第25話『見つけたよ、君の君を』イングヴェィ編
ロックにセリくん達とはぐれた場所を教えてもらい、そう遠くは離れていない所で複数の力を感じた
この力は…悪魔か
あまり力は強く感じないから下級程度だとは思うけれど、数が40…50…ちょっと多いね
なんだか気になった俺はその力を感じるほうへと走った
すると、小さな村が見えてきてそこから離れた外側の空に複数の悪魔を確認できる
その悪魔達が向かう先には…鳥型の魔族、見たコトがある
確か名前はキルラだったよね
キルラより一回り小さい隣にいるのは人間…
「っセリくん!?」
その人間を一目見て、セリくんだと認識した時
微かにセリカちゃんと同じ感情が心を巡る
間違いない…この感情、セリカちゃんと同じ
セリくん…はじめて本物を見て会ったけれど
本当にスゴイよ…
セリカちゃんと何もかも同じと言うか、もう本人だ
セリくんとセリカちゃんが2人に見えても、2人は天が創ったたった1人の人間
不思議な感覚だ
でも、俺には違いがわかる
2人は1人だけど、別々の意志を持ってる
だから、俺はセリくんのコトを特別に感じても恋には落ちない
2人は同じ人間でも別々なんだ
「今、助けに行くからね!!」
やっと会えたセリくんのピンチに駆け付けようとした時、俺はさらに離れた場所に1人の人間に気付く
金髪で夜色の蒼い瞳を持つ男が超遠距離から悪魔達目掛け空に弓を引いた
「……レイくん…
セリくんとセリカちゃんと運命が強い人
君もあの時と容姿はまったく変わりなく生まれてきたんだね……」
命を懸けてセリくんを守ろうとする姿を見て
きっとこの世界でセリカちゃんと再会したら、レイくんもまたセリカちゃんに恋をして好きになる…
俺の最大のライバルってコトだよ…
レイくんとセリくんがどういう繋がりだったかは知らないんだケドね
それは香月くんのほうが詳しいかも
氷魔法を得意とし、それを自分の弓にプラスして強大な力を発揮する
前世では弓を使ってなかったから一瞬で俺が殺したけれど
人間にしてはその強すぎるレイくんの弓の力はプラチナの力がない今の俺に勝てるかどうかわからないくらいだ
レイくんが矢を放つと、空にいる悪魔達の急所を次々と射て即死させ撃ち落とす
急所を狙う正確さだけじゃない
矢の速さが下級悪魔じゃ避けきれないほど
俺の目でさえ追い掛けるのが少し辛い
レイくんは誰が見たって弓の天才だとわかるくらい強い
こんな人間がいるのかと思うくらい…
「でも、レイくんはまだ若いから現状では守りきれないね」
撃ち落とせなかった数匹の悪魔が空からセリくん目掛けて降りてくる
それを見たレイくんがしまったと、もう一度弓を引こうとするケド間に合わない
キルラはさっさと逃げてしまうし
でも、大丈夫
「大丈夫?セリくん」
俺はブーメランで数匹の悪魔を切り裂いて、しゃがみ込んでいるセリくんに近付き声をかけた
「あれ?助かった?」
「うん」
セリくんが俺を見上げるからニッコリと笑ってみせる
「………あんたは…はじめて会ったのに、はじめてじゃない気がする」
「それはそうだよ
セリカちゃんが俺を知っているからセリくんもそう思うんだよ」
「何言ってんだ?香月もキルラもだけど、俺がわからんコトばっか言って置いてけぼりなんだケド!!
ま、ぁ…助けてくれたみたいだし
ありがとな……」
ちょっとセリくんが顔を赤くしてふんっとそっぽ向く
セリカちゃんだからセリくんを見ても可愛いって思ってしまう~
綺麗系なやや女性よりの中性的な容姿なのに、可愛いと思うのは恋の病だよね!!
