第6話新しい仲間

「まずはあなたたちに必要なのはレベル上げね」


アリスと俺、さやはこの世界のギルドに足を運ぶ。

そこには駆け出しのハンターや弱装備をした人で溢れていた。


「まずは冒険者になるならチームを作らないとね」

「私たちでチームを結成するのですか?」

「そうよ、さやさん。冒険を始めるなら大人数で行った方がいいわ、私もあなたたちのチームに加わるとして、後4人は欲しいわね」

「チーム名はどうする?」

「さや、何にしようか?」

「私はジョーカーズがいいと思うよ、私たちのチーム名はこれ以外ありえないわ」

「そうだな、アリス、ジョーカーズで頼むよ」

「はいよ〜」


アリスは登録用紙を書き超えて、フゥ〜とため息をつく。

「これでokね、これでメンバーの申請が来たらメールで確認できるようになったから」

「何から何まですまないな、アリス」

「全然okだよ」


手続きを終えた俺たちは、ギルドの席で座っていた。


「そういえばさ、あきらとさやさんのジョブは何かしら?」


俺とさやはメニューを開く。そこからジョブの項目をタッチする。

「私は杖使いのようです」

「さやさんは杖使いか〜。主に回復担当のジョブだね。あきらはどう?もしかして、ダサいジョブかな〜?」


「俺…勇者なんですけど…」

「あきら、勇者なんだ、かっこいいね」

「よせよさや、照れるじゃないか」


「・・・勇者ですって!!!」

アリスの声でギルドのみんながこちらを注目する。


「アリス声デカイって!」

「ちょっとあきら!それ私にも見せなさいよ!」


俺、勇者になりました、というか生まれた時から勇者でした。勇者といえばあれだ。

人の家に勝手に忍び込んで、タル壊して瓶を割って、人の家に勝手に入って、タンスを漁ってステテコパンツを盗むやつらのことを言うんだろう…。


「本当だ、あきらが勇者…あきら様!」

「どうしたんだよアリス、いきなり大きな声を出して…」

「私はこの日を待ち望んでいました!勇者様が現れる日を!」


アリスは周りの空気を読めない子なのか、皆がこちらに注目する。


「おい、あいつが勇者だって」

「勇者はモテるんだな…あんな美人の女の子を2人もパーティにいるなんて」

「勇者か、俺はあいつのケツの穴に挿入してヤリたいぜ」


周りの視線が辛い。ホモもヤバイ…。


「あきら、なんかここ、まずくない?」

「そうだな一旦逃げよう!」


俺はさやとアリスの手を引っ張り、外へと出る。

ゲーマーの観点から、まずはレベル上げだ。普通のRPGなら全滅してもゴールドが半分になるだけで、勇者は復活だが、この世界では話が別だ。仲間を一人でも死なせてしまえば、現実世界では死となる。だから雑魚敵を倒しまくって、経験値を地道にあげるしかないんだ。だが、仮死状態の人間を放っておけば、いずれ死んでしまうだろう。だから時間も限られている。ならば、手は一つしかない。それは高レベルキャラで高レベルモンスターを無双して、一気にレベルを上げるしかない。

だけど、ゲームが始まって、、たった数日、この世界で高レベルのプレイヤーなんて流石にいないだろう。


「ちくしょう…どうすればいいんだ?」

「どうされました?勇者様!」

「どうすれば経験値を一気に上げられるんだ・・・」


そうだ、俺にはアリスがいるじゃないか!!


「なあ、アリス。お前レベルいくつだ?」

「よくぞ聞いてくれました!私はレベル15の魔導士でーす」

「おお、これなら」


レベル15もあれば、そこあたりの雑魚敵を一掃できる。

後は経験値を多くの仲間に分担できれば、強敵に対しても勝てる!


「さや、探しに行くぞ!」

「誰を?」

「決まってるじゃないか、ジョーカーズといえば」

「うんうん」

「俺、さや、りか、ジン、まさと、きょうすけ、最後にアリスだ」

「そうね、やっぱりみんなを集めないとね」


マップの名前検索で順番に名前を検索する。

あきらの表情が曇る。

「いないんだ…」

「え?」

「ジョーカーズのみんながどこにもいないんだ」

「てことはみんな…いやー…そんなのないよ」

「ふざけやがっで」


怒りが込み上げる。家の壁に手をドンと殴り「くそ!」と言う。

ピロりん♪

なんの音だろう?

