第29話『友達って…何かわかんないよ』セリカ編

私は本当はいつもイングヴェィを遠くから見ているだけなのかもしれない

貴方は私と違って、いつも周りにはたくさんの人がいてそこは明るくて温かくて楽しい世界

私はと言うと…それが眩しいのか近付けない

遠くからこうして見ては住む世界が違うのだと感じる

私がみんなからは一定の距離を置かれているのは今も変わらない……

サユキ達はいなくなったケド、私を良く思わない人も少なからずいるわ…

「セリカちゃん!」

たくさんの人に囲まれていたイングヴェィが私に気付くといつもの笑顔で来てくれる

私と住む世界が違うのに、イングヴェィは少しも気にしないで私の世界に入ってくるの

「おはよう、今日はいつもより遅かったんだね」

「昨日ちょっと眠れなかったから…」

なんだか昨日は心がモヤモヤしててなかなか寝付けなかった

なんでなのかな?

起きてからもずっとそれは残ってる

「大丈夫?また身体の調子がよくないとか!?お医者さん呼ぶよ!?」

「大袈裟だよ

私は大丈夫だから、イングヴェィはみんなの所に戻って」

さっきまでイングヴェィを中心にしていた人達、みんなはイングヴェィが私に話し掛けるコトに何も言わないし邪魔しないように遠慮している

そんなのよくないわ…

せっかくみんなイングヴェィとお話したいのに…

イングヴェィはなんでも私を優先しちゃうからね

私はみんなの気持ちを汲み取ってイングヴェィにバイバイして逃げるように消えた

「セリカちゃん…」

本当は私も貴方とお話したい……

って思っちゃダメ、イングヴェィは私の気持ちがわかるから…


とくに何もするコトがないから、部屋に戻ろうと廊下を歩いているとロックが前から歩いてくる

「これはレイ殿の彼女ではござらんか」

この人、何故か私のコトをレイ殿の彼女と呼ぶのよ

レイって誰……

知らないのに彼女って何!?

ロックは私が高熱を出して治る少し前にローズと一緒にこのお城に来たわ

最初はスマートなイケメンのロリコン忍者だったのに、毎日コーラとピザの飲み食いとゴロゴロで今はお腹がポヨポヨの変わり果てた姿に…

「ロックってば、私を見るといつもそう言うね

本当にレイなんて人知らないのに」

「きっとレイ殿と離れ離れになったショックで記憶をなくされているのでござるよ」

なくなってないよ…

「ここの皆、騎士と聖女が恋人同士と噂話で盛り上がってるでござる

リア充は爆発してほしいでござるが!!」

その噂話は私もよく聞く

前世がそうだったとか

でも、私は前世なんて覚えてないしレイなんて人にも会ったコトがないからわかんないよ

「私は…今は恋人より、人間の友達がほしいな……」

イングヴェィがたまに出かけたりする時、私はいつも1人ぼっちだ

みんな私と会話しようとしない

私が難しい人だから会話なんて成立しないの

周りが楽しく話したりしているのを1人寂しくそこに身があるのは

とても耐え難いものがある…

前の世界からそうだったから、そろそろ慣れてもいいハズなのに…慣れないの

「そんなの簡単でござる

レイ殿の彼女ならすぐに友人の1人や2人くらいできるでござろう」

本当に簡単にできるならぼっちじゃないのに

ロックにしたら普通の人にしたら友達がいるのは当たり前で作るコトは簡単なのかもしれない

それから少しして、ロックが言ったコトは現実になる

私にはじめての人間の友達ができたのだった…



ロックと友達の話をしてから次の日

聖女に憧れてこのお城に女の子が訪ねてきた

「セリカ様!ずっと憧れていました!あたしと友達になってください!!」

突然、人がたくさんいるエントランスホールでそう言われてみんなの注目を集める

歳は20前くらいかな

ちょっと個性的な子って印象だった

「なにあれ、訛ってるし見た目もやばいくらい田舎の芋女」

「あのダサい芋女よくこの城に来ようと思ったねぇ」

「ブスはお断りでーす」

一部の人間がわざと聞こえるように陰口を叩く

人間らしいな君達は…珍しくもない言葉だ

「あ…たし……ミザリーって言います」

きっとこの私に憧れてお城へ来たミザリーもさっきの言葉は聞こえてたと思う

顔を真っ赤にして俯くから…

「貴女は…私のドコに憧れているの……」

会ってから憧れ憧れとしか聞いてなくて、私の何に憧れるのか知りたかった

「綺麗な所です!

