NGシーン1

「警部、探偵の方がお見えになるようです」

「うむ、ご苦労。ところで、どうしてこんなところに全員を呼び出したんだ?」

 新海たち捜査関係者と事件の容疑者たちは郊外にある草の生い茂るだだっ広い草原に呼び出されていた。太陽は高く昇り、遠くの山も美しい。

 冷たくて新鮮な美味しい空気を吸いながらも、こんな場所へ事情を知らされずに唐突に集められた新海たちが疑問を抱くのは自然なことだった。

「説明していませんでしたっけ? ええ、これから来てもらう探偵の都合上、こうして開けた場所じゃないとだめだったんですよ」

 笹垣は飄々とした様子で答える。

「それでその探偵というのは?」

「それはお楽しみという事で。まあ、すぐにわかることなので待ちましょう。もう来ると思いますよ」


 それから十分ほどたち、新海はまだこないのかと笹垣に問おうと口を開いた瞬間、地面が揺れた。

 地震か、と新海は思ったが、どうも違うようで、どしーん、どしーんと何かが地面を強く叩くような音が振動とともに聞こえてくる。見ると、笹垣が眼鏡の鼻のところを抑えて、やはりそうなったか……とつぶやいている。

 どういうことだ、と新海が思うと、容疑者の一人が山の方を指して悲鳴を上げた。他の人たちもそちらの方を見た。


 山の上に大きな人間の顔があった。

 手も山にかけられており、誰かが、巨人だ、と力が抜けたように言った。その場の全員があっけにとられてそれを見上げるとその巨人はさらに大きくなり、顔は雲の上に、そして大きな体が草原にいる全員の視界を塞ぐかと思うほどだった。

 あれだけ燦燦さんさんと輝いていた太陽も隠れてしまっている。


 呆然としている皆に、笹垣は少し咳払いをすると、こう言った。

「えーと、皆さんにももう見えているかと思いますが、あの天を衝くような大男が、今回の探偵の見上げ入道さんです。おそらく道中誰かに見上げられてしまったのでしょう」

 そう冷静に説明する笹垣を横目に新海はその場にいる全員にこう叫んだ。

「退避! 全員退避だ!」

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