第62話『今年も忙しくなりそうだな、まっみんなヨロシク!』セリ編

あけまして、おめでとうございます!

って、最初のうちは俺も

どもども!ヨロシクね~ニッコリって笑ってましたよ

だって新年明けてめでたいんだもん

自然とよくわからんテンションが上がんだろ

でもさー、そろそろそれも飽きてきたってコトなんだよ!?

朝からもう何時間挨拶してんの!?

いつの間にか、勇者専用の謁見の間とか作られちゃってんの

そこにある立派な椅子に座らされてさ

前から思ってたケド勇者ってだけでそんなに身分高いのか

みんな、俺とセリカのコトを様付けで呼ぶし

別に違和感ないからいいケド

とにかくこんな新年、生まれて初めてだから!

勇者の俺に国内はもちろん、はるばる国外からいらっしゃってくれた方々が面会に来るんだ

いや、その気持ちは嬉しいケド

正直疲れてきてるから、もう帰ってくださいってみんなの気持ちを軽視しちゃってるんだわ

悪ぃな

しかも、俺はとりあえずローズとロックとセレンとネクスト辺りを中心に挨拶すればいいと思ってたから

レイに正月は買い物行こうぜ!って約束したんだもう

「勇者様、今年も宜しくお願いします」

これで何回目だろうか、俺の笑顔が引き攣って来てる

「今年こそ魔王を倒してください!」

「世界に平和を!」

なんかもう勇者相手にお祈りするレベルの人までいるんだケド…

知らねーよ

魔王を倒すか倒さないかは俺の気分

気が乗らなかったらやらないし

今はそんな気にならない…

「セリ様」

一瞬、人が途切れたのを見たセレンが目の前に立つ

「やった、もう終わりか?」

「いえいえ違いますわ

まだまだ行列は続いておりますもの」

ちっ

「ひとつ申し上げたくて

皆様がおっしゃっているように、日に日に人間達は不安を大きく膨らませ抱えておりますわ」

「金でもやっとけば」

「そうではありませんの!

セリ様は魔王を倒すのが使命なのですわ」

聞いてない上の空

早くレイと出掛けたいな~

「それなのに、倒す気がないように見えますの」

そうだね

「それどころか!魔王に惹かれているセリ様のお姿さえありまして!」

「ん…はぁ!?それはねぇよ!なんであんな無感情で気難しい奴!

好きになったらしんどいだけだろ!?」

べ、別に…嫌いじゃあねぇケド…嫌いじゃないだけで、好きとかじゃ…ないし……

気になってなんか…いないし…たぶん……わかんない

なんか身体が熱い、焦ってるのか俺は

「最愛の人が敵ポジションで様々な感情が渦巻くシチュエーションは私共にはおいしいお話ですが!!」

「正月早々それかよ!!?」

「セリ様にはレイ様と言う恋人がいらっしゃるのに、その間で揺れ動く心境なども」

………俺、なんでここにいるんだろ

別にセレンの所じゃなくても、他の神の下でもいいんじゃねぇか

「しかし!魔王とセリ様の××××話は妄想の中だけでよろしいのです!!」

なに!?××××って!?聞こえなかったんだケド!?

あまりにおぞましいコトだから脳が自動で掻き消してくれたのか!?おっしゃナイス!!

「よろしいですかセリ様、何度も申し上げますが貴方様は魔王を倒す力を持つ唯一の勇者様ですのよ」

その後、ガチでセレンに1時間くらい説教されて本気でヘコみました

そんな言うコトないだろ……

なんか釘刺された気分だ


それから数時間後

セレンの説教と人々からの挨拶が終わり解放される

挨拶に来るのは人間ばかりじゃなくて、なんで俺のコト知ってんの?って思っちゃうくらい色んな種族が俺に新年の挨拶に来たんだ

本当言うと、挨拶はおまけで魔王を早く倒せと言うお願いばかり

そんなにみんな魔王を恐れているのか…無視出来ないくらいに

「お疲れセリ」

部屋に帰るとレイは約束通り出かける準備をして待っていてくれた

「ただい…あっ!レイ着物だ~!カッコイイ!!」

男物の着物いいな!カッコイイ!

レイは西洋人な見た目なのに、とっても似合っていた

つまりイケメンは何やってもイケメンのパティーンで、イケメンは何着てもカッコイイってやつか

「さっきメイド達が着付けてくれたんだ

セリも帰ったらと言っていたぞ

着物なんて始めて見たよ」

俺も意外だよ

まさかこの世界に着物があるなんて思わなかった

西洋世界強かったし

「ほら、そこに置いてあるだろう

セリの好きな色の赤い綺麗な着物が」

そう言われてレイの指差すほうに近寄り手に取ると、女物の着物だった

わかってた…知ってた

今までの流れからして期待を裏切らねぇなここの奴らは

「これじゃないの!セリカなら超可愛いだろうケド、俺はレイみたいなカッコイイ着物がいい!」

「んー、セリにはカッコイイは似合わないな」

ハッキリ言うな!?

