110話『聖女の前世』セリカ編
私が小さい頃に母親が離婚して、少しして母親は自分の恋人の男を家に連れて来た
弟2人、3兄弟の1番上の姉として紹介された時
「1番上の子が、どんな怪我も治す力を持っている?気味が悪いな…」
初対面でおっさんは私をバケモノでも見るかのような目で見下ろす
子供ながら私はそう言われそう見られるコトが当たり前だとわかっていた
他人とは違う、本能的に恐怖さえ感じるのかもしれない
でも、私は私の不思議な力より
もっともっと怖くて汚くて気持ち悪いコトが世界にはあるんだって身を持って知るの
「気味悪い…が、綺麗な娘だな…」
次の瞬間からおっさんの目の色が変わる
その色にどんな意味があるかなんて、子供の私には何もわからず新しいお父さんを見上げていた
暫くして、お母さんがいない時におっさんは弟達に隠れて私に何かをした
それが何だったのか子供の私にはわからなかったけれど、なんとなく凄く嫌で我慢して耐えていたコトだけは覚えている
大人になってから、子供の頃から受けていたコトが性的な虐待だったコトに気付く
何もわからないのに、めちゃくちゃ怖いの…
嫌だと感じたから身体を避けると腕を掴まれ引き寄せられる
「じっとしてろ!!」
力いっぱい頬をひっぱたかれる
ジンジンと顔が熱くなるのを感じているのに、痛みは少しの間麻痺する
すぐに痛みを感じて、怖くなった
殴られるのは嫌…痛いのは嫌…
気持ち悪いのも汚いのも嫌なのに
私は暴力に恐怖して屈した
それから毎日だ、言うコトを聞かなければ殴られるの暴力
言うコトを聞いても何かと文句を付けて殴られたり叩かれたり蹴られたりする
子供の頃はわからなかったが、大人になれば彼女の子供の私達なんてその男にとって邪魔で目障りでしかなかったんだと思う
母親は見てみぬフリだった
母親の心境なんてわからないよ
自分の彼氏が自分の子供を虐待しているのを認めたくないのか、彼氏に嫌われたくないから何も言えないのか、彼氏の暴力に怯えていたのか、はたまた…その暴力が教育の1つだと信じて疑わなかったのか…
痛みに屈して私は嫌なコトはなんでも我慢して耐えていた
どんなコトでも…自分の心を殺して
媚びを売ってでも、自分が少しでも殴られないように…そんなの意味ないんだけど、おっさんの気分なんだから
いつしか抵抗するコトができなくなっていた
そう幼い頃から身に染みさせられたから
汚い汚い、穢れた身体は二度と綺麗な身体には戻れない
それでも私は我慢するコトしかできなかった
生きる為に
ある時、私は外で捨てられていたボロボロの絵本を拾った
ボロボロだけど、その絵本の中の絵はとてもキラキラしていてお話もとっても素敵なものだった
ピンチに陥ったお姫様が王子様に助けられて幸せなハッピーエンドを迎える
私には…そんなコト思いもしなかった結末を知って衝撃を受ける
悪いコトはずっと死ぬまで続くと思っていたから
誰かが助けてくれるなんて…コト…考えたコトなかった
その絵本の結末は小さな私に大きな希望を与えた
はじめて心が軽くなった
はじめて笑顔を零したような気がする
私も…私にもいつか素敵な王子様が…
私だけの王子様が……
子供の私は単純にキラキラしたものだけしか見えていなかった
こんな地獄(生活)もいつか王子様が助けてくれると信じていた
絵本を大事に持ち帰ってベッドの下に隠す
見つかったら絶対に捨てられるってわかってたから
大切にした、私に夢を与えてくれた絵本だから大好きだった
そしたら…やっぱり思った通りのコトが起きた
すぐに私の絵本は見つかった
私の大切な絵本が…あのおっさんの手に……
「お前こんな馬鹿みたいな夢見てる?王子様て!!」
バカにされて大笑いされる
何も…聞きたくない…
私のキラキラが…
「万が一お前が結婚する事になったら、結婚式でお前の過去を皆の前で暴露してめちゃくちゃにして」
壊れていく…汚くなっていく…
私の綺麗な夢が、汚く踏みにじられる
心が痛いよ…
絵本を目の前で破り捨てられる
「それでもお前の王子様は受け入れてくれるか?セリカ!?」
頭を掴まれ地面へと押し付けられる
「ガキの頃から親にこんな事されて、引かない男はこの世にいないだろ?」
嫌だ…嫌だよ…気持ち悪いのは…
もう真っ黒に穢れてるのに、新しい穢れがまだ色濃くなるように増えていく
何度だって慣れるコトなんてない
我慢して耐えて…押し殺す
心も身体もボロボロになっても、私はまだ穢く生きてる…
暫くして解放されて、私は破り捨てられた絵本を手に取る
だ、大丈夫…私は…いつか、お姫様になる
王子様が私を救ってくれる、私だけの王子様
だからこの絵本がなくなっても、私の王子様は消えないから…大丈夫
無理に我慢していた
小さな身体も心も限界を超えているのに、大きな希望を与えたそれに私は無理に笑顔を作った
信じたいの…いつかって…だから、私は大丈夫……大丈夫…大丈夫…だよ…ね?