人間なのに、人間離れした美しさに心を奪われない人なんていません

立ち居振る舞いも上品で、あたしから見ると理想のお姫様みたいな人です」

えっ誰の話それ?

「きっとその容姿のように心も美しいのだと…」

絶対に私じゃないでしょ

「あと上級天使や神族しか使えない回復魔法が使える所も素敵です!!」

物静かな人かと思えば結構喋るな

「もう、わかったわ…」

長くなりそうだから、私はミザリーの話を切って隣にいるイングヴェィを見上げた

「ふふふ、セリカちゃんとお友達になりたいんだね

いいよ好きなだけこの城にいたら」

「イングヴェィ…」

私の友達がほしいって知ってるイングヴェィは反対しない

2人で話しておいでとイングヴェィは私から離れる

「ありがとうございますイングヴェィ様!

よろしくお願いしますセリカ様!!」

友達…私に念願のお友達ができたの……?

「ありえないんですけど」

「あんな田舎芋をこの城に住まわせるってどうかしてる」

納得いかないの言葉を吐き捨て一部の人達も去っていった

ミザリーは聞こえてるみたいだけど、イングヴェィの許可が出て私と友達になったコトが嬉しいのか笑顔だ

私は…友達がいなかったからどう接していいかわからなくて、戸惑いながらも微笑んだ



それからミザリーとは友達っぽくいつも一緒に行動するコトが多くなった

話しにくい私を相手にめげずに話し掛けてくれるミザリーは最初は良い人なんだと思った

私には友達がいなかったから、こうして一緒にいるのが友達なんだろうって思ったりして

ロックに「友人ができてよかったでござるね」と言われて私は「うん」と笑ったコトもある

でも、それはまだお互いを知らず遠慮があった頃の話で

時間が経てば経つほどに、何かが違うと思うようになった……


今日はミザリーと近くの町へ買い物に出かける約束、エントランスで待ち合わせをしていた

ちょっと…遅いな

待ち合わせの時間から30分が過ぎてる

ミザリーはまだ来ない

私は何かあったのかなと思ってミザリーの部屋を訪ねてみたがいないみたい…

ドコへ行ったんだろ?

