141話『復活の3バカ』セリ編

あ~…あくびが出る

スゲー眠い

イングヴェィの城に帰って来てから数日が経つ

またレイと一緒にいるコトになって、イングヴェィはレイがここにいるコトを良くは思ってないけど仕方なく受け入れてくれた

「イングヴェィが嫌なら…ここから出て行く……」

「そんな、セリくんを追い出すみたいなコトは出来ないよ」

やっぱりイングヴェィは優しい

香月くんと和彦くんがいない今は俺の傍にいてくれた方が安心だから、とまで言ってくれる

「あ、あの…」

「ん?どうしたのセリくん」

「イングヴェィは…わざとだよね

あの時、レイが俺を人質に取って逃がしたの」

このイングヴェィがあっさり引き下がるのは変だと後になって思った

イングヴェィはこうなるってわかってたんだ

だから、そのきっかけを作ってくれた

俺が本当はそれを望んでいるって、自分でもわからなかったのに

イングヴェィにはわかっていた

「………どうかな、俺自身は…こうなったコトがよかったのかどうかわからない

でも、セリくんはやっぱりこれでよかったんだってのは見てわかるよ

セリくんは自分が思うより、ずっとレイくんのコトが大切なんだね」

「う、うーん…嫌なコトもたくさんされたしなぁ、許されないコトだって」

「それでも全てを受け入れた」

「ま…まぁ…」

そう決めたけどやっぱり不安はあるから曖昧な返事になってしまう

「大丈夫、俺がいるからね」

イングヴェィのニッコリとした太陽のような笑顔を見ると、不安が晴れていくような感じがして

その笑顔は元気になって明るくしてくれる

そんなこんなでイングヴェィのおかげで俺はここに住まわせてもらっている

天使も一緒に、あの子の大切な人が見つかるまでいてもいいってイングヴェィは言ってくれてるんだ

天使の大切な人は、セリカにそっくりな女の子だ

それは見つけやすいと言える

俺やセリカを見たって人の情報を集めればいいだけだから

でもたくさん集まった情報は全て俺やセリカに心当たりがあって、それは別人じゃないってコトになる

俺やセリカに心当たりがない情報が天使の捜してる女の子の可能性があると見て俺達は闇雲に捜すよりその情報を待っている

とは言っても、天使には話してないが

前の世界で死んだ人が必ずしもこの世界に来ると言うワケじゃない

天使の大切な人がこの世界にいない可能性だってあると言うコトだ…

今は…秘密にしといた方がいいんじゃないかと思って…

天使の笑顔を見ていたら…言い出せないと言うか……あの笑顔を奪いたくない

その天使の日々の過ごし方はセリカとウサギ3兄弟と遊んでるコトが多い

動物と仲良しで、誰とでも気さくに話せてコミュ力も高いから周りからはかなり可愛がられてるな

まぁ見た目は綺麗だから可愛いしな

その見た目と幼い性格なところがみんなほっとけないみたいだ

俺だってそう、合わないところもあるからイラつくコトもあるが…やっぱりほっとけないんだよな

中庭で天使とセリカを見つけたから俺は声をかけた

暖かい日差しの中で木の陰で天使はセリカの膝を枕にしてお昼寝中だ

羨ましい奴だな

しかし、よく寝るな…子供か

「セリくんも眠そうね」

「暇だからな

そういや、ラスティンを見かけないけどまだ帰ってないのか?」

「えっラスティン?」

俺はセリカにラスティンと会ったコトを話した

そして先にセリカのところへ帰るように言ったんだ

「見てないわね…帰って来てないわ」

「マジか、迷って……はっ!?」

やっべ~…コトに気付いちまった……

「あっ…悪い…俺、間違えてここじゃなくて香月の城の方教えちゃった…」

セリカは香月のところにいた時期が長かったから…なんて言い訳でしかないよな

「あらそれなら迎えに行かなきゃね」

うふふと笑うセリカ、すると天使が途中から寝たフリしてたのか話を聞いていて

「俺も一緒に行く!!」

と、セリカの膝を枕にしたまま見上げて言う

「じゃあ3人で」

「いや4人だ」

どこからかレイが現れて自分も一緒に行くと言い出した

まぁ近くにいるとは思ったけど、盗み聞きなんて相変わらずストーカー能力が高いな

道中をこの3人では不安しかなかったからレイが一緒だと心強いから頼もしいよ

「………。」

天使はセリカから離れてレイの前まで寄るとジッと顔を見ている

そういや、最初の俺違い抱きつき事件からレイのコト警戒して避けてたもんな天使って

これから暫く一緒に行動するとなったらレイがどんな人なのか見極めたいんだろう

天使は少ししてからニッコリと笑う

すると、レイはむちゃくちゃキレた

なんで!?

