第75話『苦しいのも全部含めて』イングヴェィ編
ある日のコト、俺は人間の女の子集団に囲まれる
彼女達はレイくんの大ファンと言ってあの噂を信じ切っているみたい
レイくんの味方で応援している彼女達にとって俺は邪魔な存在みたいだ
「レイ様とセリカ様は前世からの恋人同士なんです!」
「現世でも巡り会って結ばれる運命なんですから邪魔しないでください!!」
あの噂とはこれのコト
前世で騎士のレイくんと聖女のセリカちゃんが恋人同士だったって言う話
彼女達はもちろん、前世の記憶がない人間のレイくんとセリカちゃん本人達だってどうだったのか知らない
実は俺もそこの所、真実は知らないんだよね
前世のセリカちゃんと出逢う前にもこの噂はあった
人からたまたま聞いただけ、2人が恋人同士だってコトはね
でも、セリカちゃん本人からその言葉を聞いたコトはないし
何より、そんな風には見えなかった
俺が自分の良いように見ていたのかもしれないケド、でも…
「この素晴らしい奇跡を人外のイングヴェィさんにはわからないでしょうけれど、とにかく邪魔はしないであげて!!」
レイくんへの愛と幸せを思う気持ちの強い女の子達から言われてタジタジだよ、もう
俺から見れば邪魔なのはレイくんのほうなんだケドな
噂の真実は誰も知らないのに、それが素敵だと思う人達がいるなら
そうなるコトがハッピーエンドなのかもしれない
言われっぱなしで彼女達の気が晴れるまで俺は黙って聞いているだけ
そのうち言い切った彼女達は俺の前から消えていった
「珍しい、イングヴェィが黙って聞いているなんて」
陰で聞いていたカトルが面白いと出て来る
いつも通り甘いお菓子の香りをさせて
「自分でもそう思うよ、レイくんがセリカちゃんの恋人だったなんてただの噂でもイヤだもん」
「それ、僕も気になる
イングヴェィは前世のセリカさんをあの世界から連れ去ったけれど
無理矢理自分の恋人にしたの?」
「わからない…
無意識に自分の能力でセリカちゃんの心を変えてしまったのか…
だから、さっきの女の子達に何も言えなかったんだよ」
真実は知らないから…
でも、例えセリカちゃんがレイくんを好きだったとしても俺が無意識にその心を変えたとしたなら、そのコトに後悔しないし
俺だけしかセリカちゃんを幸せに出来ないから間違ってないよ
「僕も前世の2人の事は知らない
今のレイを見ていたら、本当にセリカさんを大切にしているし深く愛している
前世から結ばれていてもおかしくないくらいに」
「なーにカトル?レイくんの味方をするの?」
「まさか、恐くて出来ない」
「…でも…カトルの言うコトは可能性としてはあるよね
レイくんはセリくんとも前世の前世で関わりがあるから
その時は人間じゃなくてエルフだったんだけれど、香月くんに殺されて世界を追い出されている
その後に人間になってセリカちゃんの世界に生まれたの」
「詳しい」
「お喋りのキルラから聞いたんだよ
ライバルの情報は詳しく知っておかなきゃね!」
聞けば聞くほど手強いライバルだよ
セリカちゃんは俺の運命の人…
だけど、もしかしたらひとつしかないと思っていた運命がふたつあるとしたら……
そんなコトありえないと思いたいケド、運命に甘えて余裕をこいてもいられなくなるね
セリカちゃんは俺の運命そのもの
彼女から愛されなかったら…死んでしまう
死ぬほど大好きだから、愛しているから……
「早くレイくんを殺さなきゃ!!」
「こわいこわい」
「今はダメ、殺したらセリくんに嫌われる
そしたらセリカちゃんに愛してもらえない
だから、殺す前に俺の能力を取り戻さなきゃね
そしたらレイくんを殺してもセリくんに嫌われないように出来るから」
「本当恐い」
想像したコトが現実に起きる能力、心だって思い通りに出来るんだよ
卑怯もなんもない!!
俺は絶対にセリカちゃんがほしいの!!
