第78話『あの時、私は…』セリカ編

今日はレイとデートだった

そのまま私は帰らずにセリくんの部屋でお泊り、レイは追い出しました

寝る前のお喋り、自分達は紅茶を飲みながら今日のお話

イングヴェィとレイの2人と恋人(仮)となって過ごしたけれど

それはもうやめた

続けなくても、もうわかったから

今の私は2人のどちらも選ばない

「はい」

サッと手をあげる私

「ハイ」

それを指すセリくん

「私は前向きに恋愛するコトを誓います」

拍手、自分に拍手、ダブル拍手

「イングヴェィかレイか…」

「気になる!!」

「もしかしたら全然関係ない3人目かも!?」

「誰や誰や」

あっ、フラグ

これ以上は黙っておこう、適当言って変なフラグを立たせるワケにはいかない

それでなくても大変なんだから

「俺はいつでも覚悟が出来ているから」

「うん、私も」

なんの覚悟?と他人は思うかもしれない

私達にしかわからない覚悟とは

どっちか、もしくはどっちにも恋人が出来た場合なおかつ!!恋人が違った場合!ここ重要

それが全て相手(自分)に感覚ごと伝わるんだ

つまり、レイと私が恋人になったら

セリくんは大親友とキスしたりするってコト、私を通して何もかも感じるのだ

私からしたら、セリくんの好きな人どこの誰かもわからん人に触られるってコトよ

「覚悟って言うか、気にしなーい」

「そうそう、なんもおかしくないし」

アハハと私達はそれが当たり前のように受け入れている

「でも、よかった

セリカが少しずつ明るくなって」

ずっと…自分の負担になってる

私は自分にとって最も醜い部分だから、目を反らしたくなるほどの

それでもいつかの日に受け入れてもらえた

少しずつ…私は救われる、私の為に頑張るの

「無理はしなくていいからな

俺はどんな自分でも受け入れるって決めたんだ

セリカがまた自分が嫌になっても、俺はもう見捨てたりしない

嫌な自分のひとつやふたつあるって

それでも自分のコト大好きだから」

チューってセリくんはいつもみたいにキスしてくれる

自分とキスするなんて変な感じなのに、なんだか落ち着くんだ

自分しか信じられない、自分が1番頼りになるから…

「時間も時間だし、そろそろ風呂入るか」

お風呂広いから2人で入っても大丈夫、いつも一緒、なんでも一緒

「見て見て、この可愛いパンツ

楊蝉の手作りでね~、可愛いだけじゃなくて苦しくない!!最高なの!」

服を脱いで下着になって自慢する

「紐か!?」

ちょうちょ結びで止めている紐をセリくんが引っ張って解く

「しかもそれ、魔除けのマーク入り!

楊蝉が私に不運が訪れないようにって」

「効いてねぇケド!?周りに魔しかいないよね!?セリカの所!!」

「ブラだって、紐さ!」

「へー」

とセリくんはブラの紐も引っ張って解く

ただ引っ張って解きたいだけ、変な気持ちはない

「可愛いから気に入ってるんだ

まさかあの高飛車な楊蝉が裁縫得意なんて思わないでしょ」

「楊蝉もかわいい所あんじゃん

紐パンいいな、俺もこういうのにしよっかな」

「セリくんはもうちょっと危機感を持つべきだと思うの

そんなのまた変態に襲われるよ」

「セリカこそ香月に守られてるからって最近緩み過ぎだぞ!?」

こういうのもいつもと変わらない

自分といる時が楽だ

自分といると、気を張らなくていいもの

「大丈夫だもん」

「あ…そうだな、この世界だとその胸じゃ…」

私の胸を見てセリくんは申し訳なさそうにする

楽な時もあるが……ない時もある

「ガチなやつやめて!この世界が異常なんだよ!?

それに私もちょっとだけ増えたもん!」

「変わってないよ?大きくなったって思い込みだよ、気持ちはわかるケド」

わからんだろ!?

「増えたの!」

セリくんに背を向けて後ろから手を引っ張って当てる

「変わらない、セリカ現実は何も変わってないぞ」

「………。」

「可哀想に…」

やめろそれ

セリくんはそんな私を哀れに思って優しく抱きしめてくれる

可哀想じゃないし!!