「その顔で笑うな!!寄るな!!」

そう言ってレイは天使から後退る

天使はビックリしてセリカの後ろに隠れた

「レイが悪い人じゃないって思うのに、怖い…」

「んーあのお兄ちゃんには近付かない方がいいかも」

セリカは苦笑しながらも天使に大丈夫大丈夫と言い聞かせて頭を撫でてあげてる

完全に天使をウサギ扱いしてるな

「レイ、そんな天使に意地悪言うなって」

「あの天使がオレは怖いんだ…」

「俺と間違えて手を出しそうとか?」

絶対やめてねー

「違う逆だ、あの天使を見ているとセリに手を出す事に罪悪感が…」

まぁ…天使にいかがわしいコトは出来ないもんな

俺は天使と見た目がそっくりなだけで天使じゃないんだが

セリカの後ろに隠れながらも天使はこちらの様子が気になるのか

レイと目が合うとまたニッコリと笑った

レイのコトは嫌いじゃないらしい、悪い人とも思ってないみたいだ

「笑いかけるなと言ってるだろう!?そんなにオレを責めるな!!」

誰も責めてないって、レイが勝手に自分を責めてるだけだぞ…

レイは天使目掛けて物を投げた

「わぁ!ウサちゃん!」

天使はレイが投げたウサギのぬいぐるみが気に入ったのかぎゅっと抱き締めて喜んでる

レイ…めっちゃ天使のコト好きじゃん……

「ほら!怖いだろう!?」

「俺はオマエの精神状態の方が怖ぇよ…」

セリカはレイの精神状態を落ち着かせるために、天使を連れて出掛ける準備をするから後でねと行ってくれた

こんなレイと一緒にこれから4人で出掛けられるのか?

もう…仕方ねぇなぁ

「わかったわかった、レイが天使を苦手ってのは

じゃあ…もう俺とキス、出来ないね?」

「………。」

レイはまだ俺と天使を重ねているのか、言葉が出ない様子だ

俺はレイに抱き付いて顔を近づける

「俺がしたいって言っても…ダメ?」

「そ、そういうとこだぞ!セリの…わかってて、やってる…そういう小悪魔なとこ……」

レイの体温が上がるのを感じる、顔だって赤く染まっていく

「そうだよ、俺は天使じゃない

だから他の人のコトなんて見るな、俺を見ろ」

「……見てないさ、ずっとセリの事しか…

悪かった…オレはセリにキスしたいし、もっと」

レイが俺の腰へと手を回して抱き締めてキスしてこようとしたから突き飛ばした

「なんでだ!?」

「えっだって俺怒ってるもん」

「誘っておいて突き放すなんて酷いじゃないか!」

「だって俺、天使じゃないもん

小悪魔だから…クス」

ふふっと笑って俺はレイに出掛ける準備したらまた後でねーと手を振って部屋へと戻る

「くそ…そういうとこも嫌いじゃないんだって……オレ」


それから暫くしてみんなが準備を終えて集まったら、魔王城へとラスティンを迎えに行くコトになった

道中はレイが終始ムスッと機嫌が悪かった

キスおあずけがかなり不満らしい

天使と重ねられて俺だって怒ってるんだから知らなーい

レイは天使に近付こうとはしなかった

嫌いではないんだろうけど、苦手なのはこの先も変わらないんだろうな

まぁ…レイの気持ちもわからんでもないんだよ

俺だって天使を見てたら自分が生まれてきたコトにごめんなさいって気持ちになるから…

……………後で、レイのコト許そう

魔王城に辿り着くと、魔族も魔物も少なく静かな雰囲気が流れる

香月はまだ帰ってないってわかってるのに、やっぱりいないってコトに寂しさを感じる

楊蝉が出迎えてくれて元気な姿を見て安心した

レイは楊蝉を殺した(と思ってる)のに生きてるコトに驚いたが謝罪もない

そこは謝れや!!

「この女が邪魔だったから」

今は邪魔じゃないから殺さないだけとかぬかす

俺が怒ると

「まぁまぁもう過ぎた事ですわ、私はこうして生きておりますからね」

と楊蝉は俺を宥める

楊蝉が言うなら…でも、レイのこの態度は気に入らねぇな

つまり…レイはいつでも殺す時は殺すって心持ちなんだ

俺の周りの人達に危害を加えない約束をしたとしても、レイはいつでも自分を止められなくなる危険人物だってコトになる

それでも俺はレイの全てを受け入れるって言えるのか…ここまで考えていなかった

いや、レイが自分で止められないなら俺がさせなきゃいいだけだ

俺がそんなコトさせないって決めたんだから

「ところでセリ様達は何用でここへ?」

「あぁ、ここにセリカに会いに男が来なかったか?

楊蝉ならわかるかと思うんだが、人間の姿をした白虎なんだけど」

楊蝉は白虎と聞いて心当たりがあるみたいで頷いた

「えぇ、いらっしゃいましてよ」

やっぱり…俺が間違えて教えちゃったからなぁ、すまんラスティン

「白虎さんならキルラさんと一緒にいらっしゃるかと」

「へっ?意外だな」

あのバリバリ陽キャのキルラと臆病で陰キャのラスティンがつるむなんて

「キルラさんったら頭に酷い怪我を負ったとかなんとかで傷心して帰って来たとか言ってた割にすぐに元気になって」

怪我…?まぁ…怪我か…

すぐに元気になるのがキルラらしいな

アイツがずっと落ち込んでる姿なんて想像し辛いわ

「なんでも白虎さんを加えて四天王復活とかなんとか…おっしゃっておりましたわ」

楊蝉はわけがわからないわと首を傾げながら話してくれる

「四天王…?そんなのいたか?」

「知らないわ、3バカなら知ってるけど」

「だよな」

楊蝉にキルラとラスティンのいそうな場所を教えてもらって俺達はそこへ向かうコトにした

その途中の廊下を歩いてると、天使は落ち着きなく周りをキョロキョロとする

「ねぇ、セリカちゃん…」

「どうしたの?」

「ここなんだか恐いよ」

あっそうか、ここって魔の空間だから天使には合わないのかもしれないな

気付いてやれなかった

わかってたらお留守番させたんだがな

「手を繋いでもいい?」

そう天使がセリカに言ってる前からもう手を握っていた

「いいわよ」

セリカの天使を見る目が完全にウサギだった

天使はセリカが手を繋いでくれると安心したような表情に変わる

「おい調子に乗るな!いい加減にしろ!!

オレだってセリカと手を繋ぎたいんだが!?

道中もずっとセリカに甘えっぱなしでイラついていたんだぞ!!

セリカもセリカだ!オレの時は嫌ってハッキリ言ったのに、天使にはなんでもかんでも甘くないか!?」

「レイは下心丸出しだけど天使は下心一切ないのだから当然の対応でしょ」

セリカの言葉にレイは何も言い返せずに血が滲むほど唇を噛んだ

下心丸出しなの否定出来ないんだな…

「レイはいっつも怒りんぼだ」

「煽ってるのか!?」

レイがキレすぎて死にそう

こんだけレイのコト怒らせるの天使がはじめてなんじゃ…

天使は怒ってるレイを見てクスッと笑う

「見たか!?セリもセリカもこの天使に騙されてるんだ!!

