第13話『えっ…ドコ、ここ?』セリ編

目が覚めたらいつもの日常が変わらず訪れるものだと思っていた

なのに、今日は目が覚めるといつもの日常はそこにはない

「なんで…殺されたのかわからない……」

あるのはついさっき自分が恋人に殺された記憶がとても強く頭と心を捕らえているだけ

…突然だった

いつもよりアイツの機嫌が悪いなとは思ったケド、まさか殺されるなんて思わなかったよ

普通はそんなコト思わないし…呆気ない最期だった気がするな

まだ新しいその記憶が俺の瞳を濡らし目を覚まさせる

イヤな記憶とともに目が覚めた時、真っ暗な中にいた

ここが死後の世界って所か…

殺されたんだから俺は死んだんだよな?

でも、考えたりもできるし感情もあるし身体も動く

これって生きてるってコトだろ?

どういうコトなんだ

手を伸ばすと、木の板のような感触がする?

力を入れると板は何かの蓋のようにして開く

ちょっと重いケド、どかせないコトはないな

「ここは…ドコだ?」

真っ暗な中から次に見えた景色は周りは薄暗いけれど広く天井の高い廃墟みたいな場所だ

ちょうど俺のいる場所の天井には穴が空いていて太陽の光がこぼれ落ちている

真っ暗闇から急に光を受けて慣れてない目を細めながら辺りを見回した

棺桶がずらりと並んでいてそれ以外には何もない…のか?

そして、その棺桶の1つに自分が入っていたコトもわかった

棺桶…なのに不思議と不気味な感じはしない

変な所だなとは思うが

ってか………マジで死んじゃったのか俺は

ここは天国か地獄か、それとも夢…?

とりあえず泣くのはやめた

泣いてる場合じゃねぇし

残った涙を拭って、まったく状況がわからないからとりあえず立ち上がろうとしたら後ろから声をかけられた

「あんたもここが何処かわからないみたいだな」

振り向くと俺の後ろに少し離れた棺桶の上に座った金髪蒼瞳の超イケメンが俺を見ている

えっ何?外国の人?めっちゃ日本語ペラペラだけどスゲーイケメン

とりあえず、俺は人がいたコトに安心して自然と口元が緩み微笑んだ

「……………………。」

相手は俺が振り向き微笑むと何故か目を見開いて言葉を失う

えっなんなんだ?

この金髪イケメンからしたら俺みたいな東洋人は珍しいか?

数秒の微妙な沈黙に耐えられなくなって先にそれを破ったのは俺だ

「あんたもってコトはオマエもか?

………えっと…その前に俺の顔に何かついてます?」

この目立つ容姿だから、人から注目を浴びるのは普段からなんだケド今は2人しかいないんだし気まずいだろ!?

「あっ…すまない

あまりに綺麗な人だから聖女様かと思った」

イケメンはハハハと爽やかに笑う

俺が綺麗な人で可愛い(可愛いとは言われてない)のは知っているが、聖女とは掛け離れたような存在だぞ…

「たまに女に間違えられるコトもあるが、俺はこれでも男だぞ」

「そうだな

よく見ると一応男みたいだ」

立派じゃなくて悪かったな!?一応とか失礼な奴!

俺だってオマエみたいなイケメンに生まれてたら人生バラ色だったわ!!

綺麗って褒められるのは嬉しいが、男としての自分には不満だらけなんだ俺は

小柄だし非力だし

「太陽の光に当たったあんたの白い肌が輝くように見えて神秘的で幻想的だな

こんなに綺麗な人を見たのは始めてだから驚いた

すまないな」

それで聖女様ですか

「………ふ~ん」

一応男みたいだなとか言われて失礼な奴なのに、コイツの悪意のまったくない爽やかな笑顔を見て褒められると何も言えなくなる

ちょっと調子狂う…

こんな爽やかで裏表なさそうな奴は俺の生きていた場所にはいなかったからな

「オレはレイ、あんたの名前は?」

「…セリ」

「名前も女みたいだな…セリか」

言うと思ったよ!!

だからちょっと声小さくなったし!!

むーっとレイを軽く睨むと、またレイは言葉を詰まらせて俺を見ている

「…セリ……か……」

「どうかしたのか?」

「いや…オレ達、前に何処かで会った事があるかい?」

眉を寄せて何かスッキリしないとレイは聞いてくる

「それはナンパか?」

俺に金髪の外国の知り合いなんていねぇぞ

思い出そうとしているのか少し考えるような様子のレイを見ていると俺達の間に

野太い誰かの恨みが詰まった声が入ってきた

「そこのバカップル爆発しろでござる!!」

「えっ?」

バカップルどこだ?俺も爆発させるの手伝うぞ

声のする方に視線を向けると荒い息遣いの太った男が俺達にドーンと指を向けていた

指を向けてくる男も東洋よりは西洋系だ

第一印象はオタクの見本がそのまま現れたような典型的なタイプで何故か忍者のコスプレをしている

えっバカップルってレイと俺のコトかよ!?ふざけんな!!

