102話『贅沢だ』セリカ編
私は朝早くからユリセリの所へ遊びに来ていた
1枚のチラシを持って、ワクワクウキウキ楽しみに来たの
「おはよう!みんな」
セリくんとレイとユリセリとセレンとキラキラ女とツインメイドの片割れ(和彦は帰ったみたい)みんなは朝食中だった
ユリセリの使い魔の可愛い奴らが一生懸命みんなのお世話をしている
いつもはユリセリと使い魔達しかいない静かな家だけど、これだけ人がいると賑やかに感じるな
「セリカ!?来るのはわかるけど、なんで普通に来れるんだよ…」
セリくんは私が香月の下へ帰ったら監禁されると思っていた
自分自身もこれで本当の人質になったと考えていたみたいだけど、私もそれは覚悟していたわ
でも、実際は香月は私に対しては今まで通りだった
何も言わないし何もしない
私が甘えたら普通に甘やかしてくれる
不思議で複雑な関係が出来上がったんだね
「セリカよく来てくれたな、いつ来てくれても嬉しいぞ」
一緒に朝食を食べようとユリセリは誘ってくれて私を席へと案内してくれる
お言葉に甘えて私は朝食を美味しく頂く
キラキラ女は私を見ないけど、レイもセレンも私が元気なコトに少し驚いている
それもそうだ、セリくんはあれから数日経っても立ち直れていない
無理に元気を作っているだけ…そう、私は無理しているのだ
みんなに心配かけないようにってね…
「ねぇねぇここに行きたいの!誰か連れてって」
朝食が終わり紅茶で一息となると私は突然1枚のチラシをみんなに見せる
シーン…誰も手を上げてくれなかった
私に友達なんていなかった
「スピリチュアルフェスティバル?
タロット占い、手相占い、守護天使見ます、死者と会話できます、オーラ診断、パワーストーン、水晶占い、おみくじ、アニマルコミュニケーション、カラーセラピー、精霊占い、星占い、風水、六星占術、予言…まだあるのか
女ってこういうの好きだよな」
全然興味ないってセリくんは冷めていた
自分でも性差の影響は多少あって、こうして合わないコトもある
「そんなの魔族の誰かに連れて行ってもらえよ」
「人間の町に行くのに魔族なんて連れて行けないでしょ、1人で行くって言ったら香月は危ないから1人で行くなって言うんだもっ!!」
行きたい行きたい!このチラシに載ってるパワーストーンの可愛いブレスレットとリングがほしいの~!
あと恋愛運も見てもらおうかなって……占い師の人にレイと相性が良いと言ってもらえれば…私は少しずつでもレイのコトが見れるかもしれない
イングヴェィのコト…忘れたくないけど…いつまでもレイを待たせるのも…ダメだよね
「セリカを連れて行ってやりたい所だが、暫く仕事をしようと決めたんだ」
いつもレイなら私のお願いはなんでも聞いてくれるのに…
そっか、そうだよね…セレンの国がなくなってお金も手持ちしかないのはわかってる
「そういうコト、レイも俺も暫くは仕事」
「むー…」
ワガママ…言えない、大変なのはわかってるもん
セレンは連れ出せないしキラキラ女は論外だし、ユリセリはセレン達を守ってくれるからいるうちはここを離れないと面倒を見てくれてる
誰も誘えない…しょんぼり
「占いなら私が致しますわ?百発百中の女神の相性占いでしてよ
レイ様とセリカ様の相性はマイナスなのでお付き合いなさらないように
レイ様とセリ様は相性抜群、今すぐ結婚すべき!ですわ!」
「それは占いじゃなくてオマエの願望だ!!」
セリくんに怒られてもセレンはニヤニヤしている
そんなやり取りの中で光の聖霊が口を挟む
「私も予言が出来るわ」
光の聖霊の予言…絶対当たりそうなイメージにみんなが注目する
「レイは勇者を殺して世界を平和にする」
「ふざけた事を言うな、冗談でも本気でも許さないぞ、光の聖霊」
当然のようにレイは怒り光の聖霊を睨み付ける
うっ…ムカつくけど、光の聖霊に予言されると本当にそうなりそうで怖いな…
レイは絶対そんなコトしない、裏切らないって信じてるから…大丈夫だけど
気持ちが普通にヘコむわ
「……ふん、レイはわかっていないだけよ
私が絶対そうしてみせるわ、本当の世界の救世主は私のレイなんだからね!」
ふん!と光の聖霊は自分の部屋へ戻ると言ってリビングを出た
空気が一瞬で重くなる
レイは不機嫌だし、セリくんはそのコトに何も言わないどころか私と同じ不安を抱えた
