第12話 ゲームマスター

「初めまして、僕がこの世界の大魔王様、そしてかつこの世界のゲームマスターのゆうじです」

「まさかお前が…」

「では一つ昔話を…」

ゆうじは咳き込み話を続ける。

「僕は小さい時からゲームが大好きでした。もし、ゲームの世界があればとずっと思い続けていました。ある日のことです。僕の両親は通り魔によって殺されたのです。その時からずっと僕はひとりぼっちでした。そして僕は噂で聞いたのです。桜の木の魔法のことを。桜の木の魔法には夢世界を作る力がありました。僕はそれを知り、桜の花びらを飲んだのです。そして、僕の夢世界は完成しました。自分の思うように描いたRPGの世界が出来上がったのです」

「ゆうじ…」

「もともと僕の夢世界は異世界ではありませんでしたが、このゲームの登場人物のアリスと僕の膨大な魔力で異世界と夢世界は融合し、現実世界の人の夢にリンクするようになったのです」

「・・・」

「ぜは、勝負しましょうか、せっかくここまできたことですし、サシで勝負しませんか?ねえ、あきらくん」

「これで終わらせる。お前のゲームは確かにすごい。アリスがこの世界と現実世界を繋ごうとしたのもわかる。だか、こんな殺人ゲームは存在してはいけない!」


僕にはこの武器は合いませんね…。

ゆうじは異次元ゲートを出し、魔王の大剣を手に取る。


「では、参ります!」

「いくぞ!おりゃー!」


「キン、コンカン、キン」

激しい剣と剣のぶつかり合い、こちらの短剣に対し、ゆうじは大剣で一手一手の重さはゆうじが上だが、剣のスピードではこちらが上だ。


「ぐはぁ!」

ゆうじに一太刀がはいる。

「では僕のとっておきを見せましょうか」


「スキル・流星」


流星の発動で、ゆうじは5回の素早い連続攻撃を決めてきた。

受けきれず、勢いよく飛ばされる。

「くっ、、、やるな」


あきらはジャンプし、縦方向に回転しながら剣で刻む。


「くっ、やりますね。ではこれで最後にしましょう!」

「ああ、それで倒した方の勝ちだ」


剣を構える。そして2人はダッシュする。

「うおおおおおおお!」


カキーン!


剣の効果音がなる。


「くっ、、、ぐはぁ…」

ゆうじは体勢を崩し、その場に倒れる。


「見事だよ、あきらくん、僕の負けだ…」


剣を収める。そしてゆうじの元へ行く。


「お前がゲームマスターだなんて未だに信じられないよ」

「僕はゲームが好きだった。でもゲームをして遊べる友達もいなかったし、家族もいない。僕はね…このゲームをプレイしてただ遊んでいたかった。他の誰かと楽しく冒険したかったんだ…。その力をくれたのが桜の木の魔法だった。桜の魔法は3つある。1つは夢世界を作る力。2つは過去に行く力。僕はこの力で両親を助けようとしたけど、死んだ人を生き返すのは無理だった。3つめは人を生き返らせる魔法だ。だけどこの魔法を使ったものは1年後に死ぬ…これが魔法の力さ」

