2-6
◆◆◆
「──い、……──リン……、リンドウ」
誰かの呼びかけで、思考世界から引きずり出される。気が付けば、目の前を
「聞いてる?」
「時雨が、なんで……」
──生きている?
と聞こうとして口を開き、少しの
「……別に」
とだけ告げれば案の定、
「は? なんだよそれ。今何か言いかけてただろ」
「別にって言っ──」
「言えよ」
一発触発の危機を秘めて火花を散らす、
凍りつくような沈黙が、二人の間に鎮座する。
「……まぁいいけどね、別に。今は僕の婚約者だから」
またもや、
「ほら、隠しきれてないってば」
と、
キッ、と鋭い眼差しを向ければ彼は見下すような冷笑を浮かべ、こう言う。
「時雨の何を知っているか知らないけど、僕らが知らないなにか重要な情報をリンドウが持っているのなら、家の者がお前を連行して、拷問にかけるかもしれないよ?」
「…………」
「なんなら、僕が言いつけてやろうか?」
彼の目に、
そんな
「……お前、本っ当にめんどくせェヤツだな」
「あ、やっと喋った」
「うるせェ、話しかけんな」
「えー、いいのかなぁ、
「……何が目的だ」
これ以上無駄な応酬をしていても意味がないと判断。
「友達になろう」
「………………は?」
「だから、僕と友達になろう」
「……てめェ、ふざけてんのか」
自分でも驚くくらい低い声が、
声が怒りに震えるのを、抑えきれない。抑えられるはずがない。
「ははっ、そんなにキレるなよ。お前の内の゙ノア゛が汚れるぜ?」
隠しきれているはずだった。いや、隠せている。なにせ、無理矢理封じ込めているのだから。だから、周りのヤツらには悟られることはない。そう思っていた。これはハッタリか、それとも本当に──
「……なんのコトだ」
だから結局、
それに対し、
「隠しても無駄だって。な、仲良くやろうぜ、リンドウ」
その貼り付けただけの笑顔の下で何を考えているのか、皆目見当もつかない。 が、注意しておくに越したことはないだろう。
「俺に話しかけんな」
「えー、素直じゃないなぁ」
そこで女教師が、
「ではみなさん、講堂に行きましょう」
他のクラスもひと通りの説明が終わったらしく、廊下側が騒がしくなってゆく。
どうやら、これから入学式が始まるらしかった。その新入生の代表挨拶をするのが、
椅子が床と接触し音を立てながら、生徒たちは腰を上げ同様に廊下へと排出されてゆく。
机に手をついて立ち上がった
「さ、行こうぜリンドウ」
右手を、
「だから、俺に話しかけんなって言っ──」
「だからさ、素直になれって」
それでも
「
「……ッ、くそが」
そんな
それから
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