「ならレイの心を変える」
「それは無理だよ、レイくんがセリカちゃんを好きじゃないなんて想像出来ないもん」
ずっと考えてる
俺の能力はどうして失ってしまっているのか…
別々の世界に存在していた俺と君
セリカちゃんを俺の世界に連れ去ってしまったから、君は消えてしまった
気付いた時はもう遅くて、死ぬほど悲しくて苦しくて辛くて…
だから、俺は自分の能力で自分の世界を消してしまった
死んでしまった世界…
そして、この世界に受け入れられた時に俺は記憶とともに能力も失っていた
世界が変わったから能力が使えなくなったとは考えられない
ユリセリさんは変わらず使えているのだから…
記憶はセリカちゃんと再会した時に取り戻した…
あれ…つまり、もしかして…?
セリカちゃんがいなくなったから記憶も能力もなくなった
セリカちゃんに再会すると記憶を取り戻せた
それなら、俺のなくなった能力もセリカちゃんが関係している可能性は高いかもしれないってコト…?
「……気付いちゃったかも…」
「イングヴェィの能力は恐ろしい
正直、今のままでいてほしい」
カトルは、ユリセリさんもだケド俺の能力は世界も殺せるものだって身を持って知っている
能力を取り戻すコトを阻止はしなくても恐れているのは伝わるよ
しかもそれを左右するのはセリカちゃんの存在なんだから…
「俺は…世界がどうなったって…そこに存在する無数の他人はどうでもいい……
セリカちゃんがいない世界でなんて生きていたくない
俺は死ねないから、世界を消すしかないの
セリカちゃんに愛されなかったら…死んじゃうよ」
カトルにはみんなには悪いケド、仕方ないんだ……
それじゃさっそく
「…いってらっしゃい」
カトルに見送られて俺はセリカちゃんのところへ向かうコトにした
自分の能力を取り戻すコトは今よりももっと強くなるコトでもある
強くないと、セリカちゃんを守れないからね…
そうして、セリカちゃんのいる香月くんの城へと向かっている途中
噂をすればという言葉があるように偶然レイくんを見つけた
ペガサスに乗った俺は上空から地を歩いているレイくんを見下ろす
セリくんは今は一緒にいないみたいだ、チャンスだね
「レイくん…強いんだよね~、人間のくせに」
そう言いながら不意打ちでレイくんに攻撃を仕掛ける
でも、やっぱり気付いていたみたいですぐに反応して矢を放たれる
「わっヤバッ…!」
無数の氷の矢が俺を目掛けて突き刺さるハズだったが、俺を庇ってペガサスが全て受ける
死にはしなくても大怪我を負ったペガサスは飛ぶコトも出来ず地へと落ちる
ペガサスが避けれない矢を放つ人なんてそういない
たった1回の攻撃でペガサスを撃ち落とすレイくんの弓の腕には思っていたより驚かされた
「いたた…よくもやったね」
「先に手を出したのはそっちでは」
すぐに体制を整えて離れた距離からまたブーメランでレイくんに攻撃を仕掛ける
でも、レイくんは俺の攻撃なんてあっさり避けて氷の矢を返してくるんだ
強いね、避けてるつもりなのに全部当たっちゃうよ
遠距離はダメだ、遠距離でレイくんに勝てるなんて今の俺には絶対に無理なコト
間合いを詰めて途中で返ってきたブーメランを手にして踏み込む
弓が不利なくらい近付くとレイくんはすぐに短剣に切り替えて俺の刃を避けて首へと短剣を刺し込む
「これでも死なないか、化け物だな」
俺がレイくんを殺しにいくなら、レイくんだって俺を殺しにきてるんだ…
溢れるほどの血を首から流して俺は地に膝をついた
普通なら死んでるほどの致命傷は不老不死の俺は誰もわからない痛みに襲われているだけで死なない
勝てない…殺せない…
そしたら…セリカちゃんを奪われてしまうのに……
「……いま…だけ……そ…」のうち殺す
かすれる声と一緒に笑う
そのタイミングで
「イングヴェィ……!」
セリくんの声がして駆け寄って来る
いつも一緒にいるから近くにいて当たり前か
「またレイに酷いコトしたのか!?」
レイくんの前に庇うように入って、セリくんは俺とペガサスの怪我を回復魔法で治してくれる
「俺のほうが死ぬほどの怪我を負わされたのに」
「どうせイングヴェィから仕掛けたんだろ、レイからイングヴェィに攻撃なんてしない」
「…信頼してるんだね」
「レイのコトはよく知ってるんだ
レイはそんなコトする奴じゃねぇの」
その信頼はどこから来てるのかな…
やっぱり…前世から…?
セリカちゃんがそうだから…?
