第4話 デスゲーム
「あきら!あきらってば!」
俺は目を開ける。そこはさやの寝室だった。どうやら元の世界に戻れたようだ。
「よかったー!!本当によかったー!」
さやは俺に泣きつく。
「おいおい、子供じゃないんだから、そんな泣くなって」
「違うの、いいからテレビを見て」
さやは机の上にあるリモコンを手に取り、テレビをつける。
えーただいまのニュースです。世界各地で人々が寝てる間に別の世界へ意識だけ飛ばされる夢を見るという事件が起こりました。専門家の話ではそれはかつて存在してた魔法の木の何らかの力により生まれた異世界だと言われているようです。
えー、またもや新しいニュースが入りました。全国で睡眠後に仮死状態になる事件が発生しました。その仮死状態になった人の共通点は異世界のモンスターにより殺された点です。異世界ではメニューバーがあり、ガナルガンドでセーブをすれば、再びガナルガンドに戻ってこれるという情報があります。なので異世界では目を覚ます前にガナルガンドでセーブを行いましょう。以上ニュースは終わります。
「全世界の人が異世界に…か…」
「夢世界と違うもんね、異世界って何だろう?」
「それに、モンスターに倒された人が仮死状態になるって…」
「あきら!」
「さや!?」
さやは俺に抱きつき、そして…涙を流した。
「私、街でセーブできなかった…次に異世界で目が覚めた時、モンスターに襲われたら…私!死ぬのが怖い!」
「さや・・・」
俺はさやを抱きしめて、「よしよし」と頭を撫でる。
「心配するな、さや。俺、、、異世界についたら、すぐ探すから」
「うん、頼りにしてるから」
しかし、俺は今日起きるまでは、あの異世界が、ただのRPGの世界だと思っていた。
だけどそれは違う。異世界で死ねば、現実での死が待っている。そしてプレイヤーは全人類だ。世界にいる69億のプレイヤーが全員異世界で死んだ時、それは人類の滅亡を意味する…。これはゲームではない。この名言はまさにこの時のためにあるものだろう。
「ちょっと待て…現実世界で寝なければよくね?」
「はぁ…睡眠不足で死ぬわよ」
「そうですね…」
ふと、俺はふとあることに気づいた。
「この家、いつも朝はこんなに静かなのか?」
「そういえばそうね…あ、まさか!」
さやは寝室を出て、両親の部屋をドンドンとノックする。
「お母さん!お父さん!起きていないの!?」
「中入るわよ」
ガチャ。
ドアを開けると、寝息を立ててないさやの父と母の姿があった。
「まさかお父さんとお母さん、仮死状態に?」
「ああ、そのようだな」
「せんなの…あんまりよ…」
さやの父と母は異世界でモンスターに殺された。あの世界は言うなれば、デスゲームと言っていいだろう。
「あきら!救急車呼んで!」
俺はポケットのスマホで病院に電話をかける。
「あきら!まだなの?」
「そうじゃないんだ…誰も出ないんだよ」
プープープーと虚しく鳴る着信音、部屋の中に冴え渡る。
「私…どうすればいいの?」
「異世界を攻略するんだ」
「攻略?」
あの異世界は現実世界のRPGゲームを元に作られていた。とするとあの異世界もおそらくゲーマーかゲーム好きの誰かが生み出した夢世界なのかもしれない。それも異世界を生み出してしまうほど、強い想いを持ってる人物だろう。そして、バーチャルリアリティシステムで活用されるホーム画面。この異世界はゲームの世界、いや、デスゲームの世界だ。
「いいか、さや。あの異世界は誰かの想いで出来たゲームの世界なんだと思う。多分ゲームマスターはこの世界のどこかにいる誰かだ。ゲームマスターは誰かにゲームをクリアしてもらいたいと思ってるはずだ。だから誰かにプレイしてもらいたいんだと思う」
「だからゲームをクリアすればいいの?」
「おそらくな、あくまで仮定の話だけど…」
「それでクリアすればお父さんとお母さんに会えるの?」
「もちろんさ!でないとゲームの意味がないからな!」
ゲームをクリアするか…俺もよくRPGゲームやってたな…今はギャルゲーをする時の方が多いが…。
「作戦会議だ、さや」
「うん」
俺たちはまたさやの部屋に戻る。
「まずは基本設定だ。さやはメニューバーについて知ってるか?」
「全然知らなかったわ」
「メニューには「強さ」「まほう」「アイテム」「特技」「お金」「ジョブ」「セーブ」 「マップ」の8種類のコマンドがある。
強さは自分のステータスが分かる。みんな、最初はレベル1だ。魔法は魔法使いが使えると思うけど、俺は使えなかった」
「それで他はどうだったの?」
「残念だけどセーブ以外は残りは試せなかった。でも、マップを見れば、ザナルガンドっていう街が分かるから、仮に外に出てもそれを頼ればいい」
「分かったわ」
「ところでさやはどこにいたんだ?」
「私はね、確かシャカの森ってところにいたの」
「シャカの森?」
「ええ、妖精さんが教えてくれたの」
「妖精ねぇ…」
このゲームの登場人物は人と魔物だけだと思っていたけど、妖精がいるとは思わなかった。まあ、ペガサスやドラゴンがいるくらいだしな。
「あきらはどこにいたの?」
「ガナルガンドから南の草原だよ、現実とは思えないくらい、風が気持ちよかったよ」
「あきらは魔物に襲われなかった?」
「ああ、スライムに襲われて殺されかけた…」
「どうして助かったのかな?」
「それは青髪のねぇちゃんに助けてもらったのさ」
「ふーん、それはよかったはね…」
青髪の女の子。彼女は言った。ガナルガンドで行きセーブをしろと。気になるのは異世界の事件が起きて数日しか経ってないのに、動きが手慣れていた。もしかしたら彼女はNPCなのかもしれない。
「とりあえず、次に異世界に飛ばされた時はギルドに集合な」
「分かった」
ギルド。冒険者が仲間を募集する際に訪れる場所で、他にもクエストを受けるときもここで手続きする。クエストを終えると報酬としてゴールドやお金をもらえる。
「そういえば、さやは魔物に襲われなかったのか?」
「一度襲われたけど、妖精さんが守ってくれたの」
「それで経験値かゴールドは手に入ったのか?」
「経験値は50くらいで、ゴールドは30だったわ」
「50も!?どんな敵だった?」
「オークよ。それでね、妖精さんが炎をボー!!!って吐いて、一撃で倒しちゃった」
「妖精恐るべし…」
あ、そうだ…。俺まだ飯食ってなかった…。
「さや、飯にしよう」
「分かったわ、ご飯はあるけど、おかずは何にする?」
「おかずはさやで頼む」
ボカ!
久しぶりにさやに殴られる。
「下からご飯取ってくるから待っててね」
夢世界に異世界、現実世界のどこかに存在する世界だ。
一体どこから生まれてどこに向かうのか想像がつかない。
「お待たせ〜」
お待ちかねの飯だ。ご飯に玉子焼きに、ハムだ。
玉子焼き…「これはあかん!」
「さや、玉子焼き…」
「あれ、嫌いだった?」
そうじゃない!さやの夢世界で、俺は玉子焼きを口移しで食べさせられた。それを思い出す。玉子焼きがとてもエロい物体に見えてきた。
さやが玉子焼きを口にする。
「待てー!さや!早まってはいけないぞ!俺は心の準備ができてないからな!」
「何のことよ?」
「口移しだよ!」
「んん!?」
さやは噎せて何回か咳き込んだ。
「エロいさや…」
「んんん!!!」
「あ、悪い…」
「お願いだからもう忘れて〜あれは私の黒歴史よ!」
そういえば街はどうなってるんだろうか?
そしてこのデスゲームをどうして終わらせればいいのか?
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