いつかお姫様になる…だから女の子らしく髪を伸ばすコトをはじめた
オシャレなんてさせてもらえるワケがない
私が唯一女の子らしくいられるのが髪を伸ばすコトだった
自分でも綺麗な黒髪だと思っていた
でもある時、髪を切られてしまう
私が大切にしている髪だってコトに気付いたおっさんは私が傷付くと知って、それが面白いようだ
「懲りずにまだ夢見てんのか?ガキは現実が見えてないだけってわからないか、セリカ」
私の髪が…私の髪でおっさんは自分の汚いものを拭いてみせる
あぁ…私の…私の……
毎日傷付いても、それは絶対に慣れるコトはなかった
大切なものを作っちゃダメなんだって学んだんだ
大切なものは誰にもバレちゃいけない
バレたら…汚く踏みにじられるから…
綺麗な心とともに穢されてしまうから
それでも私はあの本を知ってしまったから
私は毎日毎日…毎日…
いつか…いつか…明日こそは、明日こそは…
誰かが助けてくれるコトを期待している
ずっと待っている
子供の頃から、ずっと…
結局は…大人になっても、誰も助けてはくれなかった
王子様なんて…この世界にはいないんだよ
それでも私は懲りずに、いつかいつか、明日は…ってありもしない希望にすがりつくんだ
そうでもしないと、生きていける気がしないから
これが最後、私は冬の外でハムスターを拾った
可哀想…寒くて震えてる
お家に連れて帰って小さいけど暖かい家を作ってあげた
「セリちゃん、そんなん拾ってきてまたおっさんに怒られんで」
「だって…お外寒くて可哀想やん、言わんといてや」
「言わへんけど絶対見つかるやろ」
弟のロキとシアの言うコトは当然だった
ダメだとわかっていても、このハムスターが寒くて凍え死ぬかもしれないコトの方が嫌だった
動物は可愛い…よく森のウサギさんとかと遊んだりするの
見つかったらまた殴られるかもしれないけど、こんな小さなハムスターに何かする人間なんていないよね
甘かった、私は本当にガキだった
何も知らない何もわからない、人間は残酷だって知っていたくせに…
上手く隠していたつもりだったが生き物のハムスターが動けば音がする
それでバレてしまったのだ
子供の私が…上手く隠せるワケ、ないのにな…
「か、返して…ください…」
ハムスターを掴んだおっさんに私ははじめて口答えしたかもしれない
今までは自分だったから我慢できても
「勝手な事して」
「ごめんなさい…」
おっさんの手の中で暴れるハムスターが噛んだらしく
「痛いなこの!!?」
カッとなってハムスターを床にたたきつけた
「嫌っ!?」
その光景がショックで血の気が引くのがわかる
すぐハムスターに目をやると潰れた身体でも微かに動きがあったから、咄嗟に私は回復魔法で治す
何が起きたの?って顔でキョロキョロするハムスターに胸をなで下ろす
よかった…生きててくれて…ごめんね、私のせい……
手を伸ばしてハムスターをすくい上げようとした時、おっさんは私の伸ばした手を踏みつけその下にいたハムスターを踏み殺した
捻るように私の手を強く踏みつけ、私の手のひらはハムスターの命が失われる感覚を長い長い時間味わった…
私の手でハムスターを殺してる…無理矢理殺されてる…
暫くしておっさんは足を離し私の背中を蹴る
「手洗ったら部屋に来い、動物拾ってきたお仕置きだ」
手を…動かせなかった…
その下を見る勇気がなかった
怖くて…怖くて…
怖いコトはずっと最初からだった
でもそれは私が我慢すればいいコトだった
でもでも…ハムちゃんは…違うよね
そっと手をどけると小さな命が消えていた
「ごめん…ごめんね…私が拾ってきたばっかりに…」
見るのも辛かった…
何が、こんな小さな生き物に何かする人間はいないだよ
どんだけ頭悪いんだよ私は
散々、世界がどんなものか知っているくせに
それでもそこまで悪い人はいないって、バカか…
私のせいで小さな生き物が死ぬコトになるなんて
私は…私は…
もう何もできない
子供の私はなんてバカだったんだろう、懲りずに大切なものを持とうとする
自分の心を少しでも幸せで満たしたいからか?
