93話『君へのおくりもの』セリカ編

光の聖霊が勝手にレイに憑いて来るコトになって、セレンの国に連れて帰るコトになってしまった

セレンは光の聖霊を見るとすぐにレイを気に入ってると気付き「ここは女人禁制ですわ!」と意味不明なコトを言い出す

しかし、光の聖霊は自分の部屋を用意してもらわなくてもいい、レイと一緒でいいと言ったらセレンはすぐに遠く離れた部屋を用意してそこから出るなと威嚇する

どんだけレイに女近付けたくないのか…

セリくんの私ですら女ってだけで、あんまり歓迎されていないしねセレンには

そうして光の聖霊は一緒の国で暮らすコトになった


「よかったね、光の聖霊って凄く光の魔力が強いんでしょ?

レイなら加護を受けられるし、たくさん力を貸してくれるよ」

「いや…」

あれだけほしがってた強い力のひとつなのに、レイはそれを受け入れようとはしなかった

「あんなふざけた女の力なんて借りたくない」

付きまとわれるのは迷惑だと珍しく不機嫌だ

前にセリくんが言ってたけど、レイは自分達以外にはとても冷たく突き放して誰も受け入れない性格みたい

普段の私達への態度とはガラッと変わってしまうから、たまに心配になるって

ロックやローズ達にはセリくんの友達だからって冷たくあしらったりはしないけど、セリくんがいないと自分から関わったりはしない

前の世界でもおひとりさまを好んでいたみたいだし

レイがそれで良いなら何も心配するコトじゃないけど…

それでもレイはそのルックスと強さにモテるしファンも多いから

周りからの好きを冷たくあしらう様子を見ると、好きな人にそんな態度を取られたら死ぬ!ってなんか妙な連帯感と言うか…同情と言うか…

でも、そんなレイの前世の前世には恋人がいたと言うなら……

他の人を好きになったら…気持ちがなくなったら、大親友じゃなくなって

冷たくあしらわれるその他大勢の枠に放り込まれてしまうのかもしれない

って、ありえない話を勝手に膨らまして不安になったりする

レイは絶対に裏切ったりしないって信じてるって言うくせに

本当は人の心の変化を疑って恐れている

だから、それが運命なんだよって言われる方が安心する

運命を疑ってるくせに安心するなんて矛盾してるよね

私は何処まで疑り深くて他人を信頼できないんだろう

だから…ダメなのに

「ふざけてなんかいないよ、彼女はレイのコトが本当に好きなんだよ」

「迷惑なだけだ、好きだとか恋人になりたいだとか、それを条件にして力を貸すかどうかなら借りなくていい」

別に光の聖霊はレイが恋人になったら力を貸すなんてせこい条件出してないけど…

でも、レイって

「意外に誠実でビックリした」

「冷たいだの鬼だのなんだの言わないんだな」

セリはいつもそう言うのにってレイは溜め息つきむくれる

セリくんそんなバカじゃないよ!?

今回のコトはセリくんだってそんなコト言わない

レイはその線引きがわかってないんだ

自分が冷たい態度を取れば全てそう取られると思ってる

「だって誰もが喉から手が出るほどの力なんでしょ?

その条件が可愛い女の子の恋人になるだったらメリットしかないじゃない

男なら即オッケーみたいな?」

「セリカは男をなんだと思っているんだ…」

「ただヤりたいだけの生き物」

レイに両頬を優しくつねられた

「本当にそう思うなら今無事な事が奇跡だな」

いにゃいにゃ、わかっへまふよ~

そんな男ばかりじゃないって、ちゃんとわかってるわ

この世界に来てから

「とにかく、オレは光の聖霊の力を借りない」

私から手を離してレイは、いつもの笑顔を見せる

「レイがそう言うなら…」

私はどっちでもいいし

レイに手を掴まれ引き寄せられてそのまま抱きしめられる

私はまた身体を強ばらせてしまって、同じようにレイを抱きしめ返すコトができなかった

セリくんは当たり前のように自然とそれができるのに…って、比べるのもおかしいよね

大親友と恋人なんだから違って当然

「好きだとか、恋人だとかは、セリカだけがいい」

レイのコト、ちゃんと向き合うって決めたのに

向き合えば向き合うほど離れていくような気がする

遠くなっていくような気がするの



「なにそれ?馬鹿なのセリカって…」

「まっ!なんて贅沢な悩みなのかしら!!」

ポップと楊蝉にレイとどうなのって聞かれたから話すと全女の敵みたいに引かれてしまった

3ヶ月に一度の女子会、普段は仲の悪いポップと楊蝉もこの女子会だけは普通の女の子としてお喋りをする

少し高めのホテルでランチをしながら、話題は女子が好きな恋話がほとんどを占めていた

私はあまりよくわからないからいつも聞いてるだけだったけれど、レイのコトを真剣に考えてみると決めてからの本日は格好の餌食だ

「いや…だって好きかどうかわからなくて」

「馬鹿だー!セリカはーぁ!?

