第30話『死者の女優と霊媒師』イングヴェィ編
セリくんをセリカちゃんに会わせたくて、セリくんを迎えに行くのに俺はまた暫く城を空けなきゃいけないコトを君に伝えるととても寂しそうにした
可愛いな~もうその顔も
すぐに帰りたいケド、セレンさんの所って遠いんだよね
一緒には連れていけないし…
だって、あっちにはレイくんがいるんだもん
絶対に会わせたくないから!!
セリカちゃんの友達だったミザリーも俺が殺しちゃったしな~っふふ
またセリカちゃんをひとりぼっちにさせちゃった…
まぁセリカちゃんを傷付ける友達なんていらないんだケド、必要ないよね……
君には俺がいるんだもん…
「そっか…イングヴェィまたどっか行っちゃうんだ
別に…寂しくないもん……」
君の言葉も表情も寂しさに染まる
寂しくないなんてウソで、俺はセリカちゃんをひとりにするコトに胸が死ぬほど苦しくなった
「動物さん達もいるから…平気」
これ以上言われたら、置いていけなくなる
一瞬でも離れたくなくなるよ
でもね、セリくんはセリカちゃんに絶対必要なんだ
2人は一心同体だから、ほっといてもお互いに引かれあっていつかドコかで自分に会う
でも、俺は1日でも早く会わせてあげたいんだ
俺はセリカちゃんを幸せにしたい
救いたいし助けたいし守りたい
でも、セリカちゃん自身が自分で助けないといけない部分があるんだ…
それは俺がどんなに頑張っても解決できないコト
俺は君じゃないから…
セリカちゃんであるセリくんなら、君を救うコトができる
自分じゃないと助けられないコトが君にはあるから
だから…セリくんに助けてもらうの
それはセリくん自身も同じ
君達は会わなきゃいけない…自分の為に
俺に出来るコトはその手助け
セリくんを迎えに行ってセリカちゃんに会わせるんだ
ロックもローズもセリくんに会いたがってるし、ロックはセリくんとセリカちゃんの違いがわからないみたいで
今でもセリカちゃんに対してレイ殿の彼女と呼んでる所が…とっても許せないんだケドね
まぁ普通の人は違いはわかりにくいかも
あのセリくんとセリカちゃんの2人は1人の人間だもん
「ゴメンね、寄り道せずにすぐに帰ってくるからね
お土産もたくさん買ってくるから良い子で待っててセリカちゃん」
「私、良い子で待てないから…イングヴェィは行かない?」
「うっ…」
セリカちゃん…そんな上目遣いで、また俺のコトからかってる
俺の反応見て楽しんでる顔だ
でも、とっても可愛いからわかってても負けちゃいそうだよ
そういうコトはしちゃダメだって前に言ったのに
我慢してる俺の身にもなってね!?
「わかったわかったよセリカちゃん
行くのは明日にして、今日はセリカちゃんが寂しくならないように数日分楽しませてあげる」
「楽しいコト?本当に私を数日分楽しませるコトができるの…」
セリカちゃんは難しい人だから凄くハードル高そうで今から自信がなくなってきた…
お花や植物、動物関係はセリカちゃんにとってハズレはないだろうケド
数日分ともなるといつものコトじゃ無理だよね
他にセリカちゃんが大好きなものと言ったら…音楽か
たまに俺の歌声を聴かせてとお願いされて喜んではくれるケド
それもやっぱりいつもと同じコトだから…あっ
「そうだ!前にカトルに教えてもらったミュージカルを観に行こっか
まだ俺も行ったコトないケド、あのカトルが絶賛していたから
きっとセリカちゃんも楽しめるハズだよ」
「ミュージカル…楽しそう行きたい!!」
音楽が大好きなセリカちゃんは演劇にも興味があったみたいで目を輝かせている
「カトルに詳しい場所を聞いてくるから、セリカちゃんは出かける用意をしていてね」
「ハイ!!」
そうして、俺とセリカちゃんは真夜中0時に公演するミュージカルを楽しむコトになった
大好きなセリカちゃんとデートだよデートだよね!!
「ミュージカルってこんな遅い時間から始まるの?
だって、劇場閉まってるよ?」
いつもだいたい23時には寝てしまうセリカちゃんに0時から2時間のミュージカルはちょっとキツイかもしれない
まさか俺もこんな真夜中にやるとは思ってなかったんだよね…
それにセリカちゃんの言う通り、今日の劇場は20時公演を最後に今では明かりもなく扉には鍵もかかっているんだ
「カトルに貰ったこのチケットがあればいいとかなんとか言ってたんだケドな」
とチケットを取り出すと鍵がかかっていた扉は静かな音を立てて開いた
「……だ、誰もいないのに……扉が…」
セリカちゃんは恐いのか俺の服を掴んで身体を寄せる
あっどうしよう…もしかしてセリカちゃんは幽霊とかお化けとか恐かったかな?
