第2話
この旅の始まりは、雨の降っている線路の上だった。
計画して起きたものではないし、いつ何処に行くのか、何を目的として向かうのか、何一つ決めてはいなかった。相手とはその日初めて出会ったのに、お互いのことを何一つわかっていないのに。
あの時は高校生だった。ごく普通の高校で、ヤンキーがたくさんいるわけではないし、皆が皆勉強しているわけでもない。その普通の高校では友達もいたし、部活もやっていた。成績も悪くはない、良いわけでもなかったが。どこにでもいるような普通の高校生で、人並みに楽しく過ごしていた。
梅雨入りした教室は少しじめじめとしている。授業と全く関係のない趣味の話をする先生の声は、生徒の声で掻き消されていた。俺も隣の席の人と昨日のテレビの話をして、ノートには汚い落書きをしていた。
時計の針を見ると短い針は三の文字を通り過ぎ、長い針は六の文字を示して止まっていた。
教室の窓を何気なく眺めていると、室内と外の温度差で出来た結露の奥には道路があり、傘をさして歩く人や水溜りの上を通る車などが見えた。そして、ある人物に目が留まった。
「——」
その人物——彼女――は普通の歩行者と同じ速さで歩き、真っすぐと歩く方向を見ていた。でも雨の降っている中、彼女は傘を差していなかった。肩まで伸びている髪は濡れて、着ている服は透けて下着が見えていた。気になり、結露を手で拭いた瞬間チャイムが鳴りすぐにホームルームが始まってしまった。もう一度窓を見たときには彼女の姿はなかった。
ないものねだり。 ねーお。 @neo_1018
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