144話『君にクリスマスプレゼントを!』天使編

俺はイメージだけで天使と呼ばれてるけど、天使じゃない

クリスマスの時期に天から人間の世界に降りてきて、決められた人にクリスマスプレゼントを届けるのが俺のような存在の役目だった

俺は成人男性として創られたけど生まれたばかりの0歳

はじめてのクリスマス、はじめてのお仕事で

自分にそっくりでひとりぼっちの女の子せりかちゃんに出逢ったんだ

その女の子が俺の担当だった

クリスマスプレゼントをお届けするだけの簡単なお仕事

担当した人間のほしいものは魔法の袋から自動で出るハズなのに、でもせりかちゃんのほしいものは魔法の袋から出るコトはなかった

なんやかんやあって、最終的に君がほしいものは家族だった

それを俺のマスターはわかっていたからせりかちゃんとそっくりな俺を贈った

せりかちゃんの家族になりなさいってコトだったのだ

だから、俺は君のお兄ちゃんになったんだよ

それから何年もずっと一緒にいて、楽しかった嬉しかった幸せだった

喧嘩するコトも多かったけど、俺はせりかちゃんが大好きだった

だけど、せりかちゃんは人間だから…いつかは恋をして結婚もいつかは……

…せりかちゃんは最期に俺を捨てたんだ…

アイツに…せりかちゃんを奪われたんだ

それが前の世界での俺の人生だった


この世界のセリカちゃんはとても優しくしてくれた

「はい、天使が食べたがってたハンバーグカレー作ったよ」

最初はこの人のコト、せりかちゃんに見た目がソックリってだけだと思ってたけど

ずっと一緒にいると他にもせりかちゃんと被るところがあって…

作ってくれたハンバーグカレーも…美味しくなくてでも不味くもなくて不思議な味がするんだ

それもせりかちゃんと同じで俺は思わず涙を零してしまった

「あれ、辛かった?」

「ううん…甘くて美味しいよ」

いつか会えるって信じて待ってたけど、日に日に不安になって

もしかしたらもう永遠に会えないのかもしれないって怖くなって

寂しくて死んじゃいそうだった

たまらなく寂しいんだ…

寂しい時は、セリカちゃんの傍にいると

せりかちゃんといるような気持ちになって紛れていた

だけど、だんだんと違うってわかってるからこそ余計に辛かった…

セリカちゃんに近付く男が俺から君を奪っていくんじゃないかって、嫌な気持ちが湧いてくる

嫌な気持ちが大きくなればなるほど、俺の真っ白な翼は少しずつ黒く染まる…

「悪いコトはしちゃダメ」

それがせりかちゃんとの約束だった

俺は天からの贈り物だから悪いコトをしたり思ったりすると、翼が黒くなって

完全に染まったら消えて死んでしまうから

そうなって死ぬ寸前までが一度あった…

だから、せりかちゃんはもう二度としちゃダメって叱られたのに

でも…ダメだよ

無理だよ

だって、せりかちゃん…いないじゃん……

俺はせりかちゃんのクリスマスプレゼントなのに……

一緒にいないなんて……俺の存在する意味がないでしょ

止められないんだもん

会いたくて、会いたくて

寂しくてたまらないから!!


そんなある日、俺はセリカちゃんに寝るまで傍にいてって言ったのに

俺が寝たと思ってイングヴェィに呼ばれて部屋を出て行ったんだ

イングヴェィはセリカちゃんを奪う人だから俺は後を付けて盗み聞きをする

魔法力で気配を消してね

そしたら…

聞こえにくかったけど、俺の大切なせりかちゃんはこの世界にいないって話をしていた

その時、俺の中で何もかもが崩れて割れるような感覚に陥った

それって…もう…二度と…せりかちゃんに会えないってコト?

涙が…止まらなかった

そんなの…俺は生きてる意味がないのと一緒だったから…


もう俺は自分がおかしいコトにすら気付いていなかった

俺はセリカちゃんにウソついて、騙して連れ出した

小屋に閉じ込めて、魔法を使って誰も入れないようにした

俺の魔法力、この世界にはない特別な力

なんでも出来る力なんだよ…

せりかちゃんが、俺を迎えに来ないのは

結婚して新しい家族が出来たからなの?

そうなんだね…

そうだよね、俺のコト捨てたんだもん

俺の翼が真っ黒に染まるのも……君が俺を裏切って捨てたから

こんな嫌な気持ちにさせるから、全部君が悪い

俺は悪くないのに、どうして俺がこんなに苦しくて寂しいまま死ななきゃいけないの!?