あのレイだよ!?相手はレイ!!

人間のくせに魔族のポップから見てもイケメンで強くてお金持ってて女子の憧れの的!金髪の騎士様~っ、あり!ポップでもありって思うような最高物件!!」

なにその少女マンガに出てくるようなヒーローみたいな完璧な人

お金って単語が出るのがやけにリアルだな

そして性格には一切触れない

ポップは悔しい~!とハンカチを噛み締めている

いつの時代の少女マンガに出て来る感じなんだよ、その表現

「そうですわ!!ポップさんと意見や好みはいつも合いませんが、今回ばかりは同感致します!!

レイさんは若くてイケメンではありませんか!!何が不満なんですの!?」

楊蝉はすぐ歳の話をする

見た目は20代後半でも実際は1000歳らしい、だから年齢を気にするんだろうか…

「レイに不満なんて…ないけど」

「セリカ様!23歳でしたわね?

はっきり申しますわ…23歳なんて、もうババアなんですのよ!?

いくら見た目が若く見えてもババアなんですの!!

そんなババアを若い男子が相手にする事なんて、滅多にありません事よ!」

「そうそう、女の花の寿命は短いのよねぇ

ピークは16歳、20越えたら売れ残りなのぉ

永遠を生きるポップ達ですらピークは10代なんだからぁ」

それは短すぎだろ!!??

世界が違うから価値観も違うんだろうけど、アラサーみたいな扱いされている…

短すぎないか、女の価値…

アラサーでもアラフォーでも綺麗で素敵な女性はたくさんいるのにな~って私は思うの

セリくんは年上の女性が好きだから昔中学生の時にやってたゲームでモロ好みの女性が死にかけのババア(グラフィックは40代くらいの美女)で何回やり直しても結婚する前に死ぬって言うのを繰り返してて

なんとか生きてるうちに結婚できないかあらゆる手を尽くしたがダメだった話を聞いた時は我ながら頭おかしいのかと思った

しかも未亡人

恋人になるまではいけたらしい(実話)

ドラマに出て来る女性ヒロインの中でどれが好きかって時もふわふわ天然女子大生とサバサバ系の一途な幼なじみと20代後半くらいの未亡人美女だと迷わず未亡人を選んだ

いや、良いと思います

でも中学生の時から未亡人好きは結構特殊やと思います、我ながら…

セリくんはお姉さんタイプが好きみたいね

だから年齢で価値ありなしってのがよくわからないんだ

自分にとって、好きになるのに年齢なんて関係ないって思ってしまうから

今じゃ性別も関係なくなってるし

個人の好みの問題だから、男は若い女がいいって聞くとそんなコト関係ない人もいるよって思ったり…

「いくら見た目が若いからって、男が価値を求めてるのは実年齢なんだからねぇ」

ポップは不機嫌にパンをちぎりにちぎって口へと放り込む

「でも、ポップも楊蝉も彼氏100人くらいいるじゃない」

「「どいつもこいつも結婚するなら若い女って言われてるんだぁ(ますの)」」

笑顔なのに殺気が世界滅亡レベル

黙っとこう…こうなったら魔王より強そう

「まっ、魔族は男も女も結婚にこだわらないからいいんだけどねぇ

ムカつくのは人間の彼氏、人間の男はすぐ若さにこだわるんだからー!」

人間の彼氏いるの!?魔族と、しかも癖の強いポップの彼氏になる男ってどんな猛者なんだ

「私は結婚したいですわ!!

そうなんですの!魔族は結婚にこだわりませんから、この歳…1036歳になっても独身で…」

待って、結婚できないのは年齢関係なくて彼氏100人とか言う暴挙をやめないからだと思うわ…

1036年間独身ってのもスゴいと言うか…

2人ともランチの時間だと言うのに自暴自棄になってお酒の追加を頼むスピードが早くなっている

また私、女子会トークで置いてけぼりにされている…

「ですから!!セリカ様、いつまでも白馬の王子様を夢見てたら結婚できませんわよ!

