第2話 夕暮れ

夕暮れ。沈みゆく太陽を真ん中に黄金色の空がまとわりつく。街の建物も空と同じ黄金色に輝く。広い公園の大きな池もキラキラ輝いていた。

私はそんなキラキラ輝く池の近くにあるベンチに一人で座っていた。周りではあちらこちらで子供達が走り回りキャーキャー騒いでいるのが聞こえる。


「今日は一体どうなってんだろう」


ワンちゃんを散歩している同じ歳ぐらいの女の子を目で追いながら、今日一日を振り返る。


朝ごはんを食べていつも通りお茶を飲み、母とお喋りを楽しんでいた。…はずだった。気がついたら教室にいた。


(そもそもいきなりおかしかったのよね。疲れてるのかな)


教室では数学の授業が行われていた。この時既に午後二時。午前中の記憶が全くない…。

教師の立花に言われて、数学の問題をみんなの前で解いた。問題自体はさほど難しくなかったのに、みんなから異常なまでに褒め称えられた。なぜ?

午後、最後の授業は体育であった。退屈な長距離走。普通に走っていつも通りトップでゴールした。


(ここでもみんな驚いてたな…私、マラソンはいつもトップなのに)


髪型や身なりもいつもと違った。ツインテールに青いリボン。スカートは大分短く、座る時も立つ時も、歩く時でさえ注意が必要だった。周りの女の子を見てもそこまで短い子はいない。


(変な一日だったけど、でもでも、良いこともあったもんね!)


悠太が突然声をかけてきた。ペンが落ちた時じゃない。授業後、みんなが部活に行ったり帰ったりする中、いつもはそんなことしない悠太が、茜の机の前に立って言った。


「なんか、なんだかわからないんだけど。お前、今日、感じが違うな。いつもと違って」

「えっ…違うって…何が? 」


突然の悠太からの問いかけに頬が赤くなるのがわかる。


「な…何でもねえよ。じゃ、またな」


悠太はそう言って、私を横目に見つつ部活に行ってしまった。


(感じが違うって何…だったんだろう。それに、またなって…もしかして、明日も喋ってくれるのかな…)


頬がまた熱くなる。


「悠太と喋るの、ほんっと久しぶりだったなぁ…」


うーんと伸びをした。水面に映る黄金色の夕陽の光が目に入った。


(明日は普通の一日であります様に)


私は立ち上がると、黄金色の夕日を浴びながら家路へとつくのであった。

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