第9話 再び
眼を覚ますと朝になっていた。ピンクのカーテンの切れ間から入ってくる朝陽が、顔を照らして眩しい。ピンクの壁、ピンクのシーツが目に入ってくる。
陽の光を避けようと伸ばした手はピンクのパジャマに包まれていた。
「あれ? 」
慌てて飛び起きて部屋を見回した。間違いなくピンクの部屋だった。私の知っている自分の部屋と物の配置、大きさ、形はそのままに色だけがピンクに統一されていた。
「なんで、ピンク? 」
もう一つ違和感を感じていた。頭が軽い。首元がやけにスースーする。
飛び起きて、慌てて鏡を見た。
鏡に映った私の髪の毛は耳のすぐ下までしかなく、所々外跳ねをしている。寝る前に比べて明らかに髪の毛が短くなっている。
「わたし…なの? 」
寝る前に考えた並行世界が頭をよぎる。変なのは世界じゃなくて、自分なのか。
不安が湧いてくる。胸がドキドキする。
私は早まる鼓動を感じつつ、部屋の中で一番大きな窓まで行くと、勢いよくカーテンを開けた。
窓から見える風景は私の知っているそれと寸分変わらなかった。向かいの家の屋根の形、窓の数、壁の色。
大丈夫、外の風景は問題無い。違うのは、この部屋の中の色と自分の髪型だけ。
慌てて自分の机に駆け寄った。机の上にある通学カバンを開けて生徒手帳を探す。中々見つからなかったが鞄の奥に押し込まれていたそれを見つけると、奥から無理矢理引っ張り出した。
私はパラパラとめくり最後のページを開く。そこは自分の住所や名前などが書かれているページであった。
「柊 茜、よし…名前は大丈夫。住所… 」
生徒手帳に書いてある名前と住所は自分の知っているそれと同じであった。
「茜、どうしたの?早く食べちゃいなさい」
ママが優しい笑顔で言った。
私は右手にお箸を持ったまま、目の前に並べられている朝ごはんを睨んでいる。
御飯、卵焼き、漬物、魚のみりん干し、味噌汁…。どこからどう見ても日本の御飯。つまり、和食であった。
「ママ、今日はパンじゃ無いの? 」
私の問いかけに振り向いたママは不思議そうな顔をしていた。
「何言ってるの。茜、パン嫌いでしょ?変な事言ってないで早く食べて学校行きなさい」
「はぁい」と冷静を装い返事をした。並べられた朝ごはんを順番に食べる。
おかしい。いや、この場合おかしく無いのだけど、昨日と違う。部屋の色に至っては、今までと違う。やはり私は最上先生の言う通り、並行世界を行き来しているのだろうか。
もしかしたら、悠太も何か変わってたりして…。
少し不安を感じつつ、私は味噌汁を啜った。
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