ep.37 これで、終わり。

 温かい。春樹くんの胸に、耳が押し付けられる。リズムよく、音が鳴っている。速い。


「緊張してるの?」

「そうかもしれません」


 春樹くんが、体勢を変える。――そして、気づく。


「……ごめんなさい」


 謝りつつ、慌てて腰を引いた様子を見るに、あたしの予想は正しかったと思われる。――なるほどね。そういう、もあるのか。


「あの、」


 春樹くんが顔を赤らめながら、あたしを見つめる。その言葉の続きなら、知っている。


「……最後まで」


 利用されるのは、嫌いだ。


「いいよ」




 ――だから、これで終わりにする。

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