すぐに踏みにじられて突き落とされるのに
いつまでも心のどこかで信じていた
悪い人間はいない…なんて
いつか、悪夢は終わる…なんて
幸せになれるって…
心が壊れたのは大人になってからだ
よく子供の頃は持ったなって逆に不思議に思う
髪も腰近くまで伸びた
でももう髪のコトなんてどうでもよくなっていた
大人になって気付いた
自分の身が、心がどれだけ穢いかを
そんな私に王子様が迎えに来てくれるなんてありえない
王子様の視界にすら入らない
世の中には穢いと無縁のお姫様がたくさんいるのだから…
大人になった私の所へ妙な宗教団体がやってきた
よくわからないがこの世界で1番デカく有名な所らしい
私は知らなかったが、親は頭を地面まで下げていたから、なんかめっちゃ凄い組織なんだろうなと感じる
神殿からやってきた聖職者と名乗る人間達は私のコトを聖女と呼んだ
回復の魔法を持つ女の子は生まれ変わってもずっと聖女として世界を救う存在だと言っている
よくわからないけれど、とにかく私を神殿へ連れて行くと言う
私は…今の生活から離れると言うコトに何も思わなかった
ずっとこの地獄から誰かが助けてくれるコトを願っていたのに
だって、この自称天の僕の聖職者達…みんなおっさんと同じ顔してるんだもの
私にはそう見える
私を連れて行く時、彼らは私の親に大金を払っていた
ほらね、悪い奴らだ
親は私をお金で売って、天の僕は私をお金で買う
何も驚くコトなんてなかった…
この世界は、私の世界はそんなもんだとわかっていたから
聖殿に連れて行かれ、私は聖女だと崇められる
真っ白なワンピースと綺麗な宝石のついた装飾品で飾られ、お姫様とはちょっと違うけど綺麗に着飾るコトは女の子として少し嬉しかった
こんな真っ白なワンピースも綺麗な宝石も…似合わない穢い身体なのに…
「今回も無事に生まれ無事に育った事に感謝します」
無事に育ったかどうかは違うような…
天の僕の幹部達は私の足元で頭を下げる
「聖女って…私はここに来て何をすればいいの?」
世界を救うとか言ってたけど、私には回復魔法しかないのだけれど
「貴女様は世界を、人々を救う力があるのでございます」
「回復魔法のコト…?」
私はそう聞いたけれど、誰も何も言わなかった
顔を上げて、みんながみんな嫌な笑みを浮かべている
私は…嫌な予感だけを、ただ感じるだけだった
そうしてその日は終わり私の新しい絶望がはじまる
次の日、私は聖殿から出て外を歩いてみる
幹部達は昨日言っていた
ここでは私が1番偉い人間なんだと、自由に過ごしてもいいみたいだが聖殿とその周りの聖域から出るコトを禁止された
つまり街の方には行けないし家に帰るコトも許されない
まぁあんな家帰れと言われても帰りたくないが
これから私が住む場所、どんな所なのか知っておきたくて私は歩き回る
外は花や植物が多く、たまに動物達が出入りしていて私は自然と顔がほころぶ
あの幹部の男達は胡散臭くて疑っているけど、この場所は悪くはないか…
でも、天気はよくなかった
今にも降り出しそうな雨の空を気にしはじめた頃、聖殿から離れた場所にある建物を見つける
ん?この建物はなんだろう?あの幹部達の住まいかな?