前世の君は幽霊とか平気だった記憶がある
「幽霊が恐い?
セリカちゃんが恐かったり眠かったりしたら、帰ってもいいよ」
そう優しく聞くとセリカちゃんは首を横に振る
「違うの…脅かさない幽霊は恐くないわ
私は急に大きな音がするのが恐いから……
こういうのって絶対バンッ!とかプシューッ!って来るやつだよ!?
眠気なんて吹っ飛んだし!!」
完全にお化け屋敷だと誤解してる…
まぁ真っ暗で、ちょっと歴史のある劇場だからそう思っちゃうかも
そうだったセリカちゃんは大きな音や声が苦手だったね
普通の人間は幽霊のほうが恐いって言うのに…ふふふ
「大丈夫、ここは人間がわざと脅かしたりするようなお化け屋敷じゃないから
セリカちゃんの恐いコトはないよ」
俺はシッカリとセリカちゃんの震える手を掴んで劇場の中へと入った
そして、俺達が劇場へ入ると誰もいないのに扉が勝手に閉まる
ロウソクに明かりが勝手について、こっちだよと言われているみたいに俺達は明かりのついた廊下を歩き階段を下った
カトルが絶賛していたミュージカルとは詳しく聞くと、生者が公演してるものではなく
誰もいなくなった真夜中の0時に死者だけで公演するミュージカルだと言っていた
死者は普通は転生するか死者の村で存在するかなんだケド、稀に死んだ場所への強い想いや未練があると地縛霊とか悪霊とかになって世界をさ迷っている死者もいるみたい
みたいと言うのは俺はあまり死者のそういうコトに詳しくなかった
幽霊とかとはあまり縁がないからね
俺には霊力もまったくなくて、魔力がそれなりにあるから幽霊が見えるってだけなんだ
セリカちゃんは幽霊がまったく見えない
魔力はあるにはあるんだケド、勇者の剣がない今のセリカちゃんの魔力は回復魔法しか使えないくらい弱い
今は触れないと回復魔法が使えないケド、勇者の剣があれば回復魔法の範囲もかなり広がるんだよ
離れていても複数の人を一瞬で回復できる
スゴイよね
そんな感じで今のセリカちゃんは見えないケド、俺が君の近くにいればちゃんとミュージカルは見れるから大丈夫だよ
「わっ広い…」
地下の階段を下りきると重たい扉を開いては、想像以上に広い観客席と幕が閉じた舞台が目の前に広がる
「スゴイスゴイ!!」
歴史ある劇場だから中もちょっと古いのかと思ったら意外に綺麗で古臭くない
セリカちゃんはそんな光景にテンションが上がっちゃってる
「今日は俺達以外にお客さんはいないみたいだね
とりあえず座ろっか」
チケットには1番良い席が書いてあって、俺達が席に座るとちょうど0時になったのか開幕のブザーが鳴る
舞台の幕が上がると、5人の男女が幽霊の姿を現す
はじまりから華やかな歌と音楽で俺とセリカちゃんは一瞬にしてその舞台の世界に引き込まれる
歌も演技も、この人達はまだまだプロには程遠く新人な感じが出ているのに
舞台の上にいる人達はあまりに楽しそうに明るく笑うから、その気持ちが凄く伝わってくる
隣にいるセリカちゃんもそれに喜んでは笑顔で楽しんでるね
最初から最後まで明るくて楽しい恋と友情の物語りだった
クライマックス、1番盛り上がる音楽が派手に終わりを告げると幕が降りる
俺とセリカちゃんは心から楽しかったと拍手に気持ちを乗せていつまでも手を叩いていた
「すっごくよかったね!」
「そうだね、こんなにも楽しい気持ちが伝わってくる素敵なミュージカルはもしかしたらないかもしれないね」
あのカトルが絶賛するのもわかったよ
カトルは基本的に否定的に物事を見るから、その捻くれたカトルの心を動かしたんだもん本当にスゴイよ
セリカちゃんも凄く楽しんで喜んでくれたみたいだし
でも、まだまた新人っぽいから有名になる前に亡くなったんだろうね…
俺達の拍手に応えて、もう一度幕が上がる
舞台の中心でお互いに手を繋いだ役者さん達が見えると、急に人間の気配を背後に感じる
そして観客席の後ろで大きな声がした
「ここが噂の真夜中のミュージカルか…待たせたな!!」
振り向くと十字架やらニンニクやら銀の大きな釘やらお札やら数珠やら水晶玉やら経文やらやら、色んなものが混ざっちゃった人が現れた
君が信仰しているのは一体なに…
「そこのお兄ちゃんとお姉ちゃん、オレが来たからにはもう安心だ!
