第26話『貴方は私の心を軽くしてくれる不思議な人』セリカ編

涙が出なくなった頃、いつからか私の後ろにいた綿菓子を食べていたカトルが言う

「僕はセリカさんの言葉を待ってる」

前にカトルが言ったコトは今も変わらないみたい

私が一言

「…8人の人間を殺したいの……」

静かに口にすると、カトルは私に短剣を手渡した

重くなく軽い…でも、簡単に人間くらいなら殺せるくらいの刃だ

「君が失敗したら、僕がトドメを刺す」

「失敗なんてしないよ…」

イングヴェィだけじゃないんだね

私は他の誰かも巻き込もうとしてる

私のせいで…

でも、もうそんなコトどうでもいいの

ウサちゃん達の仇が取れるならなんだって…いい

私は短剣を手にして、部屋を出る

カトルが数メートル離れた後ろをついてくるのは、私と関わりたくない表れ

アイツらはドコに…

ふと廊下の窓から外が見えると捜していた8人の人間が門を出て行くのが見えた

買い物か遊びかで出かける所か

私は逃がさない思いで走った


追いつくとうるさい声でバカみたいな会話をしているのが耳の不快だ

でも、そんなのはすぐになくなる

私が殺すんだもん…

短剣を鞘から抜き、私は静かに8人の後ろに近付く

会話に夢中で私に気付かない8人

とりあえず気付かれる前に1人は確実に殺せる

そう思った時、巨大な影が現れその巨体に繋がる大きな手が目の前にいる8人のうち2人を掴み一瞬で握り潰す

「へっ…?」

「リン…?」

突然の出来事に誰もが理解するのに時間がかかった

「セリカさん、ぼけっとしてないで」

その中でも動揺せずいち早くに理解するのは少し離れてついてきていたカトルで私の腕を掴み

2人を殺したモンスターから引き離した

「モンスターの軍隊がこの城に攻め入ろうとしているみたい」

言われて、背景に目をやると巨大なモンスターは1匹じゃなかった

「たまにいる無謀な奴ら

リジェウェィの結界を破れるなんてできないくせに、ちょっかいを出してくる」

「カトル」

お城に戻れば結界があるから大丈夫だと私を引っ張り連れていく

「何、心配しなくてもあの人間は全員モンスターに殺される

わざわざセリカさんが手を汚さなくてもよくなっただけ」

そんなのわかってる…

私もアイツが無惨に死ぬコトを願っていた

「た、助けて~~!!」

「痛い~~~!!」

モンスターは次々とアイツらを捕まえて、手足を引きちぎったり食べたりしている

その光景はまるで、アンタ達がさっきウサちゃんにやったコトと似たようなものだった

「死にたくない!!助けてくれ!」

悲痛な叫びも痛みで染まる真っ赤な涙も…

みんな私を見て、助けを求めている

私は…?それを見て笑ってるよ

ざまぁみろって思うんだ

なのに…なのにさ……

「セリカさん!?」

私はカトルの手を振りほどいて、モンスターに向かって走っている

「ざまぁみろって思うよ!?

だけど、私このままアイツらを見捨てられないって思いもあるの

ウサちゃんと被るのよ……

助けたくても助けられなかったウサちゃんと!!