「いや!バカップルじゃねぇし!!俺は男だからちゃんと見ろ!!」

いきなり喧嘩(?)を売られてカッチーンと来た俺はじたんだを踏んで言い返す

「黙りたまえっ絶望的貧乳女!僕はロリ巨乳派なんだ!!」

知るかよ!?オメェの好みなんかどうでもいいわボケ!!!

まぁ俺も胸は大きいほうが好きかな

だが俺はロリより大人のお姉さんのほうが好きだ

コイツとは合わねぇな

「まぁまぁセリ」

レイがじたんだを踏んでいる俺を宥めると、あれなんだろ怒りがスーッとなくなっていく

スゲェ!レイの奴マイナスイオン持ってるぞ!?

「この状況でイチャつける脳天気なリア充どもは滅びたまえでござる」

格好からして日本大好きなのはわかったが、日本語なんか変に覚えてるなこの人

「なんなのオマエは?俺達に文句言う為に現れたのか?」

ただ話をするだけでコイツの中ではイチャつくバカップルになるのかよ

「拙者はレベル75のロックでござる」

いきなり自己紹介!?レベルって何!?ゲーム脳!?

俺のネトゲのキャラもうすぐレベル77だから勝ったわ

「へ~

俺はもうレベル1からでいいよ

弱いって自覚あるし、スラ〇ムにも勝てる気がしねぇ」

「セリ、さっきから何の話をしているんだ?」

「俺もわかってないからレイもわからないままでいいと思うよ」

レイと俺を勝手にバカップルのリア充と思い込んだロックは最初から喧嘩腰だ

「ここはどうやら死後の世界でござる

拙者は忍者の真似…ではなく修行中に足を滑らせ崖に落ちたのが新しい記憶でござるな」

ロックの自分の死の記憶に俺は確信した

信じたくなかったケド

やっぱりアイツに殺されたのは夢じゃなかったんだな…って

胸が痛むだけ、夢だったらよかったのにって微かな希望が完全に消えた

全身が冷たい悲しみに襲われるだけだ

「オレもここは死後の世界なんじゃないかと思っていた

あれで死なないってのはありえないからな」

ハハハってレイは自分の死でさえ爽やかに笑う

笑い事なの!?

「どんな死に方したらそんな笑えるんだ?」

「1000匹のモンスターに囲まれて、少し失敗しただけだ

18年と言う短い人生だったかもしれないが、後悔は何もない心残りもオレにはないんだ」

1000匹のモンスターって何!?ゲーム世界の人かよ

俺の世界と違ってファンタジーそうだな

レイの着ている服もそれっぽいし、俺の世界だとコスプレって言うんだぞそういう格好

ここが死後の世界ってのと別に、ここにいる3人はみんな同じ世界の人間じゃないってコトがわかる

「えっ…18年?レイって18歳なのか!?」

「あぁ、18歳だ」

ま…マジか……5歳も年下とか…レイ、俺より年上に見えるんだケド

大人っぽすぎる……イケメンだし………

なんか負けた感が…ショックが…

俺は23歳なんだってのは内緒にしとこう

絶対にそうは見えなかったって笑いそうだもん

「後悔も心残りもないなんて、18歳でこれだけイケメンなら彼女とかいただろ?

やりたいコトとかもこれからだったんじゃ…」

「恋人?いないな

考えた事もなかった」

またまた~(笑)お年頃だろ~?しかもイケメンで18年間彼女いませんって……誰が信じるか!!!!

喧嘩売ってんのかよ!!!??

「よくわからないが、オレはずっと1人で世界を旅していたんだ

…見つかるはずもない何かをずっと捜していたような気がする

今度こそ、オレの手で守りたいものを…だな」

「レイ…」

「見つかっていないから、心残りがないのは嘘かもしれない

でも、変な事を言ってるかもしれないがあの世界での心残りは何1つないんだ」

レイって…本当に俺より年下なんですか?

俺が18歳の時はただのアホだったぜ

今もアホだが

でも…

「それじゃ、レイはこの世界に捜しに来たんだな

そのレイの世界では見つかるはずがなかったもの」

死んだら終わりなんかじゃない

俺達はこうして足を地面につけて立ってる

声を出して相手に言葉を伝えてる

こうして触れられる

綺麗だと思う感情もリア充爆発の妬みも

生きているからできるコトだし感じるコトなら

俺達はこの世界で生きてるってコトになる

なんとなくだけど、この世界で…本当の自分の運命が動き出すような

そんな気がするよ

「………セリを見ていると、見つかる気がする」

レイは始めて俺を見た時と同じ視線を向けながら爽やかに笑った

だから釣られて笑っちゃう

「そう言うセリは自分の世界への心残りはないのかい?」

聞かれて俺からはすぐに笑みが消える

心残り…

「……ないな」

心残りなんてない…

恋人に殺されて死ぬってのはそこでもう永遠の別れってコトなんだし

殺されても…俺はまだ好きだケド……

この好きが心残りなのか?