「結婚するなんて、許さない

君が願ったんだよ

家族がほしいって…

だから、俺は君のクリスマスプレゼントで家族になったのに

せりかちゃんが結婚したら、お嫁にいったら…

もう俺とは家族じゃなくなるんでしょ

そんなの絶対に嫌だ

俺を捨てて新しい家族を作るなんて、絶対に………嫌…」

あんな男に君を渡したりしない

だって、せりかちゃんは俺の家族なんだから

「ずっとずっと、ここで俺と2人で暮らそう?

せりかちゃんの家族は俺だけでいいよね」

本当は…君の幸せを願ってた

せりかちゃんが大好きな人と結ばれるコトを応援していた

それが俺も嬉しかったし幸せだったから

なのに……なんでかな、俺

自分でもわけわかんないよ

君のコトが大好きで大好きで、俺にとってたった1人の大切な人だから

恋じゃないよ

俺は、まだまだ子供ってだけ

だから…甘えたいんだよ

いなくならないでよ、ずっと傍にいてよ

一緒にいたいよ…


それから数日が経った

ここに閉じ込めてしまったセリカちゃんは日に日に元気がなくなっていくのが目に見えてわかる

食べ物は俺の魔法で出しても、食べてくれない

俺にも優しくしてくれなくなった

目も合わせてくれない…

…いいもん……

いいもん…もう時間も…そんなにないしね…

俺の翼の真っ黒な進行具合でわかる

最期に…せりかちゃんと一緒にいたかった

それだけで…俺はよかっ

「あのね…天使…私は」

ずっと沈黙を貫いていたのに、君は口を開く

俺は君の口を手で塞いだ

「天使じゃなくて…いつもみたいに、せりくんって呼んでよ!せりかちゃん!!?」

天使じゃない、俺はせりだよ

君の大切な……

……せりかちゃんにとって…俺ってなに?

「呼んでよ…俺の名前を……」

目の前の君が霞んでいく

溢れ出る涙は止まらない

こんなコトしたくない、嫌な気持ちになりたくない

でも…

「会いたいよ……寂しいよ……せりかちゃん……大好きだもん」

うぅ…

静かだった空間が、外の騒がしさに耳が傾く

「ドアが開かない?そんなの蹴破ればいいじゃない!!」

気の強い声が聞こえたかと思うと、バキッて音とともにドアが蹴破られる

「えぇ……見た目に似合わず意外に怪力…」

えっ……なんで

「せりくん!!」

涙が引っ込んで、名前を呼ばれて振り向く前に頭を掴まれ地面へと叩きつけられた

俺を土下座のような姿勢にしてその横で俺の頭を抑えたまま自分も土下座をして

「せりくんが迷惑をかけたみたいで、申し訳ございません!!」

セリカちゃんに謝った

えっ…えっ…?とりあえず、おでこが痛い

「ほら、せりくんも謝りなさい」

「あっ…ごめん…なさい……」

ウソだ……信じられない…

もう会えないって……違うの?ねぇ…

早く…顔を見て、安心したい

「そんな、土下座なんてやめてください

私は怒っていませんから2人とも顔をあげて」

セリカちゃんのお許しが出たコトで抑えられていた頭が解放される

顔を上げて、すぐに横にいる人の顔を確認する

「まったく…せりくんってば」

せりか…ちゃんだ……その綺麗な顔も中性的な声も…良い匂いも…

そして、俺の名前を呼んでくれる…

「せりかちゃん…おでこが痛いーナデナデして~大きなたんこぶ出来てるよ」

「たんこぶって可愛いもんじゃないよね…額が割れて血が垂れてるよ…」

目の前のセリカちゃんが引いてるけど、これ日常茶飯事だよ?

「久しぶりに会って最初に言うコトがそれ?自業自得でしょ

せりくんのコトは聞いたわ」

せりかちゃんは容赦なく俺のぱっくり開いた額にデコピンを食らわした

「だって、せりかちゃんがいないから…」

「人のせいにしないの!悪いコトはしない約束破ったんだから後でたっぷりお説教ね」

「えっやだー!?」

せりかちゃん怒ると恐いから半泣きになっていると、せりかちゃんが両手を広げてくれる

「その前に…感動の再会しよう?」

せりかちゃんは……泣きそうになるのを我慢して笑ってくれる

それは…せりかちゃんも、ずっと俺に会いたかった…捜してくれてたってコトでいいんだよね?

