89話『守りたい者、守りたかった物』セリ編

香月の城に帰ってから数日後、また暫く出掛ける香月を見送ってちょっと寂しい気持ちになった

色々悩んでてそのマイナスな思考から寂しいなんて気持ちが引き付けられる

ついて行ってもいいんだろうけど、香月に来いと言われてないからついて行くのもなって思ってお留守番

香月はたまに城を空けるけど、一体どこで何をしているのか…(世界征服中です)

…本当は気付いているのに、目を逸らしているのかも…

それに同じ時にキルラとラナとポップも遠くのなんとかなんたら王国を攻め落としに行くとかで大勢仲間を引き連れて行っちゃったし

城の中は珍しくめっちゃ静かだ

今いるのは楊蝉と低級魔物の可愛いやつらだけ

聖剣持ってる俺がいるから大丈夫だろって甘えすぎなんじゃないか

俺が香月の恋人だからって、この城守るなんて俺は約束しねぇからな

「セリ様!大変ですわ!!」

なんもするコトがなーいって、昼間なのにソファの上でゴロゴロしていると楊蝉が慌ただしく部屋のドアを開ける

「えっ?暇だから遊んでくれるの?」

楊蝉は幻術が得意で、結構面白いもの見せてくれるんだよ

「違います!一大事ですのよ!」

見てくださいな!と楊蝉は窓の外を覗くよう指を差す

あっ、これなんか前にも似たようなコトなかった?セリカが風邪引いた時に

その時は魔族がキルラしかいなかったけど、たまたま最強のユリセリがいてなんとかなったって話

楊蝉に言われて窓を覗くと、やっぱり香月や三馬鹿が不在なのを知って狙ってなのか色んな種族が大勢攻めて来ていた

「……ハッキリ言ってピンチだ?」

楊蝉はそこそこ強いけれど、三馬鹿よりは遥かに劣るし力の種類があまり戦力にはならない

残った低級魔物達は可愛いだけが武器で何もできない

「いいえ!今のセリ様なら余裕でしょう、ファイトですわ!」

めっちゃ押し付けられてる…

確かに、聖剣と瞬間回復魔法は最強に相性が良いから今の俺に負けなんてのはない

むしろその最強のコラボで俺より強い奴いないと思う(調子乗った)

でも、いくら聖剣が強いと言っても……ちょっと骨が折れそうなくらいの数じゃねぇかな…

みんながいれば対した数じゃないだろうけど、聖剣は複数の敵を相手にするタイプじゃない

わかりやすく言うと全体攻撃じゃなくて単体攻撃タイプ

全体攻撃もなくはないが、一時しのぎ程度だ

「なんか…面倒くさいって思…」

だって奪われてもどうせすぐに奪い返すじゃん、アイツらなら

俺がわざわざ頑張らなくてもさ…

守った所で香月は別に俺を褒めてくれるワケじゃないし…

そんなコトを考えながら窓の外を眺めていると、低級魔物達が飛び出して敵の大群に向かって吠えている

飛びかかろうとするが弱い魔物達は捕まりそうになっていた

「まずい…っ!」

それを見てしまった俺はすぐに身体が動いて外へと駆け出す

「セリ様!私もご一緒に!!」

楊蝉が後ろからついてきて、俺達が外へ出ると捕まった魔物達はぐちゃぐちゃに殺されかけていた…

うっ、なんて酷い姿に…

胸が苦しくなる、みんな俺に懐いてて可愛い奴らだったから…

魔物は勇者にしか殺せない

でも身体をぐちゃぐちゃに引き裂かれようが潰されようが痛みは普通に感じるんだ

言葉通り死ぬほどの痛みを感じる

「やめろ!!」

敵は魔物達が原型も留めないくらい手も足も出せない状態になってもいたぶるコトを止めなかった

それに強い怒りを持つ、絶対許せねぇって

「や~っと、勇者様のお出ましだぁ」

俺が現れると敵は手を止めはしたが魔物達を離さず一斉に俺を見る

「こうすれば勇者は簡単に姿を現すって話は本当だなー」

敵はニヤニヤと嫌な笑みを向ける

俺の…弱点を知っている…?

おかしい、魔王と勇者は敵同士

その敵である魔物がいたぶられた所で勇者が姿を現すなんて普通は思わない

魔王の花嫁と言う噂(セリカのせい)は少なからずあるが、勇者はまだ世界を平和に導くと言う期待が根強いのに…

「オマエらが俺を目的って言うならその魔物達を解放しろ」

痛みは感じないように魔法をかけた

後はみんなが解放されたら身体を治して楊蝉に連れて逃げてもらう

「するわけないじゃーん!!その聖剣をおれらに渡すまではなー!!!」

そこら中から耳を貫くような笑い声が上がる

魔王が不在の城が目的じゃなく、聖剣が目的……だったのか

ここでもまた聖剣が……

なんとも言えない気持ちになって聖剣を握り締める

聖剣は…悪くない…

手放したら俺が弱くなるからじゃなくて、手放したら…君が悪かったんだって言ってるみたいで…嫌だから

ごめん、魔物のみんな…もう少しその姿で我慢していて

すぐに片付けて治してやるからな!

