第2話 さやとあきら

「どうも、初めまして、あきらです」

「あなたがあきらくんね。こりゃかっこいい彼氏さんを連れてきたね。さやにはもったいないわ〜」

「お母さん!やめてよ。私はあきら一筋なんだから…」


俺は夏休みということで、さやの家にお邪魔することになった。

さやの実家に一緒に行きたいと言ったのは俺ではなくさやだった。


「それでさや、あきらくんとはどこまでいったの?」

「どこまでってどういう意味よ?」

「キスとかしたの?」

「!?」


…これはまずいな。夢世界とはいえ、さやと少なくとも50回以上キスしたと言えば、さやのお母さんに半殺しにされるかもしれない…。ヤバイよ、さや!そこはなんとか上手くごまかしてくれ!


「唇が腫れそうなくらい、キスしたわ」

「・・・」


さやさーん!?なにとんでもない事バラしてるの!


「うふふふ、そうなの、そうなんだ〜」

「お、お母様?」

「奥手なさやがそこまでするなんてね〜もう結婚したらどうかしら?」

「け、結婚!?それは早すぎますよ!」

「そうよ、私はまだそこまで考えていないんだからね!」

「うふふふ。冗談よ。あきらくん。それじぁゆっくりしていってね」


「あきら、私の部屋に行きましょ」

「ああ」


ここがさやの部屋か…。普通の女の子の部屋なら可愛いぬいぐるみや、可愛いキャラクターの布団などがあるはずだが、さやの部屋は殺風景だ。ベット、テレビ、勉強机、生活に必要な最低限のものしかない。


「これが私の部屋よ、どう思う?」


寂しい。その一言でその部屋の様子が見当がつくくらいだ。

そういえば、さやは俺と恋仲になる前は、いろんな事に興味を持っていない文才少女だった。そう考えるとこの部屋の風景は納得できる。


「さや、ショッピングに行かないか?」

「ええ、いいけどあなたお金あるの?」

「エロ本とエロビデオに、ギャルゲーを全部売ったから大丈夫だ」

「売っちゃったの?もったいない事するわね」


もったいない。普通の彼女ならエロ本やエロビデオというワードを聞くだけで怒りが有頂天になるだろう。だが、俺たちは違う。

桜の魔法で夢世界を作り、そしてさやと深く繋がった。この絆は本物だ。

俺はそれを機にエロ系のものは売った。いや、もう必要ないからだ。そんなものがなくても、俺はムラムラでき…いや、満足できる。




俺たちはさやの家を出て、ショッピングモールへと向かった。

さやと俺は手をつなぐ。どこか出かけるときはいつも手をつなぐようになった。

前は手をつなごうとしたら、「触るな変態!」と言われたものだが、人は変わるときは変わるものである。


「何買うの?」

「とりあえず、可愛いものを一式揃えるぞ」

「例えば?」

「だんご大家族のだんごのクッションを買おう」

「可愛いね、これ」

「そうだろそうだろ」


それに☆☆☆ちゃんの布団のカバーに、枕カバー。俺は次々さやの部屋に合いそうなものをカートに詰める。大体揃ったところでレジで購入する。


「結構、たくさん買ったわね」

「これでも少ないくらいさ」

「部屋をレイアウトするぞ」

「レイアウトって何?」

「模様替えな…」

「うん、分かった」


・・・ほら、これでおんなのこ女の子らしい部屋になっただろう。キャクターの枕、布団、そしてだんご大家族。見栄えが良くなって、さっきよりもずっと女の子の香りがする部屋になった。


「ありがとう、あきら」

「どういたしまして」

「あきら、あのね…今日はうちに泊まっていかない?」

「いいのか?ベット1つしかないのに」

「ひとつあれば充分よ」


それってつまり…さやと一緒な布団で寝るという事だ。また、さやの寝顔が見られる。さやは事故に合い、無事帰還してからは、俺を蹴ったり殴ったりしなくなった。

というのも、俺が変態発言をしなくなったからでもある。一度「胸揉ませてくれ」と試しに言ったら、さやがマジで脱ぎはじめたので止めた事もある。痛い思いをしなくなったのはいいが、それもちょっと寂しく思えた。