観念しろ悪霊共!!ばっちゃんの名にかけて、オレがキッチリ成仏させてやんよ!!」
「なんか漫画の主人公みたいなやつ来た!?」
15か16歳かくらいの少年は俺達の目の前に立つと舞台の幽霊達に指さした
この子…ただ単にふざけてるだけじゃない、かなり高い霊力を持ってる
もしかして、エクソシスト?
俺がそう思いつくより、舞台の幽霊達は少年が何者なのかに気付いたのか怯えている
「ちょっと僕ちゃん
悪霊ってヒドイでしょ?
ドコが悪霊なのよ
舞台に立つ彼女達はただミュージカルをやってただけ
私達は彼女達にとっても楽しませてもらったんだから、謝りなさいよね」
セリカちゃん、いつもは人見知りで他人と話すのが苦手なのに
せっかくの楽しい気分を害されてちょっと怒ってるのがわかる
確かに、舞台にいる幽霊達は悪霊じゃない
悪さなんてしないような人達だ
この少年の勘違いだよ
「そう思うのは取り憑かれてる証拠…はっ!?お姉ちゃんもしかしてあの聖女様!?
うわっまじっうれしっ
オレ、セリカさんの大ファンなんすよ
回復魔法は神様か上位天使様しか使えないすっごい貴重な魔法なんすよね~!
しかも瞬間回復だからもうまじやばっす!!」
「聞けよ!?」
少年ははじめてセリカちゃんの顔を見ると悪霊退治なんてスッカリ忘れたかの様子でペコペコしてる
「よく見るとお隣のお兄ちゃんはあのプラチナ様のイングヴェィさんとか
オレ今日ツイてるわ~
今から帰ってばっちゃんに自慢するわ~ホクホク」
「もう寝てるだろうからやめてやれ」
「あっここにサインお願いっす!遊馬くんへって書いてくださいっす」
セリカちゃんに水晶玉とペンを渡している
「これあんたの大事な除霊道具とかじゃないの!?」
そう言っておきながら、普通にサインしちゃうんだねセリカちゃん…
「あざっすセリカさん!!家宝にするっす」
よく見ると『遊馬くんへうるさいウザイ黙れ帰れ』と書かれていた
それ家宝でいいの!?
「ところで君はあの幽霊達を成仏するとかなんとか言ってたケド…」
「はい!まだ若いから無理って思ってます~?
まっ見ててくださいよ~」
まだ俺が話し終える前に遊馬はたくさんある中の除霊道具を選び出した
俺はセリカちゃんが遊馬の除霊に反対しているコトと俺自身もあの幽霊達を除霊してほしくはないと思っていた
どうしてって…魂は肉体がない分、想いがハッキリと伝わりやすい
ここの幽霊達はミュージカルへの強く熱い想いがある
楽しく明るく、たくさんのお客さんを幸せな気分に笑顔にしたいって純粋な想いしかないんだよ
決して悪霊なんかじゃない…
「おっとっと?セリカさん?」
セリカちゃんは観客席の階段を駆け降りて、怯える幽霊達の前に立った
「彼女達は死んでるかもしれない…
でも、生きてる誰よりも素晴らしいミュージカルを見せてくれるの
明るくなれる楽しくなれる笑顔になれるよ
悪い幽霊じゃない
ここでたくさんの人達を自分達の歌と踊りで笑顔にしたいって言うのが彼女達の願い幸せ
その想いは死者だろうと生者だろうと何も変わりないと思うの…
だから除霊反対…」
「俺もセリカちゃんと同じ考えだよ
遊馬、君にだって幽霊達の気持ちはわかってるハズだよね」
俺はセリカちゃんの前に立った
話し合いでおさめたかったケド、ちょっと無理そうだな…
遊馬はさっきのおふざけもなく真剣な表情で薙刀を取り出した
「イングヴェィさんもセリカさんもオレの邪魔するんですね~
霊は必ず転生するか死者の村に行くかしないと駄目なんすよ
どんな理由があろうとそれが決まり
オレは霊媒師なんで、悪霊や妖怪退治、さ迷う霊を成仏させるのが役目
邪魔するなら、力ずくで突破します!!!」
遊馬は薙刀を手に舞台へと飛び掛かってくる
俺は武器を手にして遊馬の攻撃を弾き返すケド、遊馬は俺に攻撃を仕掛けたんじゃない
最初からセリカちゃんの背後にいる幽霊達を狙ってる
つまり…俺はここから動かず避けれないと言うコトか
幽霊達には逃げてほしくても、ここに強い想いがあって離れられない幽霊にとって逃げるなんてできない
さらに俺は幽霊や妖怪などそういうコトとはちょっと無縁であった為