「光の聖霊も…その事実を知っていらしたのですね
そして、セリ様もいつの間にかそれを知っていらっしゃいますわ」
セレンは困りましたわと溜め息つく
「セレンも…?知っていたのか?」
いつかの前世でレイに殺された話を知っている人がいればその分だけ怖くなる
記憶のない前世のコトなんて関係ないって頭ではわかっていても
「もうその話はやめろ、オレはセリを殺したりしない
記憶のないどこかの前世で殺したとしても関係ない
オレ達が生きているのは今だ、今のオレの事は自分で決める」
「申し訳ございませんレイ様…その通りですわ
魔王を道連れに出来るからと言ってその命を奪う事は許されません
私も最初から反対でございますから、ずっと黙っていたのです」
不快にさせたとセレンは頭を下げる
魔王を道連れに出来る命か…魔王も魔族も倒せる力は命まで使えるんだ
魔王をどうしても止めなきゃいけない時…勝てないなら、自分の命を使うって手もありか
でも…私は嫌だよ、そんなの…
「気にするなよセレン、俺はレイを信じてるから
その話はショックだけど前世なんて関係ない
レイは俺を殺したりしない…無理心中は未遂があったけど……」
「それはセリが悪いんだ」
「この人、恐くない?」
「ヤンホモありですわ!!」
セレンのコトはみんな無視だった
セリくんは恐くない?と言っても嫌じゃない
レイもセリくん大好きだ…とても仲が良い
そこにいるのは私なのに…どうしても疎外感がある
レイは私のコトが好きなんじゃないよ…
いつもセリカよりセリくんだもん…
私がいなくなってもきっと誰も気付かない
いいや、1人で行こう
別に危険なんかじゃない、私はセリくんじゃないんだから、私は誰かに狙われたりなんてしてない
モヤモヤとして晴れない気持ちを抱えて私はチラシを持って静かにリビングから出ようとした
「やっぱ気分転換に行く」
セリくんがそう言うとレイが私の手を掴んで引き止める
「セリカから誘って来るコトなんて滅多にないんだ
行かないと損だぞ、レイ?」
「セリが言うなら」
むっ
その言葉に私はレイの手を振り払う
セリくんが言わなきゃ行かない、セリくんが言ったら行く、なんじゃそら!?ふざけないでよ!
「来なくていい!私1人で行く!!」
「セリカが…怒った……」
どうして私が怒ったかわからないとセリくんが混乱とショックを受けている
レイが私に構わないから拗ねたと思ったから一緒に行けば機嫌が直ると考えた
自分はそれで解決かもしれない
でも私はそんなに単純じゃない、セリくんみたいに単純じゃない
視界の隅で心配するユリセリが見えたけど、私は2人を無視して外へと出る
1人でスピリチュアルフェスティバルに行くんだもっ!!
だったけど、セリくんとレイもついてきた
道中は私との間では無言、一方的に無視
「セリカ、凄い怒ってないかい」
「めっちゃ怒ってる…俺でも自分(セリカ)の女心は全然わからん、なんで怒ってるのかわからんからピンチだぞレイ」
どっちに怒ってるかすらもわからないとセリくんはレイに首を振っている
どっちにもだよ!!…まぁ時間が経つとどうでもいいコトに思えてきた
ピリピリとした雰囲気のまま私達はスピリチュアルフェスティバルをやってる町へと辿り着く
占い師達が集まった場所はとても賑わっていた
人気があるお店には長蛇の列、いまいちお客さんの出入りが乏しいお店は客引きがしつこいのもあったり、宣伝もいっぱいで歩いてるだけでチラシやパンフレットや何かのサンプル(惚れ薬、パワーストーンとか)で両手が塞がった
客層は女性が多くカップルも多かった
うーん…いっぱいありすぎて迷うけど、そろそろ怒ってたのも薄れて来たから2人に話し掛けてあげようと思って振り向くといなかった
迷子か!?でも辺りを見回すとすぐに2人を見つける
あっ、客引きがしつこかったとこの占い師に捕まってるわ
傍まで寄ると占いの内容が聞こえて来る
どうやら相性占いのようだ
「お2人の相性は最高ですよ」
「やっぱり~?当然じゃん!!」
セリくんは占い師の言葉に喜んでいるけど、たぶんそれ誰にでも言ってると思うぞ…
「相性が良いので、今年結婚すると良いです」
「えっ?」
セリくんの笑顔が固まった
「お2人の間に子供の心配もありません、安産ですよ」