時間が経てば忘れられるハズだよな…

あんな奴…偉そうだし乱暴だし浮気するし……ッ嫌い………だ…バカ

心が冷たく苦しむ

「イチャつくバカップルの赤い糸を切るでござる!ござる!」

いきなりロックがレイと俺の間を手刀で割って入ってきた

「喋っただけでイチャつくコトになるなら、今俺とロックが喋ってるのもイチャついてるってコトじゃねぇのか!?」

「絶望的貧乳女なんぞこっちから願い下げである

見た目は美人でも僕は12歳以上はババアにしか見えないでござる」

貧乳言われても何とも思わないが、なんかめっちゃムカつく…このロリコン野郎

もうレイとはそういうんじゃないっていちいち言うのもめんどくせぇ

「おーい、こんなものがあったぞ」

ロックと言い合ってる間に廃墟を軽く探索していたレイが手にガイドブックみたいなものを持ってきた

「なんだそれ?」

不思議に思いながら3人で中身を見てみると

この世界のコトが簡単に書かれていた

魔王の生まれ変わりである人間の男が現れたせいで魔族と魔物の力がヤバイくらい強くなり世界が荒れているとか

その混乱に紛れて悪魔も今まで以上に好き勝手やってるとか

神と天使が平和の為にそれらと戦っているとか

世界地図とか

あっもう読むのがめんどくさくなった

って、これまんまガイドブックじゃねぇか!!!??

町や村の外に出る時は襲い掛かってくる恐い存在がたくさんいるので武器は必ず所持しましょう

自信のない人は引きこもってください

とか恐すぎ!?俺の世界は人間しかいなかったし治安も悪かったが

人間以外にも色んな種族がいるこの世界の治安も相当なもんなんだなと思ってしまった

レベル1の俺なんて一歩外出たら死ぬんじゃん?

人間しかいなかった世界で生きてきた俺が、いきなり非現実的で存在しなかった魔物や悪魔とか天使がいますよーって言われてもとくに驚かないのは

もうなんだろ

ゲームのやりすぎで、天使悪魔魔物とか実際にめっちゃいます!!って言われてもすんなり受け入れられるわ

「いつまでもここにいても仕方がないな

まずはここから1番近い村へ行こう」

「そうでござるな」

レイは地図を見て、その村を指さす

「徒歩5分くらい?」

「いや、この距離なら7日くらいはかかるぞ」

マジかよ!?

俺の徒歩5分発言にレイもロックも何おかしなコト言ってるんだって顔をしている

まるでそれが普通かのように…

もしかして、レイとロックは似たような世界の出身なのかもしれない

2人にとっての当たり前が俺の想像を超える

「セリはこういう世界とは掛け離れた世界だったのかい?」

「う、うん…」

俺は超足手まとい決定じゃんこれ

それに7日って俺の体力が持つかどうか…ちょっと身体弱いタイプとか言ったらロックに殴られそうだ

「心配するな

オレがセリの事は守ってやるから」

爽やかな笑顔で嬉しいコトを言ってくれるケド、マジで不安しかない

足手まといなんて…ヤダな

「女は足手まといでござるが、レイ殿が言うなら仕方ないでござるな」

偉そうに腕組みしながら上から目線なロック

何も言い返せない…

レイは弓、ロックは双剣、って武器をそれぞれ持っているのに

俺は何も持っていない

もちろん魔法なんてなかった世界に生きてたから魔法も使えない

「そんな顔するなセリ

何があってもオレはセリを見捨てたりはしないぞ?」

レイがいなかったら俺はこの廃墟から出るコトすらできなかったかもしれない

完全に詰んだ

偶然にもレイとロックが一緒だったのが凄くラッキーだったんだと思える

……外の敵がクソ強くてレイとロックが一撃で死んだらどうしよう

なんて、かもしれないってのが頭を過ぎる

俺の悪い?癖だ

悪いコトをもしかしたらって考えちまう

そういう世界で生きてきたからな……

何もできないくせに…

いやなんかめっちゃフラグが…急に仲良くなったりするのってこの後すぐ死ぬってのよくあるじゃん!?

ふと俺は自分の左隣の棺桶の蓋が開いているコトに今気付く

レイとロックがいた棺桶以外は蓋が閉まっているのに

これって俺達が目を覚ます前にもう1人誰かがいたって…コトか?

気にしなくて良いコトなのに何故かめちゃくちゃ気になる

「…どうかしたのかい?」

空いてる棺桶の中を見つめる俺にレイが声をかける

「いや…なんでもない」

気になっても、そこには今は誰もいないんだからどうしようもないよな

「グズグスするなでござるバカップル」

出発だとロックが廃墟の出入口で俺達を呼ぶ

「行こうレイ」

「あぁ」

俺達はこの廃墟から外へと出る

なんか…嬉しくなる

ここから、俺の運命が動き出すような気がするからかな



-続く-2015/02/15

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