怒るセリくんを見ると心が苦しくなる
こんなのなかったのに…セリカちゃんを好きになってから
「セリくんには…わからないよ
君は愛される側だもん」
こんなに苦しくなったり辛くなったり、不安になったり心配になったり
こんなの…こんな感情…今までなかったのに…
好きになったから……
「…じゃあやめるか?」
「えっ?」
「イヤなら好きなのやめたらいいだろ、そういうのが面倒だって思うならさっさとやめろよ
わざわざ苦しむコトを選ぶ必要ないだろドMかよ」
「……………。」
……言ってる意味はわかる
苦しいのに辛いのに、どうしてそれにしがみつくのか
………あぁ、バカだな俺…それでも
「何言ってるのセリくん!?
やめるなんて絶対ありえないよ!!
苦しくても辛くても、それでも俺はセリカちゃんのコト大好き!
愛してるからそんな感情もあるの!
これだってちゃんと大切で必要なものだよ!
もう失うコトはしたくないの
俺ね、わかったよ
セリカちゃんのコトとっても大好きだからこんな気持ちもあるんだって
気付いたら、この苦しみも辛さも最高の感情だよね!
ホント、俺って恋してる!!」
「乙女か、ポジティブこわいわ」
そうだよ!そうなんだよね!!これが恋なんだよ…
なんて素敵なんだろう
大好きだから苦しい辛いの、でもイヤなコトじゃないんだよ
それに俺はもうひとつ気付いたんだ
セリくんは「やめろ」って言った時、少し寂しそうな顔をして
俺が「やめない」って言った時、嬉しそうに笑ったから
それがなんだか、とっても可愛くて…俺の不安を消し去ってくれた
「あ~、可愛い可愛い、セリカちゃんに今すぐキスしたいな」
「………イングヴェィと付き合うと毎日ベタベタとウザそう…」
あっ引いてる
でも、いいもん
俺が好きだから全力で君へこの恋を愛情表現するね
「それじゃ、俺は行かなきゃ
こんな所で遊んでるヒマないもん」
「貴方からちょっかい出して来たんですが…」
呆れるレイくんとセリくんにバイバイと手を振る
……レイくん、セリカちゃんの前世で恋人だと噂されている騎士…
今のレイくんに聞いても覚えていない知らないコト
それでもその噂は君に変な自信と期待を持たせている
セリカちゃんの恋人は俺だけなのに…
レイくんを殺した所で…噂が本当なら……
「……俺ね」
バイバイしていた手を止めて下ろす
「これからセリカちゃんに会いに行くよ、レイくんも一緒に来る?」
「は…?」
この人、殺したいくらい嫌い…
これから俺がセリカちゃんに会いに行くのは俺の能力のコトを確かめたいから
だけど…俺はレイくんとセリカちゃんのコトも知りたいの……
嫉妬しちゃう、モヤモヤしちゃう…
絶対イヤなコトなのに…!
でも、いつまでも噂に振り回されて気にしたくないんだ
ハッキリさせて、真実じゃないならホッとして
真実なら…奪えばいいんだから……
「イングヴェィさんがそんな事を言うなんて…」
「どうしたイングヴェィ!?お腹でも痛いのか!?」
「拾い食いなんかしてないよ!?」
「オマエ、誰だ!?」
「イングヴェィだけど!?」
俺が絶対言わないようなコトを言ってる
レイくんは言葉を失い、セリくんは錯乱してしまった
「落ち着いてセリくん!」
「偽者か…イングヴェィに化けるなんて何が目的だ!」
「目的…それは知りたい、からかな
セリくんも一緒に行くよね」
錯乱していたセリくんは俺の誘いにピタリと動きを止める
「え…行かない……」
「どうして?久しぶりに自分に会えるのに」
「セリカには会いたいケド…だって」
悩ませてしまったみたいだ
セリくんにはセリくんの事情がある
俺はセリカちゃんのコトならなんでもわかる
だからセリくんのコトだってわかるけれど、セリくんだけのコトはわからないんだ
「か…香月に……会っちゃうかもだし……なんか、気まずいし……こわいし……」
「声が小さくてよく聞こえないんだケド?」
「聞こえなくていいんだよ!?この無神経野郎!!」
あーあ、顔が真っ赤になるほど怒らせちゃった
そんなに俺は悪いコト言ったかな
「それに香月くんも会いたいと思ってるよ、絶対」
「ッ死ね!!!」
ガーン!どうして!?セリくんの耳が真っ赤になるまで怒らせちゃってるの俺!?