メールか? メールをタッチする。

ジョーカーズのメンバーに加わりたいです。ジョブは商人で主にアイテムを売ることを仕事にしてます。後は弓を使えます。よければ返事をお待ちしてます。

メールの後ろに名前が載ってある。 櫻井ゆうじ。


「アリス、どうやら募集してた人が来てくれたみたいだぜ」

「はい、勇者様〜すぐ参りましょう」


ギルドのドアを開ける。

「いらっしゃい?おや、ジョーカーズの一員じゃないか、あちらにお客がいますぜ」


あっちのテーブルに座ってるやつか。大人しそうな男だな…。

年は15くらいだろうか。

俺たちは向かって2つ目の席に座る。


「あの、僕は櫻井ゆうじと言います。レベル2で商人をやってます。

「商人らしいけど、どこでアイテムを入手してるんだ?」

「それはフィールドに落ちている青の宝箱やモンスターのドロップアイテムからです」

「それで弓を使えるみたいだけど、使いこなせるのか?」

「ふふふ、舐めてもらったら困りますよ〜これでも僕は弓道部です!20メートル先の獲物を仕留めることくらい、容易いです」


大した自信だ。さすが弓道部だ。腕は確かと見ていいだろう。

「分かった。ゆうじ。今日からお前もジョーカーズの一員だ!」

「はい、ありがとうございます!」


これでメンバーは4人。さや、アリス、ゆうじ、そして俺だ。


「アリス、狩りに行くぞ、アリスが倒せる範囲の強敵モンスターを知らないか?」

「それなら、ベルウッドがいいわ、ベルウッドは植物モンスターだから、私の得意とする炎属性の魔法と相性がいいの」


「戦いは全てアリスに任せた!俺たちは影から見守ってるぜ」

「勇者様〜」

「期待してるぜ」

「はい〜」


「さやさんですよね。あきらさんってどう人なんですか?」

「一言で言えば変態よ」

「ええ!?そうなんですか!?」

「でも、変態紳士よ、彼は」

「意味が分かりません」

「そうね、普通の人は一生経っても分からないかもね」

「うう…僕は普通の人ですか…」

「いや、そういう意味で言ったんじゃなくて、えっと…」


さやとゆうじは会話を終える。


ここからが俺たちの作戦だ。

まず、俺とゆうじとさやは敵にエンカウント発生を確認したら、すぐさま逃げる。

そして、さやは回復の杖でアリスのHPを回復し、回復ボーナス経験値を稼ぐ。

そのためにボロの杖を100本分購入した。

ゆうじは後方から何度も弓を使い、努力値を貯める。そのためにボロの矢を150個購入してきた。


そして、最後は俺だ。俺はレベル3になる際に覚えたヒールを使い、回復ボーナス経験値を稼ぐ。基本さやと同じ役割だ。

これが俺たちの作戦だ。


・・・


闇夜の森

「ここにベルウッドが現れるわ」

「こんな薄気味悪いところに出るのですか?」

「ほら、出たわ!」


ベルウッドがあらわれた。

作戦通りにさや、あきら、ゆうじはすぐに岩場や草むらに隠れる。

ゆうじが弓を放つ。ベルウッドに与えるダメージは1だが、強敵アタックボーナスで経験値がプラスされる。それが150回で150ダメージだ。

「さやさん、あきらさん!弓使い切りました!」

「分かった、ゆうじはそこで待機していてくれ」

アリスは今回の作戦のため、攻撃はせず、ベルウッドの攻撃をうまく受け流し耐えている。防戦一方だ。

「あきら!回復の杖、使い切ったわよ!」

「俺もヒールを使い切った!アリス今だ!とどめを刺してくれ!」

「はい!勇者様♪」


「スペル・ボルガノン!」


大きな炎の球体がベルウッドに襲いかかり、ベルウッドは消滅した。









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