「じゃあ…オマエら全員殺すまで」

気が遠くなるような人数に向かって俺は怒りで倒すと宣言した

いくら聖剣が強くても四方八方の多人数からの攻撃は全て避けれるワケじゃない

今は背中を守ってくれる人もいない

でもやっぱり思った通り俺の回復魔法と相性が抜群で、どんな攻撃を受けても回復魔法が全てフォローしてくれる

いける…コイツら全員倒して魔物達を助けられる

そう思ってた

でも、時間は経っても経っても…敵は倒しているハズなのに、減るより増えるコトの方が多かった

ひとりひとりがめちゃくちゃ強いのもあって聖剣で倒すのにもちょっと時間がかかる

それだけじゃない、ヒーラーも複数いるから倒しても倒しても交互に復活してキリがないぞ

先にヒーラーを倒したい所だが、守りがなかなか崩せない

……日が暮れる、何度も



これは酷いな…あまりに酷すぎる

だって、あれから三日三晩も俺は寝てないんだぜ?

聖剣を狙う奴らが種族問わず世界中からやって来る…

本気か?本当にこんなコトがあるのか?

聖剣は無敵だ

挑むなんてあまりに無謀なのに誰も諦めずに攻めて来る

それは聖剣を扱う俺自身の限界を狙った作戦なんだって今更気付く

考えたな、俺の限界が来て聖剣を手放すまで襲ってくるなんてよくやるわ

城を離れている魔族は誰も全然帰って来ねぇしよ!!

3日ありゃ誰か帰ってこい!あの三馬鹿もいつまで油売ってんだよ

早く助けに来いよな!

いや、三馬鹿より香月が颯爽と現れて俺を救ってくれたらもっと惚れるのにな

……なに俺はセリカみたいに少女漫画のようなシチュエーション妄想してんだ

眠さの限界すぎて頭がおかしくなってる

「セリ様、顔色がよろしくありません事…」

そら俺は人間だから三日三晩寝なかったら顔色も悪いっての…

元々俺は顔色が悪いのにさらに悪くしてどうすんだっての

無理して戦う俺に楊蝉が心配してくれる

正直、限界です

ホント寝たい、永眠したい、めっちゃ寝たい

「大丈夫…俺は自分のコトはもう自分で守るって……みんなのコトだって守って……みせ、る」

寝たい…立ってるのが辛い、起きてたくない

寝られるなら、聖剣を…この力を…手放したい

いや…ダメだ……何をバカなコトを

誰にも迷惑かけない、みんなを守るって俺は誓ったじゃないか

でも、足はフラフラだし身体はフワフワだし…頭は何か気持ち悪くて吐きそうだ

ぶっ倒れてもおかしくない

こんな状態でも聖剣のある俺に誰も勝てはしなかった

何人かかってこようが、どんなに強い奴がかかってこようがだ

「しかしこれ以上は死にますわ!

セリ様は聖剣で最強の力を手に入れて、回復魔法もあって攻守共に完璧でも

人間ですのよ!?疲労と眠気には限界がありましてよ!?」

確かに、楊蝉の言う通り

俺はこのままだと死ぬだろう

むしろ3日もってるコトが奇跡

聖剣を楊蝉に託して寝るか?それが賢い選択かもな

でも、そうしたら俺はまた誰かに守られるコトになる

レイに言ったのに…言ったから…!

命を懸けて守ってくれていた人に…もう守らなくていいなんて……

だから、他の誰かに守られたら意味ない!!そんなの絶対ダメなんだもん…!!

無限に湧いて向かって来ていた敵ももう底が見えてきたのか見えている敵を倒すと、やっと落ち着くコトが出来た

もう…いない?じゃあ、やっと寝れる…かな……

「…思ったより、なかなかしぶといな」

いや、さっきのはフラグだった

終わりはこれからだよ…ラスボスらしき人物の声が聞こえる

俺はやっと寝れると地面についていた膝を伸ばしてまた立ち上がる

「それは…こっちの台詞……しつこ…いんだ…よ……」

聞いたコトのある声だとは思った…

ラスボスとして、俺の目の前に立ち塞がる人物

「……ここまでしているのに、いつになったらそれを奪えるんだろうか」

声に苛立ちを強く感じる

動かない魔物の顔を踏み潰して、それを冷たい視線で眺めながら蹴飛ばす

ひ…どい……視界が霞むほどのショックを受ける

こんな奴…

次の瞬間

「セリ…」

眠気が吹っ飛んだ

あんなにも目も霞んで眠くて眠くて仕方なかったのに、ラスボスが俺の名前を呼ぶと

その人は俺の大親友のレイだったから

あーアハハ…あるある、よくあるコトだな

大親友が敵になるってやつな、それかー…

「レイ!?なんで…レイは俺を絶対裏切らないって…

酷いよ、動けない魔物にそんなコトするなんて……」

誓ってくれたのに、信じてたのに…

ショックだった…レイも聖剣の強さに目が眩んだのか?