今…今自由な私なら……」

手足をちぎられ虫の息になってほうり投げられたサユキが私の近くに落ちてくる

「た…」

もう声も出ないサユキに私は駆け寄る

カトルは面倒だと舌打ちをしながらもモンスターが私に近付くのを食い止めてくれている

「私、知らない間に回復魔法が使えるようになってるの

でも、私はまだこうして近付いて手が触れていないと無理だから」

あの時、指1本も触れられなかったウサちゃんを助けられなかった

私の回復魔法は瞬間だ

サユキが息をなくす前に手足が元通りになる

死の顔をしていたのに前と変わらない生きる顔に戻ったサユキは立ち上がり私を見下ろす

「あんたに助けられるなんて最悪!!」

私の中で人間を助けないといけない使命感みたいなものとウサちゃん達への想いが激しくぶつかる

私のそのぶつかりは永遠に勝敗が決まるコトはない

カトルがモンスターを相手にしてくれていたケド、数が多くなって取りこぼしが出てくる

向かってくるモンスターの角が私を切り裂こうとする

「いや、勘違いするなよ

私はオマエを本当に助けたんじゃない

私はオマエを盾にする為に生かしただけ」

サユキの腕を引き身体のバランスを崩し私と重なる

モンスターの角が切り裂いたのは私じゃなくてサユキの身体

すぐに気付いたカトルがモンスターを倒してくれる

「ぐっ…ぎゃ…」

声が出せないくらい口から血を吐き出すサユキが死ぬ前に私は回復魔法で瞬間に治す

「ふ、ふざけ…狂ってる…この女…何が聖女だよ!」

「私は自分が聖女なんて思ってない

みんなが勝手にそう言ってるだけだもん」

殺さないのは私が人間を助けないとって使命感から、盾にするのはウサちゃん達への想いから

オマエ達を殺す…何度だって……

あの時の強い決意が私の中にある何かが引き止める

それが私の狂いとなって現れてるのかも

私は…そうだね、本当に狂ってるね

だから私の憎しみも苦しみも悲しみもいつまで経っても消えないんだ!!

私を引き止める何かが私を縛り付ける

それは良いコト…?悪いコト…?