聖域内なら自由にしていいと言われているし、中を見てもいいよね?
ほんの好奇心だった
自分がこれからどんな場所に住むコトになるのか、どんな所で過ごすのか…
家にいるよりはマシだと思っていたのに
扉を開けたその先は、この世界にマシな場所なんてないんだと思い知らされる
「これは…一体……」
むせかえるような臭いが充満する
恐ろしい呻き声も聞こえる
視界の全てが目眩を起こすような信じられない光景
これは……人々が…拷問を受けている?
目の前の出来事に思考が止まっていると背にしていた扉が閉じる音にハッとする
振り返ると幹部達が人の良さそうな笑みで私を見る
胡散臭いその笑った顔で私の名前を呼ぶ
「セリカ様にここを案内しましょうか」
「あ…案内…?」
「この階は人類の為の人体実験を行っているのでございます」
パッと見た私は拷問部屋かと思ったが、これが人体実験…?
「不治の病を治す薬の実験、人体の強化、永遠の命を繋げる目的で新しい臓器やパーツの交換、他種族の能力を力の弱い人間へ移植…」
い、言ってる意味が…わかるが、わからないぞ
「バカを言うな…他人を犠牲にしてまでするコトじゃないだろ
人を使ってこんな」
「人ではありません、セリカ様は何か勘違いをなさっているのでは?」
「どう見ても同じ人間でしょう?
人間じゃなくても、生き物にこんなコトしていいワケないわ」
私は生まれて始めて誰かに意見したかもしれない
心臓がドクドクと熱く苦しく飛び跳ねるのを抑えながら
「小奴らを私達同じ人間と呼んではなりませぬ」
「ふざけないで!こんなコト、天が許すワケないでしょ!?
聖女の私が言ってるのよ
今すぐ解放して、こういうコトはやめなさい!!」
自分が1番偉いからとか、聖女だから、とか思ってはいなかった
私自身が1番よくわかっている…自分にはなんの力もないコトくらい
でも、こんなに誰かに反発したのは
どうしてかわかった
私は自分が我慢して耐えるコトはできても、目の前の苦しみには耐えられないんだ……
それは矛盾していないか?
なら、どうして弟達のコトは助けなかった?見捨てたくせに?
結局は自分が1番可愛くて、いざって時は他人を犠牲にして助かろうとするだろう
自分が変わりに目の前のアレを全て受け入れる覚悟はあるか?
…ないじゃないか……
きれい事だ、偽善者め
「…次の場所へ案内しましょう」
幹部は私の言葉を聞いているのかいないのか、階段を指差し私を地下へと案内する
まだあるって言うのか……
さらに下へと進むと、1階と似たような光景だったが少し違った
ここは
「拷問部屋です、ここでは私達の信仰を反対したり敵対する輩の心を正しく入れ替える為の」
シンプルに拷問部屋…何が心を入れ替えるだ
こんなに痛めつけられたら普通の生活には戻れない
それどころか確実に数日で死ぬしかないくらいの責め苦じゃないか
最初から解放する気なんてないくらいの
「信仰の自由を何故認めない?天はこんなコト望んでいない」
…何を言っても、私の言葉は届かないみたいだ
聖女と崇められている気がしない
私は一体コイツらのなんなんだ?
どうして私の言うコトを聞かない?
本当に天がこんな酷いコトを望んで認めていると言うのか?
私は…信じない
そんなの、間違ってる
いや…そもそも…天は、守ってもくれないし助けてもくれないし救ってもくれない
だから、世界は汚くて気持ち悪くて醜いんじゃないか…
「わかっておりますとも」
ん?珍しく幹部が私の意見に同意した?
「さらに地下を案内します」
とりあえず私はまた黙って付いて行くコトにした
わかっている?さっきそう言ったわよね?
