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 ユイちゃんが夜の仕事に就いたきっかけは昔の男のせいだった。年上のその男はどうしようもない奴で、仕事はしないし、遊び呆けているし、子供が出来たと分かった途端姿をくらますし。挙句の果てにその男が多額の借金をしていたものだからそれの返済が全てユイちゃんに来てしまった。そしてユイちゃんは仕事と返済のストレスで流産し、勧められるがままに夜の蝶になった。

 それだけじゃなく、彼女は今までいろんな人に騙されて生きてきた。

心が綺麗すぎて、人を疑うことを知らないのよ、とママは言っていた。本当に、そうだと思う。ユイちゃんは綺麗すぎたのだ。

 それが今、こうやって笑っていて、楽しそうで、子供も出来て。幸せそうで本当に良かったと思う。

「良かったな。おめでとう」

「ありがとぉございます~」

 ユイちゃんは「生まれたら抱っこしてくださいねぇ」と言って帰って行った。

 その顔は変わらず、優しい、綺麗な笑顔だった。

 今までの人生、彼女にとって不幸なものばかりだったとは思わない。結果辛い思いをしたことは事実だとしても、幸せだったのか不幸せだったのかを決めるのは彼女次第だから。彼女の人生だから。

 でも、それでも、ユイちゃんにはずっと笑っていて欲しいと思う。旦那さんと子供に囲まれて、笑顔で穏やかに暮らして欲しいと。

「生まれるのは春かぁ」

 ユイちゃんの子供はきっと可愛いんだろうなぁ。 

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