三海の喧嘩
第三者目線でそれを見ている三海はすでにうんざりしていた。
夜と詩音は海までの道中も、海に来てからもずっと親について不満を述べ続けている。しかし親に特に不満のない三海にはその内容がよくわからないないのだ。
夜の母親が夜に対して過干渉で過保護なのは事前に聞いていたからそうなのだろうけども、夜の言うことを全く信用していないというのはどういうことだろう。親ならば子供の言うことを信用するものではないのか?
詩音が親から放置されているというのもわからない。子供のことがどうでも良い親などいないと、三海は無条件に思っている。
夜の親も詩音の親も、三海の親と違いすぎる。親とは、子供を大切に育むもののはずなのに。
そしてなにより三海が不愉快なのは、夜と詩音が二人で完結していることだった。二人は互いに親の不満を言い合って、傷を舐めあって、管を巻いている。そこに三海の入り込む余地はない。
だとしたらなぜ三海は呼び出されたのか。もちろん二人だけでどこかに行かれてしまうのは嫌だ。一人で置いて行かれてしまうのはつらい。でも、今の状況だって、一人で置いて行かれてしまっているのではないか。
「ねえ」
「だから詩音の親はさ――」
「ねえ」
「うちの親にももううんざりだ」
「ねえってば!!!」
三海の怒声に夜と詩音がびっくりしたように顔を上げる。声を上げた三海自身もなんでこんなにも声を張り上げてしまったのかわからなくて気まずい。
「え。どうしたの、三海」
「……いつまで、ここにいるの」
「いつまでって」
「わたし帰る」
「なんで」
「わたしがここにいる必要ないでしょ!? 夜と詩音は二人でぐだぐだぐだぐだ親の不満ばっかり言って!! いい加減にしてよ、三海除け者にして二人で盛り上がるのはそんなに楽しいの!?」
夜伸ばした手を三海は思いっきり払いのける。詩音は大きく目を見開いた。
「詩音たち、そんなつもりじゃ」
「じゃあどんなつもり!? 悪気がなかったっていいたいの? あのね、悪気がなく人の嫌がることするなんて性格悪いよ。そんなんだから親も構いたくないんだよ!!!」
「え」
「あ」
じわりと詩音の目がうるんだ。三海が声をかける間もなくぼろぼろと涙が溢れる。
「っ……。親に、なにか言いたいことあるなら親に言いなよ。夜は親をわかろうとしなさすぎだし、詩音は言いなりになりすぎなの。違う人間なんだから、距離のとり方を考えて。親とも、三海とも」
そう、絞り出すように言い切った三海に夜と詩音は押し黙った。
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