レイさん以上の方はこの先現れませんわ」

まだ恋人もいないのに結婚は…って言ったらめっちゃ怒られそうだから黙っておく

「セリカはもう子供じゃないんだから現実見なよぉ

レイを逃したら、セリカは一生彼氏できない!!」

楊蝉とポップに散々言われて、それなのに私はうんとは言えなかった

レイのコト、まだはっきりわからないのに

自分が結婚できないかもしれない、一生ひとりかもしれないってコトを心配して

恋人になって結婚しても

レイの気持ちは…私と両想いになるコトなのに

それでいいのかなって思う…

ちゃんと好きになってから…恋人になって……

それがいつになるかわからない

レイが待ちくたびれて愛想尽かしてしまうかもしれない

でも、その時はそれでも構わない

私が悪いのだから

……それでいいの?またなくしてから大切だったって気付くんじゃないの?

「ねぇねぇ、セリカがレイと晴れてカップルになったらトリプルデートしよーよ!」

ポップは何かを思い付いたみたいで急に機嫌を良くする

「いいですわね、それ!私の彼氏達とポップさんの彼氏達とセリカ様とレイさんで」

彼氏…達!?100人連れてくんの!?2人の彼氏合わせて200人!?

そんなトリプルデートしたくねぇよ!?

凄く周りに迷惑かけそう!!

「別荘借りて、夜はもちろん乱パだよねー!」

「誰が行くか!!そんなん恐ろしいわ!

こっちは健全なんだよ!?」

まだ付き合ってないけど、健全なお付き合いします!

「香月様と和彦が相手のセリカなら100人も200人も余裕だってー!

もしかしたら100人200人じゃ物足りないかもよー?キャハハハ」

う、うぜぇ…そんなワケあるか!

無視だ無視、相手にしても無駄

「楽しみですわ、オホホホ」

こうして私以外、ポップと楊蝉は最後まで面白おかしく女子会を楽しんでいた



ボロボロになって帰って来た…心が

「おかえりセリカ、女子会は楽しかったかい?」

「メンバーがメンバーなのに、楽しかったと思う?」

私がげんなりな様子を見てレイはハハハと笑う

笑ってるけど、レイの知らない所で妙な予定立てられてるんだぞ

はぁ…でも、レイ以上の人はいない

ってのは的を得てると思うの

頭ではわかってる

レイは優しいし(私だけに)、大切にしてくれるし、イケメンだし、強いし、守ってくれるし…完璧と言ってもいい…

ダメな所を探す方が難しい

レイのダメな所…大親友に依存と執着しすぎる所

これはちょっと…大きなマイナスポイントね

でもその大親友は私なのだから問題ないと言えば問題ない…か

「あれ、セリくんはまたいないの?」

近くにいる気配がしない

「和彦さんの所へ行くって言っていたな」

「また!?」

って、驚いたのは私をほったらかしにしてるコトについてだ

セリくんの思惑は当たり前のようにわかる

自分がいなくなるコトでレイと私の仲の進展を速めようとしているんだわ

自分がいるとレイはセリくんと私を見るから、セリくんは自分がいなくなればレイは私だけを見るとわかっている

とりあえず2人っきりにしとけばいいってやつ

私の不安も知らんぷり

セリくんはレイを心底信頼しているから、私が不安だったり心配だったりしても大丈夫大丈夫って思ってる

結夢ちゃんもいないし…

なんか緊張するじゃない!!

「せっかく帰って来たのにすまないが、今夜はセリカに構ってやれないんだ」

今夜は!?そんな誤解を生むような発言する!?何もないよ!?今までも今夜も!!

「えっ、あのキラキラ女のとこに行くの?」

「えっ?いや……行くと言うわけ、じゃ……」

……ん?何この反応?

レイが私から目を反らした、怪しすぎない!?

この私に構わない=他の女の所って発想になる私もどうかだけど

和彦のせいですぐに浮気を疑う発言をしてしまう癖がついてるみたいだ

和彦が「ちょっと出掛けて来るよ」と言えば、セリくんは「今日は何カップの女?」と聞く

「Dカップ」「珍しく小さめ(和彦にしては)だな、って行かせるかボケ!!」って言う流れ

もはやコント

「それじゃ…今日は先に寝てていいからな」

レイはそう言って部屋を出て行った

私はポカーンと口も挟めず閉まったドアを見つめていた

えっ?えっ?何それ?先に寝てろって朝帰りか!?