「はっ?」
ウソくさい占い師とは思ってたけど、男相手に安産はちょっと笑う
セリくんを彼女と勘違いしちゃったんだろうけど
「さらに占うには追加料金が発生します」
「払わねぇよ!このインチキ野郎!!」
怒ったセリくんは足ダンしてレイと一緒に私の方へ戻ってきた
「腹立つ!何が安産だよ、俺は男だっつーの!!産めねーし!」
「占いはインチキもあるから気をつけなきゃダメよ」
「何が腹立つかって言ったら1人7千円も取られたコトだよ!!」
そっち!?セリくんはプリプリ怒ってたけどレイに宥められて少しずつ怒りが静まる
「俺は恋人との相性を占ってくれって言ったんだ、なのにレイが彼氏前提で話すし」
普通は男女(見た目)で一緒に占い来たらその人が彼氏って思うんじゃ…
それにレイとセリくんがバカップルってのは超有名ですし…
「今度はちゃんとした所で占ってもらう!」
「来る前は興味ないって言ってたくせに、すっかりハマってるね」
「なんかこの雰囲気に押されて楽しい!」
セリくんがワクワクしているのとは反対にレイはやっぱり興味がないみたいだった
「オレは占いはよくわからないな」
先に帰ってる?と聞いたが、私達を置いて帰るつもりはないと言う
それどころか占いに興味がないのにたくさんある中でどの占いがオススメか聞き込みをしてくるから私達は好きに楽しんで来いと言ってくれた
レイってやっぱり優しいしイケメン…でも、そこまでしてくれなくてもいいのに
「レイはセリカの為にしてくれてるんだ、素直に気持ち受け取ってやれよ」
「何言ってるの?私の為なんか少しもないよ、レイは」
私のむーっとした視線にセリくんはまだ怒ってる?と苦笑した
レイはセリくんがいるから、セリくんが占いに興味を示したから、それだけだ
また私達は占いのお店を見て回る
いっぱいあって迷うけど、ここにしよっかな
そこそこ人気のある所で30分くらい列んで占ってもらうコトになった
やっと自分達の順番になって中に入ると、薄暗く少し肌寒さを感じる黒と紫に囲まれた小さな空間
占い師は黒いローブを顔の半分まで被っていて表情がわからない
テーブルの上には水晶とタロットカード
一昔前の占いの館のイメージみたいな感じかな、私の勝手なイメージだけど
それにしても1回千円は安いわ、ラッキー
とりあえず、まずは恋愛面を!!占ってください、お願いします
わくわく
占い師は水晶を撫でたりタロットカードをめくったりした後
「今の人が最上、迷うな」
と呟いた
「えっ!?本当!?ヤッター(和彦と香月が)最上の人なんだって、嬉しい」
さっき騙されたばっかなのにセリくんはガッツポーズまでして喜んでいる
「あの…私は?」
「貴女も、今の人が最上迷う事なし」
それ誰にでも言ってない!?
この人の占いも本当に信じていいのかな…
占いのお祭りを楽しみにして来たのに疑うってどうなんだって思うけど
適当なコト言ってるんじゃって疑いが…疑り深い性格が……
「私の占いは当たりますよ、占いには自信があります」
やば!もしかして疑いが顔に出てた?
でも、この人はローブを深く被っていてずっと顔を上げてないから私の表情なんてわからないよね…
たまたま?偶然?ちょっとビックリしたな
当たります…か、それじゃ
今の人って…誰だろう…私に付き合ってる人はいないのに…好きな人ってコト?
私の今好きな人って……
「あの!相談なんですけど、恋人の浮気性をなんとかしたくて(和彦)
本当に俺のコト愛してるのかも知りたくて(香月)」
さっきの一言で完全に信じ切ったセリくんは追加料金払う勢いで相談している
だ、大丈夫かな…占いがとかじゃなくて、自分のコトながら簡単に信じるその単純な自分が心配になってくる
「そんなお悩みの貴方に、なんでも解決してくれるパーフェクトラブブレスレットがこちらです」
テーブルの下からごそごそと何か出してきた
「3万円でございます」
「えっ!?こんな俺でも作れそうなビーズのブレスレットが3万なの!?ぼったじゃん!?」
「こちらのブレスレットはビーズではございません
ほにゃらら山脈の頂上にある神に近い石と言われ、身に付けているだけで恋人と今よりもっと仲良くなれるここでしか手に入らない幻の…」
どうしよう…急に凄く怪しくなった
ほにゃららってそんな山脈あるか?