「イングヴェィさんって天然と言うか鈍感と言うか、それともわざとかい?」
どうして!?だって香月くんはセリくんのコト好きだよ
会いたいに決まってるし、セリくんだって嫌いじゃないでしょ?
「もう…いいから、2人で行ってこいよ」
「しかし、セリ」
レイくんはセリくんをひとりにするコトをとても心配している
確かに、俺もセリくんをひとりには出来ない
すぐトラブルに巻き込まれてしまうから
「何かあったって……レイもイングヴェィも俺のコト守ってくれないじゃん……だから、ヤなんだもん……」
「大丈夫、大丈夫」
アハハと笑顔
「何が大丈夫なんだよ!?オマエに何がわかんの!?」
「問題ないセリ、今セリをひとりにする事のほうが大問題なんだ
色々と危険だろう」
「レイがセリカに会いたい一心で俺のコト簡単に売ろうとしてる!?ショックだよ!!」
行かないと駄々をこねるセリくんを抱き上げて強制的に連れて行く
最後の最後まで暴れていた気がするケド…
そんなこんなで久しぶりにやってきた魔王城
「いつ見ても魔王城に相応しくないな、ここは」
レイくんの言う通り、不気味、怪しい、恐い、そんなイメージのある魔王城
だけど、香月くんのいるここは違う
ひとつの美術作品のように神秘的で幻想的な美しい城
美意識が高くその魔族が建てた城ならではのセンスがある
観光客が来てもおかしくないくらいに、現実は恐くて誰も近寄らない
「イングヴェィの所も綺麗なお城じゃん、神秘的で幻想的、俺好きだよ
こことはまた違った感じでさ」
「褒めてくれてありがとう、セリくん」
「それより早くセリカの所に行こう
見つかったら面倒……ハッ!?」
セリカちゃんの所へと向かおうとした時、セリくんだけ引き止められる
あっ見つかって捕まちゃった、香月くんに
「か、香月!?」
「私の城に忍び込むとは、死にたいのですか」
青ざめたセリくんの腕を掴みながら香月くんは俺とレイくんに冷たい視線を向ける
「まさか?殺されたくないよ
だから香月くん、セリくんのコトをヨロシクね」
「ひ、卑怯だぞイングヴェィ!手土産持ってきましたみたいな感じで俺を差し出すのか!?」
「朝になったら迎えに行くから」
ハハハとレイくん
「朝…まで……っ裏切りやがったなあああ!!!!」
大丈夫大丈夫とセリくんを宥めてから後ろを振り返らないようにした
「やだ、待って…レイ、イングヴェィ…!
あっキルラ!」
たまたま通りすがりのキルラに助けを求めたみたいだけれど
「あれ、セリ様じゃ~ん
ここにいるなんて珍しっすね、ずっといればいいのに、アハハハハハ」
珍しく気を遣ったみたいで去っていった
「みんなヒドイ…」
……頑張って、セリくん!!
俺とレイくんが一緒に行ったら、君はどんな顔をするだろう、きっと驚くかな
でも、そんなコトより俺は君に会えるコトが1番嬉しいんだ
「セリくんが近くにいるから、レイが一緒なんだろうとは思っていたけれど
まさかイングヴェィもだなんて珍しい組み合わせね、仲良くなったの?」
思った通り、君は少しだけ驚いて俺達を部屋の中へ入れてくれる
「レイくんとは永遠に仲良くなれないと思うよ」
「目的が同じだから共闘する事はあっても、仲良くなる事はないな」
音楽の天才同士、認め合える部分もあったりする
それでも、レイくんがセリカちゃんを好きである限り仲良くなんてなれないよ
「ふーん、それじゃあ今日はふたりで何しに来たのかしら
セリくんを犠牲にして」
……えっ、もしかしてちょっと怒ってる?
おかしいな、セリくんも嫌じゃないと思ったんだケド
「セリは素直じゃない所もある、香月さんの事は嫌じゃないはずだ」
「……レイ、そう、よくわかってるね」
セリカちゃんがレイくんの理解に少し微笑む
ガーン!なんか出遅れた感じ…まだ、負けてないもん!!