浮気!?浮気なの!?セリくん至上主義で私に命懸けてるレイが!?あのレイが!?

和彦じゃあるまいし…じゃあ!本気か!?

あのキラキラ女に本気になって…よりを戻す気じゃ…

より戻すって表現もおかしいけど

前世の前世で恋人同士なら好きになってもおかしくない

レイが私を好きなのも前世で恋人同士だったからその影響で好きになってくれたんだと思ってるし

だから私じゃなくても、レイは好きになる…?

なんだろう?凄く…凄く…モヤモヤ



しなかった

私はぐっすり朝まで寝た

目覚めは驚きのスッキリ

寝る時はひとりだったのにいつの間にか隣にはレイが眠っていた

セリくんが一緒にいる時は同じベッドで寝るけど、2人っきりの時は気を使ってくれてソファで寝るのに

昨日はそれも気付かずに疲れて寝ちゃったんだろうか

夜から疲れる…?それってもうやるコトはひとつしかないぞ?

もしかして昨日レイは卒業し「バシッ」何かが後頭部に直撃した

天罰だと思った

「わぁ!セリカ様、申し訳ございません!!」

上から声がして顔を上げるとツインメイドの片割れが空中で頭を下げている

頭に当たったのは雑巾だった

どうやら掃除中だったらしいけど、人が寝てる部屋を今掃除する!?

いや、よくあるコトだった

セリくんも寝てる時にたまに掃除しに来るし、風呂入ってる時も平気で入ってきてお体洗いますってセクハラされたりするらしい

天使族は人間のように常識のようなルールがあまりないらしく自由だった

「いいの、たぶんこれ天罰だから」

失礼をしたとツインメイドは一旦掃除を中止して再度私に頭を下げて部屋を出て行った

「セリカ…起きたのかい」

「あらレイ、おはよって!?」

レイは寝不足と言わんばかりに物凄い眠そうで私の腕を掴むとベッドの中に引っ張り込みそのまま抱き締める

「ちょっと、レイ…寝ちゃった…」

私は抱き枕じゃないぞ!って言えなかった

レイはすぐにまた眠りに入ってしまい、私はぎゅっと抱き締められたまま動けなくなる

昨夜は本当にレイはお楽しみだったのか?

聞いてどうするんだろ、知って私はどうしたいんだろ…

とにかく、私は目が覚めてしまったしレイに抱き締められて寝るなんてのは

セリくんじゃあるまいし、遠慮させてもらうわ

レイの腕から逃れようと上へ身体を動かす

あれ、下から抜けた方がよかったかしら?

自分のお尻が大きすぎて抜けないコトに気付くのと同時にショックを受けた

やっぱ下から、と動くとレイの手にパジャマが引っかかって脱げそうになる

待て待て待て!なんだこれ!?ラブコメじゃないんだから!

寝ているレイが無意識に私を抱き直すようにすると、パンツが丸見えになってしまった

スカートタイプのパジャマが生んだ悲劇

しかもパンツがなんか緩いなと思ったらヒモがほどけかけとる!?

ありかこれ!?良いのかこんなコトあって!?

「レイ…あの…この腕を……」

起こすかどうか迷った

今起こしてお尻丸出しでほどけかけのパンツ姿を晒すのは、まずい…

どうしたら…

とりあえずこれ以上悪い状態にはなりたくない、私は動かないコトにした

けど、今日に限って寝相の悪いレイの足がパンツのヒモを引っかけてもう私の届かない所にいってしまった

きゃー!?ノーパンんんん…に

ノーパンだけじゃなかった

気付いたら私はパジャマまでどっかにいった

なんで!?なにこの状況!?

寝る時にブラなんかしないからノーブラだしね…どうして私は全裸に…

レイの寝相が悪いから、なんやかんや私は丸裸なんだよ

絶対寝てないでしょ!?わざとだよね!?わかってて脱がされた!!

こわい!レイも所詮は獣よ!!?