「マジか!?このブレスレット買ったらもっと香月と和彦と仲良くなれんの!?買います!!」
待て待て!騙されてるぞ!?わかるだろ!?
占い料金千円は安いって思ってたけど、ここか!これで稼いでるのか!?
そんなその辺で拾った石ころ繋げたブレスレットでいいの!?
セリくんの細腕には似合わず、ゴツゴツとした灰色のまばらな石のブレスレットをつけて大満足のセリくんは数秒すると
「……このブレスレット重いな…」
冷静になるが
「まいっか!これで良いコトあるなら!!」
すぐに気にしなくなった
セリくんって意外に乙女な所あるよね…
後日、このブレスレットを付けたまま和彦の所へ行ったら「似合ってない」って言われて引きちぎられたらしい
ショックを受けたセリくんに(ブレスレットが壊れたコトより3万したコトに)和彦は「好きなもんなんでも買ってやる、それ以外」って言ったらしく、セリくんはブレスレットがなくても愛されてる!って結果ハッピーだったって話を聞かされました
浮気性をなんとかしてくれるブレスレットじゃなかったのか?香月のコトは解決してないままだよ
「私の占いは当たるんです、占いは信じなさい」
ふふっと占い師の笑みにセリくんは気付かなかったけど、私はその一言でわかってしまった
ブレスレットにはなんの効果もないってコトに
「次はお2人のオーラを見てみましょう
……ほほう、お2人ともオーラが2色ありますな
2色持っているのはとても珍しい事です」
「へー」
もうセリくんはブレスレットを買って満足したのか、あまり話を聞いていない
「オーラの色で何かわかるんですか?」
私が聞くと占い師は動きを止める
「いえわかりません、ただオーラの色を見るだけで色の意味は専門家に問い合わせてください」
専門家って目の前の人のコトじゃないの!?
なんだろう…最初はよかったけど、胡散臭いブレスレットとオーラの意味知らないで疲れたぞ…
「では最後にこちらを」
占い師はオラクルカードを横に広げてサービスとして、ありがたい一言をくれる
「「これ!」」
セリくんと私は一番手前の同じカードを指すと占い師がそのカードをめくった
「もうすぐ」
美しい聖獣が天の光に照らされた絵が描かれていて、たったひとことだけだった
「…死ぬ?」
凄いネガティブな発想をするセリくんに占い師は無言だった、恐いからなんか言って!!
セリくんがネガティブなら私はポジティブに塗り替える
「もうすぐって言ったら、結婚でしょ!」
「えー誰と?レイ?まだ恋人にもなってないのに結婚は早ぇだろ
それとも俺の知らない男がいるとか言い出さないだろうな」
なかなかレイと進展しない私にセリくんは疑いの目を向ける
他の男は認めたくないらしい、自分がよく知らない男は絶対許さないと言っている
私が心配なのもわかるけど、セリくんは疑い深いから他に好きな人が出来たとなったらそう簡単には認めてくれないのかな~
「もうすぐ、それは良い事か悪い事かはわかりません…運命はあなた次第」
占い師の言葉にセリくんと私は何も考えないコトにした
その答えは自分で考えなくても、もうすぐやって来るのだから…と
「「ありがとうございました」」
私達はお礼を言ってお店から出た
不思議なお店だった
インチキ臭さもたまに醸し出しながら、でも信じたくなるような気持ちにもさせる
今まで占いとかあまり気にしてなかったけど…なんだか元気になるような気がした
前向きになれると言うか頑張れると言うか
「なかなか面白かったな、そういやセリカはパワーストーンのアクセサリーを見たかったんじゃなかったか?」
「そう!今日はそれを目的に来たんだよ!あっちみたいね」
パンフレットを見てどの辺りにお店があるか確認して向かう
今回フェスティバルの限定品だって言うから絶対ほしい!!
