二話 笑えない冗談
翌日、持ち寄った物を見て、俺は絶句した。こいつらは馬鹿なのか? いや、こんなことを言っては失礼だな、直ちに訂正しよう。こいつらは馬鹿だ。それも正真正銘の。
「お前らふざけてんのか?」
と威圧たっぷりの口調で言ってみたが、こいつらに効かないのは目に見えていた。すぐに、『物を持ってこいって言ったのお前だろ』とか、『しょうがないじゃん』とか。でもそんなこと言われてもなあ。このありさまじゃしょうがないとか効かないと思うんだが。
まず
次に
そして
最後に山田! 紙、丸ペン。何するつもりだこいつ。
俺はとりあえずエナメル線と電池を持ってきたが、できるわけがない!!
「もう無理だ~~……。」
俺は机に突っ伏した。すかさず四十川が、『出来るところまでやってみよう』、『きっと出来るよ』と俺を励ました。というか、思えば俺たち高校レベルの技術の授業分の知識しか無いよな。
資金不足に、それに伴う材料不足、人員不足に、技術も無し。不足してばっかりでお先真っ暗じゃないか。乗り気にも、やる気にもならん。……だけど、その分成功したときの報酬やら何やらは魅力的なんだよなあ。みんなの期待もあるし。まあ、今は落ち込んでる場合じゃないよな。
「よし! とりあえず先は見えないが、作製に取りかかるか!」
「「「「おおーー!」」」」
作製期間約二ヶ月。俺の努力と知恵と根性とあとちょっと、本当にちょっとの
だがそれは、とても転送など出来なさそうな、禍々しい物となった。というか稼働すらしなさそうだ。ちなみに、使ったのは、家電系だ。それ以外は我が自治体の分別方法にきちんと従って廃棄させて頂いた。
半径二メートルくらいの転送陣の周りを、いろんな家電が取り囲んでいた。どんよりとしたオーラ、そうオーラが可視化されている気がする。絶対なんかに憑かれてるな、これは。
でも今は迷ってる時間が無い。これからの人生の為にも決断しなければダメだ。そう言い聞かせるが、やはりなかなか最後の一歩が踏み出せない。
「どうする?」
と俺。みんなは沈黙する。それもそうだ。もしほんとに転送が出来たとして、帰れる保証も見込みもない。万が一のトラブルだってあるかもしれない。それに、そんなことで命を落とすことが本望なわけがない。
「……私は行く! せっかく造ったんだもん。行かなきゃ損だよ。」
沈黙を破ったのは
「私も行きます。二人だけなんて絶好のシチュエーションで、レージさんが何もしないわけがないので心配です。」
そこか? そこなのか? 心配すべき所はもっと他にあるだろ! と思わずツッコミそうになる。が、よく言ってくれた。感謝する。
「僕も行きます。」
山田も行くらしい。あとはユーリだけだが……。みんなの視線がうつむいたユーリに集まる。それはもう、「じーっ」という音がどこからか聞こえてきそうな程だ。気持ち悪い緊張感だな。これはプレッシャーだ。どう出るユーリ。
「……お、俺は……やだ。」
「「「「はああああ?!」」」」
まさかの展開だった。本当の本当にまさかだった。さすがにここでその台詞は違うだろ。みんなももう怒るとかを通り越して、あきれ果てていた。ユーリのファンがこれを見ていたら絶句していただろうな。ユーリよ、俺が言うのもアレだがとてつもなくかっこわるいぞ。
「もういいです! 行きましょう皆さん。こんな人なんか放っておいて。」
さすがに
「はぁ、お前空気読めよ。あそこで『やだ』なんか言わないぞ。ギャグだったらマジでセンスねぇ……ってどうしたんだお前。」
ユーリは顔を真っ青にして、何かぶつぶつと呟いていた。
「こんなつもりじゃなかったんだ。本当にほんのちょっと冗談を言ってみただけなのにあんなに怒るなんて……。しかも冗談だって言う間も無かったし……。」
もうこいつに威厳もくそもないな(いや、元々無いと思うが)。というか、なんであそこで冗談を言おうと思ったんだこいつは。
あー、あれか。ちやほやされすぎて冗談の度合いが狂ったんだな。というか真面目にギャグだったのかよ。ざまあみろ、じゃなかった。いやーかわいそうだこと。
「どうするんだ? もう
「どうしようユージ。お前は俺を見捨てないよな? 友達だろ?」
絶対思ってないだろ友達なんて。まず俺レージだし。ユージって誰だよ。そしてこんな時に友達なんて、虫酸が走るからやめろ。友達って認めてほしかったら生まれ変われ。と言いたいところだが、さすがにかわいそうになってきたし、また次の機会にしておくか。
「まあ、
「いつかっていつだよぉ。」
「……知らねぇよ。だけどまあ、とりあえずお前も行くってことだな。」
ユーリは黙ってうなずく。マジで冷や汗が吹き出て脱水症状起こすかと思ったぞ。冗談はほどほどにするように言わなきゃな。だけどこれで全員の覚悟は確認出来た。
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