第16話『たまに実話混ぜてくる』セリ編

「最近、なんかこう誰かに抱きしめられたりキスされたりするような感覚があるんだケド…疲れてんのかな」

レイとロックと近くの村まで一緒に行こうの旅も何日目かになっていた

「……感覚が残るほどとはレイ殿とイチャつきすぎでは……」

ロックは俺の言葉にマジドン引きしている

コイツとは会話のキャッチボールができる気がしねぇな

レイとイチャついたコトないし

ん~…もしかして、恋人に殺されてから数日経って人肌が恋しくて欲求不満かなんかでこんな錯覚を?

「大丈夫かセリ?疲れているなら今日は早めに休むかい?」

まぁいいか、別に気持ち悪いって感覚でもねぇしな

「いや大丈夫だ

心配してくれてありがとなレイ」

そんな会話をしながら歩いていると、上からゴリラが降ってきた

えっ何!?いきなり!?なんで!?

「ここを通りたくば通行料払いな!!」

なんだただの賊か

こういうのも何回目かな

どうせレイとロックにボコボコにされて泣いて帰るのがオチだ

ゴリラは身体を大きく見せてオレは強いぞポーズを取っている

「敵か…セリ、オレの後ろから離れるな」

「自分のレベルもわからない弱者が多いでござるな」

「はっはっは~~ほざけ人間共!!」

こうして戦闘開始から5分後、圧倒的なロックとレイの強さにゴリラのダメージは目に見えて増えていく

俺は最初の頃は2人の戦闘にスゲー!って見入ってたケド、今じゃあくびものだ

どうせ勝つもんな

「ちょっとタンマ!あんたら強すぎるから今からトラップ仕掛ける」

ゴリラは2人に対して両手でストップをお願いする

2人とも余裕がありすぎて、ゴリラのストップを聞いてあげて動きを止めた

トラップ仕掛けますよ~って事前に知らせてくれるコイツめっちゃ良い奴じゃないか…

ゴリラはそう言うとバナナの皮を取り出し地面に並べ出した

この賊をゴリラみたいだからゴリラって呼んでたケド、やっぱりゴリラなのか…

「バナナの皮だと…?ふざけてるでござるな」

ロックは呆れているが

いやバナナの皮をバカにしちゃいけねぇ

俺は小学生の時、アニメや漫画でよくバナナの皮で滑るって話をそんな滑るワケないだろって信じていなかった

そんなある日、学校からの帰り道にゴミ置き場の近くを通ると現実では幻とも言われる踏んでくださいと言わんばかりにバナナの皮が落ちていた

ずっと気になっていたバナナの皮の滑り具合

もうこれは天が俺に試せと言ってるようなもんだった

好奇心なんて抑えられない

知らないは罪だ

それは後悔に変わる

踏むしか選択肢のない俺は覚悟を決めてバナナの皮を踏んだ

「バナナの皮と見せかけて何か特殊なトラップを仕掛けているかもしれない

セリもロックも気を抜くな」

スゲー滑った

信じられないくらい滑った

バナナの皮を踏んだ右足が思っていたより持っていかれ、地面を踏んでいた左片足では支え切れないほどの滑りに俺は

アニメやマンガはフィクションじゃねぇ!!??と身を持って思い知ったのである(実話)

「お待たせ、いつでも来て!!」

バナナの皮を並べ終えたゴリラはカモンと俺達を誘った

「見え見えのトラップに引っ掛かる馬鹿なんていないでござるのに、なぁ?レイ殿」

「ハハハ…そうだな」

おいおいオマエら何シラけたこの空気作っちゃってんの?

あれ見てなんとも思わねぇの!?

「バナナの皮が目の前にあったら踏むのが常識だろ!!!??」

バナナの皮の踏むと楽しいよ面白いよさぁおいでと言う誘惑を感じている俺はレイとロックの冷静さにキレ気味になるわ

「セリのいた世界には変な常識があるんだな…」

そんな常識ないケドな

とにかく俺はバナナの皮を見ると何故か踏みたくなって、地面にバラ撒かれたバナナの皮をおもいっきり踏みに行った

「あぁ!セリ危ない!!」

「馬鹿が知り合いにいたでござる」

普通に滑ったわ…

なんの他に特殊なトラップもなく俺は普通にバナナの皮に滑っただけだった

転ぶ直前にレイに腕を掴まれ支えられて尻餅をつくコトなく無事だけど

なんだろな…バナナの皮を踏んで滑った時の全身全神経がハッとする一瞬の感覚に冷静になった

「しょーもないトラップに引っ掛かった!!??

このバナナの皮の滑り具合、もしかしてオマエは俺が小学生の時に初バナナの皮滑り体験をした時にあのバナナの皮置いた奴か!?」

「何の話!!!??