売り切れてなきゃいいけど…先に行けばよかった
売り切れじゃないコトを祈りながらショップに着くと
「あった!これこれ、超可愛くない?」
チラシに載っていたお目当てのブレスレットとリングを見ると実物はもっと可愛かった
お花柄パワーストーンとパステル系の石で繋げたブレスレットとリング
「他のブレスレットと違って石が小ぶりなんだな、セリカによく似合ってると思うよ」
なんだか…懐かしいような…よくわからないけど、私は一目でこのアクセサリーに惹かれてしまった
「そちらのブレスレットとリングは私が前の世界でずっと昔に作ったものをもう一度作ったのです」
ショップのエルフのお姉さんが微笑みながら話してくれる
「ずっと昔はデザインが子供っぽいと言われて子供向けになっていたんですが、この世界だと若い女性に人気がありますね
お客様にとてもお似合いですよ」
そう言われて私はブレスレットとリングを付けた左手を眺める
買うつもりで来た
チラシを見て可愛いからって気になって、実物も凄く可愛くて…気に入ったよ
でも何故か、イングヴェィのコトを思い出す
どうして…私がここに来たのは現実を見るため
誰かに…占いでいいから背中を押してほしかった
なのに、私はこのブレスレットとリングを買ったら…また忘れられなくなる
いつまでも縋ってしまう
「これ2つともください!」
「お買い上げありがとうございます」
か、買っちゃった……
バカだな、私…ここに何しに来たんだろ
ブレスレットもリングもほしかったけど
本当の目的は、現実を見るため
現実が見れなくなるなら買うべきじゃないのに
「セリ、セリカ、捜したよ」
ショップの前で暗くなっているとレイが私達を見つけて傍へと寄る
「ここの占いがよく当たるらしくて人気なんだ」
本当に調べてくれたんだ…レイはこんなに優しいのに私は…
パンフレットを広げてレイが指を差すのを見てハッとする
それだ…!さっきまで肩を落としていた私はシャキッとしてレイの腕を掴む
「レイと一緒にその占いするわ!」
私の意外な言動にレイは少し驚いたけれど、私が行きたいと言うなら行くと言ってくれた
「レイと俺の相性が最高なんだ、セリカでもそれは変わらないだろうよ
それじゃ俺はその辺で時間潰してるから2人で行って来な」
良い結果が出るからってセリくんは背中を押してくれる
そうだ、セリくんが最高なんだから私だって最高と言ってもらえる
誰かに…背中を押してもらえれば…
私は…もう…そうでもしなきゃ
イングヴェィは、私の妄想なんだからいつまでも想っていたって仕方ないでしょ……
レイと私はそのよく当たる人気の占い師のお店へとやって来た
あまりに人気の為、整理券を配布していてそれはあっという間になくなったみたいだけど
どの占いが良いか調べていたレイがたまたま声を掛けた女の子2人組みがレイのファンだったらしく「興味があるな是非!!」と半ば強引に整理券を渡されゲットできたみたい
女の子2人組みはレイと話せただけで幸せだったらしく満足に去って行ったと…
いつものコトだけど、久しぶりに聞くと凄いね…イケメンってだけでお得だね
忘れてたけど、そうレイってめちゃくちゃモテるんだった
セリくん至上主義のレイはセリくん以外どうでもいいから他の人に対してはとても冷たかったりするんだけど
セリくんや私がいる時は他の人を蔑ろにしない
したらセリくんが怒るからだ
女の子には優しくしろ泣かすな傷つけるなって口うるさく言うから
レイがそれで優しく爽やかに接するもんだから、そりゃねモテるんだよ凄くめちゃくちゃね
(いや待て冷たく接しても結局はクールとか言われてモテるんだろうな…イケメンは)
そうやってモテるコトで一部のレイのファンが過激すぎてヤバい嫌がらせとかをセリくんは受けたりするのにな
彼女達がそうするのはレイのコトが好きだから仕方ないって自分は我慢する
そのコトをレイに話もしない
立派だね……セリくんは
「オレは占いとか信じないが、良いのかい?」
後一組で私達の番が来るとレイは確認の為にと聞く
「私が信じたいだけだからいいのよ」
結果は悪くないのはわかってる
だから…それでいいのよね…
数分後、レイと私の番になってお店の中へと入る
セリくんと行った所とは違って、こっちのお店は真っ白に統一されて明るかった
占い師も真っ白なローブは着ているけれどフードは被っていない
女の人で笑顔が天使だった
「座ってください」
ニコリと微笑まれて変に緊張しながらテーブルの前に座る
テーブルの上には水晶だけ置いてあったけど、占い師は私をじっと見ると
「貴女、今の人以上の人はいませんね」
またニコリと笑う
ドキッとしてしまう、さっきと同じようなコトを言われた…?
