空と風と (【雨の日に】彼女ver.)
「あっちゃ~、まずった」
急に降り出した雨空を見上げて、私は溜め息を吐いた。
「傘なんて持ってきてないよ~」
いつもなら見ている天気予報。今日に限って見なかった。それは完璧に自分の不注意なんだけど……。
そうは解っていても、つい恨みがちに空を見てしまう。
う~んどうしよう。このままここで止むのを待つか……でも、いつ止むか分からないし……。
濡れるのを覚悟して走って帰るしかないのかな、やっぱりここは。
勇気を出して雨の中に行こうと一歩を踏み出そうとした。
けど。
「ッ!?」
バサッという音がして急に目の前が真っ暗になった。
え、な、何!?
慌てて頭の辺りを触ると、よく知っている肌触り。
……これ、制服? でも、誰の?
被された制服の間から横を見ると、同じ学年色のタイが見える。
さらに上に視線を上げると……かっこいいと評判な隣のクラスの男子の姿。あんまり興味ないから、顔と名前しか一致してないけど。もちろん、話したことなんてない。
「本当は傘があれば良かったんだけど……これでもないよりはマシかな」
え? え?
「じゃあ」
そう言うが早いか、雨の中に走り出す。
「ちょッ!!」
私の声に振り返って、彼は「風邪ひかないようにね」なんて言って行ってしまった。
「どっちが」
苦笑しながら頭の制服を触る。
彼の制服は私には大きくて、すっぽりと包まれてしまう。
それが何だかくすぐったく感じて、私はそっと瞳を閉じた。
明日、ちゃんと返さなきゃ。
瞳を開けて、彼が去っていった方向を見つめながら思った。
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