おもちゃ

 ある日、その人は公園に猫のおもちゃが落ちているのを見つけました。

 そのおもちゃは、虹の橋に行った猫のために作ったおもちゃにそっくりでした。でも、おもちゃは猫を弔ったときに、猫に持たせたはずなのです。どうして、これがここにあるのだろうと、その人はいぶかりました。


「みゃぁ」


 仔猫の鳴き声がして、その人は足元を見ました。

 小さな仔猫が、見上げています。まるで、そのおもちゃを返してほしいとでもいうように、仔猫はまた「みゃぁ」と鳴きました。

 近くには段ボール箱が捨ててありました。箱は中からこじ開けたようになっています。箱に閉じ込められて捨てられた仔猫が、自分で箱を開けて出てきたのでしょう。


 抱き上げると仔猫はゴロゴロと喉を鳴らしました。その人は仔猫を家に連れて帰りました。




 小さな仔猫は捨て猫から飼い猫になり、その人には猫と暮らす幸せな日々がまたやってきました。

 でも、不思議なことに、あの手作りのおもちゃは二度と見ることはありませんでした。仔猫といっしょに家に持ってきたのか、公園に置いてきたのかも思い出せません。


 その人は時々思うのでした。もしかしたら虹の橋に旅立ったあのが、この仔猫を自分に託したのではないかと……。




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