視線が自然とさっき買って付けたままのブレスレットへといく
今の人って…?それって……
隣にいるレイのコト…なのかな…
「あ、あの…隣の彼との相性を占ってほしいです」
「あっはい、わかりました」
私からレイへと視線を移して微笑む
占い師は水晶を覗いて何かを読み取っているみたいだけど、私には何も見えなかった
「んー相性は悪くないですよ、とっても良い方です
彼は貴女の事を愛しています」
サラッと言われてレイは顔を赤くして恥ずかしい思いに耐えている
なんかゴメン、レイ…
「今の彼は貴女を大切にしてくれる、幸せにもできる」
占い師はレイと私に手を出すように言って、私達は素直に手を出すとそのままレイと私の手を繋げた
「後は2人次第、その手を離すのも離さないのも」
終始ニコニコと微笑んでくれる占い師の占いはレイとなら幸せになれる相性だと言ってくれた
占いが終わってお店を出てもレイは私の手をしっかりと掴んで離さなかった
私は…その手に力が入らない
どうしてだ
私は誰かに背中を押してもらいたかったんじゃないのか
占いといった不思議なものに言われたら運命のように強く信じてもいいんじゃないかって
わかってる、知ってるわ、占いに聞かなくたってレイがどんなに素敵な人かだなんてコト
「セリカ…」
レイの私を呼ぶ声が悲しみを帯びていた
私はどんな顔をしていたんだろう
レイを傷付けたかもしれない、いつもだ…
こんなのがダメだからって今日ここに来たのに、私のバカ!
「あっ、お腹空いたね
セリくんも待たせちゃったし合流して何か食べよっか」
自然を装って手を離そうとして歩き出すとレイは私の手を強く掴んで止めた
「えっレイ?」
「どうしたらいい?」
どうしたら…レイ…なんだか辛そう
私のせいで悩ませてるんだ
「セリはよく笑ってくれる
けど、セリカは笑ってくれない」
「そんなコトないよ…」
レイに笑ってみせるけど、私の顔は本当に笑っているのかわからない
自分では…
「笑顔でいてほしいから、ずっと笑っていてほしいから守っているんだ」
セリくんのコト、大切にしてくれてありがとうね…
「セリカは何を守ればいいのか…わからない……」
私には守る笑顔もない
いつまでも待つと言ったって苦しいのはずっとだ
私はレイのコト…ずっと苦しませて
「すまない、少し取り乱した
セリカが好きになってくれるまで待つさ
旅行の事も忘れていないから、落ち着いたら2人で何処か遠くへ行こう」
いつものレイに戻った、爽やかに笑ってくれる
私はいつもこの優しさと笑顔に甘えていたのかもしれない
レイは私なんかより…もっと相応しい女の子がいるよ…ね…
「うん…旅行、楽しみにしてるね…」
レイのコトは大好きよ、でもそれはどうしても友達としてと思ってしまう
恋をするのって難しいんだね……恋を、するのは……
「それじゃ、行こっ…」
セリくんと合流しようと足を向けるとゾッとした強い恐怖を感じる
自然と足を止めるとレイが私の様子がおかしいコトに声をかけてくれた
「セリカ?」
でも私にはレイの声が聞こえない
この強い恐怖を感じてすぐ近くに香月が来ているとわかる
今になっても香月を目の前にすれば強い恐怖を感じるコトもあるけれど、こうして離れているのに感じるってのはあまりなくて香月がワザと自分の存在をアピールしているって考えてしまう
香月はここにセリくんがいるのも気付いているからだ
鉢合わせしないように、近付かないようにしてるってコト…?
セリくんは自分から香月に近付くコトは今はない、気持ち的にも
自分の気配を隠すコトだって香月はできるのに……
香月自身もセリくんを殺すのは躊躇うってコトかしら
あの香月が…ね
「香月が迎えに来てるわ…私、帰るね
レイ、またね」
万が一、香月がセリくんの方に向かって見つける可能性もある
急に心配になった私はレイにバイバイして香月の気配を辿っていく
「待ってくれセリカ!」
セリくんは香月を殺さないって決めたけど、香月はそうじゃない
「着いて来ないで!!」
香月はレイを人質にとってでもセリくんに殺されたい、自分が魔族に戻るために
来るなと言ってるのにレイは私を追い掛ける
バカ!死ぬ気か!?わかんないの!?それでこの前セリくんと喧嘩したじゃない!
足を止めてレイに引き返すように説得する前に、香月は私の前に現れてしまった
あの時はたまたま助かったレイだけど…今日はわからないよ
「セリカ、やはりその男と一緒だったんですね」
香月を目の前にするとさっきより恐怖が深く増す
表情は相変わらず無だから読めないけど、私はレイを守るように背中にして両手で後ろにいるレイの手を掴んだ
「香月さん、あんた…」
「ちょっと黙っててくれる!?」
レイが香月に物申したい気持ちもわかるけど、何も言わないで!死ぬから!!大人しくしてて!