私は

「でも、俺はこれくらいが好きだな」

そう、自分にとってはこれくらいで気に入ってる

ないワケじゃないから、この世界の標準がおかしいだけ

とにかく私は、自分といると楽しい

自分にしかわからないコトがある、自分にしか出来ないコトがある

「あは」「ふふ」

自分が笑ってる、それって幸せなコト

だからたまには自分だけの時間も作りたいな

そうして、ふざけながらお風呂に入って寝て朝になりました



お昼です

セリくんはネクストに用があるからと呼ばれて、私はレイと一緒に街へランチに来ていた

だケド…レイはとてもおモテになるから、外に出るとすぐ囲まれる

騎士と勇者がデキてるってのは世界公認じゃないの!?

なのに、この勇者の私を蚊帳の外にしていいんですか!?

何故か、セリくんと一緒の時はお嬢さん方は遠慮して遠くから見つめているだけみたいだが

私と一緒の時は関係ないようだ

どういうコト!?

「今日も勇者様とご一緒ですのに、いつもと雰囲気が違いますね」

「喧嘩でもされたので?」

「倦怠期?」

「いつもは近寄れないくらいラブラブですのにね」

そういうコトか…!アイツら普段バカップル以上にイチャつくもん

……別にいいです、別に私はレイの恋人ってワケじゃないんだから

…でも、レイって

こんなに可愛い女の子達に囲まれても、嬉しそうな顔しない(この街の女の子のレベル高ぇな)

笑顔ではあるけれど、困った感じ

セリくんにいつも女の子には優しくしろって言われてるからだ…

レイにとって…それはしたくないコトだって、セリくん自身もわかっているわ

それでもレイが女の子を無下に扱ったり、助けずに見殺しにするのが嫌なんだ…

レイにとっては、セリくん以外どうでもいいと思っていても

「やっと見つけた…」

「っな!?」

遠くからレイのコトを見ていると後ろから誰かに口を塞がれ、あっという間に裏路地へと連れ込まれる

レイの姿が見えなくなった所で私は壁へと追い詰められドン!されている

「誰!?私に手を出すなんて命知らずな、人を呼びますよ」

その男は顔を隠すコトもなく堂々と当たり前のように振る舞う

背は私と変わらないくらい、長い黒髪を一つに束ねて、年齢は同じくらい、可愛い顔をしているのにナイフのような鋭い雰囲気を持っていた

人間か…、私の力が通じないってコトは

それにしてもいくら男であっても、そんなに屈強でもないのに押さえつけられた腕はピクリとも動かせない

なんて馬鹿力な…

「相変わらず、その可愛げのないツンはやめてほしいんだが

久しぶりだから拗ねて怒ってる?」

知り合いみたいな感じで言われているが…私はコイツを知って……ないわ

全然知らん奴だよ!?ナンパだ、これはただのナンパだわ

「それにしても…可愛いカッコしてるじゃん

よく似合ってる

でも、どうせならここはもう少し大きい方がいい」

そう言って男は遠慮なく私の胸を掴む

ピャー!?

この世界に来てから、なんやかんやで守られてきた私だからこういうコトはなかった

なのに、だから恥ずかしい……

……ん?恥ずかしい?

違うでしょ違うよね!?

恥ずかしいじゃなくて、気持ち悪くて嫌で……

「や、やめて……」

顔が赤くなっているコトは自分でもわかる

どうして…変だ、この人普通じゃない

なんか……ドキドキする……こわい

「会いたかった…」

男の顔が近付いてくる

キ、キスされちゃう~~~……

もうダメだと思った時

「その子に手を出すな」

私がいなくなったコトに気付いたレイが男の手に氷の矢を突き刺した

押さえ付けられていた腕が解放されて私はすぐにレイの傍に駆け寄る

「すまなかったセリカ、すぐに気付いてやれなくて」

「ううん…レイ」

もう大丈夫だとレイは私を抱きしめる

「あれ、もしかしてセリくんの新しい彼氏?あの噂は本当だったんだ」

「だれが新しい彼氏だ!?レイは大親…ゆう……」

えっ…この人、なんて言った?

セリくんの?新しい?…それって……

「関係ないか、セリくん来なよ

また可愛がってやるから」

「ちょっと待って」

「来ないって言うなら、そこの新しい彼氏殺してしまってもいい?」

コイツも過激派…!!??

