『四十川』 命がけの習得
私は、勇気を振り絞って叫んだ。タケミカヅチさんは少々驚いたようにしていたが、すぐにほほえむ。
「うん、そうと決まれば訓練だね。善は急げ、だ。」
私はタケミカヅチさんに連れられ、ある場所に来た。そこは、廃墟のような場所だった。遺跡みたいな、何だか不思議な感覚がするところ。ここで何をするんだろう……。
「よし、着いた。これからオリジナルウェポンを習得する、訓練を行うよ!」
「えっ! オリジナルウェポンのですか!?」
まさか、オリジナルウェポンの訓練をするとは思いもしなかった。でもオリジナルウェポンって特別だから、そんな簡単に習得はできないはず。レージ君だって、たまたまできたようなものなんだし。
そんな考えにふけっていると、タケミカヅチさんが話し始めた。
「僕は、オリジナルウェポンを持っていない。だけどその分、他の人よりもそれに関しての知識欲がある。そして知識も。だから、いろんな人のウェポンの能力を引き出すことを手伝ったりしているんだ。」
ウェポンの能力を引き出すことができる。やっぱりタケミカヅチさんは凄い人なんだ。思わず感心してしまう。
「実は、キミのウェポンは特別なかたちなんだ。オリジナルウェポンは本来なら、ある一定の状況でしか使えないものだが、特定の人だけ自由に使える者がいる。それがキミたちだ。」
「私だけが使える……?」
「そう。あくまでも僕の見解だが、レージ君のウェポンの場合の条件は『絶体絶命』。でもキミは条件がない。キミのがんばり次第で、いつでも展開できる。」
「どう、訓練するんですか?」
すぐに聞き返したものの、返答は返ってこない。タケミカヅチさんは、おもむろに右手を挙げるといきなりウェポンを展開した。
「『
肩にちょこんと、かわいらしい少女が現れた。初めてであったときに、レージ君が見ていた奴だったはず。確か、ウンディーネとかって言っていたっけ。
「ウンディーネ、軽い魔法で攻撃してくれ。」
「ええええええ!? いや、ちょ、待って下さいいいいいっ!」
いきなり水の弾が私を襲う。ものすごい早さだ。当たったら痣ができそうなくらい。肉眼でも、ギリギリ捉えられるかわからないのに……。これで軽い!?
「おっと、説明不足だったね。今から強制的に、キミのウェポンを引き出す。なんだかんだ言って、ピンチの時が一番効率よく展開できるからね。」
「わざとですよね!? 絶対そうですよね!?」
自分でも思うくらいだけど、珍しくツッコミにまわる。
絶え間なく打たれる水の弾丸から、全力で逃げ続けることは出来無い。でも、ウェポンは使えない。オリジナルウェポンを展開するしか……。
「うわああああああ! あ、危ないです!」
弾丸が加速し始めた。これ以上は、身の安全が保証されないことがわかるほどに。とりあえずウェポンを展開しなきゃいけない!
「
どうしよう、集中が出来無いから展開できないよ。もうそろそろ限界かもしれない。本当に、死んじゃう!
しばらくがんばって試していたけど、どうしても展開できなかった。やっぱりこんな状況じゃ、展開なんて出来無い!
「早くしないと、速くするよ。」
「や、ややこしいです! はあ、はあ、はあ。」
息が切れて、空気が全然吸えない。体力はもう限界なのに、全然展開できる気配がない。このままだったら、冗談抜きで死ぬ。本当に死ぬ。本能が叫ぶって、こういうことを言うのかな?
呼吸もままならない、視界もぼやける、頭もがんがんして、もう今にも倒れそう。足がふらついて、歩くことさえままならない。寸前で止まっている水の弾丸。でも、少しずつ近付いてきている。情けない私は、こんな所で願ってしまった。
――お姉ちゃん! 助けて!――
その瞬間、頭が一気にさえた感じがした。ふと口をついて、言葉が出る。
「『
その言葉を認識したときには、体に変な浮遊感があった。ぼやけた視界でもかろうじて確認出来るのは、こちらを見上げるタケミカヅチさん。
弾丸はすでにやんでいたけど、もう限界。すっと、頭の重さが消えると共に、意識が飛んだ。
目を開けると、暗い無機質な壁が視界全体に広がっていた。すぐに、こちらをのぞき込む人の顔が写る。タケミカヅチさんは、こちらにほほえんでいる。
「良くやった。見事オリジナルウェポン習得完了、だよ。」
気絶していたとわかるのに、時間はかからなかった。まだ頭はぼーっとしている。
お姉ちゃんに助けを求めたとき、確かにお姉ちゃんがほほえみ返してくれた。がんばれって言ってくれた。妄想かもしれないけど、結果オーライ。私もやっと、足手まといからは脱出できた……かな?
「キミには悪いことをしたと思っている。今日はもう、ゆっくり休んでおくれ。」
「い゛え゛い゛え゛……。」
想像以上にのどがやられていたようで、がらがらな声が出てしまった。自分の声に吹き出しそうになってしまったのは、おいておこうかな。
とりあえず、これで一歩みんなに近づけた。ありがとうお姉ちゃん。そして、明日もがんばらないと!
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