「えっと、迎えに来てくれたのよね?ありがとう香月、すぐ帰ろう今帰るこれから帰るよね!?」
「そろそろ私の力を返してもらおうと思っていたんです」
私を無視しないで!?
香月の手が伸ばされる
だけど、レイは返そうともしなかった
そういう態度はよくないと思います
レイのコト、守り切れるかわからないぞ…
「それは…この力は……」
自分にはない圧倒的な力、レイはそれに甘えて頼っていた
どうしようもない時はいつも魔王の力で切り抜け思い通りにしてきた
その力がなくなるってコトは…自分の守りたいものも、自分のほしいものも、失う可能性があると言うコトだった
「返さないと言うなら…」
無表情なのに微かに香月のレイを見る目つきが変わったような気がする
私が首を横に振って香月にお願いする、ダメかもしれないけど……
「……いいでしょう、私が魔族に戻ればその力も自然と私へと戻る事です」
香月が手を引いてくれた
こ、こわかった……
よかった、見逃してもらった
私ごと貫かれてもおかしくはないもんね
香月はセリくんには無茶言ったりするコトも多いからダメかなって思ってたけど、なんやかんや私には甘いのかもしれない…ふー
「帰りますよ、セリカ」
レイから手を離して私は香月の傍へと駆け寄った
「バイバイ、レイ」
振り返ってもう一度レイにバイバイする
レイは何も言ってくれなかった
香月に対しても、私に対しても…
香月に何か言おうとしていたのに、恐怖に負けて声を失ったんだ
自分では絶対に敵わない相手だと何度だって思い知らされて…死ぬほど悔しがって、私からも目をそらしたの
だから私も何も言わなかった
レイのプライドもわからないワケじゃないから
「香月、レイを見逃してくれてありがとう」
私達は町を出た
さっきまで賑やかだったのに、だんだんとそれも遠くに感じる
レイのコトは心配だけど、セリくんがいるから大丈夫だよね
「彼は幸運ですね、貴女がいなければ殺していました」
セリくんの大親友と知ってても殺すって言うのね…
「それじゃあ、レイが私の恋人になっても殺す?私がレイのコト大好きで愛してても殺すの?」
香月の腕を掴んで寄り添う、ここで香月の腕に胸を押し付けた所で色仕掛けが通用する相手じゃない
そもそも私のコトは恋愛対象外ってコトくらいわかっているもんね
「……さぁどうでしょうか」
だけど、香月は私にはとても優しかった
本当はセリくんに優しくしたいハズなのに、それが出来ないから代わりかのように私には甘くしてくれる
心で感じてるワケじゃない、どうしたら私にとって正確なのかそれを頭で考えて答えを出しているだけ
私の好きな人を殺したら可哀想だから、とかそういったものは一切感じないしわからない
けど頭が良いから私にどうしたらどう反応するか、だけなんだ
つまり、セリくんはそれをわかって読み取って香月が無茶苦茶するのは勇者の力で殺されたいからと考えた
香月だってそのコトには気付いてると思う
でも、だから何?って話だ
その考えがわかっていても、レイや和彦が殺されたらもう後には引けない
その糸がわかっていても抑えられるもんじゃない
だから…結局は、セリくんの大切な人を殺した時点で香月の勝ちとなってしまう
「そっか…」
セリくんは甘いんだよ、本当に
香月は何回殺したって記憶も失わずに生き返る、永遠の別れなんてない存在
魔王に戻った所で、多少は厄介かもしれない
それでも殺せるうちに殺すべきだ
大切な人達を守るにはそれしかないのに
自分が好きな人を殺すのが嫌なだけ、現世で離れたくないだけ
言い訳ばっか並べて逃げてるだけだわ
…バカは私か、好きな人を殺せるワケないよね…普通は
殺すほど愛してるって異常なほど頭おかしい和彦じゃないんだし
「殺さないで、レイも和彦もみんなも」
「………。」
「ねぇ香月!お願いだよ!!」
香月の隣から真正面に移動して足を止める
見上げた香月の表情は一瞬だけ固まったような気がした、でもすぐに視線を逸らされる
「人間でも良いじゃん!悪くないよ?