金持ってないガキに用はない」

バナナの皮が目の前にあると踏みたくなる衝動にかられるのは俺だけなのか?

そして実際そうすると、空しさと後悔しか残らないんだよな

「はっ!?幼女の声!?」

急にロックはある方向に強く反応し顔を向ける

えっ幼女の声?何も聞こえなかったケド?

「拙者の助けを求めている声でござる!!」

「おいロック待てよ!それはオマエのロリ好きから来るただの幻聴だろ!?」

走り出すロックにそう声をかけても止まるコトなく行ってしまう

アイツあんなに速く走れんのかよ!?

「レイ、ロックを追い掛けないと」

「わかった」

俺が言うとレイは俺を腕に抱き上げてロックを追い掛けた

レイの足の速さは忍者のロックに負けず劣らずだ

レイは弓使いの遠距離タイプ、敵から離れれば離れるほど強くなるから

足の速さは距離を取る為には必須なんだな

俺は…見た目と違って足が遅い!!

「あ、あの~~ぼくはどうすれば……」

ぽつんと残されたゴリラのコトなんてみんな忘れ去っていた


すぐにロックに追いつき、一緒に走っていると小さな人影が見えてくる

えっマジかよ…こんだけ離れてて声が聞こえるってスゲーな

ロックの言う通り幼い少女がなまはげみたいなモンスターに囲まれていた

「迷子?」

「お父さんとお母さんは?」

「幼女を泣かせる者は天誅でござる!!!!」

確かに幼い少女は泣いているが…

「ロック落ち着けよ!!」

顔は恐いモンスターでもコイツらには殺意も敵意もないコトを俺は感じ取った

ロックの攻撃をレイに止めさせて暴走を止めさせる

「何故でござるレイ殿!?」

キッとレイを睨みつけるロックの間に割り込む

「ロック、このなまはげみたいなモンスターはこの迷子の幼女を心配していただけだ

幼い子供なら誰もが泣いてしまう恐い顔に怯えてただけで、ここにいる誰も悪くない」

「ぬぬぬぬぬ……」

少しだけ冷静さを取り戻したロックはなまはげみたいなモンスターが敵意も何もないコトに気付き抑える

「おお、人間の兄ちゃん達が来でくれで助がっただ~

おら達は人間の子がらしたらどおも恐い顔見でぇで~

泣き止んでぐれねだ」

「すまないな

せっかく心配してくれたのに」

「気にするなだー

人間のお子なら恐がっで当だりめぇだ

恐がらない子のが恐ろしがよ」

このモンスター達が人間に理解があって優しすぎて感動した

今まで変なモンスターに襲われて戦うがほとんどだったもん(俺は戦ってないケド)

「後は頼んだでー」

「ありがとう~」

なまはげみたいなモンスターは俺達に幼女を任せて手を振りながら帰っていった

「さて、ロリ…じゃなかったお主の名は?」

終始なまはげみたいなモンスターを警戒していたロックはモンスターの気配が消えると幼女の前に屈み名前を訪ねた

ロリを愛して病まないロックの幼女の見る目が尋常じゃないんだが…近付けて大丈夫なんだろうか

いざって時はロックがどんなに強くても止めるつもりだが心配だ

イエスロリ!ノータッチ!!だぞロック!!

「ロ、ローズ……」

少しずつ落ち着きを取り戻した幼女ローズはその大きな瞳を瞬かせ改めて俺達を見上げた

見た目は5歳か6歳くらいか

ロックの好みロリは合ってるが巨乳ではなかった

ってかいるのかそんなロリ巨乳なんて二次元が現実に…

ピンクゴールドの髪は三つ編みに結った後に後ろでまとめ上げられ首元はスッキリしている

子供らしい大きな瞳は薄い緑色

服装は小さな身体には少し似合わないロングスカートがふわりとしていて、振る舞いは少し大人っぽかった

「ごめんなさい…さっきのモンスター達は私を心配してくれたのね」

ハッキリ言うわ……

可愛い

俺は大人のお姉さん派だが、ロリも可愛いと思ってしまった

恋愛は対象外ですケド

「大丈夫だ

あのモンスター達は人間の子供のコトをよくわかっていたから、気にしてないし怒ってないよ」

俺がそう言うとローズは申し訳なさそうな表情からホッと笑顔を見せた

その笑顔に完全に心を射抜かれたロックは地面を転げ回りながら悶えている

重症だなオマエ…

でも、すぐにシュッと立ち上がってキリッと全身を正す

「父上と母上はどうしたでござる?」

「パパとママは村にいるわ

ある日、知らない人が私を馬車で遠くへ連れて行こうとしたの

私は隙を見て馬車から降りたのだけれど…村への帰る道がわからなくて迷子に」

ん…?