「オレはセリを裏切ったりしない

セリの為ならどんな事でもやるさ」

そのどんなコトもが、瀕死の魔物を踏みつけるコトって言うのか!?

どんなコトも…さらにレイは魔王の力を取り出して、その力を身に取り込む

恐ろしい力がレイを飲み込んで行く

もう使わないって言ったのに、どうして

それは香月以外に耐えられる力じゃないのに、知っててレイはそこまでして…?

「言ってるコトとやってるコトが違うぞ

それに魔王の力に頼ってどうするんだ?

俺は勇者だって忘れたワケじゃないだろ?

人間のレイより弱くなって、それじゃ俺に勝てない」

「勝ち負けじゃないんだ…」

まばたきをした時には離れていたレイが目の前まで迫っていた

くそ…眠気は吹っ飛んだと言っても、身体の疲労は限界か…

これじゃ、いくら俺が勇者でも厳しいかも

レイは俺の首を掴んだ

「あぁ!何を血迷いましてレイさん!?」

楊蝉が助けに入ろうとしたが、レイの魔王の力で簡単に吹き飛ばされる

…楊蝉…!?レイの奴…!女の子に酷いコトするなっていつも言ってるのに…

なんだよ、そんなにほしいなら…くれてやる!!

俺は聖剣から手を放した

もう…誰かを不幸にするなら…こうするしか

絶対に手放したくなかった

君が悪いって押し付けたくなかったから

でも…大切な大親友のレイまでこんなにしちゃうなら……

やっぱり俺は弱い…

すまん、君は俺の味方でいてくれたのに…聖剣

「拾えば…いい…」

音を立てて地面に落ちる聖剣にレイは見向きもしなかった

な、なんで…?

掴まれた首に強く力が入れられる

く…苦しい…

魔王の力を使っているレイの手を振り解けないくらい手に力が入らないよ

本気で殺す気なんだ、レイは俺を

人間のままじゃ俺を殺すコトを躊躇うから魔王の力を借りてその躊躇いを断ち切っているようだ

「そんなものはいらない…

オレは、セリを守れないなら…殺して、自分も死ぬ」

はっ…?どう……えっ病んだの!?

そこまで思い詰めてたの!?

レイは俺を殺すだけじゃなく、自分が死ぬ為に魔王の力を使ったと言うのか?

聖剣を手放してその力はなくなったが、レイが死ぬって言うから勇者の力を振り絞ってその手から逃れる

「…っバカか!?殺されてたまるか!レイのコトだって死なせやしないぞ!?」

苦しかった…息が出来るって素晴らしい

「とにかく落ち着け、話し合おう!」

話し合えるような感じじゃないが…

レイは魔王の力に飲まれ過ぎていて、死に急いでいる

「セリの為なら命を懸けても構わない、セリの為なら死ねる」

その言葉に青ざめてしまう

正直恐い、このレイの俺への強い執着と依存に

レイは前の世界では友達も仲間も家族も恋人もいなかったと言っていた

誰とも繋がるコトなく、なれ合うコトなく…

だから人との距離感がわからないんだ

ここまで異常とは思わなかったけど

俺は束縛とか重いのはあんまり好きじゃない

何故なら俺にはそれを受け止められるほどの器がないからだ

弱い自分が誰かを受け入れるほど強くはない…

だけど…自分に器がないからってレイと大親友辞めたくない

レイはいつも俺の騎士だった

たまに本当に俺の為に死ぬんじゃないかって思うコトもあった

セリカの為に…レイはいつだって俺を守って来てくれた

だからだ、だから俺は強くなりたかったんだ

強くなれば器だって大きくなる!(と思ってる)

レイに迷惑かけたくない、レイにセリカの為に死んでほしくないから…

「やめろ!!そんなコト、俺は最初からこの先だって望んでねぇよ!!」

なんて言ったら、レイの氷の矢が俺の胸に突き刺さった

胸に血が滲んで、自分の中に冷たい違和感がある…とても不快で悲しい違和感が

うっ…ゼロ距離で矢を…?

あっ……ぶな…後ちょっとズレてたら、心臓で即死だぞ…

ガチだ、レイは話し合いが出来る状態じゃねぇ…本気だ

本気で俺とセリカを殺して自分も死ぬつもりなんだ

青ざめてる場合じゃないぞ、俺

レイのコトを認めなきゃ……俺が納得しなくても

死にたくない、まだ死ねないから…

「わ、わかった…レイの言う通りにするよ…」

レイにはじめて矢を向けられて…突き刺さされて……ショックだった…

なんか…悲しい……こんなの

涙で前が見えなくなる

だって信頼している大親友に…こんなコトされたら、悲しいだろ

胸に刺さった氷の矢を引き抜けない…手に力が入らなくて

とても…冷たいよ

「それはセリの本音じゃない」

バレバレだな!?