たまに風邪引いたりするし怪我だって治りが遅いかもしれない、他種族に比べたら寿命だって凄く短いね
身体も力も弱いし…やっぱり他の種族に比べて良い所ないかも……
でも、セリくんは人間だもん
香月が魔族でも人間でも変わらず好きだよ
たまには人間として一生を過ごしても…いいじゃん?貴重な体験じゃん……
なんで、そんなコトに拘るの…一緒にいるだけじゃダメなのかな…」
なんで私こんなコト言ってるんだろ
セリくんは私だけど、セリくんのコトに口出しするつもりはなかった
香月との関係はセリくんだけの問題だから
でも…好きな人がそこにいて、両想いなのに意味わかんないこだわりで関係が壊れるなんてコトが、ムカつくんだよ!
好きな人が現実にいるってだけで私には贅沢だって思うんだ!!
香月はなんて言ってくれる…?セリくんがダメなら、私だったら…何か変わる?
香月の言葉を待っていると、背後からじりじりと空気読めない嫌な気配をかんじる
もう聞けないね…香月の言葉は
気持ちを切り替えて私は振り向く
「あらキルラ、背後からなんて卑怯になったわね」
5歩先には棒を振り上げながらそろりそろりと私に近付くキルラが片足を上げたまま動きを止めている
「ちくしょお!!気付かれた!?卑怯もクソもあるか!勝ちゃあいーんだよ!勝ちゃあ!!」
この前、セリくんに負けたコトをとっても気にしてるキルラは背後を取れるか私で試したみたいだ
「そんなコトしても無駄よ、キルラの気配なんて簡単にわかるもの」
「くっそぉおうあああ……!!」
ふふっと余裕の笑みを見せる私にキルラは悔しがっているけど、背後を取った所で殴ろうが蹴り入れようが大したダメージにはならないのに
キルラに邪魔されて…いや、これでよかったのだ
私がセリくんのコトに首を突っ込むのは違うもんね…
冷静になれたよ、キルラのおかげで
「いつか絶対泣かす!!」
「がんばれー」
棒読みで返すとキルラはキー!と悔しがるけど、絶対セリくんも私も泣かせないと思う
香月に怒られちゃうからね、だからキルラはどうしようもなく諦めるしかないのだ
「今夜は焼き鳥が食べたいな」
「きぇええーーー!!嫌な女だよ!!」
「ねぇ香月、キルラは自称四天王って言ってるだけで本当の四天王はいるの?どんな人達?」
「たたみかけてくるな、この女!?香月様言ってやってくださいよ!四天王はオレらの事だってよぉ」
また香月が、四天王なんていた?って顔してる
「私の次に強い者なら…」
「やっぱいいです!!誰が2番目に強いとか順位付ける事はナンセンスだと思いまーす」
「香月の様子からしてキルラじゃない事は確かね」
ふふっと私が笑うとキルラは私のスカートを思いっきりめくって空へと逃げた
秋の冷たい風が私の太ももを撫でる
「やーい!やーい!苺とウサギさんのパンツとか色気なさすぎ、もっとエロい下着付けろよ!何歳なんだよ!!」
くっそ~…今日はドロワーズはくの忘れて来たからパンツ丸見えじゃんか
こんな時にキルラにめくられるとか…
「うぜぇ!?オマエこそ何歳だよ!!小学生か!」
その辺の石でも投げられたら敵わんとキルラは全速力で言い逃げしていった
キルラが現れてブワッと騒がしくなったけどキルラがいなくなるとシーンと静かになる
キルラはいるだけでうるさいけど香月は静かだからな
「んー…私は可愛いパンツが好きなんだけど、色気ないかなぁ
なかったらどうなの?男として?」
それを香月に聞くか?って自分で自分にツッコミ、恐れ知らずと思った
「私は気にしませんが」
「あぁ大事なのは中身ってやつ?」
シーン
………。
言う相手が違う!!滑った感が私を殺す
そもそも香月に男の意見わかるワケないじゃん!性別は男だけどセリくん以外興味ないから女にも興味ないんだよ
私が風呂上がりでバスタオル1枚でも香月は普通、着替えてても普通、私の全裸を見ても普通
うん、安心!この人は安心!!ほくほく
「どんな貴女でも、危害を加える者はいるでしょう
…私の傍から離れないように」
なにそれ…なにそれ、プロポーズみたいだ
私を通じて、貴方の本当に愛している人に
ちょっと照れくさくなって私はへへへと笑って香月の隣を歩いた
いいな、いいね、好きな人が傍にいるって
素敵で羨ましい
私も……こうあったら、いつか…いつか、こうあれたら…いいのにな
なんて思うのよ
-続く-
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