第8話 すこしだけすねてもいいですか?
心優しき少女の友人】
私は君に言いたかった。
あんな男、やめておけばよかったんだ。
そう思ってはいるけれど、もしも言葉にしてしまったら、彼女の涙を遮り否定してしまう事になる。
だから私は、そっと横で、彼女の頭をなでる。
彼女を振った男に、心底腹が立つ。
私は何も出来ない自分に腹が立つ。
そんな時は、つい癖でタバコに火をつけてしまう。
彼女はタバコが嫌いだ。
でも、そっと横にいる時だけは、おおめにみてくれる。
いつもだったら、タバコを手にしただけでひどく怒られる。
一つ確かなことがある。
彼女と出会ってから、タバコが少し減ったのだ。
タバコをもっと減らす方法を、私は知っている。
ただ、それは叶わない願望だという事も、私は知っている。
そして、その言葉は、絶対に言葉にしない。
そんな自分が嫌いだ。
何かあったとき、横で泣いている彼女を慰めることしか出来ない自分はもっと嫌いだ。
この関係は不満だが、この関係が壊れてしまうかもしれないと思うと、怖くなって言葉が出てこない。
たった一言が、出てこない。
慣れたくはなかったけれど、いつしか居心地の悪いこの苦しみに慣れてしまった。
私のタバコが吸い終わる頃、彼女の涙も止まる。
そして、タバコはやっぱりダメだと冗談ぽく怒られる。
この瞬間が、たまらなく幸せだ。
今日は久しぶりに泊まっていくのだろう。
男に振り回された後は、必ず鍋を囲んでグチとのろけを聞かされる。
くだらない男の話をすると、彼女はすっきりとしたいつもの笑顔になる。
この笑顔を見るために、私は彼女のそばにいる。
彼女が笑えば、私も笑う。
ただ、一緒にいるだけ。
ただ、一緒に食事をしているだけ。
この空間は、幸せに満ちている。
この空間が、永遠に続けばいいのに。
心の底から思い、願っている。
ずっと二人だけじゃダメなのかな?
言いかけた言葉は、言葉として出てこない。
今日はもう遅い。
一緒に片づけをして、風呂に入り、一緒のベットで横になる。
先に寝てしまった彼女の寝顔を見ながら、自分も眠りにつく。
明日になれば、また彼女は新しい恋をみつけに行くのだろう。
すぐにでなくても、そのうち新しい彼氏を作る。
自分ではない、誰か。
今日はなかなか眠れない。
彼女の寝顔を覗くと、涙を流している。
涙と一緒にあんな男の事は忘れてほしい。
彼女の寝顔に、そっとキスをする。
言いたいけど言えない。
きっと君は、この気持ちに気づいてくれないのだろう。
どうして、女同士は友人でしかいられないのだろう。
知ってる?
私が君を、愛している事を・・・
傷心の少女】
今日、この世で最低だと思える男と、キレイさっぱり別れてきました。
付き合って長くはないけど、たくさんデートした。
たくさん、色々なことをして、たくさん一緒にいた。
でも、別れは突然。
今日はとことんやけ食いしたい。
今日も会えるかな。
きっと彼女は、笑顔で私のお願いを聞いてくれる。
いつも、彼氏と別れた時、優しく一緒にいてくれる大親友。
いつも優しく私の話を聞いてくれる。
いつも優しく私の頭をなでてくれる。
いつも優しい、私の大親友。
言わなくても、私は知ってるよ。
私がタバコ嫌いなの知ってるから、いつもなら一緒にいるとき絶対に吸わない。
あなたは、いつもイラついたときしかタバコを吸わない。
あたなは、私が男と別れたとき、いつもあんな男やめとけって顔で怒ってる。
私のために、私の代わりに、怒ってくれる。
ずっと一緒にいてくれてありがとう。
言葉にしない、あなたに秘密の言葉の一つ。
照れくさくてありがとうなんて直接言えない。
でも、ありがとうの気持ちいっぱいをいっぱいにして、私はあなたに甘えるの。
付き合わせてごめんね。
あなたの優しさに今日はたくさん甘えたいの。
今日も、お決まり鍋パーティー。
男と別れたときはこれに限る!!
今日も朝まで付き合ってもらいます!
そして、たくさんグチを聞いてもらいます!
なんでだろう。
なんでこんなに優しくしてくれるんだろう。
友達なのに・・・
一番の大親友なのに・・・
間違えて、好きになってしまいそう。
今日は、余計なこと考えない。
たくさん食べて、たくさん笑って。
とっても幸せ。
こんな時間が、ずっと続けばいいのに。
そんな事も思ったりする。
たくさんお話しして、たくさんご飯食べて、後は寝てすっきり。
また明日から、新しい私が始まるの。
そう信じて、私は眠りにつく。
とってもとっても優しい、大好きな友達の横で。
夢に出てくるのは、決まって大親友の彼女。
彼女は夢の中で、好きだよと優しくささやいてくれる。
そんな優しさがうれしくて涙が流れた。
流れた涙を拭うように、彼女の優しいキスで私を包んでくれた気がした。
実はね・・・
本当はね・・・
私、あなたのことが好きなの。
言いたいけど、絶対に言えない。
私の、あなたへの秘密の言葉のもう一つ。
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