そんなんばっかしかいないのか私の周りの男達は

「セリカは連れて行かせない、そっちがその気ならこちらも手加減はしない」

ヤバイ、レイも本気で怒ってる

「ちょっと待って!ちょっと待ってよふたりとも!?落ち着いて」

私はヤバさを感じてふたりの間に入って止める

ヤバイのは…このセリくんの知り合いらしい男のほうだ

何がと言ったら、強さ

レイは一瞬で…しかも即死で負ける気がするの…

なんでかはわからないわ…でも、私には何故かそれがわかってしまう

チビで可愛い顔してるくせに、なんとなく香月と同じような雰囲気を感じる

レイはそれに気付いてるかどうかはわからない

普段なら気付くかもしれないケド、今は私に手を出されて怒りで冷静さを失っている

「レイ、貴方じゃあの人に勝てないよ

武器をしまって」

「しかし…」

とにかく武器をしまって、と私はレイの手を抑えつける

「それから、貴方ね

誰だか知らないケド、私は君の捜してるセリくんじゃないの」

「嘘だ?」

「嘘じゃないわ、だって私女の子だもん」

「本当に?」

と言いながら、男は私のスカートをめくり上げた

「うわーーー!?!?」

すぐにスカートを抑える

「……一瞬しか見えなかったからわからないなぁ」

「こ・ろ・す・ぞ、テメェ…」

怒りしかねぇ、コイツ…

レディにこんな無礼を働くなんて

「あんた…何者だ、セリカに触れる事は許さない」

レイは男の手を掴みねじ上げる

でも、男はそんなの簡単に振り払う

「北条和彦…このオレを本気で忘れたなんて言わないだろ?」

「いや、初耳ですけど私は初対面ですね」

和彦…聞いたコトない名前だ

もちろん、セリくんからも

セリくんも過去のコトは話したがらないから…

でも、恋人に殺されたってコトだけは聞いた

もしかして…この和彦はセリくんの元恋人?

レイのコトを新しい彼氏とか言うし

コイツが…セリくんを……殺した

「おいあんた、セリの知り合いみたいだが一体どういう関係なんだ?」

それ聞くのレイ!?聞かなくても察しようよ!

「セリくんの恋人だと言ったら、新しい彼氏の君は嫉妬する?」

やっぱりそうなんだー!?聞きたくなかったわ~

「いや別に」

大親友じゃなくてよかったって安心した顔してる…レイ

「セリくんの新しい彼氏は嫉妬してくれないみたいだ?」

私を見て言うな、彼氏じゃないから

でも、これでわかったわ

私がどうして初対面でこの人にドキドキしたのか

この和彦が…セリくんの好きな人なんだ……

全然私のタイプじゃないのに?なんでよ??

私は香月みたいな黒髪長身の美形が好きなのに…イケメンが好き

あと今更だけど、レイはなんでセリくんの彼氏って言われて否定しないの

よくわからないよ…

「じゃあ…オレが前の世界でセリくんを殺したって言ったら?

さすがに彼氏の君も何か反応する?」

和彦は煽るようにレイを見ると、乗せられてレイは突っかかる

「レイ、ダメよ

よく考えて、和彦がセリくんを殺したからこの世界で会えたのだから怒るコトじゃない」

「わかっているセリカ、でもこいつがもしこれからセリをまた殺すとしたら…」

えっ…そういう展開なの?

