2-7
◇◇◇
千人近い生徒がひしめき合っている講堂内は、春先とは思えぬほどの熱気と緊張で満ちていた。
学年が上がるごとに、その人数は少なくなっていく。明日から行われるものと半年後にもう一度行われる実力試験の結果によってランク分けされ、基準に満たなかった者は退校処分となるためである。
「いや、俺は除外されているのか」
学園から入学許可証は来たが、なにも無試験で入学できたというわけではない。数学や歴史などの一般科目に加え、体力や
「は、くだらねェ……」
だから
こんなヤツらに自分の手の内を晒すようなことはしない、と。自分の実力を侮っていることをいつか後悔させてやる、と──
「あの」
右耳の鼓膜が空気の振動を傍受するが、
「……ちょっと、聞いていますか?
ちらとそちらを見やれば、珍しい
やや高めに縛られた二つの
「何か……?」
「教室で
「……お前誰だよ」
すると女は
「四ノ
「悪い。知らないし興味もないんだけど」
ついと視線を逸らそうとすれば、チトセは顔を真っ赤に染め、
「さっさと私の質問に答えなさい!」
怒鳴った。
四ノ
その周囲の生徒たちが驚いたようこちらを見、チトセを確認した途端に何事もなかったかのように前を向く。先ほどより静かになったところで、
「別に。明日からの実力試験のことだ」
「そう、ですか」
チトセも納得したようで、前を向く。
「はぁ……せっかく
と、何やらブツブツ言っている。
実力がすべてのこの世界。
ガルゼレスという化け物を討伐し功績を残すことでしか、地位と名声は維持するどころか得ることすらできない。幼少期から実力だけしか評価されなかった者たちは、当然ながら他人を蹴落すことしか考えていない。実力が高いほど社会性は皆無に等しいのであるが、この学園にはそれに近しい者たちがひしめき合っていると考えるのが妥当であろう。
「めんどくせェな……」
これから三年間、そこまで深く関わらないとは言え学園に通わねばならぬ以上、彼らとの接触は必至。となれば、これから起こりうるであろうことは自ずと想像できる。そこまで考えて、
「……であるからして、君たちには大いに期待している。これからの学園生活、気を緩めることなく各人の能力の向上を当面の目標とし、鍛錬に励むように。以上。」
ようやく、学園長の話が終わる。
「続いては、新入生代表の挨拶です」
司会進行役の男がマイクを握る。
見間違えるはずがない。あの
それまでのざわめきが嘘みたいに収束し、物音ひとつ聞こえないほど静まり返る。
「こんにちは。
凛、と講堂内に響き渡る声。束ねられることなく背中の中ほどまで伸びた
「この学園に入学できて、あたしは本当に光栄に思います。これからの三年間──」
彼女は、
「どういうことなんだ、
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