「あきら、夕食食べに行こ」

「おう、ゴチになるな」


夕食はさやとさやのお母さん、俺、そしてさやのお父さんが椅子に座って食事をする。さやのお父さんはメガネをかけた、厳格がある雰囲気だ。ちょっと気まずい。


「きみがあきらくんか?」

「は、はい!」

「話はさやから聞いてるよ…」

「男ならガンガンといかんとな!あははは」

「は、はあ」

「わしがな母さんとくっついたきっかけもあきらくんたちが住んでいる特別寮でな、わしは母さんと一緒でとても緊張してな…結局キスもできんかったよ」

「あきらくんとさやは唇が腫れそうなくらいキスしたそうよ」

「なんだと!」


さやのお父さんは机をドン!と叩く。やべえよ、完全に怒らせちゃったよ。

というか、お母様、そういう恥ずかしい発言はしないでくださいよ。うわー、どう謝ればいいんだよ…。


「はははは、やるではないか!あきらくん、そうそう男なら当たって砕けろだな、ははは」


ふぅよかった、ここでゲンコツくらうかと思ったよ…。

食事を終えてさやと一緒に部屋に戻る。


「ごめんね、うちの父母が騒がしくて」

「まあ、いいって」

「お風呂はいる?」

「さや、一緒に入るか♪」

「ええ、いいわよ♪」

「・・・」


・・・冗談が通じねぇ…。いや、一緒に入りたいのはやまやまだが、いつもならここで蹴られるか、殴られるかのどっちかの筈なのに…。


「どうしたの?入らないの?」

「一人で入るよ」

「どうして?」

「ムラムラが止まらなくなるから、また今度な」

「うん、、」


俺は先に風呂へと向かい、そして湯船に浸かる。


「あーあ、やっぱり一緒に入ればよかったな…」


顔を半分湯船に浸かる。俺もまだまだヘタレだな…。


「あきらー入るわよ〜」

「さ、さや!?」


さやは風呂場で服を脱いでいる。これは、このままでは・・・。俺の息子が抑えきれなくなるー!!


「開けるわよ」


まずい!俺はすぐ湯船から出て、風呂のドアを押さえる。


「あきら、開けてよ〜」

「ダメだダメだ!さやくん冷静になりたまえ!君は俺を犯罪者になるつもりか!?」

「何わけもわからない事言ってるのよ!」

「それはそっちだろうが!俺はな思春期真っ盛りなんだよ!このままじゃさやは初めてを奪われるのだぞ!?」

「それでも…いいわ。だから開けて!」


さやはドアのぶを開けようとする。俺は必死にそれを防ぐため、ドアを押さえつける。このままではドアごと壊れて、俺とさやは夜中のランデブーへと突入してしまう。


「こら、さや。何してるの?」

さやのお母さんの声だ。よかった、これで、誤解を生まずに済む。

俺は再び風呂に浸かる。


「あのね、お母さん、あきらと一緒にお風呂入りたいんだけど、あきらが中に入れてくれないの」

「さやねぇ…あなた…」


よし、それでいい。


「手伝うわよ」


ブー!風呂の水を吹く。


ちょっとお母様!?そこ止める場所でしょう!?何やってるの?

ていうかさやの一家はどういう思考をしてるんだよ!?

まずい!またドア締めないと…


再び俺はドアを押さえる。手の握力がなくなってきた。

もうダメか…。もう、いいじゃないか。さやとお風呂に入ろう…。

もう諦めよう…。


「おい、お前たち、何をやってるんだ!」


お、お父様!!!天はまだ俺を見捨ててなかったー!!!


「私たち、あきらくんがお風呂はいってるからドアを開けようと思って」

「さやはあきらくんと風呂に入りたいのか」

「うん」

「ならわしも手伝おう」


・・・人生オワターーー(^◇^)







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