序章 俺たちの旅の始まり

   一話 アホと共に

 20XX年 2月15日 午前9時27分。遅めの、俺らの部活最後の日。俺らの冒険は始まった。


 遡ること半年。俺たちの部活、『異世界転送用機械作製部』はようやく結成された。先生に提出した部の活動内容はこうだ。


『我が部は『異世界転送用機械作製』を第一の目標として活動していきます。他にも、同じ学舎で過ごす仲間として、部員とも良い仲を築いてゆきます。』


 なぜこの短文で申請が通ったのかもわからないし、部活というよりは愛好会に近いものなのだが……。


 まあそれはさておき。それまで無所属だった人が、この中二病チックな名前に惹かれてやってきた。結成から変わることのないメンバーは俺、五六、高影、四十川、山田だ。まずはこいつらを紹介しよう。


 一人目は、ふかっち、ふわちゃんこと、高校一年生『五六葉月ふかぼりはづき』。成績優秀で全国10位の学力の持ち主だ。人の意見を取り込みながら自分の意見を言ったり、善悪に対してとても厳しかったりなどいわゆる委員長タイプだな。


 二人目は、ユーリ、たかゆうこと、高校三年生『高影優凜たかかげゆうり』。茶髪は地毛でチャームポイント。悔しいが、事実だからはっきり言う。こいつは超がつく程のイケメンだ。毎日俺の目の前でラブレターを破り捨てている。スポーツがめっちゃ得意で、これもモテる要因だろう。


 三人目は、あーみん、みるるんこと、高校二年生『四十川美瑠あいかわみる』。またまた茶色い髪は、ポニーテールにしてある。こいつは何かと危なっかしい。目標を決めたら突っ走っていくタイプと言ったところだろうか。明るくて誰とでもすぐ仲良くなる。あと、天然だ。


 四人目は、モブ男、ジミ夫こと、高校二年生『山田太郎やまだたろう』。誰がこんなかわいそうな名前を付けたのだろうか……。いやすまん、当たり前だがつけたのは山田の親だ。ジミにジミを重ねた感じのこいつは、一日に5回は無視される。俺的にはジミすぎて逆に目立っているんじゃないかと思う。


 最後に俺の紹介をしよう。俺は高校三年生『安部礼二あべれいじ』だ! 成績優秀! 容姿端麗! 運動神経良すぎる俺! と言いたいところだが俺は至って普通の学生だ。全く、俺の親は何の恨みがあってこの呪われた名前を……。ま、ただ一つ出来ることと言えば、ダウトとかのゲームだ。一応、負け無しではある。


 本当は、みんなでこたつを囲んで、のんびりゆったりと残りの高校ライフを謳歌するつもりで始めたこの部活だったが、四十川の無茶ぶりと先生への活動報告書の内容を考える上で、『異世界転送用機械』の作成が必須条件となってしまい、渋々活動を開始した。


 だが、俺らは超ギリギリでこの部活を作成した。人数がギリギリな上に、俺とユーリは卒業する半年前だったのだ。そのせいか、十分な資金は得られなかった。必死で教師に頼み込んでも、予算が足りないからの一点張りだ。しょうがなくアルバイトで稼いだなけなしの金を利用したのだが、やはり十分な額にはならなかった。


「「「「「これじゃあ造れないよーー!」」」」」

 

 俺たちは見事にハモった。うむ、良い響きだ。まあ、そういうことでそれぞれ家から使えそうな物を持ち寄ることになった。

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