「お前はどうして、こんなデスゲームにしたんだ」

「ただみんなが真剣にプレイしてくれた方が楽しいからさ…」

「さて、君たちはこれでゲームクリアだ」

「このゲームで死んだ人は蘇るのか?」

「残念ながら、元には戻らない。異世界と夢世界が融合した時点でそれは決まっている」

「僕はもう少しこの世界を散歩するとするよ。君たちも来るかい?」

「私のお父さんとお母さんは元に戻らないなんて…」

「さや…」


あきらは優しくさやを抱きしめる。そして頭を撫でる。

さやはあきらに泣きつき、あきらを抱きしめる。


「僕はお邪魔かな?」

「いや、俺だけで行くよ。お前とも話がしたいからな」

「そうかい?ならおいでよ」


ゆうじは手招きする。あきらはそのまま向かう。


「あきらくん、このゲームは楽しかったかい?」

「ああ、デスゲームじゃなければ最高だったよ」

「そうかーなら今度はもっと難しいの作ってみようかな」

「死んだ人は元に戻らないか…本当にどうしようもないのか?生き残ったのはたった1万人だぞこんなんじゃ生きていけないよ」

「一つだけ手はあるよ」

「!?」

「桜の花びらの魔法だよ。言っただろう、人を蘇らせる魔法がね」

「そういえば、あったな死んだ人を蘇らせるって。ただ…」

「そう、その魔法の使用者は1年後には死ぬんだ」

「俺が…やるしか…ないんだな」

「まあ、英雄王としてはカッコいい死に方だね」

「だけど、俺には好きな人がいる。さやだ。この先も人生ずっとさやと歩いていたい。だから…」

「まあ、君じゃなくてもいいと思うけど、他に誰かやりたがる人いるかな?僕はこの世界で生きていくと決めたからね」


全く勝手なやつだ。人類を滅ぼしといて、その償いもしないなんて。


「そうだ、この世界が消滅しても、今現実に異次元ホールって作ったから、また遊べるよ。次は死んでも何も起こらないから安心だね」


こんなノーてんきな奴がこの世界を築き上げたと思うと、頭が痛くなる。

仮にこのまま、死んだ人が蘇らないとして、さやの家族はどうなる?それだけじゃない。ジョーカーズのみんなはどうなる?このまま大切な人がいない世界で生きていたって、俺たちは幸せになれないんだ…。


「俺やるよ…」

「あきらくん、決心がついたのかな?」

「ああ」

「そっか、僕もこの世界をもっと面白くてワクワクするような世界に作り変えてみせるよ。僕と現実で遊びたくなったら異世界の電話機能で連絡してね」

「電話機能なんてあったか?」

「次の大型アップデートまでには作るよ」

「そっか、お前も頑張れよ」

「うん、じゃあそろそろ現実にみんなを帰してあげるよ」


あきらの体が光り出す。





「バイバイ、君と遊べて楽しかったよ…」



☆☆☆


目がさめる。ここはさやの寝室だ。


「やっと、終わったか…」


さやはまだ寝ている。俺はさやが寝てる間にやらなくちゃいけないことがある。

桜の魔法だ。桜の木の下の花びらを1枚だけ拾ってきた。

だが、それは枯れていて、使い物にならなかった。

また、あそこへ取りに行くしかないな…。

俺はさやの家を出る。

桜の木までの道のりは、真夜中のデートのコースと同じだ。

朝だというのに声もしない、誰もジョギングをしてない。学校を登校する生徒もいない。だけど太陽は陽気に輝いている。まるで人類を祝杯するような。


桜の木下につく。桜の木が枯れてなくて安心した。


落ちた花びらを拾う。これを発動すれば、世界の人々を救えるだろう。だけど…

「怖い…」

「悲しい」

「つらい」


どうして世の中はこんなにも理不尽なのだろうか…。

せっかくさやと恋人になったのに、後1年で別れなければないないなんて…。

涙が溢れる。テレビとかアニメとかなら主人公はカッコよく死んでいくだろう。

だが、今の俺は無様だ。恐怖で前に進むことができない。


「さや…。お前が悲しむ姿は見たくない!」


俺は桜の花びらを飲み込む。


「桜の木の魔法の力よ!人々の命を蘇らせてくれ!」


「キラーン」


世界は眩しい光に覆われる。

暖かい。柔らかい。世界の糧。

世界が動き出す。止まっていた時が動き出すかのように、建物に電気がつく。

世界の人々はみんな生き返ったのだ。

さやの家に戻るとしよう。


「あれ、確かにいちゃん勇者の人だっけ。

知らないおっさんに声をかけられる。

「ああ、そうだけど」

「俺だよ俺!ギルドの受付にいた」


あのおっさんかーい!!!


「よぉ、勇者のにいちゃん」

「あ、勇者様だ〜写真撮ろう♪」

「ウホ、いい男やらないか」


知らない人たちに次々声をかけられる。


俺はいつの間にか有名人になっていた。異世界さまさまだ。

さて、さやの家に入るとするか!

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