最近、ミザリーは待ち合わせに遅れてくるコトが多くなった…

「ごめんなさ~いセリカ様!」

2時間後、そろそろキレそうな私との待ち合わせ場所にミザリーが現れる

「ちょっと気分が向かなくて、その辺を散歩してました!」

悪気もなく笑顔でゴメンとミザリーは謝る

この前は着ていく服がなかなか決まらないから、その前は急に部屋の掃除がしたくて、さらにその前は二度寝して……

ミザリーの遅刻理由はなんだか納得いかないものが多かった

おいおい、オマエ女でもそのうち殴んぞ

人間なのだからたまには遅刻する時もあるとは思う…

でも、ミザリーは謝れば許してもらえる

友達だから遅れても許してもらえる

同じ城にいるのだから、気が変わったなら連絡くらいしてくれてもいいのにそれもない…

待ってもらえて当たり前

待たせて当たり前

イングヴェィや他の人達が一緒の時は遅刻なんてしないのに…

なんか友達の私に甘えすぎているような気がする…

ちょっとそういうのヤダな……

謝るなら直してくれればいいのに

私のコト…軽く考えられてるのかな

「行こ…」

私はミザリーの謝るコトには何も触れずに買い物する予定の町へと向かう


馬で行けば1時間で着くわ

ここは人間の住む町で、食べるものも売ってるものも全て人間向けのもので気軽にいられる

他種族が出入りする町とかだと人間には毒な食べ物とか危険な物とかがあるらしいから、イングヴェィには自分がいないと行っちゃダメって言われてるの

「これ可愛い…」

アクセサリーショップで私はお花の髪飾りを見ていた

生花でできてるみたいに香りまでお花の匂いがしてとっても可愛い

大きさもデカくなく小さくもなくちょうど良い感じ

お洋服も靴もアクセサリーもいっぱいあるケド、たまには自分で選びたいし

イングヴェィにいくらかお金を貰っているから…買っちゃおうかな

私は鏡の前でお花の髪飾りをつけてみた

………自分では似合ってると思う…イングヴェィ、可愛いって言ってくれるかな

「まぁお客様、とってもお似合いですよ」

「…本当ですか?」

店員のお姉さんが私に気付き褒めてくれた

「はい、むしろお客様ならこのショップの全商品お似合いになられますよ

本当に噂通り綺麗な人ですね勇者様は」

全商品似合うって買えってコトか!?

私のコトを勇者と呼ぶ人は結構いるからいまさら驚かない

聖女と呼ばれるより勇者と呼ばれるほうが多いの

勇者のほうが有名だからってカトルは言ってたケド

勇者って男らしいんだよね…このお姉さんも何も言わないケド、私を女装趣味の勇者とか誤解されてたらヤダなぁ

私が知らないのに、みんな私を勇者として聖女として知ってるってのも変な感じだ

慣れたケド

「こちらの商品は一点もので、同じものはないんです

是非、勇者様に使って頂けれ…」

「これかわい~~~!!」

さっきまであっちのほうを見ていたミザリーが私は髪から外して手に持っていたお花の髪飾りを取った

「どうですセリカ様?あたしに似合います?

もうすっごい気に入っちゃった~

これ買います~」

あっ…

「えっ…」

ミザリーは私が何も言えないうちに私が気に入ったお花の髪飾りを店員さんに渡した

店員さんも笑顔だけど、ドコか引き攣っている気がする

「しかし、こちらの商品は先に勇者様がお気に…」

「いいの…

私、アクセサリーいっぱい持ってるからミザリーが気に入ったなら

……お姉さん、ゴメンなさい」

「勇者様……はい」

店員のお姉さんは私が譲ったコトを察したケド何も言わずにミザリーに商品を包んで渡した

「これからセリカ様と遊びに行く時はいつもつけていきますね!」

ミザリーは商品を受け取ると笑顔で私の隣にやってくる

最近いつもこうかもしれない

ミザリーは私が気に入ったものをほしがる

今日着ているお洋服も靴もバッグも持ち物も…

この世界の商品は結構一点ものが多いから、私がほしくてもミザリーがほしがったら譲ってしまう

友達じゃない奴ならえっヤダよって言えばいいんだろうケド

こんなちっぽけなコトで友達と取り合いになりたくないし…

私は最近無理してるんじゃないかって……感じるの

私がほしかった友達ってなんだっけ……

「そういえば、セリカ様はいつもイングヴェィ様と一緒にいますよねぇ

好きなんですか?」

町の中を歩きながらミザリーは思い出したかのように話題に出す

「イングヴェィ…わからない

嫌いじゃないケド」

「あっ!そうでした~

セリカ様には噂の騎士様がいらっしゃいましたね

なんでも前世で金髪のイケメン騎士様と駆け落ちしたって話」

その噂は前から気になるケド…私はミザリーの話にだんだんと不安になってくる

「あたし、イングヴェィ様好きだわ~

皆さんに優しいし差別しないし、あの綺麗な容姿

何より伝説のプラチナですよ

彼氏にしたら自慢できますよね~!」

……彼氏は自慢するものじゃないし…話が合わないな

「あたし、イングヴェィ様に告白しようかな~

その時はセリカ様、協力してくれます?」

ミザリーの笑顔が私の心をえぐる

どうして…なんで私はこんなに苦しいと思うの?