「今ここで殺しておかないといけないだろう」

そうだ…和彦はどうしてセリくんを殺したのか理由がわからない

また殺すかもしれない…

「ハハ、彼氏はセリくんの事をとても大切にしてる、よかったじゃん」

和彦の笑顔が急に真っ赤な血で染まる

「でも、独り占めはいけないなぁ」

気付いたら、レイの身体は真っ二つになって

和彦の手にはいつ振ったのかもわからない斧に血がベッタリとついていた

「レ、レイ!?」

何が起きたか理解した私はすぐにレイの身体を回復魔法で治す

「レイ!起きて!!」

「セリカ…?オレは……一体」

よかった…即死じゃなくて

レイは自分に起きたコトが理解できず、どうして自分が倒れてしまったのかと戸惑っている

「レイ、やっぱり貴方じゃ勝てないわ

逃げて……」

私の言葉で自分は負けたんだと理解すると、レイは私の手を掴み和彦から離れる

「次から次へと化物ばかり、一旦引くしかない」

私を抱き上げてレイは和彦から逃げ出す

「…彼氏、足速いなぁ…追いつけないか」

最後に見た和彦の余裕の笑みは今逃げても意味がないと思ってしまう

…レイは私のコトを守ってくれる

でもやっぱり……それで、レイがさっきみたいにやられて最悪死んでしまったら…

イヤだよ


なんとか私達は無事にセレンの神殿まで帰って来るコトが出来た

部屋に戻ってから少しすると異変を感じ取ったセリくんも心配して戻ってきてくれる

「セリカ!?レイ!?めちゃくちゃ嫌な予感がして急いで帰ってきたんだが…」

「セリくん!あのね」

レイは和彦に一瞬で負けたコトにショックを受けて顔を上げれない

それもそうだ…香月にイングヴェィ、自分より強い化物が2人もいて

さらにもう1人増えたなんて…

「……和彦って人に会ったの…」

その名前を口にした時、セリくんの心がざわつくのを感じた

「和彦…に……?どうして、アイツもこの世界に……」

「やっぱり知ってるのね

それで彼は私をセリくんと勘違いして」

セクハラを受けたコト、レイを殺されかけたコト、和彦はセリくんを求めてるコト、全て私は話した

「……セリカ、レイ、ゴメン…」

セリくんは青ざめて身体を震わせている

元恋人のコトを1番知っているのはセリくんだから…

よく分かっているのだろう

その恐怖と…そして、恐怖を感じながらも嬉しいような愛しいような複雑な感情を交えて

「とにかく…俺は和彦と話してくるよ

アイツは俺を捜してるなら、またセリカを勘違いして…レイだって殺されるかもしれない」

イングヴェィよりヤバイ奴だってセリくんは怯えてる

まだ何かされたワケじゃないのに涙まで浮かべて…

「いや行くな、あの男はセリに何をするかわからない

一度は殺されたんだろう?また殺されでもしたら……」

「……わかってる…俺の回復魔法が意味ないくらい即死させられる可能性だって……」

セリくんの…気持ち…強く痛いほど伝わってくる……

だから私は反対できなかった

私はまた和彦になんか会いたくない

だって恐いもん…レイを殺そうとするし、セクハラしてくるし…

レイが来てくれなかったら…私……和彦に……

なんて、複雑な感情なのか

男がダメな私のハズなのに、和彦のコトは嫌じゃないと思っている

それは昨晩セリくんと再確認をした覚悟が表れているようにも思えた

これがお互いの恋人を想う気持ちと受け入れると言うコトなのか……

「でも……それ以上に、会いたいって気持ちもあって……

なんやかんや、俺は和彦のコト好きなんだなって……思ってて、本当にバカだよね……」

泣いてるのに笑ってる…

私にはわからない知らない感情

セリくんは私よりたくさんのものを持っていた

それが必ずしも幸せとは限らないのに

こんなに傷付いて悲しくて苦しいのに…

それでも、今の私と比べると…羨ましくも見えた

自分なのに……あなたは私なのに……

私の知らない自分がいるんだって…

「だから…俺、行くよ

それでレイとセリカのコトも話して手を出さないようにお願いしてくるから」

「それなら、オレも一緒に」

セリくんについて行くと言うレイに私は後ろから抱き着いて引き止めた

「行かないで!レイがいたら和彦を刺激するだけだよ行ったら今度こそ殺されちゃうよ!」

「セ、リ……カ……」

レイを止めてほしいと思っているのはセリくんが、私が止めればレイは留まってくれるってわかってるから

でも…セリくんが言わなくても私はレイを止めたよ

だって、死んでほしくないから…

「………っ、わかったセリをひとりで行かせよう

しかし、生きて返らないとオレも後を追うって事だけ覚えておいてくれ」

「レイ……うん!絶対殺されないよ!レイの為に」

後ろから私が、前からセリくんに抱き着かれてレイは仕方ないなと苦笑しつつも嬉しそうだ

でもねレイ、セリくんが死んだら自分も死ぬって本当に命懸けすぎ!?

スゴイなレイの覚悟は、私だけの為に生きてるみたい……

複雑だけど、愛されてるな……

それに…やっぱりセリくんはスゴイ

レイに愛されれば愛されるほど、その分を全力で返している

なんかもうハート出てるもん

大親友として、レイのコトを素直に受け止めて素直に大好きになって素直に表現する

何度も思うけど、羨ましいよ

「セリカ」

セリくんが先にレイから離れると、レイは私に向き直って少し屈んで私に視線を合わせる

「不安かもしれないがセリが帰るまで一緒にいよう、きっと大丈夫だ」

レイだって心配なのに、私を少しでも安心させる為に優しくしてくれる

「うん…レイ……」

私も、少しでもレイの気持ちに応える為に頑張って笑った

きっと大丈夫だ、セリくんならなんとかしてくれるもん

………たぶん…でも、相手があの和彦だしなぁ……

と、やっぱり心配のほうが大きかった



―続く―2017/09/18

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