いいや天使じゃない!さっきの笑った顔もセリと同じで小悪魔ビッチなんだこの男は……はっ!?」

勢いで出た言葉はもう遅くレイはしまったと言った顔を俺の方へと向ける

「ふーん…レイって俺のコト、そう思ってたんだ?」

「いや…その…待て、誤解だ

小悪魔な所は可愛いじゃないか、オレはそこも好きだ」

「俺は誰とでも寝る尻軽だって思ってたんだ?」

「誰とでもとは思ってないぞ!?ただ…オレだけじゃないと言うのが、不満で…悪口みたいになったと言うか…

いや、それは悪かった!謝る!セリの事は理解しているから不満はないとは言えないが…それで良いと言うか…

そうじゃないとセリじゃないし、それも含めてオレはセリの事」

「知らない」

俺はレイについて来るなと言ってセリカと天使と一緒に先を急いだ

「可哀想…クス」

天使は後ろを振り返ってレイに笑みを送った

「くっそぉ…あの天使…覚えてろ、化けの皮を剥がしてやる」


レイを置いて3人になってから俺は少しずつ冷静さを取り戻す

レイが俺をビッチだって思ってたコトにちょっとショックだった…

って、事実なんだからショック受けるのはおかしいしそれでレイに怒るのもダメだってわかってる

香月と和彦が気にしないからって俺は麻痺してたのかも

いやアイツらは俺が2人の恋人になるって形じゃなきゃうまく収まらなかったと言うか…

俺がレイの立場だったら好きな人が他の人となんて死んでも嫌だし…

そんな辛い気持ちの中でも、レイは俺と一緒にいたいって言ってくれた

じゃないと殺して死ぬって脅された…が正解か…

ちょっとレイに冷たくし過ぎたかな

香月と和彦とは喧嘩したコトないけど(和彦の言動に俺が一方的に怒るコトはたまにある)

レイとはたまに喧嘩するんだよな…

しかもほとんどしょーもないコトで

もっと優しくしてやりたいんだが、やっぱりたまにレイはさっきみたいにウザイ

メンヘラだし

「セリくん、ラスティンには私と天使で会いに行くよ?レイと仲直りしたら?」

セリカには何でもお見通しか、まっ自分なんだから当たり前だよな

優しく笑うセリカの言葉に俺はそうしようかなって考え直す

天使はそんなセリカに手を繋ぐだけじゃなく抱き付いてしまってる

………本当にコイツ下心ないのだろうか…

レイが言うように、もしかしたらなんてコトは…

じっと天使の顔をのぞき込むと天使は頭にハテナでも浮かべるかのようにニッコリと笑う

まぁ…天使だし…ないよ、な…はっ!?もしかしてこの笑顔に俺達は騙されてるんじゃ!?

本人も本物の天使じゃないと言っていたし

レイを信じるか、天使を信じるか…

レイはヤバい奴だけど付き合いが長く歪んでるが信頼はある

天使は天使だけど最近知り合ったばかりだし…

俺達が廊下の途中で足を止めていると近くの部屋のドアが物凄い音を立てて吹き飛んだ

ドアと一緒に男の人も転がり出てきて、部屋の中から怒鳴るキルラが追い打ちをかける

「てめぇ!!!!オレ様の女横取りしやがって、ふざけんなよ!!???この泥棒猫が!!!」

男の胸倉を掴み今にも殴りかかる勢いのキルラ

なんだなんだ喧嘩か?女寝取られたんかキルラの奴

「ふざけてんのはお前だろうが!?あの女はお前に飽きて僕に」

「えっ…もしかして…ラスティン……?」

……えっ!?……えぇっ!!!???

キルラと揉めている男をラスティンとセリカが呼んだコトで、言われてみればラスティンだとわかる

話し方も雰囲気も見た目もなんか変わっちゃって別人みたいだ

たった数日しか経ってないのに!?

なんか…なんか…一瞬、キルラと揉めてるラスティンがラナに見えたかと思った

「セリカ!?会いたかったセリカ!!」

ラスティンはセリカを見ると胸倉を掴むキルラの手を払いのけてセリカへと抱き付こうとした

すると、天使がラスティンの身体を押し退ける

「何このオス…セリカに似てるけどセリカじゃない」

「おい待てやコラ!!話は終わってねぇぞ!オレ様の100番目の女に手ぇ出しといて逃がすか!」

「だからキルラが飽きられただけだって、僕はあんな女たくさんいるセフレの1人にしか思ってない」

……ん?なんて??