協力なんて……したくない…

いや、友達ならちゃんと協力しないといけないのに……

「私は……」

その時、野良の小犬がこっちに走ってくるのが見えた

表情からしていつもの動物達と同じで私に好意を示してるのがわかる

ワンワンと鳴く声が私の名前を呼んでるみたい

微笑んで私が屈んで走ってくる小犬を受け止めようとした時

「汚い犬!!!」

目の前まで来た小犬の腹をミザリーが力いっぱい蹴り飛ばした

悲鳴を上げて道に転がり倒れる小犬を見て、私は友達だろうがなんだろうが怒りが抑えられない

「ミザリー!?なんてコトするんだ!!!」

「どうしたんですかセリカ様?

汚い犬を蹴ったくらいで怒鳴るなんて、いつものお姫様みたいな上品さがなくなってますよ~

野良は病気持ってるからさっさと保健所に通報して殺してもらわないと駄目です~」

私は倒れた小犬に駆け寄り触れると、骨が折れているコトに気付く

口からもたくさん血を吐いて…もしかしたら内臓も破裂してしまったのでは

こんなに小さな動物なのだもの…

私はすぐに回復魔法を使う

すると小犬はさっきと変わらない元気な姿で尻尾を振り私の手を舐めた

野良犬なら…ミザリーの言う通り病気持ってるかもしれない

人間には悪いコトの…

それは私が一部の魔物に懐かれるコトと同じだった

魔物は人間に襲い掛かる

人間にとったら命の危険がある存在だ

だから…自分を守る為にそれらを退治したりするのは間違いじゃ…ない……

私だって、自分の危険になる存在なら…きっと戦うわ…

ミザリーの言う通り、もしこの子犬が人間に危険な病気を持っていたら……

ミザリーの殺せって言葉は生きる人間を守る為なら…仕方ないコトだってわかる

でも…それでも

「動物は私の友達なんだよ

傷付けるなんてヤダよ」

私には回復魔法がある

他の人間にはないもの…

だから、こんなの平気で

「やだセリカ様、あたしもセリカ様の大切なお友達ですよ~?

その汚い犬と人間のあたし、どっちを取るんですか?」

ミザリーは悪気なんてまったくないと言った顔で笑う

空気が悪くなったのを感じ取った小犬が私の腕の中で心配そうに鳴く

あぁ…やっとハッキリわかった気がする

私は…ミザリーと気が合わないんだ

人間とは合わないんだ…

私が普通の人間とは違ったから……

こんなの……イヤな思いばっかするなら、友達なんかいらないよ!!

ほしくない!!ひとりぼっちのほうがマシだ!!

「…ミザリーとは今日で友達やめる

私の友達を傷付ける奴なんて私の友達じゃないわ」

「本気ですか~?

その汚い犬だけじゃなくて、言葉も通じない獣が友達って普通ないですよ?