「せりかちゃん……会いたかった…会いたかったよ…!!」

俺は思いっきり、会えなかった分強く強くせりかちゃんを抱き締めた

あったかい…懐かしいせりかちゃんの体温だ

ウソじゃない、本物の…君なんだって…

「寂しかったよせりかちゃん…凄く……大好き…大好きだよ、せりかちゃん

1人でいなくなるなんて、許さないんだから、怒ってるんだから」

嬉しいのにたくさん泣いて、たくさん名前を叫んで…

「私も…私も…大好き、せりくん…

うん、ごめんね…勝手な私で、許して…」

せりかちゃんはずっと頷きながら俺の名前を呼んで抱き締めてくれた

「天使の翼が真っ白に戻っていくわ…」

「綺麗だね…今は2人っきりにしてあげよう」

イングヴェィとセリカちゃんが気を使ってくれて静かに小屋から出て行くのにも気付かないくらい俺はせりかちゃんしか見えていなかった

暫くして落ち着いてから離れていた間のコトを聞いた

「えっ、それじゃあせりかちゃんは好きな人に会えたんだ

じゃあじゃあ、もう結婚した??」

「ううん…せりくんがいないのに、結婚する気分にはなれなかったわ

あの人もせりくんが見つかるまで待つって」

「それならもう結婚出来るね!」

「そうね」

せりかちゃんは見たコトない幸せな顔で笑う

照れてるせりかちゃん可愛い

やっぱり、せりかちゃんの幸せが1番

せりかちゃんの好きな人は俺の思った通りの人だったし

その人ならせりかちゃんを最高に幸せにしてくれるってわかってるから安心だ

「あの人もせりくんと一緒にって言ってくれてるんだけど…

この世界のイングヴェさんに聞いたわ…

世界が違うと一緒にはいられないんだってね」

「………やっぱり…せりかちゃんとは違う世界だったんだ……」

会えて嬉しくてたまらなかった

なのに、急に地獄に落とされた気分になる

俺はせりかちゃんのクリスマスプレゼントなのに…

傍にいられないなんて…そんなの…

「幸せに…なってね…俺は1人でも大丈夫だから

せりかちゃんが幸せに暮らせるってわかっただけで…十分だもん……」

俺の役目はここで終わり…

ウソ、本当は嫌なくせに

でもワガママ言ったらせりかちゃんが向こうであの人と幸せに暮らせない

俺が泣いたら…ずっと心配かけちゃうから

無理矢理にでも笑う

「………何…勝手にサヨナラしてるのよ

せりくんは私のクリスマスプレゼントなんだから…ずっと私と一緒だよ

プレゼント、捨ててないんだから…」

「せりかちゃん…」

「無理だってわかってるけど、仕方ないコトだけど

言わせてよ

一緒にいたいって素直な気持ちくらい…!」

俺は…自分ばかりせりかちゃんのコト大好きだと思ってた

せりかちゃんが俺のコトでこんなに寂しいって…別れを泣いてくれるなんて思わなかった

俺がずっとせりかちゃんを大切な人なら、せりかちゃんもずっと俺を大切に想ってくれていたんだね…

「俺だって…嫌だもん…一緒にいたくても

でも、仕方ない…仕方ないよね……」

せりかちゃんが泣くのは珍しかった…

俺は君が泣き止むまでずっと寄り添うコトしかできない

それから暫くして俺もせりかちゃんも未来を向かなきゃならないコトを覚悟した


せりかちゃんは自分の世界に帰る前に、もう一度イングヴェィとセリカちゃんへと頭を下げた

また俺の頭を無理矢理下げさせて…

「本当にごめんなさい、この子はこう見えてまだ9歳くらいの子供でワガママなんです」

「子供扱いすんなよな!?俺は大人として創られてるんだから!!」

せりかちゃんの肘が鳩尾に食い込んだ

息が出来ない

「いえいえ、なんとなくわかってたので大丈夫ですよ

可愛いもんです」

「見た目だけが取り柄だからみんな騙されるのよね」

「同じ顔して面白れぇコト言うな!?」

頬を抓られ引っ張られた

「この世界に1人残して生きていけるかも心配だし…」

せりかちゃんは俺を頼りない目で見る

「安心してください

天使はセリカちゃんにとても懐いてるからここで面倒見るコトを決めました」

「せりかちゃんよりセリカちゃんの方が優しい」

ヒールの痛い部分で足を思いっきり踏まれた

穴が空くと思う激痛

「ご迷惑をおかけしたのに…ありがとうございます!!