「オレはセリカの事が好きだ

でも、それだけじゃ足りないんだ」

「えっ」

「セリとも一緒にいたい」

俺だって…そうだよ…気持ちは一緒だけど……

「大親友か恋人か、どちらかを選ぶなんてオレには出来ない…

オレは、どちらもほしい…それじゃ駄目かい?」

レイの思い詰めた顔とまっすぐな想いの言葉

あ…俺は、俺がバカだった…

なんでそんな簡単なコトに気付かなかったんだろう

どっちかだけを選んでほしいなんて、俺自身も思ってもいなかったくせに

レイの為だからって勝手な恋愛を押し付けていた

セリカだって、レイの大親友が他の男だったらまた違ったかもしれないが

レイの大親友は俺じゃないか…セリカは俺だろ

俺はセリカだ、ならそれが1番良いんじゃないか

「2人に…オレの傍にいてほしい」

レイの本気が見れてめっちゃ恐いってのはわかった

その気持ちは俺には重すぎるけど、俺だってレイのコトは大親友として大好きだ

離れたくないよ、離れないよ

「……うん…ゴメン…レイ」

受け入れてほしいとレイの手が俺の頬に触れる

その手に自分の手も重ねて頷く

「セリの事もセリカの事も、オレが守るから」

「うん…お願い、します…」

レイは俺の騎士だったな、命懸けてよ

守ってよ、ずっと一緒にいてよ

俺を殺して自分も死ぬって所まで、俺は知らずに追い詰めていたなんて…大親友失格だな

レイのコト知ってるつもりだったのに、まだまだだった

いつもワガママ聞いてもらって甘やかされてたから…俺の言うコトはなんでも聞いてくれるってバカな考えだった

それはレイが俺のコト大好きだからなんじゃん…その大好きを見誤ったらダメなのにな

レイの気持ち、受け入れられるように頑張るよ

もうレイが俺を殺して自分も死ぬなんてコトないように向き合うから

「すまない、セリ…痛かったかい」

レイは俺の胸に突き刺した氷の矢を抜いてくれる

「…うん、凄く痛かったぞ」

身体の痛みじゃなくて心の痛みが凄くね…

身体の痛みは回復魔法で少しも感じないのに…心が痛すぎて魔法が使えなくなったのかと思うほどだった

「もうしないさ、セリがオレの傍を離れるなんて言わない限り

……魔物達にも申し訳なかった」

ひぇー…気をつけます

喧嘩して出て行った時もまた病みそう

まぁ喧嘩して俺が出て行くコトはよくあるコトなんだけど

とんでもない奴と大親友になっちまったな

まぁいいけど、レイは大親友として好きだから

俺の回復魔法で治してあげてくれとレイは魔物達を見た

もう危険はないとわかった俺は魔物達を治してやると元気に走り回った

ホッとした…遅くなってゴメンな

「無茶したな…魔王の力は使うなって言ったのに」

それだけ本気で死ぬつもりだったんだろうけど

世界中に聖剣の話を広めて猛者をかき集めて俺に仕向けて…恐すぎだろ

もう逆らわないよ…震えるわ

普通ありえない

俺ってなんなんだろ…

魔王の恋人で、人間辞めてる鬼畜の恋人で、世界一イカれてる大親友がいる…

いいよもう、みんな大好きだから!!!

レイは両手で俺の頬を包み込むと、優しく唇を重ねた

その瞬間にレイから魔王の力が離れる

それで一安心のハズなのに、レイはキスしたまま俺をぎゅっと強く抱き締める

ちょっとキスの時間が長い気がするけど…

眠気がやばすぎて俺に自分から離れる力は残っていなかった

一安心すると俺の眠気の限界を超え過ぎてそのまま眠ってしまった

よかった…レイと仲直りできて、ずっと仲直りしたかったから

寂しかったな、ずっと…

でも、レイってたまに何考えてるかわからない時あるな



めっちゃ寝た、とにかく寝た、死ぬほど起きてたから生きるほど寝た

その途中で俺はスゲー面白い夢を見たようで

「…アッハハハハハハ!!!!」

夢の中で爆笑したのが、現実でも大爆笑してて自分の笑い声でハッと目を覚ました

「…えっ!?セリ!?どうしたんだい!?」

隣で寝ていたレイも俺の笑い声で飛び起きる

「……いや…何があんなに面白かったのか、思い出されへん……」

たまにある、寝てて夢の中でめっちゃ面白いコトがあったって感覚はあるのに自分の大爆笑で目が覚めて何が面白かったのかわかんなくて冷静になるコト(実話)

