魔王様は見限られる





「おやおや、王妃様そんなに怒ってどうしたのですか?」


「別に何も無いよ」


「何も無いように見えませんが」


 メルが僕を心配してくれる。しかし、まさかあんな事があったなんて言えない。


「もしかして…見てしまったのですか?」


「見たって何を?」


「その…くんずほぐれつしていた所を…」


 メルが顔を赤らめながらそう言う。どうやらメルはそういう事に耐性が無いようだ。


「メルは知ってたんだね。そう、見ちゃった。本当に最低だよね。責任取るって言ったくせに」


 あの婚姻の儀から1週間が経った。あの話し合いの後しっかり責任を取るって言ったのに、たかだか1週間で浮気をするとは。


「それに兄弟とあんな事するなんて不純な 過ぎる。」


「それに関しては魔王様が悪く無いとは言いませんが、どうか許してあげてください。」


「許してあげない!」


 僕が声を荒らげてそう言うと、何故かメルがフフフと笑い出す。


「なんで笑ってるの?」


「フフフ、だっておかしいじゃないですか。あんなに魔王様の事を好きじゃないって言ってたのに、浮気をなされたらそんなに怒るなんて」


「そ、それはただ嘘つかれたことに怒ってるだけだし!あと兄弟であんな事するなんて」


 その場面を思い出すと、何故か僕まで恥ずかしくなって手で顔を覆い隠す。


「魔王様に兄弟は居りませんよ。あくまで兄弟に当たるというだけです。血は繋がって居りません。 」


「そ、そういう問題じゃないし!」


「それにきっとエメル様が迫ったのでしょう。魔王様は手を出していないと思いますよ」


 自信をもってそう言うメルに僕はなにも言い返せなくなっていた。

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