「あからさまな可愛いもバランスが偏るから、いつもみたいなカッコ可愛いファッションが似合うと思うぞ」

この着物はどう見ても可愛さに特化したもんだろが

可愛いと言うか綺麗が正解だケド

レイはいつものように爽やかに笑う

俺はそんなレイにふんっ!として背を向けた

「もういい!着替えないでこのまま行く!」


街に出ると寒いし正月だと言うのに、結構人の通りは多い

レイははぐれるからと俺の手を掴んで防止する

さらにレイは俺の機嫌が悪いコトに気付いて聞いてきたから、そのままさっきのセレンのコトやみんなの新年の挨拶について話す

「セレンの奴、俺で遊びすぎなんだよ

今度はレイだけじゃなくて、俺は魔王まで好きって話になんの

ふざけんな!みたいな」

「ハハハ」

いや笑い事じゃねーし!

レイもいつもいつもちゃんと違うって否定しないからセレンが調子に乗るんだろ!!

「それでな、みんなもみんな早く俺に魔王を倒せって言うんだ

誰も魔王を倒せないから、その力がある俺にすがるしかないんだって…わかるよ

でも、俺は香月を倒す気はないし

俺は…他人のコトなんて知ったこっちゃねぇもん………

自分がイヤだからやらないだけだもん…」

どうでもいいコトで暇だったら、やってやってもいい…

香月は俺にとってどうでもいいコトじゃないから…イヤなんだ

どうでもよくないって…もちろん!セリカがお世話になってるからって意味ですよ!!?

「それはセリの好きなようにするといい」

「………レイは俺のコトどうでもいいから勝手にしろって言うのか?」

ちょっとムッとする

「いやいや、そういう意味での好きにしろじゃないよ

オレはセリの傍から離れないから、セリが何処に行こうとも着いて行くよと言う意味だ」

「レイ………」

嬉しい…素直に嬉しいって想いが込み上げてくる強く高く

「嬉しい!レイ大好き!!」

嬉しくてたまらなくて、おもわずレイに抱きつくと

レイはうんうんと俺を撫でてくれる

やっぱりレイは俺の大親友で絶対裏切ったりしないの!大好きや!

「まあまあ今年も仲良しねぇ」

「本当に微笑ましいわ~」

周りの人達から笑われてるコトに気付いたら

「いいでしょ」

とちょっと自慢っぽく笑う

俺の自慢の大親友なんだから

「いや普通にきもいっしょ」

そんな中で突出してバカデカイ声が俺の良い気分をぶち壊す

あんだって?殺すぞ

その方を振り向くと、絶対ここにいちゃいけない奴らがいる

キルラとラナじゃん

「いいね、魔王退治の前に四天王から倒すってのは」

「げっセリ様、待って待って!?」

タンマタンマと両手(翼?)を押し出すキルラを短銃で殴る

「ぐあー!?」

痛みのあまりその場でのたうち回ってる

いい眺めだ

「ばかぁああ!!セリ様怒らせたらそうなるってわかんないの!?」

あっ…

キルラには大ダメージを与えられたみたいだが、勇者の力には少しも耐えられなかった短銃は粉々に砕け散る

この街の武器屋で1番高い短銃だったのに、全然ダメだな

やっぱり魔族と戦うには勇者の力に耐えられるほどの伝説レベルの武器じゃないとダメなのか

勉強になったわ、ありがとなキルラ

「酷すぎでしょセリ様!?」

たんこぶ程度で済んだキルラは殴られた額を抑えて立ち上がる

「普通に考えてですよ!?

カップルならまだしも、カップルでもくそうぜーけど

友達でそのイチャつきぶりは気持ち悪いでしょ!?」

「………確かに」

「今まであんなイチャついててキルラのひとことですぐ納得するの!?」

ラナのツッコミが早すぎる

「まっやめないケドな

いいの、レイと俺の友情のあり方だから」

カップルか…

俺、付き合ったらこんな感じじゃないしベタベタしないもんな

「そんなコトより、なんで魔族のオマエらがここにいるんだよ」

周りの人達はキルラとラナを見ても完成度の高いコスプレとか平和ボケしてやがるし

腐っても女神の国だ

簡単に魔族が入って来ないと言う先入観みたいなのもあるのだろう

しかし、決定打はロックとネクスト達がアニメやゲームのコスプレを流行らせたコトだ

ヴァンパイアや大魔王や獣人やらの人外が人気で

天使の間では悪魔のコスプレが流行っていると言うイカれ具合

「下見っすよ下見

近々、この国を征服…」

「だから何で素直に言うのかな君はいつもいつもいつもおおおおーーー!!!!」

口の軽いキルラにラナの大声が被る

「ふーん、勇者の俺がいるのに?

やめとけよ

香月が人間のうちはキルラ達は勝てないし

魔王の力はこっちが持ってるんだ」

「セリ様さ~、それな!まじそれな!それなんですわ!