違いは性別と髪の長さとちょっとセリくんのほうが背が高いくらいかな
あっ声も一緒だけど、セリくんのほうが少しだけ低いかも
そっか~これが一心同体か…
「セリ!!怪我はないかい!?」
遠く離れていたレイくんが走り寄る
セリくんの姿を確認して怪我がないコトに心配の表情からほっと落ち着く
「平気だ
レイのお蔭様で俺達は助かったんだよ」
「何言ってるんだ…
オレは数匹取り残してしまったんだぞ」
レイくんはまだ若い…
これからもっともっと強くなる
プラチナの俺と張り合うくらい…
か弱いハズの…人間のレイくんがね……
「この人が来てくれなかったら、セリは…」
レイくんはそう言ってはじめて俺を見る
俺はついレイくんを睨むように眉を寄せてしまった
「……あんた…人間じゃないみたいだな」
俺をプラチナだと言わないってコトはレイくんの前の世界には伝説にすら存在しなかったみたいだね
「オレの事が気に入らないって目をしているが、過去に会った事があったかい?」
しかも鋭い
気付いたレイくんは俺に対して喧嘩を売ってくるなら買うぞと言う態度だ
「ううん、君のコトなんてまったく知らないよ」
ニッコリ笑顔を返した
知ってるよ
セリくんの知り合いじゃなかったら、すぐにでも殺してるのに……厄介だな
セリくんに嫌われるってコトはセリカちゃんに嫌われるってコトと一緒だもん
セリくんがレイくんを友達とか思っていたら……殺せないじゃんか
セリカちゃんを奪おうとする人間のレイくんは俺にとって目障りなのに
「おいおい、なんだよこのピリピリした空気は」
俺とレイくんの間にセリくんが和まそうと笑顔で割って入る
セリくんに言われると俺もレイくんもこれ以上何も言えないしピリピリもできなかった
「ところで、あんたは俺の名前を知っていたケド
まさかあんたも俺の知り合いだったとか言うんじゃないだろうな?」
「セリくんの存在を知っていただけで、知り合いじゃなかったよ
セレンさんって女神がセリくんのコトを捜していてね」
本当は真っ先にセリくんをセリカちゃんに会わせたいんだケド
少しの間セリくんのコトを忘れていたし、先にセレンさんに会わせないと怒られそう
と俺は心の中で苦笑する
「なんで俺を捜して……何!?女神だと!?美人なんだろうな!?」
女神と聞いて急に嬉しそうに目を輝かせてる
セリくん…女の子好きなんだね……
「ん~美人と言えばそうかもしれないケド、客観的に見て美人と可愛いの中間かなセレンさんは
でも、俺はセリくんのほうが綺麗で可愛いと思うよ」
俺が笑顔でセリくんを褒めるとまた顔を赤くした
「あれ…なんでだ?
いつもなら、当たりめぇだろ俺を誰だと思ってんだよ!とか思って男に褒められても嬉しくねぇし!ってふんってするのに
あんたに褒められるのは…悪くないって思う……」
「俺はイングヴェィ
これからヨロシクね」
「イングヴェィ……うん…」
セリくんの感情はセリカちゃんの感情も影響する
自分の感情のわからない部分に困惑しているのが目に見えてわかる
そのやり取りを見ていたレイくんがあからさまに面白くないと言った態度
「あっ平和になりました?」
キルラが悪魔殲滅に気付いて戻ってきた
スッカリ忘れていたセリくんは
「ってオマエ!俺を突き飛ばして1人で逃げやがったな!!?」
思い出したようにキルラに突っ掛かる
気付かなかったケド、あの時キルラはセリくんを囮にしたの!?なんてヒドイ奴!?
魔族らしいと言えばらしいケド
「いやだってオレこの重症ですから、そうでもしないと逃げれないかと思ってね!?
まぁまぁまぁセリ様はこうして無事だったわけだし、過去の事は水に流しましょーや!アハハハ!!!アハハハハハハ!!!!」
「オマエって奴は…
助かったからよかったものの
マジでやられてたら絶対許さなかったからな」
「こえーこえー」
キルラはセリくんの機嫌を取るように肩に手を起いてまぁまぁと宥める
キルラは三馬鹿…じゃなかった魔王の四天王の1人だったよね
セリくんを様付けにして敵意もない
香月くんはセリくんに好意的で会いたがってる
記憶がなくても、魔族に友好的に接していられたら……セリくんは戦えないんじゃないかな
これは…セレンさんの望みは叶わないかもしれない
勇者が魔王を倒すってコト…は、セリくん次第
俺はセレンさんの所と同盟関係にあるケド、気持ちは神族も魔族もどっちの味方でもないし敵でもない
俺はセリカちゃんの…セリくんの絶対的味方だよ
「まっオレは帰りますわ
セリ様とはまた会う事もあるでしょう!!