「サユキのお仲間はもう助けられないな

私は死者蘇生ができるワケじゃないから、残念だね」

ふふっと笑うとサユキは顔を真っ赤にして怒りをあらわにする

「この女…っ!!」

私に手をあげてひっぱたくの

長い爪が私の頬を同時に切り裂いたケド、痛みはない…

私の回復魔法は痛みを無にするコトもできるから

頬の傷も一瞬で綺麗に治るわ

「外にいるモンスターをわざわざ相手にしている暇人は誰かと思えば」

お城の外の異変に気付いたリジェウェィが呆れながらも姿を現す

私をチラリと横目で確認してからカトルに声をかける

「おいカトル、もう遊びは終わりだ

棒付きキャンディーを加えたまま戦って喉に刺さっても知らんぞ」

「マシュマロとかにすればよかったと後悔している」

カトルは無意味な戦闘を放棄して、私達に近寄った

「帰って何か食べたい」

まだモンスターが残っているケド、城の中に入ればリジェウェィの結界でモンスターは入ってこれないと言うのは本当だった

暫くモンスターも粘ってはいてもそのうち諦めて帰る

私は城に帰ると真っ先にウサちゃん達のお墓を作てあげた



それから数日後

サユキはあの日の次の日に誰にも何も言わずにお城から姿を消していた

仲間がみんなやられたんだもんね…居辛いハズ

人間が8人いなくなってもお城のみんなはいつもと変わらずの生活を送っている

まるで何事もなかったかのように

でも、私はあの時のコトは忘れられない

ウサちゃん達のコト…

いつまでも私の心にはまた憎しみが増えてずっと残るの

「最近…天気が良くないな……」

廊下の窓から見える空はあの日からずっと曇っている気がする

私は自分の部屋の窓は恐くてカーテンすら開けていない

恐いの…思い出しちゃうし……

「セリカちゃん…」

部屋の前の廊下の窓から外を眺めていると、誰かが私の名前を呼ぶのが聞こえる

「セリカちゃん…ただいま」

声が近くまで来て、私は少し驚いて振り向く

「イングヴェィ……」

だって、イングヴェィが帰ってくる予定の日より早かったから…

「おかえりなさい」

私はまだ悲しい気持ちが和らがないケド、イングヴェィに気付かれたくなくて無理矢理でも笑顔を作る

「セリカちゃん、熱が下がってよかった

…気になって、早めに帰ってきちゃったよ」

久しぶりに会うイングヴェィは変わらず明るく優しい笑顔を見せてくれる

私は疲れたでしょと自分の部屋で話そうとイングヴェィに言った

紅茶とお菓子を用意していると、イングヴェィが私の部屋を見回している

「……内装が少し変わってるような」

その言葉に私はギクリと反応する

似たような家具を用意したのに、イングヴェィにはわかっちゃうのか

「気のせいだよ

イングヴェィ、まだ私の部屋そんなに来たコトないでしょ」

お得意のすっとぼけで私はイングヴェィの目の前に紅茶とお菓子を置いた

それ以上何も聞かないでオーラを出しつつ笑顔を浮かべる私をジッと見つめて

「何かあったんだね…セリカちゃん」

イングヴェィの表情からは笑みが消えて私を心配する

「なんにもないよ?」

「ウソ…ついてる」

「ウソじゃないもん!!」

私が隠せば隠すほど、イングヴェィの笑顔は壊れていく

何もかも見透かすかのような貴方の眼差しは私の心を締め付ける

「ねぇ、お願いだよ

君の思ってるコト、なんでも話してほしい

俺を頼ってほしいのに

セリカちゃんは…いつも自分を隠しちゃうんだね」

冷たいイングヴェィの手が私の手を掴む

「なんで…なんでも話さなくちゃいけないの

そんなのめんどくさいよ

私はイヤ…知られたくないコトたくさんあるもの

私に…構わないでよ」

私の無理矢理作る笑顔が崩れていく

こんなコト言いたいワケじゃないのに

でも…恐いのよ

全部、恐い

醜い自分を知られるのも、私に大切なものができるのも、疑いの心がある私が愛されるのも…

なんでこんなに苦しいのかもわからないくらいだ

「構うよ!

だって、俺はセリカちゃんのコトが大好きなんだから!!

なんでも知りたいし、頼ってほしいし、守りたいよ

セリカちゃんがそんなのイヤって言ったって、俺はやめないからね

やめたら…永遠に君に俺の愛が届かない気がして、そんなのは絶対にイヤだよ」

イングヴェィからはいつも強い愛が伝わってくる

それが恐いって思うのに、嬉しいって気持ちもあるから

わからないの

ウサちゃん達の話をしたら、きっとイングヴェィは生き残ったサユキを捜しだして私の為に殺すわ

私は自分で殺せなかったから、そうなれば私はきっと心が晴れる…

でも…イングヴェィにそんな私の醜い感情に巻き込みたくないんだよ

「私は…イングヴェィ……」

貴方のまっすぐな瞳が受け止めきれず、私はイングヴェィの手を振り払って走って部屋を出た

「セリカちゃん…どうして

君と恋がしたい…君に愛されたい…

セリカちゃん、こんなに大好き……なのに」


私が1番憎いのも苦しいのも悲しいのも自分自身だった

恐がって、向き合おうとしない

できない…私は弱くて弱くて弱い人だ

イングヴェィを置いてきた自分の部屋に帰り辛くなって、私は中庭へと来ていた

ここも私の好きな場所の1つ

お花がたくさん綺麗に可愛く咲いていて、緑もたくさん多いの

静かで人もあまり来ない

だけど、今の私には癒しもなく落ち着くコトもできない

中庭の空から小鳥が舞い降りて私の肩に止まったコトさえ気付かないよ

俯いていた私は足音が聞こえて、ハッと顔をあげると同じくらいのタイミングでその足音の人が私の手を掴んで引っ張る

「…もう夜になって今からじゃ外に出るのは危ないんだケド、セリカちゃんを連れて行きたい所があるんだ

ヤダって言っても、連れて行くからね」

私の言葉を先読みして封じるなんてできるのはイングヴェィ…貴方くらいよ

今の私は出かける気分じゃないからヤダって言ってたもん

重い足取りなのにイングヴェィの優しい笑みを見ていると、ついていかないなんてできない

お城の外に出ると、はじめてデートした時と違う白い馬がいる

あの時は普通の動物のお馬さんだったケド、夜に映える美しい白い翼は…これはペガサス?