「えぇ……」

外は真っ暗だ、まだ真夜中か

ちゃんと着替えてベッドで寝てるってコトはレイが連れて帰ってくれたんだ

「寝る…眠い、起こして悪かった」

「いつも死んだように眠っているから驚いたよ、おやすみ」

それはそれでまた恐いな

二度寝する



次の日、生きるほど寝た俺は夜に目が覚めた

生活リズムを取り戻したいから後でまた寝て朝に起き直すけど

起きると今日の昼頃に香月が帰っていたらしく俺はそれを聞いてすぐに香月に会いに行った

「おかえり!香月!寂しかったー!」

もう何日振りだろうか、とくに最近は色々ありすぎてぼっちの期間が長かったから

とにかく甘えたくて甘えたくて仕方なかった

だから香月の姿を見たら思わず抱き付く

恋愛に対してはクールじゃなかったのか?って思うが、俺はそん時の気分だ

俺だってたまには甘えたい時もある

毎日レイに甘えてるくせにってのはまた違うのだ!

「何やら大変だったようで」

「うん!でももう解決したから大丈夫」

レイと仲直りしたから和彦もそのうち帰ってくるだろうし、心は晴れ晴れだ

「明日になったら俺はレイと一緒に帰るよ」

香月にぎゅっと抱きしめてもらってナデナデしてもらえて幸せ~

「そうそう、前から気になってたんだけど

魔王の力をたまにレイが使うんだけど、あの力を解くのになんでキスしないといけないの?」

キスで呪いを解くなんておとぎ話じゃあるまいし

俺はずっとそれが不思議だった

そして他の人で試したコトはないが、たぶんそのキスは勇者の俺じゃなきゃダメだろう

それじゃあなんだ?元々は香月の力であって、香月は前世の俺とキスしちゃったから力がなくなったって言うの?

そんな面倒な力なの?ってか、勇者は絶対の敵だからキスする前提ではなかったとか言うのか?

「あの力は私には何ともないものでも、貴方もご存知のように他の者には耐えられた力ではありません」

「俺は使ったコトないからわかんないケド、レイを見ていると相当ヤバイもんだってのはわかるよ」

「勇者には魔を祓う力があります

私の力を使い死の淵に立つ者を救えるのは貴方だけ」

それが何故キスで祓えるのかはわからないが、と香月は言う

「私は貴方にあの力を奪われた事はありません

あの力が私からなくなったのは別の話」

そりゃ魔族の王様からその力を祓ったら魔王じゃなくなると言うか存在事消えてしまいそうだ

今は人間として生きてるみたいだけど、人間になれてなかったら…香月は存在しなかったかもしれない

そうだったら嫌だなって…悲しくなって俺は香月の手を掴んだ

「そっか、まぁレイはあの力が最強すぎてどうしようもない困難にぶつかった時は頼りにしがちだ」

「長生きしないでしょうね」

人間が魔王の力なんて…

レイはダメだとわかっていながらも、俺がいれば大丈夫だって甘えた部分がある

俺がいればその時は大丈夫かもしれない

でも香月が言う通り、俺の助けが及ばない底で危険を潜ませているのだろう

ずっと一緒にいたい、死んでほしくない…レイは俺の大親友なんだから

使わないでほしいのに

だから、俺はレイの負担を減らしたくて自分も強くなりたかった

もう片方の手で聖剣をぎゅっと握り締める

俺の願い通り君は叶えてくれるのに…持ち主の俺自身が強くなったワケじゃないから、やっぱり俺はダメなんだな

「…香月は自分の力がなくなったのは別の話だって言ったけど、それってどういうコト?」

それも前から気になってるひとつ

魔族の王様が、なんで人間に?

しかも魔王の時の記憶を維持しながら、人間でありながら勇者の力は有効…

「運命がずれてしまったと言いたい所ですが、これも運命のひとつと受け入れていますよ

気に入らない事はありますが」

「はぁ~…なんでもかんでも運命だな

運命で全てが決まってるみたいだ」

いや待て、運命の通りに生きてるかって言ったら…

よくよく考えると吹き出してしまう

「アハッ、ないない!待ってよ、だって魔王と勇者が恋人同士なんて運命に逆らってんじゃん、おもしろっ」

これが運命だって言うならさ、俺に勇者の力を与えた天の間違いだろ

なんで魔王を倒しもしない人間をわざわざ選ぶ?

たったひとつの力を…世界を左右する力を…俺に授けたのか

「それもそうですね」

俺の意見に同意はするけど、香月は俺と同じように笑ったりしない

表情は少しも変えずにいる

それでも俺は香月のコトわかってるつもりだし、香月はそうなんだって受け入れるよ

「あっ、あとさ、もうひとつ香月に質問

香月はなんで世界征服するの?

そんなのして楽しい?

俺がヤダって言ったら止めてくれる?」

香月には感情がない、だから世界がほしいとかそういう欲もないと思うんだ

殺したいとか支配したいとか魔族以外の種族が憎いとか目障りとかそういうのもないハズなのに

「それは貴方が勇者だからです」

予想外の答えに俺は固まる

「っ何それ!?俺のせいみたいな言い方!?じゃあ俺は勇者辞める!!」

「勇者の力はなくならない、簡単には辞められないでしょう」

香月といると、たまに不安になる

和彦の浮気が可愛く見えるくらいだ

「…それって魔王だから、勇者だから、こうだって当たり前みたい

俺が勇者じゃなくなったら…香月は俺を好きにならないってコト?