俺とセリカはラスティンらしからぬ言葉に固まってしまう

天使はなんで揉めてるのかセフレの意味もわからずな感じだった

「待って待って、説明して?私にわかるように」

こんがらがったセリカは2人にストップをかけて詳しく聞き出した

ラスティンは間違ってこの魔王城に来てしまい、何故かキルラと意気投合

なんで?陽キャのキルラと陰キャのラスティンが意気投合したんだ?と聞くと

最初は合わなかったが、ラナと最初に出会った時もラナはラスティンみたいな感じだったと言う

そこでキルラはラスティンに女を教えた

そしたらこうなったと言うワケだ

さっきの喧嘩の内容もよくラナと衝突していたとかなんとか

「ウソよ!ラスティンはこんな子じゃなかったわ!

ホストみたいな姿になって女の子をたくさんのセフレがなんとかなんて…

私はラスティンをこんな子に育てた覚えはないわ!!」

セリカ、めっちゃ泣いてる

「俺が間違えてここに行くように言ったから…」

「いや~、ラスは元々素質あったってだけっしょ

遅かれ早かれこうなりますって、セリ様のせいじゃねぇし

セリカ様も泣く事じゃないって」

「セリカ、誤解しないで

セフレは合意だから!セックスする前に彼女には出来ないって言ってる!」

「オレ様は彼女99人いるから勝ったな

たまに修羅場になって何人か死ぬ」

100番目なかったコトになってる

なんの勝ち負けだよ

最初に伝えてお互い納得してるラスティンの方がちゃんとしてるぞ

キルラはただの最低クソ野郎

「ラスティンのコトはわかったわ…

でも頭が痛くなってきたから…帰りましょう」

セリカは衝撃的なコトを聞きすぎてフラフラになっている

ラスティンのセフレの件は否定しない

相手の女の子がそれで納得してるならそういうのもありだとしている

(ラスティンの変わりっぷりには信じられないみたいだが)

セリカは自分はそういうの絶対無理でも、他人の間違ってないコトには理解を示す

でも、キルラの場合は女の子が他に彼女がいるコトを良しとしていないからトラブルになる

相手の気持ちを大切にしないキルラのコトは軽蔑しているんだ

「セリカ、僕は一緒には帰れない」

「どうして?」

帰ろうと背を向けたセリカがラスティンの言葉にもう一度振り返る

「ここの四天王になったから!」

「ラスティンが……3バカの一員になるなんて…」

またセリカがショックを受けた

「ラスティン、四天王になったってオマエは魔族じゃないのに?

それにキルラは魔族だぞ

魔族は人間の敵ってパパと一緒に戦ってたじゃん」

「キルラが面白い奴ってわかったから」

面白い奴ってのは認めるが…クズだぞ…

「パパ…いや親父は」

女を覚えたらパパ呼びから親父呼びかよ!?

「魔族も魔物も人間の敵って言ってた

僕はそれを信じて疑わずにそうだとしてた

でも…キルラや魔族のお姉ちゃん達といるとわかんなくなったと言うか!」

「魔族って美形一族だから綺麗なお姉さんばっかりだもんな…」

「それな!!とにかく親父には悪いけど、今はこれでいいかなって」

ラスティンの答えは俺と同じ答えだった

俺も香月のコトが好きだから、魔族だとか人間だとか関係なくて…

今はこのままでいいかなって…

とにかく俺は香月と一緒にいたくて…香月と一緒にいられるなら……

「おい、よく見たらセリカ様にくっついてる奴セリ様にそっくりじゃねぇの」

キルラはもうラスティンが彼女を寝取ったコトはいいのか、天使の前にやって来ては大きく見下ろす

「いつもセリ様にはやられっぱなしだからな~、このそっくりな奴を代わりにボコボコにしたら少しはスッキリすんじゃ…」

キルラは卑怯丸出しのダサい行動に出た

大きな手(翼)で天使を掴もうとしたが

「……っうおおおお!!!オレ様に…オレ様は小鳥を握り潰す事なんて出来ねぇええええ!!!」

崩れ落ちた

俺にそっくりな天使には本当に羽根があるからキルラには小鳥に見えるんだろう

一応、キルラは鳥型の魔族だし

鳥には優しいのか?でもカラス嫌いで怖いって言ってたコトあるな

前に鳥いじめてたコトもあるし

なんだコイツ

「アホか、いくら俺にそっくりだからって俺じゃないんだから

そんなにムカついてるなら俺に来い、返り討ちにしてやる」

「遠慮しときます、セリ様強いんで

今のオレ様に勝ち目はねぇ…」

天使はキルラを見ても一切笑わなかった

悪い奴だって本能的にわかってるようだ、その通り

「そうだ、セリ様今日は泊まっていくっしょ?