「確かに嫌じゃない…でも、色々と複雑なの
まだ決めてないんだもん……」
小さな溜息、それはセリカちゃんとしてじゃなくセリくんとしてだった
レイくんはセリくんのコトをよく知っている
言わなくても、話さなくても、気付いてる
「まっ、セリくんの話はいいわ
ここにふたりで何しに来たのか、聞かなくてもわかるけれど」
セリカちゃんは俺とレイくんに温かいハーブティーを出してくれる
「どうせ、どっちが好きか選んでって話でしょ?」
「えっどうしてわかるの!?」
「イングヴェィは私のコト以外ないのに…そんなに驚くの?」
うぅ…それは…俺はセリカちゃんのコトしか頭にない
それに、急ぎすぎたコトに後悔してる
今聞いたってセリカちゃんを困らせるだけ
負けないと俺もレイくんも勢いで来ちゃって、セリカちゃんを目の前にすると
まだその時じゃないって言葉が出ない
「セリカ…」
「……私、よくわからないの
イングヴェィのコトもレイのコトも嫌いじゃないのに
なんでも警戒してしまう、なんでも疑ってしまう、なんでも悪い方に考えてしまう
だって私は貴方達じゃないもの
わからないって恐いコト
今は良くても未来は…変わってしまうかもしれない
それに……」
その後は言葉にしなかった
君にとっては口にしたくないコト…
「とにかく、私はこんなに全然可愛くないの
君達の好きが意味不明過ぎてわからないよ
綺麗な人ならいくらでもいるでしょ
私と違って性格の良い人達だって…たくさん」
だんだんと冷めていくハーブティーの水面に視線を落とす
俺は君のその曇った表情を晴らしたいだけなんだ
「好きなんて、きっとみんな意味不明だよ
他人の好きに対して、考えると俺も意味不明だなってわからない
そんなもんだよ、意味不明過ぎていいんだよセリカちゃん
いつかその意味がわかる日が、君にも来るから」
「意味不明だから、他の人じゃ駄目なんだ
オレもイングヴェィさんも誰でもいいわけじゃない
セリカだからこそ、不明じゃない意味がある
セリカには俺達がただ意味のわからないだけの男に見えるのかい?」
俺達の言葉を聞いてセリカちゃんは手に持っていたカップをテーブルに置いて、優しく微笑む
「……ふふ、いつもね
いつも私が何か言うと一生懸命に返してくれるのね」
セリカちゃんの微笑みに俺とレイくんも釣られる
「わかったわ…
そんなに言うなら、今日から私はふたりの恋人になるよ」
「うんうん、セリカちゃんが言うなら…えっ?」「セリカがそう言う……んっ?」
「「なんて!?!?!?」」
聞き間違えか、幻聴か、それとも夢か、俺とレイくんはお互いの顔を見合わせて耳を疑う
「(仮)よ」
「えぇっ?セリカちゃん、さっきの聞こえてたケド聞き間違えかもしれなくて…」
「セリカが恋人どうのって…言ったのかい?」
「そう、恋人(仮)
そんなに言うなら、私とお試しでお付き合いしてみる?ふふ」
セリカちゃんと恋人……ついに……
嬉しい
(仮)は余計だけど、レイくんが邪魔だけど…でもこれは
「それで私に幻滅するかもしれないわね
恋は盲目、手が届かないから幻想、理想ばかりが心を覆い尽くして」
「賛成!!」
「イングヴェィ…反対すると思ったのに、嫉妬深く独占欲の強い貴方が」
「だって、(仮)でしょ?
それにこれでレイくんと勝負がつくかもしれないなら大賛成だよ」
「オレも賛成だ
イングヴェィさんと同じ位置からはじめられるなら負けはない」
「レイまで…半分冗談だったのに」
(仮)とは言ってもセリカちゃんと恋人って決まった俺達は浮かれるしかなかった
「明日から楽しみだね、セリカちゃん」
セリカちゃんの手を掴み引っ張る
君は困ったなでも仕方ないと苦笑する
それから、やっぱり俺の思った通り
君は俺の力を持っている
今まで意識してなかったから気付けなかったけれど、微かにそれを感じる
セリカちゃんは人間だからその力を使うコトはできなくても
でも、安心したよ
君が俺の力を持っていてくれてるコトに
どうしてそうなってしまったのかわからない
いつか、その力が俺の所へ返ってきたなら
今までよりもっと君を完璧に守るコトが出来るね
間違いなく俺の運命の人だよ、君は
―続く―2017/08/15
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