「そうでござったか…」

ちょっと待てよ…

こういうパターンって、ただの誘拐ならパパママの村に送り届けてハッピーエンドになるのと

親に売られて連れて行かれたとかだと……

な、なんて本人が目の前にいるのに憶測で言えねぇよな

「可哀相な…

ん?どうしたセリ、心配そうな顔をして?」

「なんでもない!!」

あんな世界に生きてきた俺は悪い方に考えるのが癖みたいにになっているが今は考えるのはやめよう

とくに目的がなくとりあえず近くの村に行こうかの俺達のこれからはローズを村に送り届けるになった

結末はその時にハッキリするんだから、そん時はそん時に考えればいいんだよ

「お主の事は必ず村に送り届けるでござる

安心して拙者達に任せるでござるよ」

ローズの住んでいた村は俺達が目指していた村から少し離れている

10人もいない小さな村だからガイドブックの地図には載ってないみたいで、この辺とローズは教えてくれた

「暫くはモンスターとの戦闘や野宿が続いたりするケド、我慢できるか?」

「えぇ平気よ

ありがとうお兄ちゃん」

ハッ!?お兄ちゃんって!?俺のコトだよな!?

ロックにずっと女扱いされてきてちょっとなんか性別忘れかけてたし

なんか久しぶりに男に見てもらえて感動

レイはちゃんと俺を男だって認識してくれるんだケド

守ってくれるし、お姫様級に甘やかされすぎて、やっぱり性別忘れそうになる

「俺はセリ、こっちの金髪蒼瞳の爽やかなイケメン騎士みたいな奴はレイ

そっちのロリコン忍者はロック

これから暫くヨロシクなローズ」

「セリくん、レイさん、ロック、これからよろしくお願いします」

ローズはスカートをつまみ女性らしくお辞儀をする

やっぱちょっと大人びてるなと思うより先に、ローズの中でのくん付けさん付け呼び捨ての基準って何!?

いやしかし、男ばっかの中にロリとは言え女の子が加わると花があるよな

「バカップル、この真っ白な天使に悪影響な事を見せたり教えたりしないように頼むでござるよ」

ロックは相変わらずレイと俺をリア充爆発と言った目で見ながらローズを抱っこする

「何もねぇよ!?

俺達よりオマエのほうが危ねぇわ!!ロリノータッチだろ!!」

「ローズ姫、大きくなってもあんな風になっては駄目でござるよ」

「?」

「俺が悪い奴だって言いたいのか」

「あんな風(平らな胸)」

ロックが俺の胸に視線を向けてるのに気付いて察した

今は口で言ってもわかってくれねぇケド、いつかロックが俺が男だってわかった時どんな反応するのか今から楽しみで仕方ねーわ

「セリ、ロック、敵が来るぞ」

いつも敵は突然襲ってくる

レイが言うと空気は変わり一瞬で緊張が張り詰め、すぐに敵が襲い掛かってきた

「わっ!?」

地を崩し蟻地獄のように現れたモンスターは逃げ遅れる俺を狙いにくる

「セリくん!レイさん!!」

ローズはロックに守られてるから大丈夫か

「セリ!?」

レイは少し離れていて、モンスターは見向きもしていないのにわざわざ襲われている俺を助けに来てくれるんだ

いつもだ…今だって蟻地獄みたいな地が崩れる中に足を取られながらも俺に手を伸ばし掴む

「心配するな

こいつも対して強くない

一発で仕留める」

俺の無事を確認するとレイはいつも爽やかに笑う

でも、崩れた地に引きずり込まれるのはあっという間で暗い地下へと落とされる

泥の混じった勢いのある水と共に流されて、まったく助かる気がしねぇ

このモンスターは地面の下に土と水で自分の巨大な巣を作る

引きずり込んだ餌はこの泥水に流されモンスターの食糧庫らしき所へたどり着くってガイドブックに書いてあったのを思い出す

レイが大丈夫だって言ってシッカリ手も掴んでいてくれているケド、この水の勢いに息苦しさを感じる

さっき、俺はレイをローズに紹介する時に自然と騎士みたいと言っていた

レイは弓使いで身軽な見た目も一般的な騎士とは掛け離れているのに

いつも俺を守ってくれるから騎士みたいだと言ったんだ…

光みたいな金色の髪、雲一つない綺麗な蒼い夜と同じ色の瞳、爽やかな笑顔

レイはなんでこんなにも命を賭けて俺を守ってくれるんだよ

この世界に会った時からずっと

ただ単にレイが誰にでもそうなだけかもしれない

わからないよレイ…なんでそこまでしてくれるのか…

こんな足手まといで弱い俺に構ってたら、オマエまでしょーもないコトで命を落とすんじゃないかって心配なんだよ



-続く-2015/03/03

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