たまにはバーで飲みましょうよ!」

俺にムカついてるって言う割に、キルラって俺のコト仲間と思ってくれてるんだよなぁ

窓の外を見ると夕日がもう沈むところだった

今から帰るのは無理か


そんなこんなで今夜はここに泊まるコトにした

天使はいつにもましてセリカから離れようとしなかった

よっぽど魔の空気が肌に合わないようだ

天使には悪いが、一晩我慢してくれ

夕食を終えてキルラとバーで飲む約束をしていたが、セリカは天使が眠そうだからと部屋に残った

俺はレイを誘って行くコトにする

仲直りのきっかけに良いかな…

バーの中でソファ席に座り、飲み物を頼む

俺はアルコールダメだからノンアルなんだが、レイはやけ酒してやべぇほど酔った

仲直りするって出来るのかこれ…ワイン瓶抱いて寝てるぞ…

キルラは一緒に飲もうと言った割には他の席に移動したりして、今はカウンターの方へと行ってしまった

アイツ、いつもうるさいけどこういう落ち着いた雰囲気の場所なら割と静かに出来るんだな

「おいレイ、こんなところで寝転がるな

行儀が悪いし風邪引くぞ」

「セリが…オレより、天使を選ぶから…」

「別にどっちも選んでねぇよ、面倒くせぇな」

「じゃあ今、オレか天使か選んでくれ」

レイは起き上がりテーブルを乗り出して俺に顔を近付ける

うわ、酒くせー…もう飲み過ぎなんだって

「何で選ぶんだよ」

「どっちが好きか」

「アホ?」

「アホで構わない」

「酔いすぎだ、それに俺はレイと仲直りしたくて…」

人が真面目に話をしようとしてるのにレイはまたワインを飲み干してる

ダメだ、レイはお酒に強い方だが今日はメンヘラモードに酒が流れてる

「オマエな、こういう場所はそんな風に飲むところじゃ」

「あの天使…」

「なんだよ」

「絶対、裏があるな」

裏があったのはオマエの方だぞ…って言ってやりたい

「何を根拠に」

「セリカを独り占めしてる」

「ただの嫉妬だろ」

「いや!…それもあるが、ああいういかにも天使ってのが逆に怪しいだろう

セリもセリカも騙されてるんだ

オレにはわかる」

いやいやオマエにも天使の何がわかるって言うんだ

「わかったわかった、とりあえず飲むのはやめて落ち着け」

「寝る」

急に!?

レイはふら~っと立ち上がる

ちゃんと歩けねぇじゃん、仕方ねぇなって俺はレイを支えて一緒に部屋に戻るコトにした

「キルラ、俺達部屋に帰るからまた今度」

「おー!セリ様いつでも遊びに来てくれっすよー」

キルラに声をかけて、俺は体重をかけてくるレイを支えながら部屋へと戻った


「よいっしょっと…重いな」

レイをベッドに転がすと、レイは手を伸ばし俺を掴み引っ張った

「このままセリを抱き締めて寝る」

「嫌だ、着替えて寝たいから離せ」

「オレも嫌だ」

「セリカが嫌って言ったら引き下がるのに俺の時はなんで!?」

俺がもがけばもがくほどレイは力を込めて離してくれない

このままだと絞め殺される…

「仲直りしたい、悪かった…」

レイの…いつもよりお酒で熱くなった声が耳元を撫でる

「香月さんと和彦さんの話を聞かせてくれないか」

「えっ!?仲直りしたいって言っておいて、なんで2人の話が聞きたいんだ?」

むしろ聞きたくないだろ…名前が出るだけでムッとするのに

「負けたくないから、2人より好きになってもらいたいから

そのためには2人の事を知って2人を超えたいんだ」

「無理だろ…色んな意味で

それに好きに勝ち負けなんてないぞ

俺にとってみんな好きの意味が違うし、比べられるもんじゃないから」

あの2人を超えるって、人間辞めても無理だって…次元が違う

レイは俺を離して半身を起こす

んー…酔ってるレイは何考えてるか全然わからんな

酔ってるからこそ2人の話が聞きたいとか言うのかも

これだけ酔ってたらきっと明日には忘れてるかもだよな

とりあえず、俺は寝る前に着替えたいからとベッドから離れようとしたら

レイに押し倒されてキスされる

レイの唇に残るお酒の味が舌をピリつかせた

まったく酔っ払いが!