他の人が勇者になったら…その人を好きになる?」

みんなが言う運命ってこういうコトだ

そうじゃなかったら…こうはならないってコト

香月はセリと言う俺を愛してるんじゃなくて、勇者だから…愛してるんじゃないのって思う

だから不安なんだ、こわいよ、そんなの

セリカの不安や疑う気持ちがよくわかる…運命を不信に思う気持ちが

掴んでいた香月の手をソッと離す

香月はその手を追ってくれはしなかった

本当は掴んでほしいのに…そんなコトないって言ってほしかった

「そうかもしれません」

……嘘でもいいから否定しろよ!!勇者じゃなくて俺が好きって…いや、香月じゃ言えないか

「……香月なんて嫌い」

つい思ったコトをそのまま口から零してしまう

バカだな俺、何マイナスに考えてんだ

嫌いって言っても、やっぱり好き

香月のコトならわかるって言ってるくせに

そうだ、香月が勇者を愛してるなら俺は何回生まれ変わっても永遠に勇者になればいい

香月に愛してもらう為にずっと勇者すればいい

いつか運命が俺じゃ勇者に相応しくないってクビにされないコトを祈って

「嘘、嫌いじゃない

めっちゃ好きだから俺は勇者でいるよ」

「私も愛しています」

これが香月だ、俺への愛以外の感情がないって最初からわかってるじゃん

泣いたって仕方ない…仕方ないだろ

俺が抱っこしてと両手を伸ばすと、香月は珍しくそうしてくれなかった

それどころか

「前から気になっているのですが、その聖剣の力を私に見せてくださいませんか」

えっ?この行き場のない両手はどうしたらいいんだ?

えーーー!?今!?今なのそれ!?

「今です」

俺の心読んでるの?

やだよ!?なんでそんなコト言ってくんの!?

愛してますの次はハグだろ?そこからキスでしょ?それから~…

そのつもりで来たよ俺!?珍しく!!

だからお風呂も入ってきたし、お肌のお手入れもいつもより完璧だし、髪だって触り心地抜群に、指先まで気をつけて整えて、唇だってベタつかない程度にリップで保湿もして…って、女子か!!?

だって超甘えたかったもん!!

こんな綺麗な俺を目の前にして抱かないとかどうかしてる!!

レイにも今日は先に寝ててって言ったのに!

いつも俺が乗り気じゃない時にばっか押し切ってくるくせになんで今日に限って…

「ヤダ!また今度にして!」

「私は今、セリと戦いたいのです」

香月はやると言ったらやる奴だ

つまりもう今からは戦うの選択肢以外ない

相手は和彦じゃない、俺がちょっと可愛く甘えてみせたらコロッと意見を変えるようなタイプじゃない

「俺はそんな気分じゃねぇのに…」

戦うくらいなら寝たいわ

レイに慰めてもらいながら寝るの

香月はそんな気分じゃないと呟く俺を軽々と抱き上げる

知ってるよ、お姫様抱っこされたからってそうじゃないってコトくらい

俺が駄々をこねていると思った香月はそのまま外へと連れ出した

周りに何もない広さのある外へと連れて行かれ降ろされる

ほらね、わかってたよ

もういいよ冷めちゃったし

「ここなら周りを気にせず聖剣の力も存分に発揮出来るでしょう」

香月は俺の持つ聖剣へと目をやる

戦う…か……

本当にそんな気持ちじゃないんだ…

香月とイチャつきたかったからとか、そんなんじゃなくて…それもあるけど

レイの次は香月と戦えって?

それが俺は純粋に嫌だった

香月を倒したいワケじゃない、負かしたいワケじゃない、怪我させたいワケじゃない

ただの手合わせなのかもしれないけれど、俺はそれでもこの魔王を殺せる力を香月に向けたくなかった

そんな俺が嫌って思う気持ち、香月にはわからないんだろうな

聖剣がなかったら…香月は俺と戦うなんて言わなかった……

「どうしても戦えって言うなら仕方ない…」

乗り気じゃないけど、本気でかかってくる香月から逃げられるワケはない

覚悟を決めて香月の戦いを受ける

それでも俺は簡単に香月からの攻撃を避け続けられた

勇者の力を持ってしても、今現在は人間なのに、あれだけ強かった香月が聖剣相手だとそれほどではなかった

このままじゃ勝ってしまう

殺しはしないが、勝つコトに意味なんて…

迷いと気の緩みから胸に大きな穴が空く

「…手を抜きましたね」

香月を甘く見すぎてしまった

俺の躊躇いを逃さず香月はその手で俺の胸を貫いた

肋骨を砕き心臓を掴まれる

「ま、待って…それは冗談抜きでさすがの俺でも死ぬ……」

痛みは感じないけど、香月の手が胸の中にある感覚は強くある

「死にたくなければ本気でかかって来なさい」

今にも引き抜かれそうだ、香月は俺が本気で戦わない限りは心臓を掴んで離すつもりはない

「そんなコト…」

したら、香月は死ぬかもしれないのに

俺だけが唯一香月を殺せる力を持ってるのに!