なんか…ベッドの中で裸でレイに抱き締められてるって…変な感じ

落ち着かないと言うか…ただただ恐い

結婚したらあるコトなのに、私には想像ができなかった

向かい合わせがなんだか恥ずかしかったから私はレイの腕の中でくるって向きを変えてレイに背中を向けた

起きた時に正面見られるよりはまだ後ろの方がマシかな

少しすると私もまた眠くなってきてウトウトしていると、急に胸を掴まれて声を出してしまった

「ひゃっ!?」

ビックリした私にレイもさすがに起きて

「せ、セリカどうしたんだい…!?」

飛び起きて私を見下ろす

タオルケットを引っ張って自分の身体を隠しながらレイをムッと睨み上げる

私が何故全裸なのかわからないと言う顔もするし胸を揉んだコトも覚えていない

「その格好は…」

真っ赤になったレイの顔は恥ずかいからなんだろうけど、私は怒ってるから顔が真っ赤なんだ!

「レイが脱がせた!しかもさっきは胸まで揉んだ!!」

「そ、そんなはずは…さっきの手の中にあった柔らかい感触は」

覚えてんのかい!

私はレイの足元を指差した

レイの足先には私のパンツのヒモが絡まっている

レイのウソだろ!?って顔は一生忘れない

「ち、違うんだ!セリカ!オレは」

「寝てて覚えてないって言い訳ね、いつもはそんなに寝相悪くないのに怪しい~

昨日は他の女の子とお楽しみの次は朝から私ですか?

モテモテのイケメンくんは女食い放題で良いご身分だことね」

「他の女って…セリカは怒っているのかい?

昨日は光の聖霊とはセリカが思うような事は何もない、誓って」

他の女の子って言っただけで光の聖霊とは言ってない

レイは昨日は光の聖霊と一緒だったんだ…朝方まで…

「出て行って、着替えたいの」

私はそっぽ向いてレイの話を聞かなかった

「セリカ…信じてくれ」

「別にレイが誰と付き合おうと私は関係ないから」

そうよ、関係ないの

レイのコトは大好きだけど…それって恋じゃない

昨日もぐっすり寝れたし、今怒ってるのも胸を掴まれたからだ(全裸にされたコトはギリギリ許…しません)

「あのね、私レイのコト好きだけど

レイの思ってる好きとはちが…」うと思う

背中を向けていた私をレイはぎゅっと抱き締める

その強い腕からは私が離れて行かないようにと強い想いが込められているように感じた

「違わない…好きならそれでいいじゃないか

オレの何が不満なんだ…何が足りないんだ」

「不満なんてないよ、足りないのは…」

言葉では説明できないもの、かな

「昨日、光の聖霊と何をしていたか見せるよ

着替えたら音楽室に来てくれ、セリカ」

レイは私から離れて先に部屋を出る

一方通行の想いはとても辛そうに感じた

私だって…レイのコト好きになれたら、凄く楽だよ

こんなに私を好きになってくれる人を悲しませるなんて最低だよ

だけど、私…まだ……



私は着替えると言われた通りに音楽室へとやってきた

そこには光の聖霊もいる

私を睨み付けて不機嫌な彼女

ここにはセリくんと私しか入れたコトがないって言ってたのに、やっぱり光の聖霊はレイにとって特別なのかしら

「勘違いしないで!勇者の為じゃなく、レイの頼みだから仕方なく!!」

何の話かわからない私はどう反応したらいいのか

「そこに座ってほしい、セリカに」

レイに言われたったひとつしかない特等席、いつも私かセリくんが座る場所へ私が座るとレイはピアノの席へと座る

「やっとこの曲が完成したんだ、セリカに聴いてほしくて」

この…曲?どれのコト?新作?

光の聖霊も背筋を伸ばしている

今からはじまる…レイの音楽

数秒静かになるとレイがピアノを引き始める

これは…前奏を聴いただけですぐに何の曲かわかった

この曲はあれだ、レイが歌があれば完成すると言っていたイングヴェィと歌った曲

嫌な予感がした、前奏を聞き終えた頃には冷や汗がする

歌がはじまる…

すると、光の聖霊が歌い始めた

美しい歌声だった…誰が聴いても惚れてしまいそうな美しい歌声…

私は思わず涙をこぼしてしまう

この曲はこんな曲じゃなかった…

曲は何も変わっていないのに、歌手が変わっただけで全然違う曲に聴こえる

悪くないよ…素敵だよ

でも、やめて…この曲はイングヴェィとの思い出の曲なんだよ!

