってするよ」

もう話し合いじゃなかった

イングヴェィが一方的にセレンを脅し言うコトを聞かせる

俺の周りはヤベェ奴しかいないってわかってたけど、イングヴェィもちゃんとヤベェ奴だった

みんなすぐ脅したり殺したりするの、よくないぞ!!!

「まずは…要望を聞かせてくださいな」

セレンはイングヴェィへの怒りをこらえて聞く姿勢を見せた

イングヴェィから話す要望は

神族が天の異物と呼び俺とセリカを排除するコトをやめる

人間の声に耳を傾け、死者に幸せを

自ら命を絶った死者へ救いを

俺の願いを変わりに伝えてくれた

それを聞いたセレンは難しいと言葉を漏らす

「無茶を申しますのね…

セレンが出来るコトは…ありませんわ

死者の事は生死の神がお決めになる事

他の神族では彼が決めた事は変えられません

司る神がそれに対して1番力を持ちますわ

そして、セリ様の件ですが

神族の多くは自分と似たような存在を許しませんの

天も鬼神もそうですわ…

神族は掟に縛られ神族が決めた事には逆らえませんのよ

結夢さんがセリ様を天の異物であっても心を許したのは何か特別な想いがあったのでしょう…

その結夢さんですら、神族一同が決めてしまった新たな掟である天の異物を排除する事には逆らえませんわ」

そっか…結夢ちゃんはその掟のせいで…

戦いたくなくても戦わなくちゃならない

そんなの……変だ……

セレンは自分が何も出来ないコトに悔しがる

「お願いしますわ!リジェウェィ様の事を壊すのはやめてくださいませ!?」

それでも必死に自分の愛しい人を守る

イングヴェィが愛しのセリカを守りたいようにセレンだってそうだった

「役に立たないセレンさんのお願いをどうして聞かなきゃいけないの?

聞いてほしかったら必死でなんとかしてよね

話は終わり、じゃあ俺達は帰るから良い報せを待ってるよ」

セレンが泣いて懇願してもイングヴェィは厳しい態度だった

笑顔でも…イングヴェィは…恐い

俺はそんな泣き崩れるセレンの姿を見て声をかけたかったが、レイは俺の口を塞ぎ首を横に振った


セレンの屋敷から離れてやっと俺は話すコトが出来た

「私、何も活躍できてないじゃなーい!?」

せっかくついて来たのにって光の聖霊はむくれる

「いざって時が来たら光の聖霊の力なしじゃ厳しいからな

まぁいざって時がないに越したことはないだろう

それにオレも驚いたよ、まさかイングヴェィさん1人で話を進めるなんて思っていなかったからさ」

レイは光の聖霊が近くにいなくても光魔法を使えるけど、光の聖霊がいればより強力になる

骸骨天使を数多く相手にするなら光の聖霊がいてくれる方が心強いんだ

「イングヴェィ…さっきのはあまりに酷いんじゃ

リジェウェィの話は本当なのか?本当にリジェウェィのコト壊すの?」

イングヴェィの隣を歩きその顔を見上げる

「リジェウェィの話は本当だよ、必要なら壊すよ」

「そんなの、セリカが怒るぞ」

そう言うとイングヴェィは足を止めて俺に向き直った

その時のイングヴェィの表情は笑ってるけど、とても悲しそうだった

「……そうだね、セリカちゃんは怒るね

と言うか、怒られたコトあるんだ

今のリジェウェィがいるのはセリカちゃんが俺に怒ったからだよ

したくないよ…セリカちゃんが怒るコト」

俺はそんなコトが聞きたいワケじゃなかった

セリカがどうとかじゃなくて、イングヴェィ自身がリジェウェィのコトどう思ってるのか…

セリカしか見えてないイングヴェィは…レイみたいだ

やっぱり、イングヴェィとレイは似たところがある

「俺だって壊したくないんだよね

リジェウェィにはいつも助けてもらってるから」

セリカのコトになると周りが見えなくなるみたいだけど、イングヴェィはちゃんとリジェウェィに感謝していた

それを知って俺はホッとする

「リジェウェィがいなくなったら、困った時にセリカちゃんを助けられないかもしれないもんね」

………そうでもなかった…

イングヴェィは人間じゃない…

人間の俺とは分かり合えないコトもあるのかもしれない

魔族の香月と一緒で…神族のセレンと同じで…

「そっか…うん…」

俺は話を切ってしまった

香月のコト思い出しちゃった…

分かり合えないコトってあるから…

同じ人間だって難しい時があるのに、種族が違ったらもっと難しいのかも

それでも俺は香月のコトを愛してる…

セリカは…それでもイングヴェィのコト……



-続く-

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