しかし!セリ様はわかってないだけなんすよ

人間だからって香月様は大人しくしている方じゃねぇんすわ」

「じゃあ…俺と戦うってコトなのか香月」

………なんで

俺は戦う気なんかないし、香月だってそうじゃないのか…違うのか

「セリ様とは戦いませんよ!無理無理無理

まっそういう事なんで、そん時が来たらよろしく!」

キルラは言うだけ言って、もう下見は終わっていたのかそのまま空へと飛んだ

「じゃっセリ様!」

ラナもキルラを追い掛けて姿を消した

「あいつら…簡単に魔族に入られるとは、女神セレンに話して危機感を持たせよう」

「うん…」

レイの言葉を聞きながらも、俺は砕け散った地に落ちた短銃を眺める

戦う気はないと思っていても、いつかその時がもし来るなら…

勇者の剣か…勇者の力に耐えられる武器は必ず必要になるのか

いや、キルラは俺とは戦わないって言ってた

俺のいるこの場所に攻めて来るのに、俺と戦わないなんてありえない

「セリ…」

心配するレイの声を受け止めようとした時、それがポロッと落ちて別の方へと向く

「あっ福袋だ!この世界にもあるんだそんなの!へ~面白そう!」

少し遠くにあるお店の前に駆け寄って近くで見る

「ハハハ…セリって奴は」

ここってセリカが好きな可愛い服が多くて結構人気ある店じゃん

おっしゃ!セリカの為にひとつ買ってやるか

「いらっしゃいませ、セリ様レイ様」

店員のお姉さんに声をかけられて

「いや!これは俺が着るんじゃないから!セリカが好きな福袋だから!」

勘違いしないように強く念を押す

「はい♪セリ様ならどのようなお洋服もお似合いになりますよ」

……本当にわかってんのかこの女…

「福袋って、中身がわからないのかい?」

「そうだよ」

「服だとサイズが合わなかったりするんじゃないか」

「いつもは試着しなきゃ買わないケド、福袋は別!何が入ってるかわからないから楽しいんじゃん

それにここのお洋服ならハズレなんて少ないだろうし

合わないやつは誰かにあげりゃいんだよ」

「なるほど」

さてと、なになに…5万円の福袋と8万円の福袋…

「高いな」

福袋にテンション上がってたが値段見て冷静になる

「オレがプレゼントしようか?」

「いいや!セリカの為なら俺は金出すぜ!

いつもレイに色んなもの買ってもらってるからいいよ」

8万の福袋で15万相当の中身か…

セリカの為だ、高いほうを買うぞ!

「ありがとうございました~♪」

買っちゃった…

高い買い物して、ちょっとイヤやってなってるケド

なんやかんや言って嬉しい

「楽しみ~♪」

「よかったな」

「うん、帰ったらセリカに送る前に中身見てサイズが大きいとか好みの色じゃないものは天使達に倍の値段で売りつけるわ」

そうして好きなブランドの福袋が買えてその後は機嫌良くレイと買い物を楽しんだのだった


そして夜、部屋に帰るとさっそく福袋の開封を行うのだ!

「何が入ってるかな~」

ワクワクしながらソファに座り福袋を開ける

隣にいるレイも楽しそうにしている俺を見て笑顔だ

「まず最初!ジャーン!ジャンパースカートだ!かわ………」いくねぇ…

あれ、可愛くねぇぞ…

見た瞬間、一昔前の型なんだが…

こんなデザイン見たコトないくらい俺の時代じゃない

「ハズレもあるよな!次だ次!!今度はワンピースか……ウソやろ」

気を取り直して袋に手を突っ込み取り出したら、またガッカリ

だからなんで俺の時代じゃない古すぎるデザインなの!?

この街に来てから頻繁にあの店通ってるケド、見たコトねぇし

こんな服着てる奴もいないから!!

「セ、セリ……」

だんだんとムカつきが溜まっていくのがレイにも見てわかるようだ

「俺はタイムカプセル開けてるワケじゃねんだぞ!?」

その後、全部の中身を確認してみると

ブラウスもアクセサリーも何もかもが、一昔前のデザインばかりだった…(実話)

その時代ならいいんだろうが、未来に生きてるセリカに着せるにはあまりにも酷かった…

2、3年前くらいならまだまだいけたかもしれない

でも、これは…わかりやすく言うなら全ての服に肩パットが入ってる時代の感覚

俺には無理だ

「わ~!レイ!楽しみにしてたのに!ガッカリだ!」

泣きつくしかなかった

「福袋はこういうものなんだな…」

慰めてくれるレイが優しい

「何が福袋だよ!福袋って言うなら福入れとけや!!

ゴミ袋って書いとけ、そしたら買わんし

買っても文句言わねーからよ!」

足ダンして怒りながら泣いた

「正月から可哀想に、今度ほしいもの全部買ってやるから元気出すんだ

これからは何が入っているかわからないものは買わない方がいいかもしれないな」

「うん…」

服で福袋買ったのはこれが始めてだったからめっちゃショックなんだケド

しかも8万っていう大金を奮発したんだよ

まだ1万くらいだったら、ドブに捨てたって言えたかもだが

貧乏人の俺にこの仕打ちは心折れるって

そうして俺は三が日を拗ねたまま過ごしました

今度、セリカには俺が選んだ可愛いお洋服買ってやろっと



-続く-2016/01/03

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