忘れちゃうから唄わないでほしかった…お願い、私からイングヴェィの思い出を消さないで……

「セリカ…どうだった?」

「ふん、気に入らないけど勇者へのプレゼントだってー」

感想を聞くレイと、好きな人が他の女へプレゼントする曲を歌う光の聖霊の大人さにちょっと見直す

「えへへ…良すぎて…感動しちゃった……」

私は我慢した…涙が止まらなくて、笑うしかなかった

笑うしか……本当は凄く泣きたいのに

「気に入ってもらえてよかったよ

この曲のタイトルは『明日へ』なんだ

セリカの為に、セリカだけの曲を…」

「違うよ……」

涙がピタリと止まる

違う、違うの、違う!!

「その曲のタイトルは『君へのおくりもの』」

「えっ…」

やっぱりダメだ…我慢しようと思ったけど、我慢できなかった

この曲の歌詞は光の聖霊が歌ったような未来は明るいみたいなものじゃなくて、イングヴェィの歌は…真っ暗な世界から君を攫っていくよって歌詞だった

私はそれがとても好きだった…

無理なんだ、私は明日なんて見れない

ずっと夢から覚めないんだ

自分の妄想から覚めない、覚めたくないんだ

ずっとイングヴェィのコト、忘れたくない……

レイのコトを好きになれないのは…私は、私は…本当は…

「この女むかつく、レイが一生懸命貴女の為に作った曲を受け取らないなんて何様よ!?

レイもレイ!見る目がない!!こんな女のどこが…」

「協力して貰ってありがたいが、セリカの事は悪く言うな」

光の聖霊が怒るのは当たり前だ

彼女は悪くないよ、私が本当に悪いんだ

私はレイに失礼だった、ずっとはっきりしないで期待を持たせて…

「ごめんなさい、レイ…私やっぱりレイのコト」

「待ってくれセリカ!!

まだ返事は早いと思うんだ…オレはそんなに返事を急いでいない

振られて考える事を放棄されるくらいならいくらでも待つ」

レイの強い想いは私がわかっている以上だった

苦しい…レイの姿を見るのも、自分のコトも

「レイはいいの?いつになるかわからないよ?

私、いつまでも妄想の王子様を待ってるようなバカな女だよ?」

「いつまでも、オレが現実の王子様になれるように頑張るさ」

「もうおばさんだよ?」

楊蝉の言ってたコトをここで出す

「セリカはまだ若いよ、5歳しか違わないじゃないか」

5歳も!だけど!?

忘れてたけどレイって5歳も年下なんだねぇ…

私が18の時なんてもっとアホだったのに

ずっと大人だな…

「レイったら」

私はレイの押しに負けてふふっと笑う

そしたらレイも少しずつ笑顔を戻して私を抱き締めた

現実の王子様…か、レイは騎士なのに王子様になろうとする

頑張ってとは言えないな、私はオススメしないよ

傷付けてばっかりだもんね…

「ずるい~!レイにぎゅっとされて~!!」

痛くない程度に光の聖霊は私を後ろから叩く

「いいわいいわ…レイが諦めて私の所へ帰って来るのを待つわ!」

レイが幸せならそれで…と光の聖霊は小さく切ない想いを零した


レイに抱き締められるととっても温かい

生きてる人間、心臓の音までちゃんと聞こえる

男に抱き締められるのは恐いけど、レイは大丈夫って慣れて来たかも…

部屋に戻るとレイは思い出したように言う

「セリカ、今度2人っきりで旅行にいこう

一緒に行きたい所があって」

「旅行の力を借りるんですか

いつもと違う場所、雰囲気、そして初エッチ…」

また両頬をつねられた

「最近セリカは冗談が多いな」

「セリくんにからかわれる前に先に仕掛けておこうかと思って」

警戒してるのを悟られないように笑い飛ばそうとして先手を打つとどうしても下ネタに…

チンピーに毒されたかしら?

「そんな事ばかり言ってると本当にそうなっても知らないぞ?」

レイはハハハと笑う

「でもすぐには行けないわ、1回帰ろうと思ってるもの」

さっきの笑顔は失われガッカリさせてしまった

「絶対行くからそんなに落ち込まないで?」

すぐに復活した

「わかったよ、セリカがこっちに来れそうな時に」

またレイは私を抱き締める

レイと一緒にいるコトが多くなってからレイに抱き締められるコトも増えた

セリくんがいつも当たり前のようにしてるから違和感がなくて

でも、レイが私の顔をじっと見つめている時はキスされるかもって警戒して目を反らす

レイは残念そうに笑う…ごめんね…

こんな私で



-続く-

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