前夜







 大きな花束に大きな歓声。そして綺麗なドレスに美味しい料理。すごく豪勢で本来であれば誰しもが羨むような結婚式。これにはゼ〇シィもビックリだろう。あくまでも本来であれば、だ。僕が女の子か、もしくは魔王が女の子ならば問題は無かった。贅沢を言えば人間であればなお良かった。しかし、事はそう簡単な事では無いようだ。










「こ、子供って僕の子供ですか?」


「それ以外に誰が?」


「え、そ、それは魔王様との子供ですか?」


「当たり前だろう」


 開いた口が塞がらず、このまま顎が外れてしまうのではないか。そんな不安がよぎる程にアホ面をしていただろう。


「あ、あの~、僕一応男だった記憶がぁ」


「なに、心配せんでもよい。王族にオスやメスなどの概念は無いからな」


 いやいやいやいや。魔王が妊娠するならまだしも僕は生身の人間だから。どうやったら男が妊娠するんだよ!


「そもそもなぜ僕が…」


「何故って、ヌシがあんなにも求めてきたのではないか。ワシもちょいとハッスルしすぎたかのう」


 ガハハハハと笑う姿を見て僕は意識を失いそうだった。いや、意識を失ったといっても過言では無かった。開いた口は既に地の底までいっていた。

 僕はもしかしてそういう趣味があったのか?見た目は完全に厳ついオッサンだぞ?実は僕は野獣先輩だったのか?野獣先輩どころか野獣魔王じゃあないか。既に性癖の方位磁針が狂ってやがる!!


「なに心配するな。人間だからといって差別はせん。ワシはしっかり責任をとる男だ。ちょうど嫁もおらんかったしのう」


 さっきより大きな声で笑う魔王。なに粋な計らいだろ?見たいな顔でドヤ顔してんだよ…いい迷惑だよ…


「で、でもまだ子供が出来たかどうかは…」


「安心せい。王族の種は1発じゃ」


 安心どころが発狂しそうですけど。


「それに王族の子は1ヶ月で生まれてくるからのう」


 安心させてください。出来てますよ。


「さて婚姻式の準備でもするかのう。綾汰よ、ヌシも早く支度をせい。」


 なんで名前を知っているのかとも聞けずにエルフに引きづられていく。あぁ、話がややこしすぎて何も分かんないよ。

 部屋に連れられると、そこには今よりも豪勢な、キレイなドレスがかかっていた。


「さぁ王妃様。お着替え下さいませ。」


 化粧道具を持ち、エルフはニコニコ笑っている。

 あぁ、やっぱり僕の扱いは女なのね。

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