それじゃあ私がもっと言えば止めてくれるかもしれない
そしたら今の人達はみんな助けるコトができる
私には回復魔法があるのだから
でも、そんな簡単に終わるコトなのか?
そんなに簡単に終わってしまうなら最初からこんなコトはしな…い……
さらに地下に足を踏み入れると、そこには老若の聖職者達がたくさんの女性を犯していた
「なんて…コトを……」
この光景には今まで自分がされて来たコトの記憶が蘇って吐きそうになる
どうして…なんでだ…
なんで…汚い、気持ち悪い…
「そうですセリカ様、天はこれらを望んではいないでしょう
私達は穢れ切っているのです
天と、天が創ったたった1人の聖女の貴女様に仕える私達の罪深さ」
「や、やめろ…こんなコト絶対にやっちゃいけないコトだろ!?
言わなくてもわかってるならなんでやるんだよ!?
オマエらなんか人間じゃねぇ!!!
天も私も許すワケないだろ!!」
「そのような汚い言葉を使ってはいけません」
「聖職者がこんな汚い行動しちゃダメだろ!?ナメてんのか!?」
何に怒ってるのか、私は世界に…絶望している
私1人思ったままに叫んだ所で何が変わる?
聖女と呼ばれ気が大きくなったか?
何も…何も変わらないのに…
それでも私は止まらなかった
きっと聖女と呼ばれた時から、無意識に人を…世界を救う使命なんだって思ったんだ…
「さ、セリカ様」
1人の幹部が私の前に肉塊を転がす
人間なのか別の生き物なのか、男なのか女なのか、大人なのか子供なのか、もう何もわからない姿をしている
酷い拷問を受けたのかもしれない
それでも微かに生きているのを感じる
でも、このまま数分と保たないだろう
なんで…こんな酷いコトができるのか
私の手に力が入る
私はまだ人の心があった…
「目の前の人はもうすぐ死にます、セリカ様の奇跡の力を見せてください」
「言われなくても…」
幹部どもを睨み付けて私は目の前の肉塊に回復の魔法を使う
一瞬でその肉塊は私と同じ年頃の女の子の姿へと変わる
命は助かった…でも、気を失っているようだな
「おお…これがセリカ様の力、何度見てもこの奇跡は美しい」
何度って私はここではじめて見せた
前の私のコトか、何度も生まれ変わると言っていたもんな
目の前の女性は美しい人だった
傷ひとつなく、心以外は綺麗な元の姿に
「そうです、これです、セリカ様」
目の前にいる信者達は拍手をし、後ろから2人の信者に両腕を掴まれ身動きを封じられる
「…どういうつもりだ?」
離せと抵抗するが、無駄か
「セリカ様の力は浄化、醜く穢れた姿も心と一緒にあらゆる罪もこのように美しい姿へと変える奇跡の力」
「はっ?バカ言うな、私の力は身体の怪我や傷を治すだけ
心を綺麗にしたり行いをなかったコトにはならない
穢れを消せは……っ」しない
途中で私の口が手で塞がられる
「セリカ様は自分の本当の力に気付いていないだけでございます
まだお若いですから、しかし私達がセリカ様の聖女としての奇跡の力を正しく使って差し上げますから安心してください」
私の身体に複数の汚い手が伸びてくる
嫌な予感がする嫌な予感がする嫌な予感しかしない
その汚い手で私に触るな
私は…私は…
「私達の穢れた行いと身は、セリカ様と交わる事で浄化され許されるのです」
もう嫌なのに…
…こんなの、狂ってる
本当に許されると…信じているのか?
そうだ、コイツらはそれを心から信じている
だから私が何を言っても、何も変わらない
ずっと昔からこの先、永遠に…何度生まれ変わっても…
私は…私は…こうなるのか
気付いてしまった
私の未来には、やっぱり絶望しかないのだと
生まれ変わって同じコトの繰り返し?
時代が変わるだけで、私の運命は何も変わらない?
王子様は…私を…迎えになんか、来ないんだ……
私の…運命は永遠に、憎しみも苦しみも悲しみも変わらない
助からない救われない
それでも私は、心のどこかで王子様が助けにきてくれるって
守ってくれるって信じてる
それが私の唯一の救いだから
あるワケのない希望にしがみついて
私はまだ生きている…
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