そんな不安もわからないで聖剣の力を見たいが為に……ここまでするなんて

わかってる、俺の不安も気持ちも香月はわかんないんだって…わかってる……

ここに聖剣があるから、俺が聖剣を持っているから……

何もかも…ダメなんだって

「あっ…」

小さく何かが割れる音が聞こえた

ゆっくりと静かにその形にヒビを入れて、自ら壊れていく

手に持っていた聖剣が軽くなったと感じて視線をやると、聖剣の刃は真っ二つに割れて地面に落ちている

「聖剣が…」

壊れた…?無理させすぎた?

「それでは戦えない、意外に脆くて残念です」

壊れた聖剣を見た香月は俺の胸から手を抜いてくれる

すぐに回数魔法で傷を塞ぐけど、全然痛みがなくならない

ずっと…こうだ、ずっと……聖剣と出会ってから最後まで

壊れたのは俺がダメだって認めてしまったから?

心が痛いよ、ずっと

「違うよ…聖剣は最強の武器、脆くなんかない

俺が……やっぱり弱いから」

聖剣は真っ二つになって壊れてしまった

自ら、俺の為にと…

涙で刃を濡らして冷たくなって…

自分を壊してまで俺の為に折れた

やっぱり俺は何も守れない

君のコトだって結局守れなくて、迷惑かけて…君に心配されてこの結末

悩んでいたからだ、聖剣があるからこうなっているのかもって迷ったから

こんなに弱い俺のコトをわかってくれて嬉しいけれど、こんなの全然嬉しくない…

嬉しくないよ、君が壊れなきゃいけないコトなんて


「ただいま…」

部屋に帰るとまだレイは起きていたみたいで灯りがついていた

「どうしたんだい、セリ!?そのボロボロな姿は…」

自分の怪我や傷は治せても服の破れや汚れは綺麗にはできない

折れた聖剣を持って、肌も血と外の汚れで、見ただけで心配させてしまうような姿になっている

「なんでもない、風呂入って寝る」

「なんでもなくないだろう?セリのテンションも低いし、香月さんと喧嘩したのかい?

セリを悲しませるなんて許せない

それにこんなに傷付けて、ちょっと抗議して来るから」

オマエは俺のお父さんか!!

「言うだけ無駄だっての!どうせわかんないんだから!

いいの…最初からわかってたコトだし

それ含めて俺は香月が好きなの」

「本当に…無理してないか?」

無理…?無理してるってなんだ?別に俺は無理してなんか…

わからないからって諦めてるコトが、無理なの?我慢になるのかな

さっきだって大切な聖剣が壊れて凄く悲しかった

慰めてほしかった…

辛い時には優しくしてもらいたいよ

それって俺のワガママ?