本当に…助かります

……さすがですね…」

せりかちゃんが心配ないようにイングヴェィとセリカちゃんが俺を引き取るコトを決めてくれたんだね

セリカちゃんには悪いコトしたのに…ごめんなさい

でも、セリカちゃんのコトも大好きだから一緒にいられるのは嬉しいかも

本当は…せりかちゃんとずっと一緒がいいけど……

「では…せりくんをよろしくお願いします

もう二度と会えなくなるのは………寂しくて…悲しいけれど…」

俺を頼みますってせりかちゃんは頭を下げたまま声が震えて顔を上げられなくなってしまった

俺だって……本当にこれでお別れなんて…二度と会えないなんて……そんなの

「俺は…やっぱり、嫌だよ…二度と会えないなんて…」

「二度と会えないなんて言ってないよ?」

イングヴェィの言葉に俺の涙が止まる

そして、せりかちゃんに顔を上げるように言って

イングヴェィは俺に7色に光る綺麗な宝石?をくれた

俺がなくさないようにいつも身に付けていられるようペンダントに加工されている

「大好きな人と永遠にお別れなんて、考えただけで死んじゃうよ

それはユリセリさんとリジェウェィにダメ元で相談して作ってくれたもの

この世界にはない天使にしかない魔法力があってこそ特別に出来たんだよ」

「えっ…何が?」

「そのペンダントがあれば、君の魔法力でいつでも好きな時に大好きな人の世界に行けるってコト

そうだね、君の魔法力なら1週間は滞在できるかも」

俺の魔法力は寝れば回復するから…それって、ずっとせりかちゃんと一緒にいられるってコト!?

俺とせりかちゃんはお互いの顔を見合わせる

まだ理解が追い付いていないけど、俺もせりかちゃんも少しずつ笑顔が増す

お互いがそのコトについて、どんなに素敵で幸せなコトかわかったら

最高の笑顔となる

「天使の好きにこの世界とそっちの世界を行き来出来るってコトだよ」

「この世界では天使のコトは私が面倒見るから、気が向いたら会いに来てね」

イングヴェィもセリカちゃんも、会った時からずっと優しくしてくれた

この世界のたくさんの人が優しかった…

少ないけど、思い出もある

この世界は俺にとってもう1つの帰る場所になったのかもしれない

「恐いせりかちゃんと喧嘩したら優しいセリカちゃんに会いに来る!」

「じゃあ毎日この世界に来るコトになるね」

「毎日喧嘩する気満々!?

まぁ、喧嘩しなくてもいっぱい遊びに来るね

俺はこの世界も大好きになったから!