お仲間の皆さんも、じゃねん」
キルラは最後まで声を大きくして去っていった
「なんだったんだろうなアイツ
もう俺と友達みたいな感じで馴れ馴れしかったケド」
冷ややかな目線でキルラを見送るセリくん
俺は友達という単語に思い出す
「そういえば、セリくん
ロックとローズの知り合いなんだよね?」
「えっ?イングヴェィ、ロックとローズを知ってるのか!?」
「うん、偶然会ってね
セリくんとはぐれた場所を教えてもらったから見つけられたんだよ
行く所がないなら暫く俺の城にいていいって言ってあるから、セレンさんに会った後に会わせてあげるね」
早くセリカちゃんにもセリくんを会わせたい!!
セリくんだってずっと俺の城にいていいんだからね!!?
「聞いたかレイ?ロックとローズは無事みたいだ」
「あぁ、安心した」
「それじゃ、2人ともセレンさんの所へ行こっか」
こうして俺はセリくんを見つけだして(おまけも)一緒にセレンさんの国へと向かった
だけど、その途中で沈黙になりセリくんの様子が少しおかしいコトに気付く
何か…強い憎しみを感じる
「どうしたのセリくん?」
「えっ?…わかんない
キルラと会った村に入る前から、なんか強い悲しみと憎しみがあって…
それがずっと消えない」
強い悲しみ…憎しみ……
セリくん自身がその原因がわからないってコトはセリカちゃん側に原因があるんだ
セリくんとセリカちゃんは感情も共有する
でも、テレパシーとかで繋がってるワケじゃないしお互いの記憶まで共有しない
「セリカちゃんに何かあったんだ……」
リジェウェィやカトルがいるのに、何かあるなんて考えられないのに
一体何が……?
いや、セリカちゃんのコトだから1人で抱え込んでいるハズ
俺にも頼ってくれない…
それでも俺は自分から君の手を掴みに行くよ
「レイくん、今から君に大切な話をするからよく聞いて、頼みたいの」
「あんたがオレに頼み事だって?」
「セリくんはね勇者なんだよ
魔王を倒せる唯一の存在
その力をほしがる悪い奴はいっぱいいるの
セリくんは魔族以外知っての通り非力だから、今まで君が守ってくれていた
でも、いつかレイくんが勝てない相手だって出てくる
セレンさんは女神だってさっき言ったよね
セリくんを守ってくれる強い味方の1人だよ」
俺はレイくんが持つガイドブックの地図にセレンさんのいる場所を指さす
「???俺の知らない俺を知ってる人多過ぎだろ」
セリくんは心が憎しみに溢れる胸を抑えながら俺の話しを聞いている
「言われなくても…自分の力の限界くらいわかっている……」
「俺はこれからすぐに帰らなくちゃいけない
だから、レイくんにセリくんをセレンさんの所へ連れていってほしいの」
「わかった
オレはあんたを信用できないが」
やっぱりね…レイくんは俺を魂レベルから信用なんてしない
「今の自分にセリを守る限界があるなら、強い力や仲間は必要だ
セリの事はオレが必ずその女神とやらの所へ連れて行くさ」
「ありがとうレイくん!」
セリカちゃんのコトでレイくんとは恋のライバルだけど、そうだからこそ信頼できる所もある
レイくんなら必ずセリくんを命を懸けてでもセレンさんの所へ連れて行ってくれるよね
「セリがあの魔王を倒せる勇者か…普通じゃないとは思っていたが」
レイくんはセリくんを複雑な気持ちで見下ろす
「自覚なんてねぇんだケドな~アハハ」
セリくんは自分のわからないコトは適当に考える所があるから今は笑ってるケドちょっと心配だな~
勇者の力がどれだけスゴイものかわかってない
世界も運命も変えるほどのものなんだよ
「それじゃ、俺も後から行くからまたね」
「うん、イングヴェィまたな」
そうして俺はレイくんにセリくんを頼んで先に自分の城へ帰るコトにした
今はセリカちゃんが心配だ
早く帰らないと…とてもイヤな予感がする
俺がいない間に知らない人達がたくさん増えたから、もしかしてそれが原因かもしれない
1人にするべきじゃなかった…
心配も不安もどんどん大きくなる
-続く-2015/03/22
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