「誰が1番キスが上手い?」

「えっ?それ聞くのか?」

どうせ明日には覚えてないんだろうし、なんか振り回されてムカつくから

「まぁ…和彦」

素直に答えた

和彦は経験豊富だからアイツが1番上手いよ

浮気しまくってたしな…思い出すと腹立ってきた

1番ドキドキするのは香月…

「…じゃあ、誰が1番気持ちよかった?」

「はっ!?いや、それは答えるの恥ずかしいって言うか…

もうやめよ!酔っ払いは寝ろ!!バカ!!」

レイを突き飛ばして俺は着替えるコトにした

あぁ…嫌だ~、レイの奴恥ずかしいコト聞くなよな

こんな話…俺はしたくない……

でも普通の友達だったらこんな話もするんだろうな

セリカが女子会(楊蝉ポップ)の時にたまにそういう話題が出るって言ってたし

セリカはついてけてないみたいだけど

もしかして…レイが普通の大親友だったら、そういう話も普通にしてたのかな

今はレイとの関係が…普通じゃないから…

まぁ…普通ってなんだって話なんだが、ごく一般的なって意味で…

って言うか、レイに質問されて香月と和彦のコト思い出して…死ぬほど恥ずかしい気持ちに……

寝よう…そして忘れよう、レイだって明日になったら覚えてないハズ

俺が着替え終わるとレイも着替えたのか、ベッドに座って早く来いって手招きされる

酔っ払いの傍に行きたくねぇなぁ…

「寝るから」

仕方なくベッドに入ってレイに背を向けた

「3人でやる時ってどんな感じなんだ?1人は見てるだけ?」

「しつけぇな!?どんだけ興味津々なんだよ、思春期の中学生か!!

3人の時は1人が見てるだけじゃないよ

それじゃ3Pの意味ないし

ってか、俺がただただ大変なんだからな」

律儀に答える俺

背を向けてるのに、レイの体温がベッドから伝わってくる

後ろから頭を撫でられて、見えないのにレイが笑ってるのがわかる

「セリの事だから興味があるんだよ

いつも香月さんと和彦さんの話題を避けて来たが、聞いてみるとオレの知らないセリが見れて悪くないな」

「………嫉妬しないの?」

「するけど、ひたすら気に食わないが

もっとセリの事が知りたい

誰よりも、余すことなく全て知りたいんだ」

レイの俺を撫でる手が止まったと思ったら、そのまま寝てしまった

えっ…それはめっちゃ重いから嫌かも

知られたくないコトたくさんあるからな

知りたいって言われるとウザく感じるかも

でも…好きな人のコトなら知りたいって思うのも…あるなら

俺とは違うけど…レイが知りたいなら話せる範囲で教えても、いいかな…

とにかく、レイが俺をめっちゃ好きなコトはいつもながらわかった

俺も寝よ

……これって仲直りしたってコトでいいのか…?まぁいいか、いつも通り喋れてるし



次の日、レイはめちゃくちゃ酔っ払ってたから忘れてるだろうと思ってたら、がっつり覚えてた

うーん…恥ずかしいから忘れててほしかったんだけどな

昨日のコトがあってからレイはよく香月や和彦のコトを聞くようになった

内容によっては嫉妬しながら聞いては、俺が話やめようか?って聞くと

いいや聞かせてくれ、とレイはなんでも知りたがった

香月と和彦の話をする時の俺の表情はレイにとって珍しいものらしく、オレにもいつかそんな顔をしてほしいとまで言われる

自分ではどんな顔して話してるかわかんないんだけど

そんなこんなでレイとの関係も気を使っていた部分が少しずつ緩んで、仲が良かった時の心地よさを俺は感じるようになった

またレイと仲良くなれるコトが、俺は凄く嬉しかったんだ…



-続く-

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