俺の霊力は皆無で、魔力とは別の霊力は防ぐコトもできないからダメージを軽減できずそのまま受ける
「しぶといねぇ
でも、イングヴェィさん後ろを気にして守ってばっかでダメージ全部受けてるじゃん
そのうちくたばりますよ?」
「くたばるつもりはないんだケドね…」
結構厳しいかも、遊馬の霊力は直接魂にダメージを与えるからこの劇場を破壊したりしないし本当に全力だ
魔法は魂とか関係なく、存在全てに影響を与えてしまうからここでは使いたくない
俺はこの劇場を壊したくはないからね
「イングヴェィ!!」
セリカちゃんが心配して俺に駆け寄ろうとしたケド、俺は制した
「ダメだよセリカちゃん危ないからそこにいて」
「危なくないよ
私がイングヴェィを回復するの!
万が一、私に攻撃が当たっても瞬間で回復するから…」
プラチナの力がない今の俺は死にはしないケド、自己回復が間に合わない
セリカちゃんの瞬間回復はとても助かる
でもね
「違うよ…
俺はセリカちゃんが傷付くのを見たくないんだ
回復魔法が使えるから平気とかそういうコトじゃない…
守るって言ったでしょ
それなのに、君を危険に近づけさせるなんてできないもん
君の回復魔法は遊馬を静かにさせたらお願いするよ」
俺は後ろで幽霊達を守ろうとするセリカちゃんにニコッと笑う
君はそんな俺に少し納得いかないみたいだケド、君は頭の良い人だからこれ以上俺に何を言ってもダメだとわかり心配した顔で頷いた
本当はセリカちゃんに心配かけさせたくもないんだケドね…
プラチナじゃない俺には余裕がない時のほうが多いかも
「それじゃっイングヴェィさんの相手はこのままオレが続けるとして、後ろの悪霊達はこいつらがお相手
いけーーー!!!!オレの忠実な式神達っ!!!!」
そう言って、遊馬の後ろからキツネと犬みたいな身体の長い式神が俺の横を猛スピードで通り過ぎていく
「しまっ…た」
「悪霊共を食い尽くせ!!」
通り過ぎた式神を目で追い振り向くと、凶暴的な恐い顔をした式神2匹は最初は幽霊達に向かっていたがセリカちゃんに気付くと顔の横で止まり
恐い顔をやめてキュートで愛らしい表情をしてハートを出しながら2匹がセリカちゃんの両頬にチュ~ッと好意のキスをした
………ちょっとセリカちゃんにキスするなんて許せないんだケド……
「うんうん、良い子達だね」
セリカちゃんは式神2匹を撫でる
キツネみたいな式神は身体をセリカちゃんの首に優しく巻き付けて気持ち良さそうにしている
犬みたいな式神はお腹を見せて尻尾をパタパタ振る
2匹とも完全に服従のポーズ
「ってこらーーーー!!!お前ら何やってんだぁ!!??」
「さっきのオレの忠実な式神があんだって?」
セリカちゃんは完全に遊馬の式神を虜にしちゃったみたいだ
そこの関係はよくわからないケド、式神達は遊馬より天魔法を持っている(まだ使えない)セリカちゃんのほうが上だと思ったのかもしれない
それだけじゃなくセリカちゃんは獣に好かれるタイプだもんね
「くそーいやもう憧れのセリカさんなら式神懐かれてもしゃーないっすね
まっ式神がいなくても、このままいけばイングヴェィさんを倒して悪霊退散っすから!!」
そう言って遊馬は戦闘再開だとまた襲い掛かってくる
でも、そこでずっと怯えていた幽霊の1人が勇気を出して声を上げた
「…もう!やめてください!!」
ただ怯えるコトしかできないと思っていた幽霊の声に遊馬がピタリと動きを止める
「私達のせいで、イングヴェィ様が傷付いたりセリカ様にご迷惑をかける事はおかしいでしょう」
「幽霊さん…」
セリカちゃんが1人飛び出して叫ぶ幽霊を心配する
「よ~っしゃ、なら大人しく転生するって覚悟を決めたんだな?」
「はい…」
1人の幽霊さんが頷くと他の4人がざわつく
「他の奴らは?」
遊馬はその場に座り込み話を聞いてやると言った
「お2人に迷惑をかける事になるなら…」
「大人しく…」
ざわつきながらも仕方ないと次々に諦めていく
「でも、(セリカちゃんと違って)みんなは生まれ変わるってコトは今の姿や記憶、才能も失って別の自分に生まれ変わるってコトなんだよ?