私の前の世界では伝説上の生き物だったから、実物を見れてちょっと感動

イングヴェィは先に私をペガサスの背に乗せてから自分も乗る

「…ドコに行くの?」

「ついてからのお楽しみだよ」

私の悲しい気持ちを吹き飛ばすような明るい声音は何かを期待させるみたい

イングヴェィは一体ドコへ連れて行こうとするの…

今の私じゃ動物のぬいぐるみにだって喜べない

新しいレアなウサギさんを見つけた所で私のトラウマで目も当てられないわ

「お楽しみなんて…」

ペガサスはゆっくりと空へ舞い上がり、そこからある場所へと真っ直ぐに空を走る

高い所は恐いのに、不思議と恐くない

夜風が少し冷たいかな

「カトルに聞いたよ

セリカちゃんに何があったのか…」

イングヴェィに言われて、私はカトルやリジェウェィに口止めすればよかったと後悔した

ううん…私が口止めした所で2人ともイングヴェィに喋るよね

「人間って俺が思ってたよりずっとずっと残酷な存在なんだって最近わかってきたよ

あんなにもか弱い人間がなんでそんなコトをするのか

俺には理解できないし、したくもない……」

「人間はイングヴェィの言うように残酷で間違ってない

でも、それには理由があるの…」

サユキ達はイングヴェィのファンで嫉妬から私へあんなコトをした

綺麗か汚いかは別として、少なくとも好きだから…

その好きがどうしようもなくなった時、自分の中で止めておける人と目に見える暴力になる人もいるわ…

サユキ達は後者

男4人はサユキ達の仲間だから言うコトを聞いた

善悪なんて関係なしに、仲間の為ならなんでもやるって気持ちはわからなくもない…

いや、あんな残酷なコトわかりたくもないケド

「前々から思ってたんだケド、セリカちゃんって…」

イングヴェィの声が哀れだと涙を混じる

「本当に愚かな人だね…」

私はイングヴェィの言葉に心が揺さぶられるような思いをする

梧が私に言った言葉を思い出す

優しいねって言ってほしかったんじゃない

私は自分が愚かだと思うから、本当の私を言葉にしてくれたイングヴェィが

こんなにも…嬉しい気持ちにさせる

そうだよ私はそうなんだよ

「うん…」

イングヴェィのほうに顔を向けて私は笑う

「俺はそんなセリカちゃんも大好きだよ

でも、そんな難しいコトばっかり考えて自分を苦しめてほしくないな

俺は君は君のコトだけを考えてほしいなって思うよ

愚かなセリカちゃんも大好きだけれど、それが君を傷付けてる1つだってわかって…」

イングヴェィは私の額に自分の額を当てる

私を理解して私を心配してくれるのね

「今は…平気、イングヴェィがいるから……」

私は聞こえるか聞こえないかくらいの声で呟き前を向いた

「……今スッゴイ嬉しいコトを言われた気がするのに、風の音で全然聞こえなかったよ!?