セリカ様って…お姫様みたいに綺麗な人かと憧れてたら

ただの寂しい人じゃないですか」

うるせぇな…寂しい人とか勝手に言ってろよ

ミザリーは私への憧れの熱が冷めたと笑わなくなった

「あたし田舎出身でブスだしいつも町の人達に馬鹿にされてました

小さな魚が大きな魚に寄り添って身を守るように

綺麗なセリカ様といれば、そんな事もなくなるかと思ってましたけど

城の中じゃセリカ様はひとりぼっちで一部の人間からはよく思われてないし、理想が崩れたって感じですよ」

「……………………。」

少しだけミザリーのコトがわかった気がする

この人もいつも孤独でそこから抜け出したかったんだ…

例え、誰かを私を利用してでも…

私はそんなミザリーに何も言えなかった

ミザリーが私の気に入ったものをほしがったのは、私に憧れていたからか…

遅刻するのは私を大切な友達とは思ってないただの利用だったから…

でも…動物達にヒドイ事をするのは許せないから……

そして、気の合わない人とは友達にはなれない

あんなにほしがってた友達と言うものはすぐになくなってしまった

後悔はしてない

「さよなら、セリカ様」

ミザリーは私にそう言うと町を出て行ってしまう

私はミザリーと一緒に帰るのが気まずくて、少し時間を空けて帰ろうと町で夜になるのを待った


夜になり、そろそろ帰ろうかなって思った時にイングヴェィが心配して町まで迎えに来てくれる

「イングヴェィ…どうしたの?」

「ミザリーが1人で帰ってきたから、セリカちゃんどうしたのかなって思って…」

私は心配するイングヴェィに何もないよと微笑む

でも、そんな私の表面上のコトは騙せる相手じゃない

「何かあったんだね」

ギクリと…やっぱり…

「なんにもないよ

イングヴェィはちょっとしたコトでも私のコト心配しすぎだって、いつも言ってるでしょ

せっかく来たんだから夕食はこの町で食べて帰ろうよ?」

私はイングヴェィの腕に自分の手を絡ませて引っ張った

「あっちにね、いつか食べてみたいなって思ったオシャレなお店があるの」

イングヴェィは私に触れられて顔を真っ赤にしてる

「セリカちゃん…これは嬉しいケド、セリカちゃんはいつもこんなコトしないよ

だって…セリカちゃんは男の人が恐いでしょう

こうするってコトは俺に何か隠してる証拠だよ

君は相手に何をすれば気や話を反らせるかよくわかってる…頭の良い人だからね」

ちっ…やりすぎが逆にわかっちゃったか

私がイングヴェィの腕から手を離そうとすると、今度はイングヴェィから私と手を繋ぐ

「夕食を一緒に食べて帰ろうって言うのは賛成だよ

セリカちゃんと2人っきりなんて、嬉しいもん」

私があっちと指していたお店の方向にイングヴェィは私を連れて行く

夕食時、色んな飲食店から美味しい匂いが漂う

お店に着くまでイングヴェィはミザリーのコトを聞かないから、ほっとしていたら

「…セリカちゃんが話してくれないなら、ミザリー本人から聞くからいいよ

なんとなく…君の表情から何があったかもわかるから……」

そんなコトはなくて、イングヴェィの私の心を見透かすような笑みは冷たかった

イヤな予感がする…凄く……

私はイングヴェィの笑顔なのに、内に秘める私への強く深い想いが恐くて…その後の夕食もあまり喉を通らなかった



次の日、ミザリーの部屋にたくさんの人が集まっていたから不思議に思って覗こうとすると

いつの間にか背後にいたイングヴェィに目隠しされる

「この部屋が汚れちゃったからね

これから綺麗にするんだよ

セリカちゃんは見なくていいコトだよ……」

視界は閉じられても、耳はよく周りの声を拾う

「ミザリーさん殺されたんだって」

「セリカ様、お可哀相に

ご友人だったのでしょう」

「それが前日に喧嘩したとかなんとかで絶交なされたとか」

「まぁミザリーさんの最近のセリカ様への付き合い方、あまりよろしくなかったですし

犬を蹴ったそうよ」

そんな…ミザリーが殺された?誰に?

「自業自得ですね」

「セリカ様に近付くには扱いも気をつけないと、私達も他人事じゃなくてよ」

私は…本当は最初からわかってた

ミザリーが殺されたって聞いた時から

「セリカちゃん…行こっか

もう君が傷付くコトなんてないんだよ」

耳元でイングヴェィが囁く

その声は昨日と違って、いつもと同じように温かかった

もう私が傷付くコトがないって安心してる

イングヴェィが…殺したんだ

ミザリーを…私の為に

私はついにイングヴェィを私の汚い部分に触れさせてしまったコトに絶望した

あんなに綺麗な心のイングヴェィが私のせいで、おかしくなってしまう狂ってしまう

私はそんなコト望んでないよイングヴェィ

私が望んでるコトを貴方に叶えてもらいたいワケじゃない

………貴方のコト、嫌いじゃないわ

ずっと一緒にいたいかもって思ってる

でも、イングヴェィは私と一緒にいたら…

きっとまた私のお願いを叶えるのに、憎しみ苦しみ悲しみを消し去る為に

誰かを傷つけたり殺したりするんだ……



-続く-2015/04/06

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