おまけ

「1シーンから連想して物語を書く」コンテストという自主企画を開催させてもらうにあたり、企画概要にプロット状態、アイデアのみでの参加も可能と書いた。


 しかし中には未完成のものを発表するのに抵抗がある方や、そもそも人に見せる事ができるプロットの書き方がわからないという方もいるかと思い、「おまけ」と称して少々お話させて頂く事にした。私なりの持論が混ざるので異論のある方も出てくるかもしれないが、もしそうだとしてもこの場では一つの意見としてさらっと聞き流して貰えれば幸いである。同時に、やや文体が固い点、言葉足らずな点についてもどうかご容赦願いたい。


 プロットやアイデアはあるけどうまく話にまとめる事ができないというのは創作に携わる者にとって誰もが経験している事だと思う。筆を進めるには進めるが途中でなんだか納得がいかなくなってまた一から書き直したり、プロットを見直そうと少し間を置いたまま手をつけなくなってしまったり。

 私もそんな経験をよくしていたのだけれど、ある時から開き直って近況ノートにネタを書き殴ったり、「プロットに悩む作家」という設定の作品を書いてアイデアを吐き出したりするようになった。

 そしてこれが意外と筆を進めるのに効果的である事に気付いた。

 コメントを頂く事で刺激が生まれるというのはもちろんなのだが、人の目に晒すその行為自体がすでに刺激となって、意外とすんなり書けるようになったりする。

 一見荒療治のように思えるかもしれないが、アイデアのみがあって書き悩んでいるという方にはぜひ経験して欲しいと思った。


 又、描写力の向上という意味でも、プロットやアイデアを頭から吐き出すように書くというのは良い刺激になる。

 例えば今回の自主企画のお題は「空き地の端っこ」「岩を持ち上げる男(イワオ)」「男の傍で眠っている小人」「慌てて駆け寄る女(タケミ)」と、ざっと四つの要素に分けることが出来るが、話としてまとめる前にこの一つ一つを掘り下げて(アイデア)を書き連ねてみると、頭の中でモヤモヤとしていた話の道筋がしっかりと形付けられる。人に見られると意識する事で新しく着想する事も少なくない。


 僭越ではあるが、私の場合、このお題を使って考えを吐き出したらこうなるというのを少し書いてみる。


 ◇


 まず大まかなテーマとして、「うっすらと恐怖を覚えるような話」にしたいというのと、「山や集落が関わる民間伝承めいたもの」にしたいというのがあった。

 これは自主企画のお題があったからという訳ではなく、常日頃書いてみたいと思っていたもの。

 自主企画があるからそれに沿ったテーマを決めるのではなく、書きたいテーマがあるからそれに自主企画のお題を寄せる。


 次に上に書いた四つの要素をテーマに合わせた形で考える。この時、話がどう転ぶかなんて一切考えない。四つの要素を深く掘り下げれば自然と話の流れが見えてくる筈だからだ。


「空き地の端っこ」

 打ち捨てられた集落の跡地、茫々と草が茂り人の往来が途絶えて久しい空間の隅にポッカリと穴があいたように開けた場所がある。一辺五六メートル程の真四角に草が刈り込まれている。四角の角には、掠れて読めなくなっているが仰々しい文字が書かれたのであろう木片が突き立っていて、四角の真ん中には膝程の高さ、両手を広げた程の幅をした丸くて平べったい岩が横たわっている。


「岩を持ち上げる男(イワオ)」

 イワオは近くの村に住む青年だ。短気で乱暴者。評判はあまり良くない。

 村には毎年一回、岩の前にお供えをする習慣があり、彼は村の会議でお供えを届ける役を仰せつかった。

 大きな荷物を背負い込み岩の元へ向かったイワオ。

※そこで寝ている小人に出会ったからか、それとも違う理由からかイワオは空き地にあった岩を持ち上げるハメになった。


「男の傍で寝ている小人」

 大きめのネズミか小さめのウサギくらいしかない「小さな男(中年)」。腰の辺りにボロ布を巻いただけの姿で全身が薄汚れている(きっとイワオは初め、獣と見間違う)。

 子供が外で遊んだまま忘れ去られた人形のように真っ直ぐな姿勢で眠りこけている。


「慌てて駆け寄る女(タケミ)」

 イワオの幼馴染で、お供えを届ける事になった彼を心配して後から付いていく。村の秘密(小人の存在)を知っている(?)とするならば重役の娘。


 さて、ここまで考えをツラツラと吐き出してみた。


 大きなテーマとして「うっすら恐怖」を与えたいのだから小人は少し奇妙な風体にする。集落に関わる謎を説明する役として、駆け寄る女はその秘密を知っていなければならない。というのが