セリカちゃんもう1回聞かせて!?聞きたいな~」

「空耳だよ?」

「そんなコトないハズだもん!?」

「あっ、あそこ?行くの」

ペガサスの飛行が徐々に降りてくる

その先には小さな村が見えたから私は指を差した

「はぐらかされちゃった……

うん、あの村に今の君を連れて行きたかったんだ」

見ただけじゃ他の村と変わらなさそう

人間なら眠る時間の真夜中だから家の外に人の姿は見えない

でも、地上に近付くにつれて村の出入口付近に小さな光の玉みたいなのがいくつも見える

夜の暗闇に映える淡い光…

村の外でペガサスから降り、イングヴェィに手を引かれて村の出入口へと導かれる

そこで待っていた光の玉が動物の姿へと変わっていくの

「えっ……ウサちゃん達…?」

見覚えのある姿顔は、私の友達だった動物達で間違いない

「思った通り、やっぱりここにいたんだ

ここは死者の村って言ってね」

「ウサちゃん達…私のせいで殺されたの

きっと私のコト恨んでる……」

「ううん、そんなコトないよ

セリカちゃん落ち着いて最後まで聞いて

死者の村は死んでからも生者に会いたい生き物達が待つ所なんだよ

この子達はセリカちゃんがこの村に来てくれるのを待っていた

みんな、最期にもう一度君に会いたかったんだよね」

動物達が私を憎む目で見ていると思うのは私の思い込みだとイングヴェィが言う

私は恐る恐るみんなに手を伸ばしてみる

すると、みんな生きてた頃みたいに私の手を舐めたり身体を擦り寄せてきたりしては好意的である態度を見せてくれた

「透けて触れない…」

舐められたり擦り寄られてもお互いに触れるコトはできない

それはやっぱり…死者と生者だから……

「うん…残念だけど、死者と生者は触れ合うコトができない

生者が死者と話せるのも見えるのもこの村の不思議な力のおかげなんだ

他に魔力や霊力が強い人とかなら村の不思議な力がなくても見えたりするかな」

触れ合えないと聞くと、イヤでもみんな死んでしまったのだと実感する

私の悲しい気持ちは触れ合えないと気付いた動物達にも伝わった

「…悲しいコトなんて何もないよ」

私が俯くと、動物達の淡い光の魂が天へと舞い上がっていく

イングヴェィは私に天を見てと言うの

「みんなドコへ行くの…?」

せっかくまた会えたのに

「みんな生まれ変わるコトを決めたんだよ

セリカちゃんにもう一度触れたいから撫でてもらいたいから

だから、また絶対にみんなに会える

悲しいコトなんてなんにもないよね」

否定的な私がイングヴェィの言葉に何故か納得してしまう

生きていた時より死者の魂に触れるってコトは思いがそのまま伝わるみたい

そんなにみんな私のコトを大好きでいてくれたんだ…ってわかるの

憎しみもない苦しみもない

悲しいコトも…なかった

みんなまた私に会えるのが楽しみだって思ってくれてるの

私だって楽しみだよ…

最後に残ったウサちゃんが私を見上げている

私は触れられなくてもウサちゃんの頭を撫でてあげると、満足そうにして嬉しそうに目を閉じた

そして、ウサちゃんの光も最後に天へと舞い上がる

「ゴメンね…ありがとう

みんな大好き……」

ちょうど夜が終わり朝が来る時間みたいだ

山の向こうから太陽の光が少しずつ世界を照らす

「ふふ、セリカちゃんまだ気付いてないね」

「何?」

「君の肩にずっと小鳥が止まってるコトも、あの子達がみんなセリカちゃんを心配してついてきていたのも」

言われて私の肩に温かいものがいるコトに気付いて、振り向くと生き残った他の動物達がいた

あんな恐いコトがあったのに…

それでも私の心配をしてくれたと言うの?

守れなかった私を…それでも

「さっきまで、憎しみも苦しみも悲しみもあったのに」

枯れてしまったハズの涙がまた溢れ出るの

涙は憎しみも苦しみも悲しみも大きくするだけのものだと思っていたのに

「……今はもう綺麗に流れ落ちたわ…」

イングヴェィはそっと私の手を握ってくれる

「うん…」

涙とともに綺麗に流れ落ちたのはウサちゃん達のコトだけで、それ以外は残っているケド

「…今気付いた

この世界ってずっと私が見たかった本物の太陽があるんだね」

太陽の光は私達を温かく照らすの

「セリカちゃん

天は君を見守っているし太陽は君の味方だよ

でも、セリカちゃんを守るのも味方なのも1番愛してるのも俺だからね!

いつか君の憎しみも苦しみも悲しみも消してあげる

晴らしてあげるよ

俺は君を幸せにしたい君の笑顔が見たいから」

イングヴェィは私の残った涙を指で拭ってくれる

今日も太陽みたいな笑顔を見せてくれる

本物の太陽じゃないケド、私にとってイングヴェィは太陽みたいな人だ

ずっと見たかった太陽

私を救ってくれる人…

「イングヴェィは…私のお願いならなんでも叶えそう

それって恐いな」

「えっ…どうして?」

私が思った通り、私の願いなんて醜いものばかりだから

太陽みたいな貴方を私のせいで汚したくない

だから私は、貴方に何も言えないのよ

「今日は私をここへ連れてきてくれてありがとう」

イングヴェィのおかげさまで私は少しだけ笑顔になれる

なんかね…この世界なら、貴方がいるなら

私はちょっとだけ前向きになれる気がするよ

私の憎しみも苦しみも悲しみも…全部、いつか消えてなくなってくれるんじゃないかなって思うの

そんなの夢みたいな…話なのにね

繋がるイングヴェィの冷たい手を少し戸惑いながらも握り返すと、イングヴェィは笑ってくれる

「セリカちゃんの為なら」

やっぱりイングヴェィの笑顔は私の太陽だよ

私の頬を赤く染めるから…

山の向こうから太陽が姿を現して、ようやく朝がきた



-続く-2015/03/24

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