「…わかんないな」

優しくされたら泣いちゃうから、優しくしないでほしい

我慢が緩んでしまうから

それでも、上手な言葉なんて望まないから

抱き締めてほしかった、それだけでよかった…

「セリ、話したかったら話したらいい

言いたくないなら聞かない

無理しなくていいぞ」

俯く俺の頭を優しく撫でてくれる

レイの顔を見上げると、ぐっと強く抱き締めてくれた

それがいつも以上に嬉しくて

「レイ…さっきね、聖剣が……」

涙と共に言葉も零れ落ちる

自分の悲しかったコトも辛かったコトも、さっきの全てを聞いてもらった

やっぱりレイは凄く優しい

香月もこんなに優しかったらいいのに…

愛されてるのはわかる…だけど、大切にされているかって聞かれると…

そんなコトはないのかもしれない

わからないから仕方ない…で、いいのかな

不満ばっかりで…なんか上手くいかないな

わかってるコトなのに、頭では



聖剣はとても心強い俺の仲間だった

でもこれがあるコトで大切な人達と喧嘩したり傷付けたり迷惑かけたり、大勢の奴らから狙われ人質を取られ騙され利用されるなら…

一緒にいるのは難しいと感じた

それは聖剣自身もそう思ったようで、寂しいコトでも俺と離れるコトを受け入れてくれる

真っ二つになったからって聖剣は死んだワケじゃない

今の俺じゃ君を手にする資格がないだけで…

君に頼るんじゃなくて、俺自身が強くならなきゃダメだ

その時が来たら…俺はまた聖剣を手にするよ

君が大丈夫だって認めてくれたならその姿も元に戻っているだろう、そんな気がするんだ

俺は聖剣をイングヴェィに預けるコトに決めた

事情を話すと快く引き受けてくれたし、他の誰かは考えられなかった

リジェウェィやユリセリも思い浮かんだけど、イングヴェィが決め手になったのは1番に頭の中に浮かんだからだった

「イングヴェィ、これがさっき話した聖剣だよ」

「大切に預かるね」

あの太陽のように明るい笑顔、俺は直視出来ずに俯いて想像していた

聖剣を手渡すとイングヴェィはしっかりと受け取ってくれる

空いた両手で自分の頬に触れるととても熱い

何故、聖剣を託すのがイングヴェィなのか…

それはイングヴェィがセリカの運命の恋人で俺にまでその影響が強く出てしまっているから

イングヴェィを目の前にすると、和彦や香月と変わらない感情がある

セリカは気付いていないが、これは…完全に恋であるのだ

俺も薄々…いやハッキリわかっていた

これが運命で決められた恋だと言うコトを

確かに、セリカはイングヴェィに出逢った瞬間にこの感情を持った

そんなの普通はありえない…と思う

一目惚れと言う言葉があるからありえないワケではないか

セリカがこの気持ちを疑うのもわかるよ

こんなの何かに勝手に決められたんじゃないかって

そして昨日俺が思ったのと同じように、もしそれが運命(勇者)でなければ貴方(香月)は私(俺)を好きにならないでしょう…と

だからセリカは抗って認めようとしない

俺なんて気を強く持っていないとコロッと心を持って行かれそうだ

イングヴェィは悪い奴じゃないし、セリカのコトをとても大切にしてくれて守ってくれて一途で健気

明るくて元気で…嫌な所なんてひとつもない

好きになって当たり前のような人、何もおかしくない

それでも…この気持ちが本当に自分自身のものなのか…相手も相手自身のものなのか、それがわからなくて恐いんだ

認められない…もし自分自身のものじゃなかったら?それを認めたら自分じゃなくなってしまうんじゃないか…

イングヴェィだって…セリカが運命で決まっていなかったら…セリカを好きにならないんだろ?

香月と一緒で…そんなの……

「セリくん?どうしたの?」

珍しく大人しい俺を心配してイングヴェィは顔を覗き込む

俺は恥ずかしさを誤魔化すように首を横に振る

「な、なんでもないよ…!!」

待て待て待て…たくさん考えたけど、それを言ったら俺だって香月とはじめて会った時にちょっと気になるって言うか…好きって思ってたぞ?

認めないようにしてただけで…それもおかしくないか?

香月の場合は魔王と勇者だから運命じゃない?

和彦みたいに最初から暫くつい最近まで嫌いだったのに、好きになったのと違って…

いや…そもそも香月はセリカの好みの異性そのままの姿だ

中身はあれとしても外見はドンピシャだね

初対面で超タイプ好きはおかしいコトじゃない、当たり前のコトだ

うーん…好きってよくわかんない

いいや、俺は自分に素直に生きる

「大丈夫!」

俺は笑顔でイングヴェィに抱き付いた

これは素直すぎだろ!?

んー、でもイングヴェィってそこにいると甘えたくなるんだよな~雰囲気が…

「心配しないで、セリくんが返してほしい時はいつでも返すからね」

抱き付く俺を明るい笑顔で優しく抱き締め返してくれた

そうだ、俺がイングヴェィに聖剣を託したのは絶対に裏切らないからだ

セリカの永遠の運命の恋人であるイングヴェィは他の誰よりその信頼がある

心変わりするコトも絶対にない

「イングヴェィは優しいな」

いいよな、セリカはイングヴェィでもレイでもどっちと恋人になっても優しくしてもらえるから

「香月くんと和彦くんも優しいでしょ?」

「いやいや、香月は優しさなんて皆無だぞ

和彦は最近は丸くなってたまに優しいけど浮気性だし、2人とも基本は鬼畜だし

イングヴェィやレイとはまた違うんだよ」

イングヴェィは笑顔だけど、なんで好きなの?って不思議な顔をしていた

優しいだけじゃ物足りなくて鬼畜なのが好きって言う特殊なあれの人がいるって知らないんだろうな

俺は決してそういう性癖の人じゃねぇぞ

そう、違うんだけど…そうなのかもしれない…

「セリくんが困った時はいつでも助けてあげるよ

遠慮しないで、いつでも頼ってね」

和彦にも言われたコトがある言葉だけど、イングヴェィに言われるとなんか感動レベルで嬉しいんだけど!?

なんか違うんだよね!?言い方かな!?雰囲気かな!?笑顔かな!?

本当にイングヴェィはセリカの為なら…

「うん…嬉しい…」

レイだってイングヴェィに負けないくらい良い奴だし

セリカは2人に愛されて幸せだな

どっちかなんて決められないくらい

でも、セリカはひとりしか好きにならないよ

どっちを選ぶのか…俺には予想も付かない未来だ

全てはセリカが運命を受け入れるか、抗うかのどっちかだ



-続く-

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