 後はイワオが岩を持ち上げる理由と、村の秘密(小人)を絡めたオチを考えればどうやら話としてまとまりそうだ。


 イワオが岩を持ち上げる前に小人を発見してしまうと齟齬が生まれるので岩の下で小人が寝ていた事にする。小人はとことん奇妙な姿として描きたいから岩の下によくいる虫のイメージと重ね合わせて何人もウゾウゾと蠢いている事にするのはどうか。(人の形を保っているのは一人だけであとはサナギとかでも良い)


 タケミが駆けつけ、事情を知らないイワオに説明する事にする。

 イワオは何故事情を知らないのか。

 元々イワオの家族は村の人間ではなく幼い頃に引っ越してきたとしたら都合が良さそうだ。村の習慣に疑問を抱いていたイワオは岩の下に少しばかり隙間がある事に気付き、好奇心に踊らされるがまま岩を持ち上げた。


 小人の正体については序盤に描写した空き地の設定を活かし、元々この集落にいた人間の成れの果てとしても良いか。イワオの村に住む住民はその血を受け継いでいるならばお供えをする理由にもできる。(岩の下が入り口となっていて地底にコミュニティを築いている?)

 小人が勝手にコミュニティを形成しているとするよりも、近くの村の人間の中に時折「まるでウサギのように小人をポコポコと何人も生む女性」がいて、村ぐるみでその生まれた小人を世話しているとした方がより奇妙かもしれない。


 イワオはタケミから事情を聞いて受け止める事ができるだろうか。もし受け止めたとして、イワオとタケミの間にもし子供ができたら(恋人設定にしようと今決めたが)その子供はどうなるのか。

 うっすら恐怖とするならオチはこのあたりのイワオの心情描写になる。


 少し粗かったり思考がバラバラな部分もあるが、大体の流れをプロット的に書いてみた。


 ◇


 こんな感じで、「人に見せるプロットを書く」という事が大体わかって頂けただろうか。この時点で企画の主な目的である「発想を楽しむ事」と「物語の続きを考える事(創作の刺激とする事)」を達成してしまっているのだ。あとは「話としてまとめる」、つまり飾り付けをすれば良いだけなのだが、主催者としては、上記の「未完成の状態」のものでも充分に価値が生まれているのだ。

 それを見せて貰うだけで嬉しく思うし、応援コメントや感想も作品として完成したものと同等もしくはそれ以上に踏み込んだもの(こんな展開にしたら面白そう等の意見)を残す事になると思う。

 だからこそ、私が主催する企画については今後も「プロットやアイデアのみでの参加も可能」としていきたい。


 創作する者というのは、常に頭の中にアイデアという大きな岩を抱え持っている。

 時にはその重さに耐えきれなくなりそうになり、何も考えずただ寝っ転がっている人を羨ましく思ったり、駆け寄ってくる誰かに救いの手を伸ばしたりするかもしれない。

 そんな重たい岩の置き場所として、一息つく場所としてこの企画を使って頂ければと願っている。


 ◇


 長々と述べさせてもらいましたが最後に。


 偉そうな文体と愚にもつかない意見をツラツラと書いてしまい、大変お目汚しとなってしまったかもしれません。始めにも書きましたが、思うところある方もいるかもしれませんがここはサラッと受け流してもらえると、気持ち的に非常に助かります。

 私も勉強中の身ですので、どうか「同士としての一意見(こんな方法もあるんだよ)」として受け止めて頂ければと思っております。


 つまり私が言いたかったのは、今回企画参加を見送ったという方にも次回開催の時には気兼ねなく参加して頂ければ嬉しいなと、ただその一点だけなのです。


 改めまして、最後までお読み頂き本当にありがとうございました。

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