第6話 カンケイナイ
少女】
どうせ何を言っても分かってもらえない。
私の気持ちなんて、分かってもらえるわけがない。
でも、このモヤモヤをどう表現すればいいのかわからない・・・
今の私の心の中は、絵の具でグチャグチャに塗りつぶされたように、何色なのかも、何を象っているのかもわからない。
どうしたら、伝わるの?
どう言えば、伝えられるの?
考えれば考えるほど言葉にする事が出来ない。
それでも、あなたは横でうなずいていてくれる。
なんで、私のそばにいてくれるの?
こんな、訳のわからない私の横で、私の涙を拭ってくれるの?
その優しさに、甘えてしまう自分も嫌。
私の頭を優しく撫でて、抱きしめてくれる大切な人。
大事にしたいのに、傷つけてしまっている。
私は、言葉にするのが下手だ。
思っていることを、そのままストレートにぶつけてしまう。
それがきっかけで、たくさんの人に嫌われてきた。
人に優しくしたいのに、余計な一言で、他人に嫌な思いをさせてしまう。
やめようとがんばっても、なぜか口から出る言葉は暴力に変わる。
こんな私にも、大好きな人が出来た。
こんな私でも、大切にしてくれる人が出来た。
私の事を想ってくれる、優しい彼。
私のワガママを聞いて、一緒に笑ってくれる。
一緒に笑っているときは、本当に幸せだと感じる。
一緒に居るだけで、本当に幸せだと想える。
そんな彼が、ずっと一緒にいてくれたらうれしいけど、きっといつか居なくなってしまうのではないか・・・
いつも心配になる。
そんな時は、いつかくるのかな・・・
意味もなく涙が流れる。
彼は優しく私をなだめる。
優しい彼・・・・本当に優しいけど・・・
でも・・・
あなたには、関係ないことだから・・・・
さぁ、これで、ずっと、私と、一緒に、いると、誓って、くれる?
青年】
僕には、少し難しい彼女がいる。
いつもは笑顔の素敵な彼女。
でも、時々涙が止まらないくらい沈んでいる。
僕はどうしていいか分からず、ずっと横で彼女の頭を撫でる事しか出来ない。
こんな自分が、歯がゆく感じる。
なにか、彼女に出来ることはないだろうか。
考えて、少しずつ色々な話をした。
最初はどこか遠くに感じた彼女は、段々と心を許してくれてきた。
時が立つにつれ、僕たちは恋人というカタチになった。
と、思う。
彼女はいつも何かを考えている。
彼女の悩みは、僕にはわからない。
理解しようとしても、彼女から距離をとっているように感じる。
どうしようもなく、うめられない距離がそこにはある。
昔に比べれば少し近づけたように思えても、気付くとまた遠くに感じる。
僕は、ただただ彼女の涙を拭い、そっと抱きしめる。
言葉にすると、きっと彼女はもっと傷ついてしまうと思うから。
彼女の気持ちにそっと寄り添って、彼女のちからになってあげたいという気持ちに嘘はない。
でも・・・それでも彼女は・・・
このままでは、どこか遠くに行ってしまうのではないかと心配になる。
もし遠くに行ってしまったら、そのまま戻ってこないのだろうか。
もしくは、戻りたくないのだろうか。
その行く先には、何があるのだろう・・・
ふと考えてみる。
でも、僕には想像も出来ない。
このままでは、彼女が壊れてしまう、そんな気がする。
彼女の笑顔がいつまでも、永遠であってほしいと願う。
彼女の笑顔を見続けたい・・・
このまま・・・
ずっと・・・
このまま・・・
ここに居てくれるかい?
ずっとこのまま・・・
永遠に、僕のモノでいてくれるかい?
抱きしめた彼女の温もりが、僕の手の中で段々と冷たくなるのを感じた。
それと同時に、僕の中には、心地よい安心と今までに感じた事のない充実感で満たされていった。
目の前が真っ暗な暗闇へ、変わっていく。
ゆっくりと色を失う風景は、とてもきれいだ。
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