第5話 お・う・ち♪
純粋な恋する女】
今日は、彼がお出かけしているから、彼のお部屋でお留守番中の私。
彼のお部屋で一人、彼の帰りを待っていても、別にさみしいとか思ったことはないの。
きっと、お仕事が忙しいからしょうがないの。
帰りが遅くても、彼が浮気しているかもなんて、考えたことない。
だって、彼は私だけを愛してくれているから。
でも、最近あんまり外で会ってくれないから、自宅デートをしようと思ったんだけど、結局彼はお仕事で出かけてしまったみたい。
一応、合鍵持ってるし、ちょっとくらい出かけても問題はないんだけど。
でも、せっかく彼のお部屋にいるから、暇つぶしに掃除でもしておこうかな。
忙しいんだろうけど、あんまり掃除とかしないのか?
彼は片付けるのが苦手なの。
でも、そんなところも可愛いからから私的には許せちゃうのです。
私って優しい彼女♪
お掃除してると、いつも気になることがあるの。
こんなに長く付き合っているのに、私のことが大好きなのに、私の写真が1枚もない。
せめて一緒に写ってる写真くらいあっても良いかなと思っているけど、きっと友達とか遊びに来たとき恥ずかしくなっちゃうのかな。
そんな恥ずかしがり屋な彼も、可愛くって大好き。
ちなみに彼は、可愛いからって年下じゃないよ。
私の1歳年上で、とってもやさしくってかっこいい彼。
お掃除も一通り終わって、なんだかすっきり。
部屋が片づいたから、イタズラに私の写真でも飾っておこうかな。
あ・・・
知ってるけど、他の女の子の写真を発見。
まだこの子のこと気になっているのかな?
まぁ、このくらいは許してあげましょう。
私は心が広いのです。
そういえば、引き出しに私の写真が1枚だけあったのを思いだした私。
いつでも見れるように、彼がいつでも目に付く場所に飾ってみた。
これで、いつでも私がついてるよアピール。
いつも疲れた顔で大変そうにしているから、ちょっとでも元気になってくれればいいな。
まだ、帰ってこないから、晩ご飯でも作っておこうかな。
優しい私♪
まずはお買い物。
鍵はちゃんと持ってるから、しっかり戸締まり。
彼の事を考えながらのお買い物はとっても楽しい。
好きなメニューも、長い付き合いでちゃんとチェックしてるから大丈夫。
少し買いすぎちゃったけど、彼のためにがんばってご飯を作るのです。
ちょっと辛口くらいが彼の好みだから、味付けも少しピリ辛。
美味しいって言ってくれるかな。
ご飯も作り終わっちゃったけど、まだ帰ってこない。
連絡もないし、お仕事忙しいのかな?
お手紙添えて、いつでも食べられるようにして、今日は帰るね。
ちゃんと栄養つけて、お仕事がんばってね。
誰もいない部屋だけど・・・
ま・た・ね♪
男・優しい彼氏】
俺には長く付き合っている彼女がいる。
料理上手な可愛い彼女。
俺の好みもバッチリで、彼女の作る料理は最高にうまい。
学生の頃から付き合って、そろそろ8年になるかな。
結婚も考えている、一つ年下で自慢の可愛い彼女。
俺は社会人になって、忙しい毎日を送っているが、彼女がいるから頑張れる。
お互いに色々な事が言い合える仲で、一緒にいると安心する。
仕事はもちろん、他にも俺のことをいろいろ理解してくれるから、本当に助かっている。
最近仕事が忙しいから、合う時間も少なくなってしまったが、彼女は文句一つ言わない。
本当に、俺にはもったいないくらい、できた彼女だ。
そして、そんな彼女とは別に、ある意味長い付き合いの女が一人。
俺は、そいつに長年頭を悩まされている。
簡単に言ってしまえば、そいつはとんでもない勘違いをしているストーカー女だ。
彼女と付き合って少したった頃、その女に告白された。
でも、自分には彼女がいるからと断ったにもかかわらず、なぜか俺の周りをうろうろしている。
そいつは偶然と言い張り、俺の行く先々で待ち構えている。
あからさまに言動がおかしい。
彼女もその事は知っていて、何度か話し合いのような事もしてみたが、なぜかその女はいつも笑顔で帰って行き、そしてストーカーをやめない。
ストーカー女に知られないよう、引っ越しを何度かしてみたが、何故か少し経つとバレてしまう。
彼女は時々俺の部屋で一人でいることもあるから、気をつけるように言っている。
その女は髪型や化粧を変え、あの手この手でやってくる。
勘違いや間違いのないよう、すぐ確認出来るわかりやすい所にそいつの写真を置いている。
ある日、彼女が自宅で俺のことを待っている時、ストーカー女が現れたことがあった。
その後は、一人で待っていない方が良いと判断し、彼女が一人で俺の部屋に来ないようにしている。
俺的には、ものすごく残念で困っている。
それでも、二人でいるときに急用で彼女を一人にさせてしまうことがある。
そんな時は、玄関のチェーンを外さず、部屋の奥にいるように言ってある。
俺も彼女も、極力面倒は避けたいと考えている。
放っておいておさまってくれればうれしいのだが、そんなことはないのだろうか。
そんな怖い思いをした翌月、引っ越しを決意した。
日付や時間を調整し、出来るだけひっそりと、そして引っ越し作業は手早く済ませた。
これじゃ、まるで夜逃げみたいだな。
あまり片付けが得意じゃない彼女は、急な引っ越しで少し疲れを見せていたがしょうがない。
なにかあってからじゃ遅いと感じての急な引っ越し。
翌日の今日は忙しく、長く続いた会議がやっと終った。
デスクに放置した携帯を見ると、10件も着信があった。
1件は彼女からの連絡。
あとの9件は、ストーカー女だった。
携帯を変えても、何故かメールや電話がかかってくる。
ここまでくると、怖さと一緒に少し尊敬すらしてしまう。
とはいえ、今日も一日忙しかったな。
遅い時間ではあったが、おやすみの一言を彼女にメールしながら帰宅した。
自分の部屋の玄関を開けようとしたとき、何故か、ふと悪寒がした。
最近、色々なことがいっぺんに起こって忙しかったから、風邪でも引いたのだろう。
やはり、彼女に合い鍵を渡しておいた方がよかったかな。
そうしたら、彼女のおいしいご飯が俺を待っているのに。
でもストーカー女と鉢合わせしたら、彼女に危険が及ぶかもしれない。
これも、万が一の対策だ。
疲れた体で暗いリビングの電気を付けた瞬間、絶句し全身に痺れるような寒気が一気にはしった。
そして、目の前に広がる光景に、俺は目を疑い、その場で立ち尽くした。
こんな光景が目の前に広がったら、誰でも硬直し、恐怖を感じることだろう。
誰もいないはずの俺の部屋がキレイに掃除され、且つ豪華な料理まで準備してある。
リビングの真ん中に、不自然なくらい自然に置いてあるのは、可愛らしい装飾が施された写真立て。
その写真を見た瞬間、もう一度全身に痺れるような寒気がはしった。
冷や汗が流れる頬を気にすることも出来ず、あたりを見渡すと、置き手紙が置いてあることに気づいた。
俺は、恐る恐るその手紙に目を通した。
俺はその手紙の内容にもう一度驚き、体は重たく固まり、全身の血の気がひくのを感じた。
そして、手に持っていた手紙は、水が流れるように自然と手からこぼれ落ちた。
その直後、玄関のチャイムがなった。
少し長めに押し鳴らす、特徴的なチャイム音が部屋中に響いた。
俺は、振り返ることが出来なかった。
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