婚姻






「第138代王位継承者、ジルブの使徒魔王ルドルフよ、貴殿は神染綾汰を、同じくジルブの使徒とし、王妃として迎えるのだな?」


「はい」


「神染綾汰よ、貴殿は自らをジルブの使徒とし、魔王ルドルフを夫と認めるのだな?」


 さっきから訳が分からない単語がいくつも出てくる。ジルブがどうの、王妃がどうの、夫がどうの、本当に辞めていただきたい。いつになったら夢から覚めるのですか?


「綾汰よ、聞こえておるのか?」


「ふ、ふぉい!」


 突然を声をかけられ謎の返事をしてしまう。やばい、怒られるか。


「良い返事だ」


 どうやら良い返事だったようだ。この世界で返事をする時はふぉいを使おう。


「それでは両者よ。婚姻の印として、ジルブの指輪を交換するのだ」


 そう言うと魔王が僕に指輪を差し出す。まず魔王の名前ルドルフって言うのね。そこからだよね。名前も知らなかった人と結婚って。いや、人じゃないけどね。

 気づけば僕の指に指輪がハマっていた。しかも全然取れる気配がない。どんな物質でできるんだよ。


「さぁ、はやく」


 そう急かされ手元にあった指輪を手に取る。何が嬉しくて男に指輪をあげねばならぬのか。悔しさで涙より鼻水が止まらなかった。


「綾汰よ。嬉しさで涙する気持ちも分かるが早く指を付けてさしあげなさい。」


 嬉しくねーよと心で思いつつも、魔王ルドルフの暗黒笑みが怖すぎて指輪をルドルフの指につける。そうすると笑顔がもっとふにゃふにゃな顔になった。うわ、こっわ。逆に恐怖だ。


「それでは、皇族院のバルザが立会人とし婚姻の儀を終了とする。」


 良かったぁぁぁぁぁぁ!あっちの世界とは違ってキスとかは無いのか!助かった。いや、助かってるのか?この状況。

 どんどん状況が悪化しているような…


「キレイだぞアヤタ。今日はもう疲れただろう。部屋へと戻るといい。」


「は、はぁ。」


 そう言われ部屋へと戻る。

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