死んでも歌って踊ってお客さんを楽しませたいって想い、すっごく伝わった
それが…なくなるってコトなんだよ……?」
俺はプラチナ、生まれ変わるコトのない永遠の命がある…
だから、自分を失うコトがないケド
別の自分に生まれ変わるなんて絶対にイヤだ
セリカちゃんへの気持ちさえゼロからになっちゃうってコトなんだよ…
もう二度と忘れたくないのに、生まれ変わるってのは何十回も何百回も永遠を繰り返して忘れる…
俺にとったら、生者も死者も同じだよ
自分として生きていたっていいよね!?…例え死んだとしても……
なんで死んだらそれが許されないの……
「はい…わかっております
私達は歌と踊りが大好きで生きている時からミュージカルをやってきました
私達にとってミュージカルは命…魂そのものです
だから、転生して自分じゃない自分に生まれ変わるのが嫌でここに居座り続けたのです
世界中の劇場で世界中の人達を楽しませて笑顔にしたかった…」
「うん…」
死者がこの世に残れる唯一の死者の村には劇場もないし、何より各地にある死者の村は辺鄙な場所だ
気軽に生者が行ける所じゃない
「でも…目の前で誰かが私達の為に傷付くなら意味がないんです……
……霊媒師さん、お願いします」
幽霊さん達は俺とセリカちゃんの横を通りすぎる
本当は死んでもミュージカルを続けたいハズなのに
死者の運命として別の自分に生まれ変わるコトを選んだ…
「それで…本当にいいの…!?」
セリカちゃんは納得いかないと声をかける
すると、さっきの幽霊さんが涙を浮かべて振り向き笑顔で言った
「セリカ様、ありがとう
私…本当はイングヴェィ様の歌声の大ファンだったんです
憧れの人が私のミュージカルを観に来てくださった今日とっても嬉しかった…
それが最後だったってだけで幸せ…
これ以上その人が目の前で傷付くなんて…嫌ですから、サヨナラ…イングヴェィ様、セリカ様…」
「イングヴェィのファン…憧れ……」
セリカちゃんは複雑な気持ちで呟く
「おっしゃ!茶番も終わった事だしちゃちゃっと転生転生」
「おい茶番とか言うなよ」
セリカちゃんにツッコミを受けながら遊馬は5人を目の前にしてやる気を出している
「死者の魂は死者の村以外にいるのはよくないからな
肉体を失った魂の霊ってのは時間が経つに連れて自我は失われ、悪霊になってしまうからさっさと…」
「……ちょっと待って遊馬…
俺、そんなコト聞いてないんだケド…
悪霊になるなら先に言ってよ!?
そしたらさっきの無駄な戦いなんてなかったよね!?」
幽霊についてあまり知識のない俺には初耳だった
「あらら~オレの台詞が不十分でしたねテヘペロリン♪」
可愛いこぶってごまかしてもごまかせないよそれ…
俺はセリカちゃん以外可愛いって思わないもん!
遊馬の肉体を失った魂はの言葉を聞いて俺はハッと思いつく
「それじゃあ…魂のままじゃなかったらいいってコトだよね?」
「そういう事になるが、まさかイングヴェィさん他の人間を殺してこいつらに肉体を与えるとか恐ろしい事を考えてんじゃないっすか?」
「そんな恐いコト考えないよ!?」
って言ったら隣でセリカちゃんがイングヴェィは平気で人殺すのに…って顔をされた
まぁ…それはそれ!セリカちゃんの為!で、これはこれだよ!!
「セリカちゃん、このままあの幽霊さん達がミュージカルやれなくなるのイヤでしょ?」
「う…ん……また観たいと思う……
だからって、他の人間を殺すのはダメよ」
「すっごい疑われてる!?しないよ!?
あのね、俺のお兄ちゃんはなんでもできるんだよ」
ふふっと少しセリカちゃんと遊馬に自慢っぽく笑う
幽霊達も頭に???を浮かべるから、俺はみんなを自分の城へリジェウェィに会わせるコトにした
-続く-2015/04/11
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