惜夢
これは、偶然?
それとも、必然?
突然の事で、最初は本当に起こっていることなのか解らなかった。
けれど徐々に実感が湧いてきて、私は横を通り過ぎて行こうとした彼の腕を掴んだ。
いきなり掴まれたからだろう、彼の体がビクッとなる。
もし他人の空似だったら……なんてことは微塵も思わなかった。ううん、その姿を目にした瞬間にそんな思考は停止していた。
ただ、身体が反応した。
ずっと決めてたんだ。もう1度キミに巡り逢えたら、今度こそ云えなかった言葉を伝えてキミの手を離さないって……。
「あの、あのね……」
“私は今でも、キミのこと……”
「ごめん。もう時間みたいだ」
「……え?」
彼がそう言った瞬間周りの景色がグニャリと歪み、上からベルの音が聞こえてきた。
パシンッ。
腕を伸ばし、目覚まし時計を止める。
「夢……か……」
キミとサヨナラした日から今日まで、幾つかの季節が過ぎていった。
「そういえば、初めて見たな……」
あの日から、夢ですらキミに逢うことは出来なかった。
だからいつも思っていた。
夢でもいいから、キミに逢いたいって……。
その願いは叶えられたけど、やっぱり切ない。
ベッドから降り、窓を開けて空を見る。
「いい天気」
さっきの夢で云いたかったこと、本当は少し違うんだ。
私はね、もうキミのことについては気持ちの整理が付いている。
だから、夢の通りまだ好きなのかもしれないけど……
これだけを云いたい。
キミがくれた愛情と思い出は、今も私の中で大切なものとして息づいているよ。
どこかで同じ空を見上げているだろう、大切なキミへ……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます