水晶
窓を開けると空には虹が架かっていました。どこか遠くで猫がうたっているのが聞こえてきます。
その人は、猫がたった今長い長い舟旅を終え、無事に虹の橋に着いたのを知りました。そして、自分の心と遠く旅立って行った猫の心に、虹の架け橋が架かったのがわかりました。
涙の雨に架かったこの虹を渡れば、いつかきっと愛する猫に会いに行くこともできるのだと、その人は思いました。
胸の中で固まった重い悲しみは、いつの間にか虹色にきらめく水晶となっていました。水晶には、いつだって愛してやまない猫の姿が映っています。
その人の目から、また涙が止めようもなくあふれ出してきました。
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