ありがとう、セリカちゃんイングヴェィ

またね!!」

「本当にありがとうございました

何から何まで…本当に…」

2人にお礼を伝えて、俺とせりかちゃんはせりかちゃんの世界へと一緒に行く

その世界には俺の知ってる人がみんないた

幸せな世界だった

永遠の幸せが約束された世界

大好きなせりかちゃんと一緒にいられるコトが俺の幸せだって、もうこの笑顔は二度と失われない

大切な大切な…君といつまでも

俺は君の大切なクリスマスプレゼント



それから数ヶ月後

俺はセリカちゃんの世界へと来ていた

今日までにも何回もここに帰ってきてたけど、今日は特別なんだ

せりかちゃんのブーケを持って

「いらっしゃい天使」

もうこの世界で天使って呼ばれるのも慣れた

「久しぶりだな天使」

セリカちゃんに、セリくんに、イングヴェィに、レイに、リジェウェィに、セレンに…

会ったコトない人もいるけど、みんないるね

会ったコトない人はセリくんが紹介してくれて、香月と和彦とフェイって人だって

こうして見ると、俺の世界と同じような顔触れでちょっと笑っちゃうな

まったく知らない人もいるけど

「この和彦とフェイと、あっちにいるレイには近付くなよ天使

危ないから」

本人達が目の前にいるのにそれ言うのセリくん…

「いくらセリ様にそっくりだからと言って、子供には手を出しませんよ」

殴ったりするってコト?このフェイって人恐いのかな…

「じゃあコイツが後10年経ったら?」

「んー…………いける」

「やっぱ危ねぇわ!?二度と近付くな!!見るな!!見ただけで天使が穢れる!!失せろ!!」

フェイを俺から遠ざけるようにセリくんは押しのけた

「そうだな、いくらセリくんにそっくりでも

セリくんじゃないから何の気も起こらないな」

この和彦って人…凄く雰囲気が恐い…

「和彦…そんなに俺のコト…」

「この子が大人の女だったら抱ける、っつか抱く」

「オマエまさか、俺と離れてる間に浮気なんかしてねぇよな…?」

「………えっ?」

「うー!オマエなんか嫌いだ嫌いだ!!ウソつき!バカ!アホ!!」

セリくんが泣きながら和彦に怒って叩いてるのは、なんでかわかんないけど

仲は良いんだってコトはわかる

「仲良くねぇし!?別れるし!?」

「アハハ、それ何万回聞いたか」

「何万回言わせてんのオマエだよ!?」

「ヤキモチして怒ってる顔も可愛いな」

セリくんは和彦にあっち行けと押しのけた

「確かに見た目はセリそっくりですが、別人ですね」

この香月って人も…めちゃくちゃ恐い…目が合っただけで死が降り注ぐような

俺はセリくんの後ろに隠れる

「香月は安心だけど、天使が魔王の雰囲気に怯えてるからその意味で近付かない方がいいかな」

セリくんは紹介は終わりと言って俺の背中を押してセリカちゃんの隣へ移動する

「せりかちゃんの結婚式に出席してきたよ」

「あら幸せなご報告ね、おめでとう」

「よかった、おめでとうって伝えておいてね」

みんながお祝いの言葉をくれる

えへへ、ありがとう

せりかちゃんも喜ぶよ

「暫くはこっちにいるね

新婚だし2人っきりにさせたいもん

旅行一緒に行こうって旦那様も言ってくれたけど、やっぱり邪魔かなって」

「邪魔とは思わないだろ、まぁでも2人っきりにさせたい気持ちはわかる

偉いな天使、よく我慢できたじゃん」

セリくんとセリカちゃんが偉い偉いって頭を撫でてくれる

「せりかさんの旦那様ってどんな人なの?」

セリカちゃんにそう聞かれて、思わず俺はせりかちゃんの旦那様にそっくりな人に視線をチラッと向けてすぐに視線を戻した

「とっても素敵な人だよ」

俺がニッコリ笑うとセリカちゃんも釣られるように笑ってくれる

「結婚式も素敵だったんだよ

せりかちゃんいつもよりスッゴく綺麗で、普段の暴力女はどこいったのかって思うくらいお嫁さんしてた」

「また怒られるよ」

せりかちゃんいないし聞いてないからセーフ!!

「俺は恋なんて全然わかんないけど

結婚するならセリカちゃんとしたいな!」

そう言って俺はセリカちゃんに持っていたせりかちゃんのブーケを渡す

「それはせりかちゃんからセリカちゃんにって、向こうの世界のものだから長くは持たないけど」

生花だから向こうの世界でもそのうち枯れちゃうもんね

「わ~可愛くて綺麗なブーケ

ありがとう、とっても嬉しいわ」

セリカちゃんは本当に嬉しそうに笑ってくれる

いつかこの世界のセリカちゃんも好きな人と結ばれるといいね

俺、応援するよ!!

「ちょっと待った!!セリカと結婚するのはオレだ!!

クソガキ天使の出る幕じゃない」

レイはセリカちゃんから俺を引き離す

「何言ってるのレイ、子供の言うコトよ

ママと結婚するってレベルなんだから、ムキにならないの」

「子供だからって侮れないぞ

コイツが後10年すれば大人だ

セリカの魅力にやられるに決まってる」

「年が離れすぎてるわ」

「年の離れたカップルも夫婦も少なくないだろ!!?」

「同じ顔はさすがにないから」

「セリは自分と結婚したいくらい自分のコトが大好きなんだぞ!?」

レイって………ウザイな

「落ち着けレイ!!俺はそこまでナルシストじゃない!!

それに天使が今まで見たコトないような目(ゴミを見る目)でオマエを見てんぞ!?

天使にこんな顔させるな!!」

「セリ!?オレはただ…

可愛いセリとセリカを花嫁にして両手に花を」

セリくんがレイをゴミを見る目と同じになってるのに気付いたレイは言葉を詰まらせた

必死に機嫌を取ってるけど、セリくんは無視だ

「結婚か~、考えたコトなかったな

憧れがないワケじゃないけど」

セリカちゃんは自分の左手の薬指へと視線を落とす

そんなセリカちゃんの浮いた左手をイングヴェィがすっとすくい上げる

「綺麗なブーケだね

いつか、セリカちゃんにもそれが似合う日が来るよ」

イングヴェィがニッコリと太陽のように笑うと、セリカちゃんは顔を真っ赤にしてイングヴェィのコトが直視出来ないのか左手はそのままにしながらも

右手に持つブーケで顔を隠す

「だと…いいな……」

そんな2人に俺は、クスっと笑みを零す

ここが、俺のもう1つの帰る場所

贅沢なくらいの俺の人生はまだまだ続く



君に 最高で幸せな クリスマスプレゼントを



-続く-

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